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「クリエイティブで社会を変えるには」高木新平×佐々木俊尚トークイベント書き起こし

社会に訴えかける強い企画はどのような発想で生まれ、どうやって実行されていくのか? クリエイティブの力で社会課題の解決に取り組む高木新平の思考を、「LIFE MAKERS」のトークイベントで繰り広げられた佐々木俊尚氏との対談を通して、明らかにしていきます。

佐々木俊尚(インタビュアー)
作家・ジャーナリスト/LIFE MAKERS主宰
1961年兵庫県生まれ。毎日新聞社で記者として、オウム真理教事件やペルー日本大使公邸占拠事件など数々の大事件の取材を行う。脳腫瘍の療養後は月刊アスキー編集部を経て、フリージャーナリストとして活躍。ITから政治・経済・社会・文化・食まで、幅広いジャンルで、綿密な取材と独自の視点で切り取られた著書は常にベストセラーとなっている。Twitterのフォロワーが79万人強と、日本でもトップクラスのフォロワーを有する。また、早稲田大学政経学部時代はロッククライミングに熱中していたこともあり、アウトドアフィールドでも活動している。総務省の情報通信白書編集委員。21世紀の教養を身につける議論型コミュニティ「LIFE MAKERS」主宰。

<著書>
『キュレーションの時代』(ちくま新書)、『レイヤー化する世界』(NHK出版新書)、『仕事をするのにオフィスはいらないノマドワーキングのすすめ』(光文社新書)、『家めしこそ、最高のごちそうである。』(マガジンハウス)、『自分でつくるセーフティネット』(大和書房)、『そして、暮らしは共同体になる』(アノニマ・スタジオ)など。

高木新平(ゲスト)
1987年、富山生まれ。早稲田大学卒業後、2010年、(株)博報堂に入社。SNSなどを活用したクリエイティブ開発に携わった後、独立。「よるヒルズ」や「リバ邸」などコンセプト型シェアハウスを各地に立ち上げ、ムーヴメントを牽引する。またネット選挙運動解禁を実現した「ONE VOICE CAMPAIGN」などを主導。そのライフスタイルが、NHKなど様々なメディアに取り上げられる。2014年、多様なクリエイターを集め、NEWPEACE Inc.を創業、代表に就任。社会課題からストーリーを組み立てることで、新しい形のブランディングを実践している。

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佐々木俊尚(以下、佐々木):世の中に「社会変革しましょう」とか「ものを売りましょう」とか、プロジェクトはいっぱいあるじゃない。これらは、どうやって企画が立てられて実行されているのか、雲を掴むように思っている人が多いと思うんだけど。発想の根源や、実際に実現していくのはどういうプロセスでどうやっているのかを、今日はぜひ聞きたいです。

高木新平(以下、高木):言語化できるか心配ですけど(笑)。僕はコンセプトをつくるのが得意で。仕事としても、経営者や政治家など社会を変えてやるっていう志を持った人の活動を、新しいコンセプトに変換して社会に打ち出していくことをやっています。

「こういうものだよね」と世の中が諦めていたり、固定化されてしまった認識を壊したい。

佐々木:限界集落や少子高齢化、待機児童や医療費の増大など、いろんな課題が今の日本にはたくさんあって。それぞれについて、現状の問題の可視化はされているんだけど、どう解決するかってなると、近視眼的になる。例えば待機児童の問題の場合、子供が多いから保育園をたくさん作っても10年後には少子化でいらなくなるから意味ないとか、保育園を作っても近隣のおじいさんが怒りだすとか、些末な話に目がいって、部分最適化の話しかできなくなるでしょう。そこをひっくり返して、遠くにある物事と問題を結びつける、みたいなことをやっているような気がするけど、どう?

