”空間格差”をなくし、誰もが豊かな現実をおくるARプラットフォームを作る。CEO牛尾が目指すAR世界の将来像とは【Pretia’s Stories】
2022/4/26に、ARクラウド"Pretia"が一般公開されました!ぜひ一度使ってみてください!(個人の方は無償でお使いいただけます)
https://arcloud.pretiaar.com/home
こんにちは!Pretia TechnologiesにてHR Managerをしています、田中です。
今回はPretiaの事業の柱ともなるARクラウドや、事業ビジョンについてのお話を、CEOである牛尾さんに聞いてきました!開発の背景については多くが語られることのなかったARクラウド”Pretia”。その裏には牛尾さんの強い想いと、心動かされるストーリーがありました。
Pretia Technologies Inc. CEO 牛尾湧(Yu Ushio)
兵庫県出身。東京大学在学中より起業を志し、同学内の起業サークルに所属。当初は行政領域で起業し、地方自治体向けの施策の研究・立案などを行う。2014年に起業、2019年にプレティア ・テクノロジーズ株式会社と改称。地域活性化を目指したVR(仮想現実)による観光事業などを模索する中で、AR(拡張現実)の可能性に気づき、現在のARプラットフォーム&エンターテインメント事業へ至る。
目次
- ARは「メタバース」のひとつ?ARで実現する、ワクワクする世界とは。
- ARにこだわるのは「現実世界をもっと豊かにしていきたい」という原体験から。
- ARは、インターネット上で生じる格差をなくす技術。
- ビジョンが大きすぎてメンバーにさえ無謀だと言われた。それでも信じきったからこそ、本当に意味あるプロダクトを作れている。
ARは「メタバース」のひとつ?ARで実現する、ワクワクする世界とは。
ー改めて、ARとは何かを教えてもらえますか?
意外と直球で聞かれることが少ないやつですね(笑)。現実世界に3Dコンテンツを呼び出す技術、そのコンテンツの総称がARと呼ばれます。同じ場面で語られることが多い”VR”とは、ヘッドセットなどを利用して「人間が立体空間の中に行く必要がある」という点で異なります。
ARというと、3Dコンテンツを見るその体験=”アウトプット”がARとして捉えられがちなのですが、それはあくまで要素の半分で、空間や物体の形状を認識する”インプット”が要素のもう半分です。
たとえばARで試着する際には、試着をさせる前に「人の体を認識する」という技術が必要になるのですが、没入感が高くより意味あるARを実現するためには、その認識の精度を高める必要があります。この技術を開発することの難易度が高いと言われています。Pretiaでは、コンピュータービジョン技術の研究開発を担うR&Dチームが存在し、ARのインプット技術の精度を高める研究を日々行っています。
ートレンドワードである「メタバース」とはどう区別されるのでしょうか?
「メタバース」という単語そのものについては、ニール・スティーブンソンによる1992年の小説『Snow Crash』という小説が「メタバース」というワードの初出といわれています。メガネ型デバイスで3DCGの世界を体験するようなこと、つまりVRのことをメタバースと言っていたようですね。そう考えるとどうぶつの森やフォートナイトはちょっとメタバースとは違う、という意見もあったりします。
アメリカのベンチャーキャピタリストであるマシュー・ボールという方がメタバースの要件を7つ定義しています。
この定義上ではARも「メタバース」にカウントはできそうですよね。
この定義とさらにもうひとつの要素として「架空の存在になることができ、アバターとして現実の自分とは独立した存在として活動ができる」が挙げられたりもします。特にVRにおける「メタバース」としては重要な要素と言われています。この要素を含めるとARは、今の時点ではメタバースには入らなかったりしますね。
たとえばアニメ「攻殻機動隊」のなかに登場する「笑い男」のような視覚をハックするような世界が実現すれば、8つめの要素を含めてもARが「メタバース」としてカウントされそうですが、もっと未来になるだろうなと思います。
ーなるほど…!ARは実際にはどんなことに応用できるのでしょうか?
たとえば、僕の周りでも地図を読むのが好きじゃないという人は多くいます。地図は2Dで表現がされていて、実は示されている方向が自分に対してどちらにあたるのかを判断するのって難しく感じる方もいると思うんです。そんなとき、空間の中で3Dコンテンツを配置することで、スマートフォンをかざしただけで自分の行くべき方向をナビゲーションしてくれる。そんな風にも応用ができますね。
また、たとえば車や機械が故障してしまったとき、スマートフォンをかざすと修理すべき箇所をARで指示してもらえる、ということもできます。電話で現状を伝えながら手探りで修理するよりも、実際にスマートフォンで状況を共有しながらAR技術を使い指示し、解決するほうが解決に近づくと思いませんか?
