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インターネットは僕が自分らしくいられる“居場所”だった——nanaの社長とニコ動の思い出

先日、nana musicの「うにー社長」こと文原のTwitterを眺めていると、こんなツイートが目に入りました。


うにー社長は、大好きなサービス「ニコニコ動画」について語るとき、よく「居場所」という言葉を使います。こっそり遡って検索してみると、今年の初めにも似たようなツイートをしていました。

うにー社長は「『nana』でも同じように居場所をつくりたい」と、日頃からよく口にしています。でも、そもそも社長のいう「居場所」が何なのか、じっくり話を聞いたことってなかったような...。

どうしてそこまで「居場所」にこだわっているのか。うにー社長に直接聞いてみることにしました。

(以前のインタビューでも言っていました)

画面の向こうの誰かとつながれる喜び

ーーニコニコ動画を好きになったきっかけは何だったんですか?

2006年末だったかな。たまたま見ていたブログに、β版としてリリースされたばかりのニコニコ動画の投稿が埋め込まれてたんです。

画面いっぱいにみんなの反応がわーっと流れてくる。リアルタイムで同期されていないってわかっているのに、本当に一緒に見ているかのような一体感があって。「一人だけど、一人じゃない」感覚に一瞬で虜になりました。それから、家に帰ったらとりあえずニコニコ動画を開く毎日が始まりました(笑)

その前からインターネットは好きでしたが、ニコニコ動画のおかげで、グッとのめり込んでいきました。

ーーそうだったんですね。もっと昔からインターネットにどっぷりなのかと思ってました!

一応、14歳のときに家にパソコンがやってきたので、そこそこ早い段階から慣れ親しんではいました。でも、パソコン通信の時代からネットコミュニティにいます、みたいな猛者ではないです。

当時は、インターネットに接続するためにプロバイダーと契約する必要があるって知らなくて(笑)買って最初の1ヶ月間ぐらいはネットにつながらないただの箱でしたね。

ただ、そのパソコンに「さぱりミレニアム」という、「ワールド」と呼ばれる仮想空間のなかでほかのユーザーのアバターと会話できるアバターチャットがプリインストールされてたんです。オフラインでも使えたので、よく遊んでましたね。懐かしいなぁ。

ーーあれ?でもオフラインだとほかのユーザーとチャットできませんよね?

そうなんです(笑)ただ一人で妄想しながら「ワールド」を徘徊するんだけど、これがめちゃくちゃ楽しくて。

ーーなるほど...?

無事にネットがつながってからは、「Yahoo!チャット」や「10代の部屋」、「ポストペット」とか、チャットサービスで遊んでいました。「この箱の向こうに人間がいて会話をしている」という、今なら当たり前のように思えることが、とてもワクワクしました。

そこからは、PCゲーム、とくにオンライン対戦にハマってました。「AoE」や「サドンストライク」、「OFP」、「GNO」とかいくらでも挙げられそう(笑)

「格差」のない世界だから、みんなが参加できた

ーー知らない固有名詞がたくさん出てきたので、一旦話を戻しますね(笑)そこから、「とりあえず毎日開く」くらい「ニコニコ動画」にハマったのは、なぜだったんでしょうか?

大きく2つあると思っていて。1つは当時のニコニコ動画に、「本当に素人が作ったの?」と驚くような動画がどんどん投稿されていたこと。これがとても新鮮だった。

それ以前から、テキストサイトでホームページを制作したり、MIDIで作曲する人はいたけれど、ユーザーがコンテンツを投稿するCGM型のサービスが充実し始めた頃から、一般の人の手に届くツールがさらに充実し始めた印象です。プロと素人の間にあったツールの壁が少しずつなくなっていったというか。

ニコニコ動画の黎明期に生まれたMAD動画とか、今でもクオリティ高いなぁって思うんですよね。最近の動画アプリで制作されているようなコンテンツの雛形も、この時代にできあがっていった気がします。 


ーー確かに未だに繰り返し見ちゃう動画とかありますよね。2つ目の理由は何なんでしょう?

画面越しの世界に「自分も参加していいのだ」と感じられたことです。これは僕だけじゃなくて、当時のニコニコ動画にハマっていた人なら大なり小なり感じていたんじゃないかなぁ。

例えば、僕の好きな作品のひとつが「チルノのパーフェクト算数教室」の「凍死オフ会」でみんなが踊ってる動画です。北海道で200人が集まって、コスプレして、雪のなかで踊る。その姿を見てると実際にその場にいるわけではないのに体が動いちゃう。

ーーめちゃくちゃ寒そうですが、すごく楽しそうですね!

きっと、彼らがプロのダンサーだったら、「すごいなー」って見てるだけになってたと思います。でも、自分と同じ素人の集まりだから、一緒に踊って、参加したくなる。踊りの上手い人もそうじゃない人も参加できる格差の存在しない世界でした。

当時、リアルな日常生活において、あまり自分を表現できなかった僕にとって、それが本当に心地よかったんです。

コンプレックスを解消できる「居場所」があった

ーー「自分を表現できなかった」というのは?

感情や意思を表に出すのが苦手だったんです。クラスメイトにちょっかいをかけられても、笑って済ませるしかできなかったり、そんな自分にムカつくこともありました。

また、今でこそ、オタク趣味は広く受け入れられているけれど、2000年代前半ぐらいまではまだまだネガティブに語られがちでした。ちょうど「mixi」も流行っていたけれど、リアルの友達と日常生活の延長でつながるという印象で、あまりおおっぴらに自分は出せなかった。

ーーそれが、ニコニコ動画だと違ったんですね。

「これが好きだ!」って発信すれば一緒にはっちゃけてくれる仲間がいました。同じ頃にTwitterも始めて、アニメや同人系の仲間が増え、そこでもニコニコ動画の話で盛り上がって。

「上手に人とつながれない」というコンプレックスは、そうやって少しずつ解消していったんだと思います。ニコニコ動画はより自分が自分らしくいられる「居場所」でした。

きっと同じような人、沢山いたんじゃないかなぁ。


ーー今でもそういう「居場所」を求めている人はたくさんいそうですね...!

そう思います。僕は、「居場所」や「コミュニティ」の熱量は「コンプレックスの度合い」と関係すると考えているんです。

なんとなく周りを気にして抑えつけてしまった自分を、匿名性が担保された場所だから思いっきり発散できる。そして、そのパワーがコミュニティの熱量になる。

この原体験があったからこそ、少しシャイな人や、自分に自信が持てない人にも、「表現」を通じて、人とつながれる場をつくりたいんだと思います。

ーーうにー社長が「インターネット」や「居場所」にこだわってきた理由がよくわかりました!ありがとうございました!

インターネットやニコニコ動画の思い出を語り始めると少年のような表情を見せるうにー社長。「この人本当に好きなんだなぁ...」と改めて思いました。

でも、冒頭のツイートでうにー社長がつぶやいていたように、スマホの普及を経て、ニコニコ動画を取り巻く環境は少しずつ厳しくなっていったはず。

その変化のなかで、起業をする前のうにー社長は、何を考えていたのでしょう?また聞いてみなくては...!

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