不動産業界で異彩を放っている会社がある。他にはないデザインの物件にこだわり、「50人のうち1人に刺されば良い」と話す代表取締役の古川。その一見とがった事業を行う会社の中身は何よりも仲間への感謝にあふれた会社だった。
感謝を作り出したい
大学卒業後、不動産会社の営業を経て個人の不動産投資家としてキャリアを積んでいた古川。しかし、不動産投資家は孤独であるがゆえに誰からも「ありがとう」と言われないことから、感謝を作り出す仕事がしたいと思うようになる。この想いから、不動産投資家の仲間を集めて誕生したのがプランシーだった。
その後は古川自身で面談を繰り返し、仲間になれる投資家を探した。お金だけを求めた投資家とは仲間になれない。スキルや優秀さも見つつ、マインドを重要視して仲間になれる投資家を募った。
「一番は仲間になれるかなので、素直さみたいなところは大事にしています。それは今の採用基準でもそうですね。」
デザインへのこだわり
今でこそデザイナーズ物件にこだわるプランシーだが、最初からデザインに特化していた訳ではないという。きっかけは、過去の自分と同じような人々へ届けたいという想いだった。当時20代でサラリーマンとして働くも、なかなか結果が出なかった古川。自分を変えるために当時住んでいた月5千円の社宅から月15万円の家に引っ越した。
「お笑い芸人みたいなもんで、仕事で結果出さないと家賃払えない、家賃払えないだけじゃなくて、そこから出る自分ってかっこ悪いじゃないですか。そんな自分になりたくない、この部屋に見合った自分になりたいっていって自分を追い込んだ経緯があって。
それによって背水の陣になり、自分の人生が変わっていきました。そういった20代の自分をペルソナにして、そういった人たちに届くような物件を作りたいなっていうのが、デザインに振り切ったきっかけですね」。
そんな古川のこだわりは、常に変わること。「成功体験をなぞって成功体験だけをやるっていうのにはなりたくない。他の企業がやってることと一緒のことをやっても意味が無い。多少成功体験をトレースすることもありますけど、常にみんなスクラッチで考えると思っているし、みんなの声も通りやすい職場になっているんじゃないかな。
あとは、感情を動かせる物件かどうかが大事。これは一貫しているものです。
10人のうち5人に刺さる物件はやめようと言っています。10人のうち1人でも多いかもしれない。50人に1人かも。そのくらいとがったことをやるっていうのは共通認識です」。
仲間への感謝
元々は個人主義で、あまり人のことに興味がなかったという古川。プランシーの仲間と一緒に働いていくうちに、仲間の大切さを改めて感じたという。「みんなに感謝されたりとか、みんなの未来を描くことがめちゃくちゃ楽しくなっています。個人主義だった僕をみんなが変えてくれたので、みんなへ感謝することとか感謝を作ることが楽しい。結局感謝を作った先にクライアントからの対価も来るし、きれいごとのようにみえてそこが一番大切なんじゃないかな」。
会社には、「”気持ち”良い人が多い」という。「他者を思いやった上で自分の未来を想い描ける人たちです」。
以前仲間に「前職では同僚と何かするとか考えたことなかった。今は違う。今はその人たちが気になるし、一緒にチームとして何か成し遂げたい」と言われたことが、古川は何よりも嬉しかった。
「僕はそういう人たちと仕事がしたいし、人のためにって思える人とじゃないと仕事できないかなと思っている。社会にインパクトを与えるっていうのも誰とやるかが大切だと思っていて。この仲間たちとだからやりたい。そう思える人たちと一緒にやっていきたいですね」。
と、仲間に対しては人一倍熱い想いを持っている。そのような素質は面接ではわからないことも多いだろうが、どのような点を重要視しているのだろうか。
「見ているところは二つで、一つは素直さ。ともう一つは当事者意識。これがオーナーシップに繋がる。ベンチャーって当事者意識が大事じゃないですか」。
「あとは、僕の好みもあるんだけど、そんな未完成な場所だったら俺が私が変えてやるよ!くらいの気概がある方が好き。若いときの根拠のない自信ってすごい大事だと思ってます。
