「誰一人取り残さないDX」は、どう実装するのか。パブテクのマネージャーが語る、システムと伴走の両立とは。
パブリックテクノロジーズ(以下、パブテク)は、その名の通り「パブリック」に「テクノロジー」で向き合う会社です。課題に向き合うとき、まず考えるのは、どうシステムで解決できるか。
一方で、自治体という公共の現場では、システムだけでは届かない場面も少なくありません。それぞれの地域にある、制度や慣習、現場の感覚── それらを切り離さずにつなぎ直していくことで、はじめて「使われ続ける」サービスになります。
システムを軸にしながら、必要なところでは人が関わり続ける。そのバランスを担うのが、パブテクのカスタマーサクセス(CS)です。
今回は、自治体向けスーパーアプリ「パブテク」でマネージャーを務める黒田雄大さんに、システムを軸に、現場とどう向き合い続けているのか。そして制約のある中で、どんな問いを抱えながら意思決定しているのか。詳しくお話を聞きました。
事業本部 パブテクチーム マネージャー 黒田雄大
目次
- 地域に関わる仕事を、もう一度選んだ理由
- 住民に「使われ続ける」ことを徹底的に目指す、自治体向けスーパーアプリ
- 「誰一人取り残さないDX」を、どう実装するか
- 制約があるから、面白い。パブテクの仕事のリアル
地域に関わる仕事を、もう一度選んだ理由
── まずは、これまでのご経歴を教えてください。
黒田さん:
新卒で東日本電信電話株式会社(現:NTT東日本)に入社し、最初は千葉支店で自治体向けの営業を担当していました。その後、本社に異動し、大学を相手にした業務にも携わりました。
── 当時は、どのような役割を担っていたのでしょうか。
黒田さん:
どちらも公共性の高い仕事ではあったのですが、支店と本社、現場と組織の間に立つ役割を担っていました。
組織として決まっている方針や進め方を、現場の状況や反応を十分に踏まえきれないまま、押し通さなければならない。自治体側からの反対や違和感を感じつつも、それでも前に進めなければならない。そんな板挟みの場面もありました。
学生時代に全国を旅していたこともあり、地域そのものへの関心はもともと強かったので、「この関わり方でいいのだろうか」と立ち止まって考えるようになりました。
── そこから、改めて「地域に関わる仕事」を選び直した、と。
黒田さん:
そうですね。地域と関わるなら、表面的ではなく、実際に使われるものや、運用され続ける仕組みに関わりたい。そう思うようになりました。
── その中で、パブリックテクノロジーズ(以下、パブテク)を選んだ理由は何だったのでしょうか。
黒田さん:
パブテクは、システムを提供するだけで終わらず、その先の「どう使われるか」まで向き合おうとしている会社だと感じました。現場から距離を取りすぎない姿勢に、自分がやりたかった関わり方との重なりを感じたことが、入社を決めた理由です。
現在は、地方自治体向けスーパーアプリ「パブテク」に関わるチームで、マネージャーを務めています。自治体や住民、交通事業者など多くの関係者と向き合いながら、実際に使われ続けるサービスをどう実装していくかを担っています。
住民に「使われ続ける」ことを徹底的に目指す、自治体向けスーパーアプリ
── あらためて、地方自治体向けスーパーアプリ「パブテク」とは、どんなサービスなのでしょうか。
黒田さん:
パブテクは、地域住民の利便性向上と自治体業務の効率化を目的とした、地方自治体向けのスーパーアプリです。移動、防災、地域通貨など、自治体が提供するさまざまなサービスをデジタル化し、ひとつのアプリに統合することで、住民の暮らしをより便利に、自治体の運営をよりスマートにすることを目指しています。
特徴的なのは、「アプリを入れること」自体をゴールにしていない点です。自治体ごとに課題や前提条件が異なる中で、どんな形であれば実際に使われるのかを考えながら、制度設計の段階から関わり、導入や運用を設計しています。
たとえば、ある自治体では、地域の中で「校区」という単位が強く意識されていました。一般的には距離に応じて一律に料金を設定するケースが多い中、その地域の慣習に合わせて「校区間の移動」という単位で料金を設計しました。
