2020年、大っ嫌い。マサです。
株式会社ヌーラボと橋本正徳(個人)は多様性の導入に取り組んでいて、取材いただいた記事などで多く触れていただいています。例えば、資金調達のニュースのたびに、ブロガーのイケダマサル氏からはヌーラボの多様性について触れていただいています。
ヌーラボは社内の開発者のみならず、ユーザコミュニティのダイバーシティを追求することにも注力していて、社内でも多数の外国人が勤務しているが(事実、橋本氏のアシスタントもカナダ人である)、その一環として、今回オランダのアムステルダムにも拠点を新設することを明らかにした。
創業13年目にして初の外部資金注入、ヌーラボがEast Venturesから1億円をシード調達——NYや東南アジアに加え、オランダにも拠点を開設へ
ヌーラボという会社のことは随分前から聞いていたが、橋本さんに会って話をしたときに、実際のところ、どんな会社なの? という話になった。多くの外国人が働いていて、いろんな人の価値観がある中で、それらをうまく共存させている。(中略)
LGBTQ とか、宗教とか、マイノリティや多様性についても取り組んでいて、それはパフォーマンスでもなく、着々と一介のスタートアップが頑張っているところに惚れたという感じ。その結果として、いいプロダクトを作り出せているのも確かだ。(家入氏)
「福岡のヌーラボから世界のヌーラボへ」——事業拡大や新製品開発に向け、NOW、XTech Ventures、新生企業投資から約5億円を調達
経済性や効率性を追求すると一方で多様性を排除することになり、そのスタートアップのスケールの可能性に限界を作ってしまうことになる。ヌーラボは国内以外に、台湾・ニューヨーク・アムステルダムに拠点を持ち、シンガポールにはコミュニティスペースを設置。また、橋本氏のアシスタントもカナダ人であるなど、グローバル化を地で行っている。社員総会も全て英語で実施しており、ムスリム(イスラム教徒)の社員からラマダン(断食月)明けの宴に、橋本氏が招待されるなど和気藹々の関係なのだそう。
こうして生まれたヌーラボの社風の多様性は、プロダクトのグローバル対応にも少なからず良い影響を及ぼしている。
「福岡のヌーラボから世界のヌーラボへ」——事業拡大や新製品開発に向け、NOW、XTech Ventures、新生企業投資から約5億円を調達
なぜここまで「多様性」に取り組むのか?それは、株式会社ヌーラボも橋本正徳個人も多様性がない、もしくはインターナルな組織・グローバルな組織として多様性が足りていないところにあると思います。もし、足りているのであれば取り組むこともないですし。
本稿は、ヌーラボの有志にて2020年のアドベントカレンダーをやることになり、その1発目の記事を「ぜひ、書かせて欲しい」と懇願し、映えある1番バッターを務めさせていただいて書いた記事です。
グローバルへの進出を考えたら多様性が大事なことが見えてきた
ヌーラボは2009年のCacoo(ビジュアルコラボレーションツール)のリリース以降、グローバル市場への進出を意識し始めました。その後、Cacooは日本以外のユーザーも増えて、2012年にはシンガポール社を設立し、ヌーラボはグローバル進出を本格的に始めました。僕自身もこのことによって世界への船出を現実的に感じだしました。そしてさらに、エンジニア以外の職種の人も増え、外国人の採用も行い、国外の子会社には自分たちと同じ製品を育てる国籍も宗教も人種も違う仲間ができ、ヌーラボを取り巻く環境は大きく大きく変わっていきました。
それまでドメスティックな環境で日本企業にソフトウェアの納品を行なう仕事(受託請負の開発)をしていた僕にとって、自社サービスでグローバルに進出するということは大きなパラダイムシフトでした。仕事は人間性の成長も促す側面があります。おそらく僕の人間性もこの辺を境に大きく大きく変化していったと思います。自身で気付くのは以下のような点です。
とにかく、自分の仕事のフィールドとして世界をみだしてからというものの価値観が大きく変わり、おそらくですが、人格も変わったように感じます。
僕は、グローバル進出を目指す前は、僕なりの1つの正解を持っていて、みんなも僕と同じ正解を持っているものだと思っていました。みんな思っていることはほぼほぼ一緒だし、考えも当然一緒だし、価値観もおおよそ揃っている。みんな同一的なもの。
と、そう思っていました。
当時の僕がちゃんと周りを認識する力を持っていたら、実は自分を取り巻く環境は多種多様な人がいる環境で、正解は決して1つではないということに気づけていたのですが、当時は「多種多様」をみることができるメガネをしていなかったのです。
世界をみだして「世界にはいろんな人がいる」という実感を持ち、そのいろんな人に自社サービスを使ってもらうために色々と配慮をするようになり、振り返って自分の周りを見てみて、やっと「すでに僕の周りも多種多様な人ばかりじゃないか」と気付くに至るのです。