高木:そうですね。大きい青写真を描きなおすというか、事業のポテンシャルとソーシャルイシューを結びつけることを意識しています。例えば、DeNAの自動運転の自動車事業。電車やバスなどの公共交通機関がなくなってしまった地域に自動運転の自動車が走ることで、そういう町の存在や生き方を肯定できると考えていて。敢えて、自動運転のタクシーを限界集落で走らせるということをやっています。「移動手段のない限界集落」というソーシャルイシューと結びつけることで、自動運転のポテンシャルが広がる。伊勢志摩サミットに、日本の大手自動車メーカーと並んでDeNAが出席することにも繋がりました。

ただ、僕自身は、具体的に問題解決がしたいわけじゃなくて…

佐々木:そうじゃないんだ。

高木:はい。それなら自分で事業をやっていると思うんです。解決ではなくて可能性をメッセージングしたいんです。「これってこういうものだよね」って世の中が諦めていたり、固定化されてしまった認識を壊したい。価値観をアップデートさせるのが目的です。

かつては広告枠の中で良いコピーを書けば、社会にメッセージを訴えられる時代だったと思いますが、今は広告に対する人々の期待値も、メディア環境も大きく変わっている。むしろ、メッセージから逆算した具体的なアクションをすることで、SNSやメディアなどの社会が反応し、結果的にブランドもつくることができると思っています。

佐々木:たしかに。80年代頃はコピー一発で世の中を変えるって確かにあったよね。でも、今は広告にその力がなくなってきているのは、凄く実感するね。

高木:そうですよね。フィクションで作られた世界に、都合のいい言葉が並んでも「綺麗事じゃん」みたいな。世の中から支持されるためには、具体的なアクションが伴ってないと信用を創造できないと思っていて。

佐々木:広告ではなくてプロジェクトってこと?

高木:ぼくらの会社では“VISIONING”と言っています。ビジョンを掲げて、それをアクションに変えること。例えば、シェアリングエコノミーに注力するGaiaXというIT企業とは、規制緩和のためのシェアリングエコノミー協会の立ち上げや、オフィスそのものをシェアビル化して永田町に「GRiD」という新しいスペースづくりをしました。このように、具体的なアクションまで一緒に考えて実行しています。

佐々木:企業が持っている技術や商品などのアセットを、今の社会が持っている課題や社会が向かうべき方向性に、コンテキストを合わせる、みたいなこと?

高木:そうです。

佐々木:企業側としては、それって広告にならないじゃんとか思わないの?

高木:最大瞬間風速をつくる「刈り取りプロモーション」とは違います。未来に向けて企業の文脈をつくる活動なので、全然異なる時間軸で、もたらす価値も別物です。明日の売り上げとかではなく、この業界自体を刷新してやろうという気概ある企業の社長とばかり一緒に仕事していますね。

宣伝部とは仕事しない。プロダクトや制度そのものが最高のPRになる。

佐々木:マスメディアの時代ってキャンペーンで物が売れたじゃないですか。10年以上前から大量の広告宣伝費を投下してTV CMや雑誌に広告を出すようなマスキャンペーンでは物は売れなくなってきた。SNSの時代に嘘はつけないから、ろくでもないものがマスキャンペーンで売れるようにはならない。売れるためには「いいもの」を作るしかない。いいものは売れるし、ダメなものは売れないというごく当たり前のところに回帰してきたのが、ここ10年、15年じゃないかと。

高木:そう思います。例えば会社のPRをするんだったら、社内制度が一番相性がいいと思っていて。

佐々木:社内制度?

高木:それ自体が実態を持っているじゃないですか。会社の採用ページの見た目をかっこよくして、広報のチェックが入りまくったインタビューをたくさん掲載していてもリアリティがないけど、制度としてだったらリアルなので。

佐々木:なるほど。

高木:透明な時代だから、プロダクトや制度そのものが最高のPRになる。だから最近ではNEWPEACEでも、クライアントと一緒にプロダクトを開発したり、新たな社会活動をはじめたりすることが多いです。クライアントというよりもパートナーですね。逆に、いわゆる広告の仕事は全然しなくなりました。

佐々木:でもそれって、究極の広告なんじゃない?

高木:そうですね。

佐々木:いいものしか売れないようになってきたから、いいものってどうやって作ればいいんだろうってメーカーは悩む。だから、常識に囚われない発想のいいものを私たちが一緒に作りましょう、あるいは既存のものを再定義して、消費のあり方を変えていくと。

高木:そうです、だから、僕たちは宣伝部とはあまり仕事しないんです。事業責任者や経営者がクライアントになることが多くて。出来上がったものをどう見せるか、広げるかではないので。

佐々木:企業って予算がいろいろ分かれているでしょう。宣伝部はマスマーケティングの予算、各事業部は儲けるための予算、それと、儲かるものではなくてボランティア的にお金を出しているCSR( Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任)。今まではチャネルごとに予算が分かれていた。でも話を聞いているとそこが一体化していっているね。