従来の距離制では実現しづらい運用も、制度設計の段階から一緒に考え、現場で使われ続ける形に落とし込んでいく。そうした関わり方は、パブテクならではだと感じています。
── その中で、カスタマーサクセス(CS)はどんな役割を担っているのでしょうか。
黒田さん:
パブテクにおけるCSの役割は、とてもシンプルで、「使われ続ける状態をつくること」です。
自治体に導入していただくこと自体が成功なのではなく、住民に使われ、日常の中に根づいてはじめて意味があると考えています。
そのため、使われない理由がどこにあるのかを徹底的に探ります。アプリが使いづらいのであれば、エンジニアと一緒に改善を検討する。住民のITリテラシーが壁になっているのであれば、説明会を開く。制度や料金設計に無理があれば、そもそもの設計から見直す──
関係者の方々と向き合いながら、「どうすれば使われ続けるか」を考えるのがCSの仕事です。
その際に意識しているのは、できるだけシステムで解決しながらも、必要なところでは人が関わり続けることです。テクノロジーだけに寄せすぎず、現場と伴走しながら進めていく。そのバランスをCSが担っています。
── マネージャーとしては、どんな点を意識しているのでしょうか。
黒田さん:
CSは、ステークホルダーが非常に多い仕事です。
エンドユーザーである住民、クライアントである自治体職員、実際の運行を担う交通事業者やドライバーなど、それぞれ立場も利害も異なります。
その中でマネージャーとして意識しているのは、チームの一人ひとりが「カスタマーサクセスに主体的にコミットできているか」という点です。
単に調整役にとどまるのではなく、全員がシステムや制度をきちんと理解したうえで、どうすればより良い形になるのかを自分の言葉で提案できているか。その問いを、常に持ち続けるようにしています。
パブテクは、パブリックとテクノロジーの両方を扱うサービスです。だからこそ、現場に寄り添いながらも、システムとして成立させる視点を持ち続ける。そのバランスを、チームとしてどう保つかを日々考えています。
「誰一人取り残さないDX」を、どう実装するか
── 「パブリック」、つまり公共を相手にする中で、「DX化」という課題をどのように捉えていますか。
黒田さん:
パブテクで強く意識しているのは、誰かを置き去りにするDXには意味がないということです。
デジタル庁が掲げているミッションに、「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」という言葉がありますが、まさにその通りだと思っています。
地方公共をクライアントにもつ以上、私たちがつくるものも、誰か一部の人だけが便利になる仕組みではなく、地域全体を支えるインフラでなければならないと考えています。
── とはいえ、デジタル化を進めるうえでは、すべての人が最初からスムーズに使えるわけではありませんよね。
黒田さん:
そうですね。制度や仕組みを整えたからといって、すぐに使ってもらえるわけではありません。これまでの慣習やアナログなやり方の中に、住民にとって大事なタッチポイントが残っていることも多いです。
たとえば、アプリで予約ができるようになっても、「最初は難しそう」と感じる方は少なくありません。だからこそ、電話対応や対面での説明といったアナログな受け皿を、あえて残すこともあります。そうしたチューニングができるのは、パブテクの一つの強みだと思っています。
── デジタルに寄せきらない、ということでしょうか。
黒田さん:
そうですね。前提として、私たちは「パブリックテクノロジーズ」であり、テクノロジーやシステムを使って課題に向き合っています。そのほうが、技術革新が日々進む世の中においては、より多くの人を支えることにつながると考えているからです。
ただ、すべてを一気にデジタルに置き換えることが正解だとは思っていません。
使ってもらうために、残すべきものは残す。そのうえで、その中に少しずつデジタライズできる部分を見つけていく。一つひとつは小さなDXかもしれませんが、それが積み重なることで、サービス全体としては確実に変わっていくと思っています。
