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正しい「データ分析」なしに、正しい事業投資はあらず。 プロが貫くデータとの向き合い方 #MOLTS潜入録

※この記事はMOLTSのコーポレートにて、2020年12月21日に投稿した記事の転載となります。(https://moltsinc.co.jp/media/molts-history/8404/

こんにちは!株式会社LIGのマーケター兼ほぼライターのまこりーぬです。

当連載【(まこりーぬの)MOLTS潜入録 】では、とことん成果で語り合う集団「MOLTS」のみなさんにマーケティング領域で成果を出すための秘訣をお聞きしていきます!

第4弾のテーマは「データ分析」

私もマーケティングに携わる人間として普段からGoogleアナリティクスなどのアクセス解析ツールをチェックしているのですが…結局「データ」って、どれくらいこだわって見るべきなんでしょうか?「データドリブンであれ!」と言う人もいれば「データなんて細かく見ても意味ない!」と言う人もいる。みんな勝手過ぎません!?(汗)

…ということで、今回はデータに関わる疑問や不安をデータ分析のプロフェッショナル・西正広さんに「そもそもアクセス解析ってどれほど厳密にやるべきなの?」「Webサイト改善の必勝法は?」などなど、アレコレ聞いてきました!

▼初回の記事はこちら

給与は全公開!?メンバー全員が独立採算で成果を出し続けるデジタルマーケティングエージェンシー「MOLTS」の秘密に迫る #MOLTS潜入録

「散らかったGoogleアナリティクスの掃除」から業務スタート

まこりーぬ:西さん、本日はよろしくお願いいたします!はじめに、MOLTSのデータアナリストとして現在どのようなお仕事をされているのかを教えていただけますか?

西:僕がメインでお手伝いしているのはやはりデータ分析です。その他、データ分析を効率的に進めるためのGoogleアナリティクス設定や、A/Bテストなどを実施してコンバージョン率を高めるWebサイト改善、ツールの使い方をトレーニングするインハウス化支援などもおこなっています。

MOLTSとしては広告運用やコンテンツ制作チームとタッグを組んでお客様を支援することが多いですね。

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※その他、西の実績はこちら

まこりーぬ:Googleアナリティクス設定でデータ分析を効率化するっていうのは、URLにパラメータふって (direct) / (none) を減らすみたいなお話ですか?

西:そうです。よくある身近な例でいうと、Facebook経由でWebサイトへ流入すると「?fbclid=〜」がくっついたユニークなURLが発行されますよね。これがGoogleアナリティクス上でバラバラに計測されていると、正しいデータが取れずに解析に時間がかかってしまうんですよ。それを防ぐため、不要なパラメータがつかないよう設定する…みたいなことも含みます。

まこりーぬ:データをきれいに取得することは、分析にかかる時間の短縮にもつながるんですね。

西:はい。分析に時間がかかってしまっている人はぜひ設定から見直してみてほしいですね。ただ案件の規模によっては半年かかっても終わらないほど設定が複雑になるケースもあります。例えば今僕が関わっているアプリの案件は、複数のシステムと関係者が絡んでいて変数も超膨大なので、そもそもデータ計測に必要な設計という部分ですら現状終わりが見えていません…。

まこりーぬ:なんと難しそうな…!それは西さんのような専門家にお願いせざるを得ないですね(涙)。

正しいデータ計測なしに、正しい投資はあらず

まこりーぬ:私も自社のGoogleアナリティクスをチェックしていますが、なんというか、データが一部正しく計測されていない状況であっても、大きな傾向がつかめればマーケティング施策って打てちゃうこともあるじゃないですか。なぜ西さんはそこまで時間をかけてまで、正しくデータを計測することにこだわるのでしょうか?

西:大前提として僕はデータを生業にしているので適当なデータをお客様に報告するなんて許されない…というのはありますが(笑)、まこりーぬさんのおっしゃるとおり、なんとなくのデータをもとに施策を打つことってもちろんできるとは思うんですよ。ただ、もしそのデータが誤っていた場合、施策の根底が揺らぐわけですよね。

最近実際にあった話なんですが、弊社がコンテンツマーケティングを支援しているお客様で「Googleアナリティクス上、セッションは倍に増えているのにコンバージョンが増えてない」という状況が起きていました。そこで設定を見直したところ、きちんと計測できていなかっただけで本当はコンバージョンもちゃんと増えていた。