高木:一体化していってますし、それを実現している企業はブランドとして強いと思います。

佐々木:既存のマーケットが本当に我々のマーケットなのか/自分たちの商品やサービスが本当に今の形でいいのか/別の価値を与えられるんじゃないか、ということを問い直す、全面的なリストラクチャリングが必要になってくるよね。

高木:はい。そのためには何かしら思考の軸が必要だと思っていて、僕らの場合、それが「ソーシャルイシュー」なんです。社会全体がなんとなく課題感を持っている物事を見つけ出して、そこから逆算して、その企業のアセットの最大化を考える。その接続を、デザインを通じて物語に変換していくのが僕らの仕事だと思っています。

佐々木:CSRなどは儲からないものの典型みたいに思われていた。けれど、世の中の流れとして社会貢献的なものに価値を見出す人が増えてきて、むしろ新しいビジネスチャンスになってきている。

高木:それが、今求められるブランディングのかたちだと思っています。

“社会貢献”と“ビジネス”といった相反するものを同時成立させるのが、クリエイティブの力。

佐々木:でもどうして、そういう考えになったんだろう。高木くんの世代をみていると、社会的な価値を大事にしている気がするんだよね。

高木:経済第一主義に対する反省を浴びてきた世代なんですよね。物心がつく時にバブルが崩壊して、大学入るときにはライブドアショック、就職期にリーマンショックで、社会人一年目で3.11が起きて…

佐々木:混乱とともに生まれて混乱とともに育ち、みたいな。

高木:ゆとり教育を受けた、ゆとり世代ともさとり世代とも言われますが。アメリカでは、ミレニアム世代です。

佐々木:なるほどね。

高木:「だれかや社会に任せていても仕方がない。20世紀的な悪習慣や負債は、自分たちでよく変えていこう。でも綺麗事言っているだけじゃダメで、経済的な成長も求めながら、世界にとって価値あることをつくっていこう」そんなバランス感覚がある気がします。

佐々木:90年代にインターネットビジネスを始めたような世代から見ると、世の中のためになることと、金儲けになることが一致するっていうのがよく分かりにくいんじゃないの?なんでそんなのが儲かるんだって。

高木:どうですかね。時代背景的も違って、今は社会的価値があるものにユーザーはお金を払うようになってきていると思います。例えば、NY発で一気に広がった「Shake Shack」というハンバーガーショップは、売上の一部が寄付されるメニューがあり、支持を集めました。日本にはまだ少ないですが、世界ではたしかに新しい事例が生まれています。

佐々木:社会貢献をきちんとしているというバックグラウンドがないと、その企業を信用できないというのは明らかに起きてきているよね。かつては、そこはやっていなくてもごまかせたけど、いわゆるブラック企業騒動とかで「ブラック企業だ」と言われた途端に売上が急に落ちるとか、そういうことが起きる。裏側も含めて全て可視化される時代になってきている。だからマーケティングや広告、ブランディングで外側だけうまく作っても、内面が変わらないと結局バレる、みたいな時代に変わりつつある。

高木:そうですね。僕らの世代は、すべての情報が可視化されているから表面だけではごまかせないことが肌感覚としてわかっています。

佐々木:企業も、作るだけ作って、どう売るかは宣伝部が勝手に考えてくれ、ということではなくて。製品やサービスそのものがどう社会貢献になっていて、価値があって、消費者とどう繋がっていくのか、というところまで考えて商品開発しないともはや成立しなくなっているんだね。

高木:僕はそういう、“社会貢献”と“ビジネス”のような相反するものを同時成立させるものがクリエイティブの役割だと思っています。クリエイティブは下流ではなく、上流工程に入るべき仕事。今までは企業がコミュニケーションを取りたい場合、マスメディアという選択肢しかなかったため、クリエイティブはCMやポスターなど出口のフォーマットに最適化されていました。しかし、今は世界中の人がメディアで、広告枠の情報よりも日々のやりとりやリアルな評判のほうが、流通量が上がっている。だから最終的なブランドやコミュニケーションを想像して、プロダクトや活動自体をつくる必要がある。ただ、そういうことを経営者とがっつりやっているクリエイターはまだまだ多くない。そういう事例を僕らが作っていくことで、クリエイターの役割を高めていきたいと思っています。

