株式会社State of Mindに入る前
【ファッションデザイナーにあこがれて】
縫製の仕事を10年ほど営んで参りました。
ファッションデザイナーにあこがれて、大学在学中から服飾専門学校の通信教育を受けながら、自宅近隣の洋裁教室に通っていました。
大学卒業後はいったんは広告会社に入社しましたが、やはりファッションデザインへの思いを捨てきれず、あらためて服飾専門学校に入り直しました。
【縫製アトリエ設立】
卒業後、縫製のアトリエを事業承継する機会に恵まれ、洋服のお直しやアパレルの展示会サンプル、舞台衣装などの縫製を請け負う個人事業主になりました。それと同時に、仲間とファッションブランドを立ち上げて、自社工房を持つブランドとして展示会に出展し、販売先の開拓に注力しました。
【10年がすぎて】
しかし、製品はまったく売れず、結果、夢だったファッションブランドは解体。 一方、縫製の仕事は順調に受注でき、工房がフル稼働したものの生産性を上げていけず、会社勤めをしながらなんとか工房を維持してきました。
10年がすぎ、志をともにした仲間にも、家族にも逃げられて、学生のころに抱いていたファッションへのあこがれは枯れ果てました。ただ、ファッション業界、繊維業界、縫製業界というものへの強い憎しみだけが残る、みじめな有様でした。
「どうして縫製の仕事はこんなにも儲からないのか」
あの美しいファッションの世界では、1着の服の価格の中で、中間業者がいくつもブローカーのように関わってマージンを抜かれて、結果として生産者に工賃が残らない構造になっています。
だったらその構造を変えてやろう。 中間業者を排除して、縫製職人を最終販売者に、またはエンドユーザーに直接アレンジできれば、もっと工賃をもらえるんじゃないか。
ネットの世界ではクラウドソーシングとかシェアリングエコノミーやらで、なんだか盛り上がってる。同じようなことを縫製でもできるんじゃないのか。ITなんかロクに知らないけど、そんなの関係ねぇんだ。 なんとかこの業界にイッパツくれてやる!
これが【nutte】を立ち上げる経緯でした。
現在
【nutte】では数百人の縫製職人にダイレクトに、縫製の仕事をたった1点から依頼できます。
アパレルメーカーでもネットショップでも、もちろん個人の方でも。 洋服はもちろん、ダンスの衣装やスポーツウェア、靴やバッグ、雑貨でも小物でも、糸で縫うものであればなんでも1点からつくれます。
立ち上げてようやく1年。 テレビをはじめ、各種メディアにとりあげていただける機会もあり、注目が集まりつつあります。
生地屋さんやボタンなどの資材屋さんからも提携を持ちかけられています。
大手の百貨店との提携もきまり、古い体制からビクとも動かなかった繊維業界を、ほんのすこしだけ、1ミリくらいは動かせた感触があります。 クリティカルなイッパツには程遠いですが、それでもカスリ傷くらいはつけられたのかもしれません。
ようやく1ミリ程度ですが、日本の古い産業構造を大きく変えていけそうな、ファッションというものの生産の概念を変えていけるようなサービスに成長しそうな、そんな手応えを感じています。
今後どういうことをしていきたいか
【nutte】はターゲットを持たない、何でも縫える巨大な「縫製インフラ」に成長しようとしています。
今後はターゲット・用途ごとに最適化された入り口をつくる必要があります。 生産物がすべて同じく「縫製インフラ」という出口からできあがってくるにしても、入り口がファッションなのか、コスプレなのか、舞台衣装なのかによって、必要な情報や依頼方法を最適化しなければなりません。
また、生地や付属などの資材提供や、デザインを蓄積する機能、販路も実装して、衣・食・住の「衣」の世界すべてを獲っていきたいと思っています。
いまはまだ、獲りたい世界の最下層にある「縫製」機能を拡張している段階ですが、「素材」「デザイン」「販路」という「角」をそれぞれ獲り切ったとき、アパレルの産業構造全体がオセロみたいにベロっと裏返る、こういうことを実現していきます。