こんにちは。ナディアでディレクターをしている YOSSY です。
先日、一般社団法人Interactive Communication Experts と公益社団法人日本アドバタイザーズ協会デジタルマーケティング研究機構 共催のU35 Creative & Communication Awardに参加しました。
アワードには以前から関心がありましたが、自分にはまだ早いと思っていました。それでも、このアワードには年齢制限があったことと、また上司が背中を押してくれたこともあり「挑戦するなら今しかない」と思い切って応募しました。
今回は、同じディレクター職のスタッフと2名でペアを組み、提示された事業課題に対して、企画書形式でアイデアを提案しています。
人生初のアワード挑戦は試行錯誤の連続。
その中で、アイデアの生み方と伝え方において、ストーリー構成の重要性を強く実感しました。
本日は、その学びを少し共有できればと思います。
ストーリー構成が発想を支えてくれた
クリエイティブアワードへのエントリーは、人生で初めて。
最初は、アイデア発案のトリガーや展開のプロセスも掴めず、 “どこから何を考え始めればいいのか”すら分かりませんでした。
そこで、類似するクリエイティブアワードの提案書のストーリー構成からヒントを得ました。
実際、どんなストーリー構成を参考にするかによって、アイデアの発想や広がり方が大きく変わることを実感し、ストーリー構成の偉大さに気がつきました。
その中で、いくつか構成のテンプレートを見つけたため、私なりに感じたメリットとデメリットを添えて整理したいと思います。今後アワードや企画立案に挑戦する方の参考になれば嬉しいです。
なお、一般的なビジネス資料と比較して、アワードの企画書では「読ませる・感じさせるストーリー構成」を意識したり、「課題をどう捉え直したか」が評価軸になりやすいものかと思いますので、主にはアワード応募を前提とした構成の参考として見ていただければ幸いです。
3つのストーリー構成の前提
アイデア創出は「現状把握→課題分析→施策提案」という共通フレームに基づいて考えるのがスタンダードだと思います。
この後、紹介する3つの構成もこのフレームをベースとしつつ、いずれも「何を起点にストーリーを組み立てるか」が異なるものとなります。
実際に、起点が変わるだけで、アイデアの発想や広がり方、その先で資料にした際の伝わり方が大きく変わることを実感しました。
“人の気持ち” から発想する、人間中心のストーリー
ステップ:
STEP 1|現状認識:いま、人々はどんな状況にいる?
STEP 2|問題提起:そのせいで、何が思うようにできていない?
STEP 3|インサイト:心の中で、どんな気持ち?
STEP 4|ソリューション:その気持ちに寄り添うと、どんな解決策がある?
事例:
現状認識:家事や仕事で時間に追われている
問題提起:だから思うように、役所手続きが進まない
インサイト:「やることが溜まっていく…」という焦り・イライラ
ソリューション:そんなイライラ感を解消するための⚪︎⚪︎⚪︎を提案
1つ目は、ユーザーの広く一般的なペインポイントを起点として、ソリューションに導く構成となります。
メリットとしては、受け手が自分ごと化しやすく共感が立ち上がるため、ブレストなどのアイディア出しの場面では発想がつぎつぎと広がりやすかったです。
また、プレゼンテーション資料に落とし込んだ際でも、冒頭から共感を素早く獲得でき、聞き手にアイデアへの親密感を高めてもらえる点が強みかと思います。
一方のデメリットとしては、現状認識やインサイトが主観に寄りやすいリスクがあります。
実際に、社内レビューでもレビュワーの方から「その根拠は?」と鋭い質問をいただくことがありました。
対策としては、定量データやインタビュー引用などで、誰にとっても客観的な情報で裏づけをすることが重要だと思います。
その他にも、共感やインサイトから発想された無難案に収束し、ブレークスルーが出にくいという点も課題にありました。
そのような際に効果的だったのが次の「社会やカルチャーの変化」からソリューションを導く構成です。
“社会やカルチャーの変化” を捉え、時代に応答するストーリー
ステップ:
STEP 1|トレンドの把握:世の中には今どんなトレンドがあるだろう?
STEP 2|インサイト:心の中で、どんな気持ち?
STEP 3|現状のギャップ:対象はニーズを満たせているだろうか?
STEP 4|ソリューション:ニーズに応えるためには、どんな解決策がある?
事例:
トレンドの把握:ぬい活(ぬいぐるみを使った推し活)が流行っている
インサイト:自分らしい推し活で自己表現をしたい
現状のギャップ:パーソナライズされた推し体験が提供できていない
ソリューション:自分らしい推し活を実現するための、⚪︎⚪︎⚪︎を提案
2つ目は、世の中のトレンドと間のギャップを起点として、ソリューションに導く構成となります。
メリットとしては、課題の再定義力が高くブレイクスルーを生みやすい点があります。「課題をどう捉え直したか」が評価軸になりやすいクリエイティブアワードと相性が良いと思います。
さらに、アイデア展開として、トレンド力を生かしたUGCやSNSでの波及設計を組み込みやすい利点もあります。
一方のデメリットとしては、トレンド依存による短命化のリスクを感じさせてしまう点です。
対策として、トレンドの背後にある持続的なインサイトを掘り下げ、それが一過性ではなく長期的に向き合うべき課題であることを、リサーチや根拠で説得力高く補強することが重要だと思います。
最後は、そんな切り口もありなんだと感じた面白い構成パターンをご紹介します。
“自分の体験や感情” をもとに、人の心を動かすストーリー
ステップ:
STEP 1|実体験:実際にサービスやプロダクトを体験してみる
STEP 2|感じたこと:どんな気持ちや感想を持った?
STEP 3|ソリューション:その想いをユーザーに届けるためには、どんな手段がある?
事例:
実体験:実際に店舗に行ってみた
感じたこと:不必要に接客されず、店内の居心地がとてもよかった
ソリューション:この居心地の良さを訴求するための、⚪︎⚪︎⚪︎を提案
3つ目は、自己体験で感じた想いを起点として、ソリューションに導く構成となります。
メリットとしては、手探りの初期段階でも体験ベースならインパクトのある仮説に素早く到達しやすい点があります。
また、プレゼンテーション資料に落とし込んだ際でも、一次体験に根ざすため語りの説得力があります。
一方のデメリットとしては、個別状況に依存してしまい、汎用化しにくい弱点があると思います。
対策として、主語を「自分」から「ユーザー」へ切り替える(=自分語りをユーザーストーリーへ翻訳する)ことが重要だと思います。
最後に
以上、3つのストーリー構成をご紹介しました。
初めてのアワードは試行錯誤の連続でした。行き詰まるたびに、発散へ戻り、資料に落とし込んで考えを整えるといった、行き来を繰り返していました。
そんな、試練の日々の中でも、バディのディレクターと二人でアイデアをかたちにする時間は、とても楽しく、学びの濃い期間でした。
また、クライアントのビジネス課題に時間をかけてじっくり向き合えたことは、ディレクターとして「なぜそのクリエイティブなのか」というロジックに裏打ちされた企画提案力を磨く上で、非常に価値のある機会となりました。
この記事が何かのお役に立てれば幸いです。ここまでお読みいただきありがとうございました。