「“民泊と働く”のリアル」第2話 ~クレームは、究極のフィードバック~
(PREMIER HOST 管理チームリーダー:高宮良太 edit & text : LEMON SOUR, Inc.)
「クレームは、判断の糧だと思っています」
こう語るのは、管理チームのリーダー・高宮さん。
前回登場した楠本さんをはじめ、現場メンバーが対応するトラブルの最終判断を担う立場です。
日々、現場から上がってくるのは、実にさまざまな事象です。
そのすべてに対して、感情だけではなく、事実を積み上げながら判断を下していく。それが高宮さんの仕事です。
判断は、感情と事実の間にある
「ゲストさんがお怒りだからといって、すべてをそのまま受けとるわけではありません」
写真や動画、メッセージの履歴、清掃状況や設備の状態、そして過去の事例……。
客観的な情報を揃え、どこに過失があるのかを見極めるのです。
「宿泊施設として致命的な不備なのか。少し気になる程度なのか。まずはそこを判断します」
さらに言えば、返金額ひとつとっても、単純な話ではありません。
そこには収益とのバランス、ゲストの温度感、オーナーさんへの説明責任が交差します。
「基本はロジカルに考えます。でも、人の感情が絡む仕事なので、最終的には、少しだけ判断に“補正”を入れる必要があります」
ドライになりすぎず、しかし感情に流されすぎない。
そのバランス感覚こそ、リーダーとしての役割です。
標準化したい。でも、できない。
民泊の現場はケースバイケースの連続です。
築40年の戸建てと、新築ワンルーム。
インバウンドの旅行者と、国内のファミリー層。
同じトラブルでも、背景はまったく異なります。
「本当は、すべてをマニュアル化できれば楽なんです。でも、それをやりすぎると事故が起きる可能性もある」
たとえば、クレーム対応を完全に定型化してしまえば、かえって相手の感情を逆撫でしてしまうこともあります。
「マニュアル通りにやったのに、結果的に炎上してしまう。そういうリスクがあるのです」
だからこそ、標準化と裁量の線引きは常に悩みどころ。
「スタッフが考えることをやめてしまったら、この仕事は成り立ちません」
ここは、まだAIでは判断できない領域でもあります。
そこにこそ、民泊管理の難しさと面白さがあるのです。
リーダーが見る景色は、少し違う
管理チームのリーダーは、営業チームや開発チームとも密接に連携しています。物件の立ち上げや清掃会社との調整、運営開始のバトンタッチ。
「社内でのすれ違いの多くはバトンタッチ時に起きます。鍵の受け渡し方法や清掃の引き継ぎなど、どこまでの情報が共有されているか、何が抜け落ちているか。そこに最新の注意を払っています」
リーダーとして、高宮さんは“見えないリスク”を拾い上げます。
「開発チーム(立ち上げ担当)から見れば問題ではないことが、管理側では重大なリスクになることもありますからね」
だからこそ、引き継ぎ内容を総点検し、To Doに落とし込み、チームに振り分けています。
現場の迷いを、上流で減らす。
それが、リーダーの仕事です。
未知のトラブルは、パズルのようなもの
話が進むにつれ、高宮さんの表情が変わっていきます。
「難しい判断がうまくはまったときは、やっぱり気持ちいいですね」
高宮さん自身が好きなパズルや謎解きを例にこう続けてくれました。
「ヒント、つまり揺るぎない証拠を集め、組み立てることで、最適解に辿り着けます。ケースバイケースだからこそ、自分の判断で丸く収まったときの達成感は大きいんです」
クレームは辛いもの。けれど、それはサービスを磨くための掛け替えのないフィードバックでもあります。
「言ってもらえなければ、気付けなかったこともあります。重要だと認識していなかった部分が、実は大きな不満の種だったことも。クレームが教えてくれることは実に多いですね」
フットワークが軽くなった理由
前職は経理。
正確さと効率が求められる仕事でした。
「型にはまってやる仕事だったと思います」
一方、今は未知のトラブルの連続。
「やってみなければわからないことが多い。いつの間にか、とりあえず動くようになっています」
その一端は、高宮さんの趣味である旅行に現れています。
「以前は綿密に計画を立て、タイムスケジュールに沿った旅をすることが当たり前でした。しかし今は、まず出発することに楽しみを覚えます。
そして、“成り行き”の出会い、目にする景色、味わうお料理に心が躍ります。動きながら考えるほうが、結果的にいい答えにたどり着くことが多いんです」
どんな人が向いている?
「ポジティブな人、ですかね」
クレームに真摯に向き合いながらも、沈み込みすぎない。
難しいパズルだと捉えられる人。