…もしずっと計測が誤ったままだったら、施策の効果を見誤ることに直結しますよね。企業によっては数億円かけてマーケティング施策に投資することもあるわけで、計測のミスは命取りになるといっても過言ではありません。よって正しく計測することには価値がある。そう思っています。
まこりーぬ:なるほど。正しいデータ計測は正しい投資先を見極めることにつながるんですね。

西:はい。さらには、正しくデータを計測することで「この施策は全然コンバージョンにつながってないから優先度を下げよう」といった意味のない施策を見つけ出すこともできます。つまりコスト削減にも役立ちますね

まこりーぬ:なるほど、よくわかりました!ちなみに、マーケティング予算が大きいほど誤ったデータ計測が命取りになるのは想像できるのですが…ぶっちゃけた話、小規模の会社はそこまでがんばる必要ないですよね…?そもそものデータ量が少ないわけですし。

西:それが、あんまりそうは思わないんですよ。たしかに月1,000PV以下のWebサイトになると時間をかけなくてよいとは思いますが、規模の小さいサイトだからこそできる分析があると思っています。

たとえばBtoBサイトだと、コンバージョン日時から決め打ちで人物を特定しやすいので、理想的なカスタマージャーニーを描いている人がWebサイト内でどんな行動をとっているのかを細かく見ていくことができるんですよね。なのでセッション数が少ないなら正しいデータ計測や分析をやる意味はない…とは一概には言い切れないかな、と思っています。

まこりーぬ:なるほど…!それはめちゃめちゃ新しい視点でした!ユーザーエクスプローラ機能などを使ってジャーニーを直接見ちゃうってことですね。

…「それならユーザーに直接会いに行けば?」といった意見も出てきそうですが、定量データのプロからみて、定性データってどれくらい重視されているものなんでしょう?

西:定量的な分析をしている人間から言わせると「アンケートやインタビューってみんな適当に回答するから参考にならないじゃん」という話になりがちではあるんですが(笑)、たしかにGoogleアナリティクスのデータだけ見ていてもユーザーについて理解できないことってありますよね。なので結局は定性データも定量データも両方見ましょう、という回答でしかないと思っています。

僕はよく、Webサイト上にアンケートを出し、ユーザーから得られた”生の声”をGoogleアナリティクスで集計してくれる『VoicePocket』というサービスを使っています。「興味があるトピックはなんですか?」「どうしたらもっと使いやすくなると思いますか?」といった定性的なアンケート結果と、Webサイト内の定量的な行動データを紐づけられるので、ユーザーについてより深い示唆が得られますよ。

まこりーぬ:おもしろそうですね!私も使ってみたいです。

西:ぜひぜひ。先日とあるプロ専用の化粧品メーカーのサイトリニューアルを支援したときもこのサービスを活用しました。商品はプロに対して卸しており、一般客はそのプロを通じて購入する形態なので、いわゆるBtoBtoCビジネスなんですが、Googleアナリティクスで計測されている「ユーザー」が、「プロ」なのか「一般客」なのかわからないという課題があったんです。そこで『VoicePocket』を導入すると意外にも一般客からの訪問が多いことがわかりました。またプロがとくに見ているページなども明らかになったんですよね。この結果を踏まえてWebサイト内の動線を見直したところ、コンテンツの中身を何も変えていないにもかかわらず、サイト内回遊率を約2倍に改善することができました。

まこりーぬ:たしかに、会員サイトでもないと「訪問者はどんな職業か」なんてわからないので、ユーザーを理解する方法として非常に参考になります!

Webサイト改善の必勝法は「入口と出口をちゃんとやる」

まこりーぬ:ここからは、いざ分析したデータを活用してコンバージョンや売上を増やすポイントについてお聞きしていこうと思います。西さん、ズバリWebサイト改善について必勝法をぜひ教えてください!

西:やるべきことは大きく2つです。売上につながっている流入元に投資することと、入力フォーム最適化(EFO)。つまり改善対象サイトの入口と出口をちゃんとやろうねってことです。サイト内ページは通る人もいれば通らない人もいて改善効率が悪いので、結構後回しにすることが多いですね。

まこりーぬ:ポイント、非常にシンプルですね!EFOって問い合わせフォームの改善ですよね。具体的にはなにをやったらいいでしょうか…!?

