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スタートアップスタジオquantumのクリエイティブ担当役員、川下です。
前回の記事では、未来の物語を書くことで新規事業開発を成功に導く「事業作家」という仕事について紹介しました。
今回は、その事業作家はどのようにして未来の物語を書き、具体イメージにしていくのかについて書きたいと思います。
一言で未来の物語を書くといっても、それは一朝一夕にできることではありません。実を言うと、わたしも新規事業開発に取り組む過程でこの技術を身につけたのではなく、別の領域で長年繰り返し実践してきた経験が新規事業開発にも<応用できる>と気づいたのです。
それは、広告会社での企画・制作経験です。
わたしは大学院修士過程を修了後、2000年に総合広告会社に入社しました。初任でマーケティング部門に配属されて以来、広告・広報戦略の立案から具体施策の企画・制作を経験しながら、2017年に新規事業開発組織であるquantumに参画するまで、ずっと広告の企画畑を歩んできました。この広告会社時代の修行によって、未来の物語を書く技術が身についていったように思います。
広告制作とは、ある製品・サービスの宣伝をお題に、CMと呼ばれる動画やグラフィックと呼ばれる静止画などの表現物をつくる仕事であり、イメージを膨らませる想像力と、それを実現させる創造力が必要とされる仕事です。
CMの制作方法をご存知なくても、アニメーションの制作方法についてイメージできる方は大勢いらっしゃるのではないかと思います。ざっくり紹介すると、広告制作ではキャンペーンとして打ち出す大きな方向性が定まると、具体的な広告物をつくる段階に入ります。
CMを例に挙げると、まず動画の長さを想定した「脚本」を考えます。次に、脚本に沿ってどのような映像をつくるのかを考え、「絵コンテ」と呼ばれるものを制作します。その後、絵コンテをもとにして実際に撮影、または(CGなどで)制作した映像を編集して動画を完成させます。
言い換えると、脚本とはこれからつくる表現物の物語を書いたものであり、絵コンテはその具体イメージを描いたものです。わたしは、この「表現物」をこれからつくる「事業」に置き換えることで、広告制作の手法を事業開発に応用することができるとのではないかと考えました。
この発想をブラッシュアップしてつくり上げたのが、広告(Ad)クリエイティブの手法を、事業(Biz)クリエイティブに応用した「Ad to Biz Creative手法」略して「ABC手法」です。
多様な経歴と能力を持った人材の集まるquantumですが、組織自体の出自は広告会社で、わたしと同様に広告会社での経験を持つメンバーも一定数在籍しています。そうしたバックグラウンドを活かして、CM制作における「脚本を書く→絵コンテを描く→映像をつくる」という工程を新規事業開発に置き換え、「事業脚本を書く→事業コンテを描く→事業映像をつくる」という「ABC手法」を、日々アップデートしながら実践しています。
では、広告制作の手法をそのまま新規事業開発に適用すれば、プロジェクトは順風満帆に進むのでしょうか。答えはNOです。
広告クリエイティブと事業クリエイティブの大きな違いについては、次回に譲りたいと思います。