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顧客体験の改善が事業を成長させる。一瞬の体験を改善し続けるチームの戦いの記録 [Peatixのカスタマーエクスペリエンスとは:イベントレポート後編]

2019年12月10日、Peatixのカスタマーエクスペリエンスの戦略や事例を紹介するイベント「世界27ヶ国400万ユーザーに支持されるサービスのカスタマーエクスペリエンスとは」ーPeatixマネジメントが語る、成長を支えた取り組みとこれからの展望ーを開催しました。今までほとんどお話しする機会のなかった、Peatixの顧客体験の考え方について、たっぷり語る会となりました。

後編では、実際の改善の事例の紹介と、Q&Aでお話ししたCXの改善と事業の成長の関係や、PeatixのUX戦略についてレポートします。

<前編はこちら:世界27ヶ国、400万人に使われるサービスの顧客体験の考え方>

イベント会場でのチケット処理「チェックイン」の終わりなき改善

藤田:カスタマーエクスペリエンスの挑戦は「終わりなき戦い」です。今日はその例として、イベント会場でのチケット処理の「チェックイン」機能を例にあげながら、Peatixの改善の様子をお話ししたいと思います。

夕日でQRコードが読めない!読み取り端末をなくす必要性に気づいたライブの現場

原田:これがPDFからアプリに移行した初期のQRコードチケットでのチェックインです。チェックインはスムーズで、当時は画期的なものでした。

ところがある日突然、これじゃダメだと気づいたんです。とあるライブ現場でチェックインをした時のことです。操作をしていたら、西日が差し始めてQRコードが読み込めなくなってしまって。5〜6人でやっているのに、なぜか僕だけ読み込めない。あれは神からの啓示だったんだと思います。どう考えても、このやり方ではこの先チェックインがうまく行かないイベントが出てくると思いました。やはり「現場が大事」ですね。

最初はQRコードを読み取るカメラを改善しようとしていたのですが、そもそもこの読み取りカメラが必要なことが問題だと気づいたんです。機材不要で、とにかくスマホだけで入場できるものを考えようと。

カラフルに光るチケットで入場!話題になったクールな機能ColorSyncをやめたワケ

藤田:それで生み出されたのが、ColorSyncという機能です。TechCrunchでも取り上げられてかなりバズりました。

受付開始時になると、主催者の受付処理画面と、お客さんのスマホチケット画面がいろいろな色で点滅します。毎回異なるパターンで光るので模倣できません。受付画面とお客さんのスマホの点滅の仕方が一致したらOKという要領で、目視で入場ができるというものでした。

とても画期的でカッコよかったのですが、ColorSyncも見直すことになりました。結局受付側で確認用の端末を用意しなくてはいけないからです。そうではなくて、何も用意しなくても受付できるものを作らなくてはと。

スワイプする?タップする?数秒の操作を研究してはや2年

浦壁:そして2017年にできたのが「スワイプチェックイン」。チケット画面を指でスワイプして処理するものです。ところが、ちょっと指で触ると処理されてしまうので、テスト運用で参加者が誤って処理する事例が多発しました。そこで2本指でのスワイプにしたら、今度はすごくスワイプしづらくなってしまって……。また見直しを行い、画面に表示されるボタンをタップする「タップチェックイン」となりました。

タップチェックインにしてからも、最初は参加者の誤操作がなくならず、参加者ではなく受付係員が操作するボタンであることを強調するデザインや文言に変更したり、チェックイン処理を可能にする時間帯を制限したり、試行錯誤を経て今の形になっています。


これでゴールが見えたような感じになってますけど、またしばらくすると新たな落とし穴が見つかるかもしれない。そういう意味で、改善は「終わりなき戦い」です。

ストレスフリーなサービスへ

浦壁:Peatixの会社全体のミッションステートメントは「出会いと体験を広げる」です。CXEPチームは、その出会いと体験を広げる際に、お客様にはストレスフリーでいて頂きたい。Peatixを使った時に、不具合がないことはもちろん、分かりにくさや迷いを出来るだけ減らしたい。問い合せる必要のない、ストレスを生み出さないサービスを提供することがすごく大事だと思ってます。

そのためには、デザインや設計の段階で、お客様目線を持つ我々CXEPチームの人間やコミュニティマネージャーも意見を出してそれを反映させていく。チームを超えた検討体制の作り方は、さらに追求していきたいところです。

岩井:問い合わせを早く解決することも大切だけど、問い合わせ自体をなくすことが大事。それに加えて、CXEPチーム自体もストレスを抱えず業務をして欲しいと思います。日本は「お客様は神様」という風潮があって、もちろんそれは間違いないけれど、全ての要望を聞いていたら、メニューだらけの複雑怪奇なサービスになってしまう。

多数の要望の最大公約数をとり、お客様と我々の間には対等でフェアな関係を作り上げていきたい。だからこそサービスそのものもストレスフリーにするし、我々の職場もストレスフリーにしたいと思っています。

Q&A

お客様の声をどのように社内で共有し、問題を特定して改善していますか?