── CSとして、その考え方をどう現場に落とし込んでいるのでしょうか。
黒田さん:
すべてを一気にデジタルに置き換えることが正解ではないからこそ、CSが必要なんだと思っています。
システムで解決できるところはシステムで解決する。でも、そこに至るまでの不安やハードルは、人が関わって、実際に感じて、取り除いていく。
自治体職員や住民と膝を突き合わせて話しながら、どこでつまずいているのかを知る。現地に足を運んで、「ここからここへの移動が大変なんだ」という感覚を、自分たちのものとして理解する。
システムと伴走、そのどちらかに振り切るのではなく、両立させ続けることが、パブテクが考えるDXであり、CSが果たす役割だと思っています。
制約があるから、面白い。パブテクの仕事のリアル
── ここまで話を聞いていると、やりがいがある一方で、難易度も高そうだとも感じます。
黒田さん:
もちろん、簡単ではありません。パブテクはボランティアではなく、事業として公共に向き合っていますし、スタートアップなので、人も時間も、お金も、無限にあるわけではありません。
パブテクのメンバーは、自治体や地域に深く関わりたい気持ちを持っている人が多く、僕自身もその一人です。毎年8〜11月あたりが繁忙期になり、その期間は週に1回出張に行っていることもあります。それでも、「もっと現地に行きたい」と思う場面はたくさんあります。でも、ただ、時間やリソースは限られています。
そこは、マネージャーとしても、会社としても、常に向き合っている現実です。
── 伴走するうえで、どんな点を意識しているのでしょうか。
黒田さん:
そうですね。自治体としては、定期的な訪問で安心いただけるところはあると思いますし、僕たちも行きたいです。でも、毎週足を運ぶような関わり方が、すべての案件で現実的かというと、そうではありません。
期待を高めすぎてしまうと、結果的に相手をがっかりさせてしまうこともある。だからこそ、どういう距離感で伴走するのか、どこまでを自分たちが担い、どこからはシステムに委ねるのか。その線引きを、事前にきちんと共有することが大切だと思っています。
── 制約がある中で、どう意思決定しているのでしょうか。
黒田さん:
正直、毎回うまく答えが出せているわけではありません。限られた人や時間の中で、「これで本当にいいのか」と迷う場面もあります。
それでも判断しなければいけない中で、拠り所にしているのが、「本当にこの地域にとって必要なのか」「使い続けてもらうために、今やるべきことは何か」という問いです。
すぐに成果が見えるわけでもないですし、関わり方次第では、かえって期待を裏切ってしまうこともある。それでも、「どうしたら使われ続ける形になるのか」を考えながら、優先順位をつけていくしかありません。
簡単な判断ではありませんし、正直、葛藤はあります。それでも公共に関わる以上、逃げずに向き合い続けなければならない部分だと思っています。
── マネージャーとして、チームに伝えていることはありますか。
黒田さん:
地域に向き合いたいという気持ちを持っている人が、今パブテクには多く集まっています。それ自体は、とても心強いです。
一方で、その想いだけで突っ走ってしまうと、無理が重なって、事業としても、働く側としても、苦しくなってしまうシーンもあると思います。
だからこそ、「制約がある中で、どう最適解を出すか」を、一人ひとりが考え続けてほしいと思っています。行けない理由を探すのではなく、行けない前提の中で、どう価値を届けるかを考える。その姿勢を大事にしています。
── どんな人と、一緒に働きたいですか。
黒田さん:
制約がある状況をネガティブに捉えるのではなく、「だからこそ面白い」と感じられる人でしょうか。
システムを理解したうえで、現場の声にも耳を傾けられる。答えが一つではない状況を楽しみながら、自分なりの最適解を考え続けられる人と、一緒に働きたいと思っています。
交通の不便さを、実際に自分の足で感じてみる。数字に表れにくい価値にも、意味を見出せる。そんな人にとっては、パブテクの仕事は、きっと面白いと思います。
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