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はじめまして。
川下和彦(かわしたかずひこ)と申します。
職業は、「事業作家」です。
事業作家?
聞き慣れない職業ですよね。
それもそのはず。
事業作家は、ググっても出てこない、わたしがつくった言葉です。
わたしは現在、株式会社quantumというスタートアップスタジオ≒新規事業開発組織のクリエイティブ担当役員として、まだ世の中に存在しない製品やサービスを生み出す仕事に取り組んでいます。
日々そうした業務に携わるなかで、市場導入までに暗礁に乗り上げてしまうプロジェクトと、市場導入に成功し、そこから成長していくプロジェクトの間に1つの決定的な違いがあることに気づきました。
それは、「物語」があるかどうかです。
どれだけ緻密に成功のロジックを組み立てても、どれだけ正確に市場規模をシミュレーションしても、プロジェクトオーナー(=将来事業の生みの親となる存在)が将来こんな世の中をつくりたいと語り、チームメンバーの心を動かす未来の物語がなければ、プロジェクトは空中分解し、絵に描いた餅のまま終わってしまうことが多いように思います。
事業計画書がトップマネジメントの承認をもらえない。
途中でチームがバラバラになっていく。
数々の新規事業開発プロジェクトが座礁していくのを目の当たりにするなかで、そうしたプロジェクトに共通していると感じたのは、プロジェクトオーナーが書いた物語が存在しないことでした。
スポーツの世界では「イメージトレーニング」という言葉が使われますが、実際に体を動かす前に「自分が動いている姿」をイメージすることによって、運動のパフォーマンスを向上させられることがすでに証明されていると言います。
それと同じように、新規事業開発においても未来の生活がどのようになっているか、未来の物語をできるだけ具体的にイメージする、あるいはビジュアライズすることによって、世の中を変えるような製品・サービスを生み出すパフォーマンスを圧倒的に上げることができると考えるに至りました。
このことに気づいて以来、わたしが事業開発に関わる際には、未来の物語を書くようになりました。すると、それまでとは見違えるように、企業上層部への企画提案が通り、開発が具現化していくようになったのです。こうした実体験を重ねるなかで、わたしは未来の物語を書く「事業作家」という仕事の需要を確信すると同時に、まだ世の中にないこの職種の、最初の1人になることを決意しました。
新しい製品・サービスを世に送り届けることによって、<いつ>、<どこで>、<誰が>、<なぜ>、<どんなふうに>、未来の生活を送っているのか。細部に到るまでの物語を妄想し、それを現実の世界にしていくこと。言い換えれば、フィクション(想像の物語)を書き、ノンフィクション(現実の物語)にしていくこと。それが、事業作家の仕事です。
もしこの記事を読んでいる方の中に、まさに新規事業開発の壁に直面している方がいらしたら、「そこに物語があるか」を問うてみてはいかがでしょうか。
わたしが、そしてquantumが、なぜ物語を書くことを得意にできるのか。
それについては、次回以降書いていきたいと思います。