「ラクスルって、印刷の会社ですよね?」
そう言われるたびに、宮島さんは少し笑います。
確かに「早い!安い!簡単!」のテレビCMの印象が強いかもしれません。しかしラクスルは、常に次の産業構造改革に向けて歩みを進めています。
中小企業の事業運営に必要なあらゆる資材や消耗品をワンストップで提供する物販EC ─ それがラクスルが仕掛ける新たな事業領域「ラクスルビジネスモール」です。
このプロジェクトの中心で、テクノロジーとビジネスの両輪を回しながら推進しているのが宮島さん。テクノロジー本部に所属しながら、PdMやBizDevのような役割も担う、社内でも稀有な存在です。
目次
キャリアの原点 ─ “上流”を目指して
ラクスルでの挑戦 ─ 0.5 to 1の事業づくり
チームとカルチャー ─ “守りが弱い”からこそ挑戦が生まれる
挑み続ける理由 ─ カオスを楽しむ力
編集後記
キャリアの原点 ─ “上流”を目指して
── まずは宮島さんのこれまでのキャリアについて教えてください。
宮島:最初はSIerとしてプログラマーやシステムエンジニアを経験しました。二次請けの立場で大規模システム開発に関わっていましたが、「もっと上流で、事業をつくる側に立ちたい」という思いがありました。
その思いでフューチャーアーキテクトに転職し、コンサルティングから開発まで一気通貫で携わりました。そこからさらに、事業そのものをつくる面白さを求めて楽天に入社しました。
── 楽天ではどんな経験をされたのでしょうか。
宮島:当時の楽天では、まだ物流事業が立ち上がっておらず、「裏側の仕組みをすべて自前でつくりたい」という構想がちょうど動き出した頃でした。物流事業準備室に配属され、システムもオペレーションも営業も、すべて一からつくっていきました。結果的に11年間在籍し、事業責任者も経験させてもらいました。
── ゼロから事業を立ち上げる経験が続いていますね。
宮島:そうですね。次のゼビオグループでも、IT部長として入社したもののまさかの所属社員一人というスタートで(笑)。仕組みを一から再構築し、気づいたら“なんでも屋”になっていたんです。事業もシステムも、必要なものは全部自分でつくる。そういう環境が、結果的に自分の強みになりました。
ラクスルでの挑戦 ─ 0.5 to 1の事業づくり
── ラクスルへの入社のきっかけを教えてください。
宮島:前職のシステム構築が落ち着き、運用が軌道に乗ったタイミングで、また新たなチャレンジがしたくなったんです。いくつかの会社を見ていく中で、物販ECを始めようとしていたラクスルに興味が湧き、2024年12月に入社しました。
── 入社当初から「ビジネスモール」事業を担当されていたんですね。
宮島:当時はまだ「ビジネスモール」という名称もなく、店舗用品やオフィス用品の取り扱いを始めたタイミングでした。とはいえ、印刷のカスタマイズECが主軸だったラクスルにとって、ノンカスタマイズの物販ECはまったく新しい領域。当初は人も仕組みも十分ではなく、試行錯誤を重ねながら仕組みを立ち上げていく段階でした。
おかげさまでこの1年ほどで徐々に規模が大きくなり、今年(2025年)の9月には「ラクスルビジネスモール」として正式にリリース。今は、レッドオーシャン市場でどう勝つかを日々考えています。
── レッドオーシャンでの“勝ち筋”とは、どのようなものなのでしょうか。
宮島:ベンチマークしている大手物販ECはいくつかありますが、必ずしもそれらと真っ向勝負をする必要はないと考えています。ラクスルにはすでに300万ユーザー以上の会員基盤がある。「早い!安い!簡単!」だけでなく、「便利さ」を武器の一つにして、印刷ECを利用しているお客様が消耗品や店舗備品なども同じ場所で購入できるようになれば、自然と接点が広がっていきます。まったく0からのスタートアップではなく、既存のアセットを活かしながら“0.5から1”を狙えるのがラクスルの強みです。
── 現在はどのような体制で進めているのですか。
宮島:ビジネスサイドは日本拠点で3名体制、開発はベトナム拠点で行っています。その中で、私はPdM、ディレクター、BizDevのような立場を兼ねながら、事業計画やシステム設計までを一気通貫で担当しています。少数精鋭のチームで、スピード感を持って動いています。