あと、ディテールのところですけど、僕らはデザインに関わる仕事をやっているので、デザインが好きとかそういう子はきっと楽しみながらやれるんじゃないかなとは思いますね」。
そんな仲間と作り上げるプランシーの未来図はどうなっているのだろうか。
「僕らは熱中して感謝の渦を大きくしたいので、人数の多い組織を作りたいとは思っていないです。今20人チームなんですけど、そんなに器量も無いので一クラス分くらいで十分。ただ熱中で感謝の渦を作り出したいです」。仲間との絆でも質を重視するまさに少数精製型なのだろう。
学生は伸びしろしかない
とはいえ、なぜ即戦力である中途採用ではなく、スキルの無い学生を受け入れようとするのか。理由は2つだ。
「1つはスキルセットはもう見ないことにしているから。他の学生とかも見ているけど、1年あれば変われるじゃないですか。
どっちかというと仲間としてなれるか。その人のことが好きだったら僕らも必死で応援するし、仲間として手伝ってあげるし。相手も素直さがあれば答える力がありますよね。
2つめは、明らかに若い方がポテンシャルが強いからです。若い人たちが熱中して熱狂するともう伸びしろしかないから。たった一年とかで変われる。その人たちと一緒にやりたいしその伸びしろに僕らも影響を受けるのでそこに大いなる可能性を感じています。僕たちよりよっぽどITネイティブだし若い視点ってすごい大事だし。僕らも成長を止めてられないなと思いますね。」
もちろん不動産建設を目指している学生にはもってこいの職場である。プランシーは開発の全てをグループで担っているため、不動産関係の力はつく。
おまけに人数が少ないので距離が近い。さらには起業志望の学生も大歓迎だという。
「こんなのどうですかっていう提案はどんどんウェルカムです。僕らの本業はベンチャーの割には上手く回っているんです。なぜなら僕の成功体験をそのまま事業にしているので、底堅い。だから、本当に面白そうだったら社内ベンチャーとして立ち上げられるかもしれません。気持ちの良い子が「このフィールドを使って若い内に経営とかやっちゃう!?でも自分のお金ではきつい、出資してよ!!」くらいの気概で来てくれるのは大好きなので一緒にやりたいですね」。
信頼できる仲間と成長できる場を
古川の起業への初期衝動はいわば承認欲求だった。「社会に承認されるために、お金の量とかプロダクトとかで社会に賞賛されたいといった原始的な欲求みたいなものが強かったんですよね」。
最近の学生においても、そういった傾向は小さくはないはずだ。プログラミングが好きだから起業したいという明確な想いのある者もいれば、古川と同じような理由で志した者もいる。それでも、「主体性がなくても、漠然と起業したい。でもよくわからん。でもなんかすごい楽しい。ってなってくれたら。熱中できる熱狂を感じられる学生が来て、変わる瞬間を作り出せたら嬉しい。」と挑戦したい学生を支える姿勢だ。
同時に、最近の学生が持つ価値観をこう分析する。
「今の人たちって、誰といるかってすごい大事だと思うんですよ。起業する理由にしても、自分の好きな人たちといつまでもビジネスやって楽しく生きたい。そういう価値観多いですよね。」
確かにそのような価値観を持つ学生は多い。一方で、居心地が良いところにいると成長できないから、居心地の悪いところに飛び込まなくては、という風潮もあることに古川はこう考える。「「好きな人と一緒に成長の機会を作る」で良いですよね。確かに熱い湯に飛び込めばその分成長するのかもしれないけど、それよりも信頼できる仲間とただ成長できる場を作ろうよって言うのが僕の考え。挑戦はきっと不安も含めて居心地が悪いじゃないですか。でも大事な人たちと挑戦していればそれでいいと思います。」。
「みんなが他の道に旅立つのも応援するけど、旅だっても仲間でいたいし、誰と一緒に何をやるか、誰といるかはとても大切にしていきたい。そういう仲間を見つけたいっていう人たちとはきっと僕は一緒にやれるんじゃないかなと」。
プランシーは、挑戦する「未来の仲間」にどこまでもエールを送る。