グローバルへの進出を考えたら遠くにある多様性を知ることができ、それが知れたことによって近くにある多様性にも気づき、今までそれを蔑ろにしていた自分を発見し、社会としても個人としても大事なことが見えてきました。
多様性はすでにあるものであり『多様性の導入』というのは、すでにある多様性を理解して現状のアンフェアさを正していく営みのことだということに気づきました。
多種多様な人がいることは大変
その『すでにある多様性を理解して現状のアンフェアさを正していく営み』っていうのはなかなか大変で、僕(もしくは貴方)が「当たり前だろ」「一般的だろ」と思っていることは、実は『現状のアンフェアさ』の上に成り立っていることが多く、そのアンフェアさを正すなかでハレーションが起こることも多々あるように感じます。
実は、年末に行なうアドベントカレンダーもヌーラボにとってはとても大変なことなのです。「アドベント」というのは「キリストの降臨」を意味していて、「アドベントカレンダー」というのはその降臨の日であるクリスマスまでの期間に日数を数えるために使用されるカレンダーです。もっというと、キリスト教の中でもカトリックと正教会とで違っているようで、この辺は僕もまだまだ勉強足らずですが、色々と配慮すべき点があるようです。
2009年にCacooをリリースしてからというもの、ヌーラボとしても「メリークリスマス!」というのはパブリックに言わないようにして「ハッピー、ウインターシーズン!」と言うように配慮していました。クリスマス関係の背景には宗教があり配慮が必要だと考えており、2020年のアドベントカレンダーも実行にあたっても議論されました。当然と言えば当然のことだと思います。結果、すでに日本のWebやIT業界の独自の文化になっていて、本来の「アドベントカレンダー」とは意味合いが変わっているものという位置付けでアドベントカレンダーをやることにしました。それでも、できれば「カウントダウンブログ」のように言い方が変わればいいなと思っています。
「え?そんなことまで議論になっちゃうの?大変だー」って言われそうなことですが、これは是非、やっておいた方がいい議論なのです。また、現在、社内ではヌーラボのコミュニケーションでは、包括的な言葉(inclusive language)を使うようにしていこうとしています。例えば、Webサイトやソフトウェア、チャットサポート、ソースコードなどに差別的な用語などを使用しないように、包括的ではない言葉(差別につながるような言葉)のリストを作成して会社のコミュニケーションからそれらを無くしていく活動もしています。
このような活動には、多くの議論があり個々の見解や意見や感情などが巻きつきやすいものなので、知識などを身につけて言葉の良し悪しをわかっていたとしても、断定的なものの言い方などをせぬように気をつけなければなりません。
ヌーラボのダイバーシティー研修の資料の最後に、良いスライドがあるので紹介しておきます。
とにかく、多種多様な人がいて、多種多様なことを尊重していかなければなりません。
ダイバーシティに対応することはワクワクが止まらない
ダイバーシティへの取り組みは先に書いた「言葉」だけではなく、そのほか大変なことがたくさんあります。大変さ故に「ダイバーシティを考慮しない方が進みがはやい」「多様性、面倒臭い」という意見もとても理解できます。ただ、『すでにある多様性を理解して現状のアンフェアさを正していく営み』である以上、避けては通れない道だと思います。そのような営みをちゃんと継続的に推進できれば・・・、もしかしたら永遠にアンフェアさを正すことができないけどその姿勢があれば・・・、創造的な組織に必要不可欠と言われている「心理的安全性」も担保できると思っています。
僕は、社会の歪さが原因で生まれている「多様性の足りなさ」「現状のアンフェアさ」のギャップを埋めていくことにビジネスとしての可能性を非常に感じますし、それ以上に社会的意義や価値も感じており、ワクワクが止まりません。こんなに大変なことなのに、多様性を受けいれていく仕組みを作ったりしていくことが、コラボレーションツールを提供している我々が辿り着きたい本質的な価値のような気もしています。
今後も継続して、(『多様性を考慮出来ない』という考えや態度以外の)たくさんの多様性を受け入れることができるよう、間違いを繰り返しながら頑張っていこうと思います。言いたいことがいっぱいありすぎてまとめきれなかった感がありますが、今回の僕のブログはこれにて終わり。
さあ、2020年のヌーラボのアドベントカレンダー、今日から毎日公開されます。読んでください、楽しんでください、共有してください!
よろしくお願いしまーす!