世界トップレベルの東京大学の研究を、ムソー工業の技術が支えています。
“フライホイール型摩擦試験機”
摩擦ゼロといっても過言ではないほどの極めて小さな摩擦力のデータを取るための試験機を
東京大学の加藤教授と共につくりあげました。
尾針「そもそもなぜ、フライホイール型摩擦試験機の制作をムソー工業に依頼されたのですか」
加藤教授「フライホイール型摩擦試験機は、極めて小さな摩擦力を調べるものです。
どのくらい摩擦力が小さいかというと、10のマイナス4乗。
10tのバスを人差し指の指先で押して動かせるほどの低摩擦です。
それを再現できる超高精度の試験機は、他の会社では作れないと思ったからです」
尾針「ありがとうございます。この研究によって、エネルギー効率を飛躍的に良くする可能性があるものでしたね」
加藤教授「そうです。例えば、ガスタービン内で回転するタービンの摩擦が劇的に小さくなります。複数の企業がこの技術を利用した製品の開発に乗り出していますよ」
尾針「教授との出会いは、下町ボブスレーでした。ボブスレーの車体の下にあるランナーと言われる刃を教授が設計して、それを基にして私たちムソー工業が金属から削り出して形にしました」
加藤教授「その時にムソー工業さんの技術力を知ったわけです」
尾針「今回のフライホイール型摩擦試験機では、打ち合わせを何十回も行いましたね。試験機のアイデア描きを見せていただき、そこから私たちが社内で話し合って設計士て、教授からご意見をいただいて、改良して、またご意見をいただいて・・・その繰り返しでした」
加藤教授「東大に来ていただいたり、私がムソー工業さんにおしかけたり。大変だったと思います」
尾針「いえ、たいへんと思ったことはありません。私たちにとって貴重なチャレンジになりますから。教授からご意見をいただくたびに、どうしたらより良くなるかを考えて形にするので、その経験が財産になっています」
加藤教授「回転機械をつくるのは今回が初めて?」
尾針「初めてではありませんが、ここまで精度を求められるものはありませんでした」
加藤教授「寸法精度ですね。平行度、平面度。もっと追い込んでやってくれと頼み続けましたから」
尾針「はい。ムソー工業は金属加工が多いのですが、今回はプラスチックの加工も行いました。平面度を0.01ミリ、さらに0が増えるような精度で加工したのですが、プラスチックは気温で変化しやすい素材なので苦労しました」
加藤教授「たしか、最初の半年で設計を固めて、次の半年は精度を高め続けましたね」
尾針「教授から電話をいただいて“データがとれた”と言われたときに、ほっと胸をなでおろしました」
加藤教授「でもその後すぐに、また精度を高めてほしいとお願いしたけど(笑)」
尾針「はい、そうでした(笑)」
加藤教授「ムソー工業がなければ、この試験機はつくれずに、研究も進まなかったと思っています。他の会社に頼めば試験機はとりあえず完成したかもしれませんが、完成までもっと時間がかかったでしょうし、ここまで精度の高いデータはとれていないでしょう」
尾針「私たちにとっては、東大という世界トップの研究に関われることが、やりがいにつながっています。今後の研究がどうなっていくのか、いっしょに夢を見させていただいています」
加藤教授「じつは“この試験機をもっとこうしたい”というアイデアがあるんです」
尾針「そうなんですね。ムチャぶり大歓迎です。今まで他社が実現不可能なことにチャレンジして解決策を見い出せば、そのノウハウを持っているのは世界で私たちだけになりますから、どんどんチャレンジしたいです」
加藤教授「世界により良いものを、という想いは同じです」
尾針「志は同じ、と僭越ながら言わせていただきます(笑)」
ムソー工業株式会社
皆さんが今見ている「スマートフォン」や「パソコン」、座っている「イス」、通学に使う「乗物」、そして通っている「学校」、毎日眠りにつく「家」も…すべての「もの」は「材料試験」を通して作られています。その材料試験を行っている研究機関向けに試験片の加工や、試験ツールの製作を担うのが当社の主な事業です。 まだ少しイメージが湧かないかもしれないですね。それでは「材料試験」がない世の中を想像してみることにしましょう。「どれだけ錆びやすいか」という試験がなかったら…。錆びて欲しくないキッチン周りのシンクや包丁などの金属製品、船に用いられる部品がサビサビに…。どれだけ力が加わったら壊れてしまうか調べるための「曲げ試験」や「引張試験」をしなければ、イスは座れば壊れ、自動車はシャフトが曲がって走れなくなり、橋や建物も傾いてしまいます。「材料試験」は私たちの安全・安心な暮らしを支える「ものづくりの最初の一歩」なのです。