佐々木:そこの結びつきがすごく難しいのはある。今は大企業も社会貢献や課題解決みたいなものが重要だということは重々分かっているんだけど、自分の商品とどう結びつくのかよく分からない。そこで、NEWPEACEは企業が関係ないと思っていたものとも関係を作ってしまう。しかもそれが、無理矢理やるのではなく、外側だけの話でもなくて、本質的なところで結びつける。これからの大きなビジネスになっていくような気がしますね。

高木:そうですね。僕は、今まで繋がらなかったものが繋がる、みたいなのが好きなんですよ。

外部からのアントレプレナーシップで、企業アセットを最大化し、新しいブランドを立ち上げていく。

高木:今、NEWPEACEは事業をつくったり投資したりと、“VISIONING”をより主体的な立場で進めることが増えています。

佐々木:単なる受託制作では難しいと。

高木:そうですね。元々ぼくらは制作納品ではなくて、フィーをいただいて一緒に長期視点で考えて創っていくスタンスでやっているんですが、最近ではさらに面白いことをやるためには自分たちもリスク取らないとダメだろうと。

佐々木:面白いね。資本提携とか合弁とかは一般的で、何でシナジーを生むかは、大体パターンが決まっている。技術を持ち寄るとか、製品と販売経路とか。でもNEWPEACEと企業が提携しますって、一体何を持ち寄っているんだろう?

高木:新しいコンセプトです。そして、それを体験に変えていくデザインと。

佐々木:なるほど。どうしてNEWPEACE単体でやらないの?

高木:NEWPEACEの事業もありますが、単体ではできないことも多い。立ち上げてもオペレーションを回すのは大変です。それなら企業の豊かなアセットを生かした座組でやっていくほうがいい。

佐々木:なるほどね。日本企業の問題点は、いろいろ言われているけど、要素技術はたくさんあって、オペレーションできる人材もたくさんいて、だから精巧なものを製造して販路に流すという仕組みはたくさんあるのに、肝心の商品力を誰も持っていなくて開発できないっていうのもある。AとBとCという技術があって、その技術を使ってA‘という商品さえできればいくらでも売れるのに、A’の商品をつくることができない。
そこで、高木新平が外部からアントレプレナーシップを提供し、企業が既存のアセットを提供し、それらが合体して新しい事業が立ち上がっていく、という感じだね。それはめちゃくちゃアリじゃないですか。

高木:そうなんです。だから僕の仕事は、既存事業に囚われない斜め上の提案をすることです。

佐々木:面白いね。会場のみなさんからも質問聞いてみようか。

Q、プレゼン資料などはどういう風に準備されているんですか?

高木:資料には頼っていません。めっちゃ普通というかシンプルですよ。ないこともあります。パワポとかって色々ごちゃごちゃに書きがちだけど、それは、大体は納得のための説明情報だったりする。でも未来の話をして「やりたい」と思わせられれば、勝ちなわけで。資料よりも、いかに未来を語るかが大事だと思うんです。落語家のように(笑)。

いま、VICTASという卓球メーカーのリブランディングをやっているんですが、それが決まる時は、8社での競合でした。僕の社内に卓球に興味がある人がいなくて、仕方なく自分で資料つくって、PC一台片手に持って1人でコンペに行きました。社長プレゼンだったこともあり他の会社はスーツで10人ぐらい並んでいて、資料もデータからビジュアルまで作り込まれたものだったと思います。僕の番は最後でしたが、
「こいつで終わりか。もうこれまでの提案者で決まりだな」って感じで、明らかにみなさんやる気なくて(笑)。

でも、僕は「2020年に卓球は最も日本国民を熱狂させるスポーツになる」というプレゼンをしました。
そして、その時このブランドはどういう存在になるべきで、社会にどういうメッセージングをすることで、市場ごと変えていけるかという話をしました。細かい施策などの話はゼロです。それでも満場一致で僕に決まったそうで、5分後に「すべて任せます」と連絡をもらいました。こんな早い通知初めてでした(笑)。

佐々木:素晴らしい。新平くんは文章がすごく上手だよね。うまい文章を書く人ってプレゼンが上手。ある種の物語性、例えば「卓球は2020年最も熱狂させるスポーツになる」みたいな、まさにブログのタイトルのような訴求力って大事だよね。