── テクノロジー本部に所属しながらBiz領域も担うのは珍しいですよね。
宮島:そうですね。BizでもTechでもない“間”のような存在です。だからこそ、両者をつなぐ役割ができる。組織が今後大きくなれば、より体制が整っていくと思いますが、現時点では柔軟に動けることが自分ならではの価値であり、この仕事の面白さだと思っています。
チームとカルチャー ─ “守りが弱い”からこそ挑戦が生まれる
── 入社後、ラクスルの印象はいかがでしたか。
宮島:上場企業ということで、もっと仕組みが整っているのかと思っていたのですが、実際にはまだ発展途上の部分も多く、個々の力で事業を動かしている印象でした。いい意味でスタートアップらしく、一人ひとりが自分で考え、行動する文化があります。その反面、個の強さが際立つ分、“守りの仕組み”はまだ弱いと感じました。
── 最近は組織横断的な取り組みも進んでいるそうですね。
宮島:はい。グループCTOの竹内さんや、グループCIO/CDOの藤門さんを中心に、各事業がどう連携し、シナジーを生み出すかを議論しています。横のつながりを強化しながら、事業ごとのスピードも保つ。このバランスを取ることが、今のラクスル全体のチャレンジですね。
── 宮島さんのチームでも採用を進めていると伺いました。どのような人を求めていますか。
宮島:今求めているのは、“自分で領域を広げられる人”ですね。PdMや事業開発の経験者はもちろん、フロントエンドやSEOなど、専門領域で強みを持っている方も歓迎しています。ただし、「自分の専門だけをやりたい」という方には、まだ合わないフェーズかもしれません。現時点では仕組みが整いきっていないので、手を動かしながら仕組みそのものを作っていく必要があります。そうした環境を楽しめる人と、ぜひ一緒に挑戦していきたいです。
挑み続ける理由 ─ カオスを楽しむ力
── 宮島さんご自身は、なぜこれほど挑戦を続けてこられたのでしょうか。
宮島:結果的に「切り開く方が性に合っている」んだと思います。これまでも、ある程度の道筋が見えたら次の環境に移っていました。あまり意識はしていないですが、結果として、カオスな状況に身を置いている方が、成長を感じているのかもしれません。
── 周囲を巻き込みながら、物事を前に進めるのが得意なんですね。
宮島:いえいえ、若い頃はかなり“尖って”いましたよ。納得いかないことがあれば、誰にでも噛みついていくようなタイプでした。でも、経験を重ねる中で、組織を動かすには“言い方”や“伝え方”が大事だと学び、行動の仕方を意識的に変えてきたんです。
── 変化のきっかけは何だったのでしょうか。
宮島:例えば、楽天という多様なバックグラウンドの人が集まる環境では、マネジメントをする立場になったときに「違いを受け入れて動かす力」が必要だと痛感しました。前職のゼビオでは、現場に出向き一緒に手を動かしながらこちらの想いを理解してもらうなど、地道なコミュニケーションを重ねてきました。そうした泥臭い過程の中で、少しずつ変化が生まれるのを感じたんです。
── 「守るより、切り開く」。まさに宮島さんの生き方ですね。
宮島:そうかもしれません。安定を求めるタイプではあるんですが(笑)、結果的に変化のある場所にいる方が楽しい。ラクスルもまさにそういう環境です。今の事業を形にできたら、また次の挑戦に向けて動いていくと思います。
編集後記
インタビューを通じて印象に残ったのは、宮島さんの“実直な挑戦者”としての姿でした。
安定を望みながらも、常に変化の渦中に身を置いてきた人。仕組みがなければつくる。道がなければ切り開く。その行動力の根底には、事業や組織を「自分ごと」として捉える誠実さがあります。
ラクスルが取り組む「ビジネスモール」は、“End-to-Endで中小企業の経営課題を解決する”という想いを、新しい形で体現するプロジェクトです。 “なんでも屋”という言葉の裏にあるのは、どんな状況でも前に進める力。宮島さんのようにカオスを楽しめる人こそが、次の産業構造を動かしていくのだと感じました。