加えて、街そのものをAR技術を使ってコンテンツ化してお客さんに楽しんでもらう、といったようなエンターテイメントとしての活用もできます。こちらはよりイメージが簡単にできるかと思います。
ARを活用していくことで、現実世界で生きることがより簡単になり、その場所で過ごすことがより楽しくなるという点に意義があると感じています。
ー聞いているだけでワクワクしますね。
そうですよね!世界に「人間拡張」という分野があって、この分野では人間ができることを増やしていく、つまり人間の知覚や行動を効率化する側面が大きかった。一方で、そもそも人間ができないことをしていく、人間の身体的な限界を超えていくツールを提供するというのがARの分野です。技術的にも、できることの広がりにもかなり未来を感じますよね。
ARにこだわるのは「現実世界をもっと豊かにしていきたい」という原体験から。
ーPretiaが「メタバース」の文脈でトレンドにもなっているVR…ではなく、ARにこだわる理由はどこにあるのでしょうか。
はい、ひとつは自身の原体験から来ています。僕は兵庫県出身で、地元はとっても大好きなのですが、コンテンツと呼べるものがあまり存在しなかったんです。実際に東京の大学に進学してみて、有名な音楽家もいれば美術展もあればスポーツイベントもある、就活だって楽にできる、海外との接点も大きく存在する。東京は楽しめることが多いし、ネットワークが充実しているなと思いました。
兵庫にいたときは、「インターネットのおかげで誰もが情報にアクセスできるようになったんだ」と思っていたんですが、それはまったくの嘘で(笑)。情報やネットワークは、物理的な制約のなかでしか流通していないんだと知ったんですよね。これがイケてないなと思ったんです。現実世界に情報を呼び出せる技術があると知って、誰もが役立つものにアクセスができ、おもしろいものを目的に地域に来てくれるような世界を実現できるといいなと考えるようになりました。「現実世界をまずは豊かにしていきたい」というのが自身の体験から強く感じているところです。
ーそうだったんですね!ARという事業領域を担うなかで、今はどんなワクワクする未来を見ていますか?
今取り組めているものでいうと、ARをつかったエンタメ・ゲーム領域はシンプルにワクワクします。特定の都市や施設にARを活用して人を呼び、楽しい時間を過ごしてもらうということがやれているのは嬉しいですね。実際にARで提供するコンテンツが、ユーザーにとってはその場所で過ごす価値をより高め、都市や施設にとっては楽しい体験の対価としてお金を落としてもらえる、というのはWin-Winの関係ですよね。
加えて先程もお伝えしたとおり、ARは社会的なイシューを解決する力も持っていると思います。たとえば製造業や建築現場で業者の人が何かの施工をする際に、パーツを見比べながら施工するのを平面上、2Dで行うと割とミスが起こったりするんですね。それがARでディレクションできるようになれば、施工する人の負担も費用的な負担もどちらも軽減されます。
最終的に目指している世界観としては、”AR"と認識しなくても使われているというものです。今のスマートフォンくらいありふれたもの、そして日常的に使われる言葉になっていくと信じています。
ー素晴らしい世界観であると共感すると同時に、技術的にかなり難しいのではと想像します。
間違いなくそうです。この世界の実現には、さきほどお伝えした”インプット”にあたる空間認識技術の発展が必須になってきます。技術的な論点が多く存在するなかで、具体的なユースケースを積み上げたうえで使う技術が共通化され、社会的にもARがおしなべて役に立つようになるという世界を実現していく必要があります。そのために、国内でも唯一研究チームを抱え、アルゴリズム開発を行っているPretiaは社会的に意義のあるチャレンジができているのではないかなと思います。
ARは、インターネット上で生じる格差をなくす技術。
ー改めて、Pretia社としてはARを利用してどんな未来を実現したいのでしょうか。
ユーザーに対しては、自身の体験からも「面白いものや役に立つものへのアクセスが、どこにいても誰に対してもできること」ですね。なかでも目下は「面白い」ものをつくるというところを掘っています。
現代にあたってはオンラインで一緒につながるというソリューションは増えてきたと思うんですよね。たとえばどうぶつの森やモンスターハンター、フォートナイトを一緒にやる、とか。一方で、リアルに人とあってすることって、実は多くないような気がするんです。一緒に飲みに行くか、ディズニーランドに行くか、くらい。
そもそも人は人と話すことや心身を動かすことで健康を保つことができますが、それを支えるコンテンツはそこまで多くなく、やりたくないことやできないことへの代替品が少ないと考えます。それをARで実現できるといいなと考えています。
もうひとつの「役に立つ」ものという文脈では、ARは格差をなくす技術とも言えるだろうと考えています。たとえば、少し難解だけど検索すればなんとかなるような問題って、検索の能力やその検索を読み解く能力によって解決できる・できないが別れてしまうと思うんです。
その点で現実世界に3Dで書き込みをできるというのはかなり大きくて、課題解決においてインターネット上で生じる格差をなくすのがARの技術であると言えると思っています。
ーPretiaの事業の柱ともなる、ARクラウドについて教えてもらえますか?