Q、プレゼンやトークセッションで話すことは紙で用意しているんですか?頭の中にあるものを引き出しているんでしょうか。

高木:なんとなくテーマとかは考えておきますけど、基本はアドリブですね。決めても面白くなくなるじゃないですか。

佐々木:喋りってその場のアドリブで話すのが一番面白いんですよ。

高木:フル回転で、やばいどう返そうかな…ってやるのが楽しい。その緊張感を楽しむ。普段あまり緊張しないっていうのもあるんですけど。

佐々木:だから新平はテレビ向きじゃないんだよね(笑)。予定調和じゃない。

高木:そうそう。ぶっ壊したくなっちゃうんですよ。

用意したプレゼンした時に、向こうが「あーそういう感じね」みたいになったら、それを使うのはやめちゃいますね。あ、これつまんないなって。人の想像を超えたことにドキドキする。先ほど話したDeNAの自動運転の提案の際には、最初に役員の方に「自動運転車を限界集落で走らせましょう」って提案して。「どういうこと?ビジネス領域狭めない?マニアックなサービス始めたの?って言われない?」って突っ込まれて。

佐々木:一見、市場がないところに目をつけたから。

高木:社会的な課題と絡めるのがポイントだから、逆に日本全体として注目して、法律も変えられるし、市場も広げますよって説明しました。それが実際に、PRとして大きく機能したんです。実はその方に、普通のキャンペーンを提案したことがあったんですが、「斜め上を提案しない高木新平に価値はない」とバッサリ切られました。誰もそんなストレートボール求めてないって。それから、「斜め上を提案する」は僕のモットーになっていますね。ある意味自分も裏切り続けたいんですよ。だから多分2年後は全く別の仕事をやっていると思いますね(笑)

佐々木:それで成り立っているんだからすごいよね。

高木:周りからしたら甚だ迷惑でしょうけどね。新しい経験によってインスパイアされて目覚めていくので、職種とか領域とかのくくりで考えていないんですよね。寺山修司って肩書きが10個ぐらいあって、何をやっているのか何をやりたかったのかよくわかんない、みたいな。そういうのが自然なかたちだと思うんですよね。

佐々木:定義されないっていうのはあるかもね。

高木:そう。定義されなくなっていく。会社も定義されたくないんですよ。定義された瞬間からその定義に合わせて最適化していってしまう気がして。それで、業務ジャンルなどでは言わずに「VISIONING COMPANY」って言っています。

佐々木:何かよくわからないと(笑)。

高木:それでいいんです(笑)。昔から肩書きもそうです。六本木で「よるヒルズ」というシェアハウスをやっていた時も、社会的にはニートだったんで肩書きがないわけです。だからって企画者とか名乗ってもつまらない。なので「よるヒルズ」編集長って名乗っていました。意味がわからないけど、家がメディアで、それを編集してますと。そうすると、「編集長 高木様」みたいな連絡がくるようになるんです。
そのときに、世の中に合わせにいくよりも、自分で定義決めて名乗ったほうが面白いなと。

佐々木:家がメディアになるから編集長だっていうのは、奇をてらうように見えて実は一番本質的だったりする。「奇をてらうだけ」と、「奇をてらうように見えて実は本質で誰も気にしてなかったことにグサッと刺さる」というのは違うんだよね。

高木:そこは狙ってます。そういう逆説によって、価値観をひっくり返すのが好きなんで。

佐々木:ひっくり返すと本質が見えるっていうのが大事だよね。神話に囚われているから。プレゼンのためにPPT20枚用意してそれを見せる、というのも神話で。神話を解体していったその先に、最後に残るのが本質だと。その本質が大事なんだよね。

高木:あと、さっきの話に戻りますが、資料を作る時間って本当に無駄だと思っていて。考える時間は必要だと思うんですけど、資料を作る時間はほぼいらない。資料を作らないのは、リアクション力に賭けているっていうのもあると思うんですけど、人は相談したその場で答えが出ると感動するじゃないですか。モノによりますが、一週間持ち帰って答えを出されても、熱量や切実度はその時のものだから。経営者の考えていることは数時間ごとに変わっちゃうし。その場で返す。

佐々木:生が一番大事だよね。

Q、会社で斜め上の人間になりきれないんですけど、どうしたらいいですか?会社を辞めるか、斜め上キャラを維持するか…斜め上をうまく表現できません。

高木:なるほど。もうちょっと情報もらっていいですか?