浦壁:PeatixではGitHubというプロジェクト管理ツールを使っていて、誰もがそこにお客様の声を投稿できます。類似の問題があれば、元の投稿にどんどん声を追加していく。そうすることで、その問題の重みも測れます。

岩井:重要度も緊急度もまちまちで、開発難易度も違うので、集まった投稿を整理し、優先順位をつけて対処していきます。全体を一歩引いて見て、個々の問題に対して少しズラした機能改善を1つすると、複数の問題を一度に解決できることも結構あるんです。なのですべてのリクエストに目を通して、この辺りを直すと全部に好影響がありそうだというポイントを発見して開発をプランしています。

CXの改善とビジネスの成長にはどういう相関がありますか?

原田:Peatixは広告費をほぼかけてきていません。9年間、ただひたすら顧客体験を良くすることに集中して、口コミで広がってきたという確信があります。カスタマーエクスペリエンスこそ一番大事で、最大のマーケティングだと考えています。

岩井:悪い評判というのは、そこから最大25人に伝播するという怖いデータがあって、たった一つの悪い評判から、25人の人に「Peatixは使わない」と判断されるリスクがあるんです。逆にいい体験をすれば、どんどん口コミが広がるので、顧客体験が口コミを増幅するエンジンとして重要な役割を担っていると思います。

数としては少数でも重要なVOCをピックアップするにはどうしていますか?

岩井:基本的にはリクエストの声が大きいほど優先度が上がりやすいですが、人がポロっと言ったことも気にしています。社内の誰かがふと言ったことや、誰かにツイートされたことについて、よくよくデータを見てみると実は影響範囲が大きそうというケースがたまにある。ただ、直感も大事だけど、確認のためにもデータに頼るのは大事だとは思います。

ぶっちゃけ売上とCPOの改善どっちが重要ですか?

原田:品質を上げれば売上も上がっていくと考えています。顧客体験さえ良ければ売上という結果もついてくるという考え方ですね。

「引く」ことを提案した時に反対意見が大きいときはどうしてますか?

原田:これは今でも苦労するし、夜眠れない要因ですね。最後は僕の決断で強引にやらなきゃいけない場面もあります。例えばPeatixのアカウントがなくてもチケットを買えるゲスト登録を無くしたとき。この時も現場の激しい反対にあいました。話し合いはしますが、最後はトップダウンでやらざるを得ないですかね。

目の前の仕事から一旦目を離し、2〜3年先の世界を想像して必要だと思うことは、経営陣が時として強引な形になっても実行する。PDFチケットとゲスト登録を続けていたら、この会社はたぶん今ないと思います。

CXの他に、UXの部署や役割の方はいますか?どのような業務を行っていますか?

岩井:お客様の声から問題の原因定義をするのはCXEPチームで、そこから先は、UX(ユーザーエクスペリエンス)チームにバトンタッチします。UXチームでは、デザイナーがシステムやデザインをどう変更すれば問題解決できるかを考えます。ただ、UXチームと他のチームの距離はとても近く、お互いに積極的に意見を交わしてデザインを考えています。

PeatixのUXの特徴は、グローバル基準で考えられているところです。日本のお客様だけを意識するといろいろロジックが増え、たくさんの文章で免責をする傾向にある。しかし我々は一つのプラットフォームで世界中のお客様をサポートするために、できるだけ文字数を少なくすることにこだわっています。

UX設計はどのような戦略で行っていますか。

岩井: できるだけシンプルに。究極、自分の母ちゃんがPeatixでイベントページを作って公開できるというところを目指しています。

そうするとどうしても引き算が必要。最大公約数の機能を全面に出し、誰でも使えるようにする。そうすれば問い合わせも減るし、「これだったらあの人でも使えるかな」と口コミも起きやすい。少しでも「自分にはできないかも」と思われてしまうとユーザーは増えていかない。できるだけシンプルに誰にでも使いやすく、そのためには引き算も積極的にやる、それが我々の戦略です。

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