ARクラウド”Pretia”は、クリエイターたちが素晴らしいARを簡単に作れるようになるプラットフォームとなることを目指しています。プラットフォームを作るにあたってはいろんな思想がありますが、個人的な想いとして、クリエイターが生み出したものに対価を支払うことができるといいなと考えています。あらゆる人がコンテンツを生み出し、提供し、その対価として報酬がもらえる世界。クリエイターがいきいきできる世界です。現在はクローズドβ版として、事前に登録があった方を対象に提供を始めています。
※ARクラウド”Pretia”を使ってみたい方はこちらからご登録ください。
ーどうして”Pretia”を立ち上げることになったのでしょうか?
さきほどお伝えしたとおり自分がいる場所によって役に立つものや面白いものへの格差があり、それを解決するのがARなのではないかという気づきが一番最初にありました。
2017年末くらいからARを作り始めたのですが、そのときにApple社が「ARキット」というARコンテンツを簡単につくれるようにツールをリリースし、少しだけ注目度が上がったタイミングがあったんですね。ARコンテンツに興味があるひとが増えるだろうというヨミと、一方でこのポテンシャルに対して優れた造り手がいなかったことから、ここに取り組む意義があるだろうと考えるようになりました。
このときにPretiaには、研究機関出身のメンバーが多かったんです。このチームでAR事業を行おうとすると、「そもそものARアルゴリズムを作ること」がPretiaの闘い方であり、今やることであると思いました。当時は「空間に永続的にコンテンツを紐づける」、「ARコンテンツを複数の人で共有すること」など、人々がARに期待することでできていないことがあまりに多くて、ここに取り組もうと思ったんですね。
ビジョンが大きすぎてメンバーにさえ無謀だと言われた。それでも信じきったからこそ、本当に意味あるプロダクトを作れている。
ーやりたいことと、いたメンバーのスキルセットが合致するという運命だったんですね…!
今思うとそうですね。当時は、何を作ればいいのかのイメージがつきづらかったとよく言われました。要件定義が本当に難しくて、ビジョンこそ大きく掲げていたものの、「作りたいもの」と「作れるもの」のギャップが大きく存在してしまったという時期もありました。
なかなかちょうど良い要件が埋まらず、実際に開発が進んでいるのか進んでいないのかわからないような時期も存在して。投資家たちからも「無謀だ」と言われ続けたんですよね。社内のメンバーでさえ「そんなものは作れない」と言って去っていったメンバーもいます。そのうえで信じ切って作る、というのは想像を超えるほどに大変でした。
ーたしかに、話を聞いているだけでもめちゃめちゃ難しそう。
最終的には、専門性を持ったメンバーがアイデアを持ち寄ってくれました。その過程で、専門分野の中でも開発するものの棲み分けが自然となされて、今、「ARクラウド」というアイデアが実現できつつあります。専門性をもったメンバーが多くても、ひとつの専門性のレンズからではすべてがみえない革命的なモノって存在するのだな、と感じましたね。専門性を持ち寄ってビジョンを実現するというのは今でもPretiaに残る社内文化でもあります。
作るものや要件が明確な方が作り手はやりやすいこともある一方で、ビジョンの実現性があいまいな、当時の僕のふわっとしたコンセプトを信じてくれたメンバーには今でも感謝しています。
ーARクラウドを立ち上げて、ワクワクしていることについて教えて下さい。
プロダクトリリース後に、向こう5年くらいのプロダクトロードマップを作ったんです。それを描いているときに、みんなが積極的に意見を出してくれたんですね。
さきほども伝えたとおりですが、ARクラウドはプロフェッショナルたちがみんなで知見を持ち寄って、みんなで作ったという過程があります。プロダクトを作る、未来のビジョンをみんなで作るというプロセスがめちゃめちゃ面白くて。
ここまでお話してきた空間的な格差をなくすことや、Pretiaのビジョンである「共に達成する喜びを届ける」ということの達成はもちろんですが、みんなと話して、具体的にアイデアをブレークダウンしていって、それをユーザーに意義ある形で届ける道筋が見えていくことが心の底からわくわくします。
みんなで知見を持ち寄れば、「まだこういうことができるな」と眼の前が開けていく体験を何度も感じられて、その連続した楽しみがまたプロダクトを開発していく動機づけになる。この熱量の連鎖が、絶対にすごいプロダクトを作ることができると思わせてくれます。改めてPretiaは、会社そのものも、プロダクトも、今のメンバーがつくってきたのだとはっきりと思います。
ーありがとうございました!
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