(質問者)昔から人と違う見方をしているんですけど、普通に会社に入っちゃったんで…

高木:なんの会社ですか?

(質問者)コンビニの店長をやっています。

高木:店長ってどれくらい裁量あるんですか?

(質問者)ほぼないです。会社の中で、「あ、歯車だ」と思って。

佐々木:でも自分の中で斜め上の発想があると思っている、と。

(質問者)会社として、当たり前のマーケティングをやりすぎて。今更普通の広告とか出し始めて、つまんないなって。

高木:現場からするとね。

佐々木:それをどうやって実現していくか。

(質問者)SNSで会社の宣伝をしたら怒られたんですよ。

高木:あー、そういうものですよね。でも、それを怒られないように治外法権化する技術が足りないんじゃないですか。

佐々木:新平くんって一見すると、よくわかんないチャラチャラしたお兄ちゃんじゃない。金髪だし。でも大企業のお偉いさんたちって、そういうの嫌いでしょ。そこってどうやって折り合いつけるの?

高木:そもそも、それで無理な人は折り合わなくても仕方がないですよね。フィルタリングみたいなものです。金髪はめっちゃおいしいですよ。治外法権化されるから。昔選挙で家入さんを手伝った時に、僕が「政治をよくしたいんだ」みたいなことを渋谷の街頭で熱く語ったら、湘南乃風の若旦那さんが「こんな金髪の兄ちゃんが政治のこと語るなんて感動した!」って言ってくれて。それって、おいしいですよね(笑)

最初は怒られるんで、勇気が必要ですよ。でもギリギリを攻めていって、少しずつ治外法権の領域を増やしていく。ちゃんと成果をあげているんだったら文句言われない可能性は高いです。エキセントリックにやって結果出なかったらダサいだけだから、結果を出すのは必須ですが。

佐々木:それ同じことを箭内道彦さんも言ってた。元々真面目な広告マンだったんだけど、このままでは地味な広告マンで終わってしまうと思って、意を決して、金髪にして長髪にして。そうすると周りからはキチガイ扱いされるんだけど、そこで自分を追い込むことによって、結果を出さないといけないっていう。あと金髪になることによって、別格というか人外魔境扱いになって、それによる仕事のしやすさみたいなのがあったって。

高木:そう思いますね。まず、そういうことをしたらいいんじゃないですか。何色のコンビニですか?

(質問者)青です。

高木:じゃあ、髪の毛を青にしたらいいじゃないですか。誰よりも会社に染まっちゃいました、みたいな(笑)そしたらSNSで書かれるかもしれない。「あれ?あそこのコンビニの店長、看板と同じ色になってるけどwガチすぎww」みたいな。で、いきなり青色のものだけを集めたコーナーを作りだす。食べ物とか、グッズとかでも。そしたら、全国のブルーファンが集まって来るかもしれない。そしたら青のコラボ商品を開発し始めたりして。そこまで行ったら、オリジナルですよ。

それをやりきれるかどうか。アホだと思われるけど、世間の目を忘れてやるしかないんですよ。でも、なかなかできないんですよね。今を変えたいのに、何かを守って。これはもう勇気の問題だから僕がどうこう言ったところで変わらないんだけど。でも今は、ボケに回れる人は価値ありますよ。SNSが生まれて、一億総ツッコミ時代。みんな正論・真っ当ばかりだから、ボケの数が足りないんですよ。

佐々木:ツッコみたい人はたくさんいるけど、ボケてもいいよって人はなかなかいないもんね。怖いから。

高木:そうなんですよ。ボケの方がおいしいですよ。だから、ボケになろうって僕はよく言うんです。僕がやっている仕事も、基本的にはボケですよ。社会に対する。

佐々木:もうツッコミでは目立てないよね。

高木:目立たないですね。ツッコミって正論だから、正規ルートの競争に勝っていって、偉くなるしかない。それはミスをしない体力・時間勝負になる。もし下克上を起こしたいなら、全力でボケてみてください。

こちらは佐々木俊尚氏主宰の議論型コミィニティ「LIFE MAKERS」のトークイベントの内容を一部編集したものです。全編はLIFE MAKERSに参加すれば動画でご覧いただけます。ぜひLIFE MAKERSの公式サイトをチェックしてみてください。

21世紀の教養を身につける議論型コミュニティ「LIFE MAKERS」
http://lifemakers.jp

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