西:ユーザーにフォームを入力・送信してもらうことが目的なので、入力項目を極力減らすとか必須項目をわかりやすくするとか、対象とするWebサイトの最適解に合わせて王道な施策を愚直にやるだけですよ。あとはEFOツールを使いこなすのもポイントかと思います。入力項目に合わせてキーボードが自動で切り替わる機能や、入力内容に不備があると警告を出してくれるバリテーション機能は、ユーザビリティに貢献して結果的にフォーム回答率も上がってくるのでおすすめですね。

まこりーぬ:入力項目を減らすとユーザー情報が取れずに営業が嫌がるケースもあると思うんですが(汗)、やはり西さんも項目数は少なくしようと考えられるのですね。

西:そうですね。営業側への情報パスなどの組織調整がなかなか大変だとは思いますが、フォームの回答率を上げる目的をかかげたWebサイト改善なら、極力入力項目は最低限におさえることを推奨します。個人情報をネット上で顔の見えない相手に共有するって、結構ハードルが高いはずなので。

どうしても項目数が多くなってしまう場合は、ユーザーにとって入力するメリットをぜひ提示してあげてください。見積もり依頼なら「【Web限定クーポン付き】より具体的なお見積もりをお送りします」とか、転職サイトの登録なら「よりマッチ度の高い案件をご案内できます」とかですかね。そうすると安心や納得の材料になります。

まこりーぬ:フォームにはそこまで細かく配慮する価値があるということですね…!

Cookie規制に対する企業の対策は、2つの流派に分かれる?

まこりーぬ:ちなみに個人情報という観点でいうと、Cookie規制が話題になっていますよね。西さんの目線から、ぜひCookie規制の対策についても教えていただけないでしょうか。お恥ずかしい話ですが、結局マーケティング担当者がなにをしなければならないのか、あまりピンときておらず…(涙)。

西:10年ぐらい前に「アクセス解析ツールで検索キーワードがリファラーで拾えなくなって、どのキーワードがコンバージョンにつながっているのかわからなくなった!」…という混乱が起きたんですが、今回のCookie規制もこれに近いと思っています。とある会社だけその状態になったなら大変ですが、どの会社にとっても抗えない世の中の動きなんですよね。だからこそ、ちゃんと先手を打って対策をしていたら、対策してない会社を出し抜ける勝機でもあると考えています。

まこりーぬ:勝機ですか!先手の対策とは、具体的にはどんなアクションでしょうか?

西:対策は2つの流派に分かれると思っています。1つは、テクノロジーの力でどうにかユーザーデータを紐付けよう派です。CDP(Customer Data Platform)などを使ってどうにかユニークIDを取得して、Cookieがバラけていようが同一ユーザーを強引にあぶりだす方法ですね。2020年10月に発表されたGoogleアナリティクス4プロパティもこの考え方に基づいています。

もう1つは、断片的なデータにユーザーの行動観察結果を加えて推測しよう派です。アンケートやインタビューで定性的な声を集めて「ユーザーはこういうふうに動くと推測されるので、Webサイトや店舗はこう設計しましょう」と導く考え方ですね。こちらは僕のようなデータアナリストより、UXデザイナーが得意な領域かと思います。

まこりーぬ:そんな流派が!(笑)自社に合った方法を選択して、必要な定量/定性データを取得できるよう準備すべし、ということですね。承知しました!!!

データ分析の真価は、実行・振り返りによって発揮される

まこりーぬ:ここまでいろいろとお伺いしてきましたが…最後に、プロフェッショナルである西さんから見て、データをビジネスの成果、つまり売上につなげるために最も大切なことはなんでしょうか?

西:めちゃめちゃ当たり前のことなんですが、分析結果から次に必要な施策を導いて実行し続けることですね。なにもやらなきゃ絶対に成果って上がらないじゃないですか。でもわかっているのに、データを眺めているばかりで自分たちで行動に移さない会社さんって結構いるんですよ。

施策を実行したあとの「振り返り」も同様におろそかになりがちです。なにが成果につながっているのか把握できていないと、成果を出し続けることは難しいですよね。がんばってサイトをリニューアルしたものの、その後の改善を怠った結果コンバージョン率は下がっており、さらにはチームの誰もオーナーシップを取らず運営自体が放置されていた…なんてこともよく起こります。

まこりーぬ:その、いわば当たり前のことができていない最大の要因って、西さんはなんだと思われますか?

西:巻き込まなきゃいけない関係者が多すぎてめんどくさい、っていうのが一番大きいでしょうね。Webサイトを1箇所改修するために法務や広報を通して……って、やっぱり億劫じゃないですか。施策を促進したいのであれば、「Webサイトのここを変えてもいいですか?」「OK!」とチャット上で軽やかに意思決定できるようなチームにしていくべきですよね。

あとは、失敗できない・失敗したくない組織文化が根付いている場合も厄介です。A/Bテストって下手したら成果が落ちるので、「だったら今のままでいいじゃん」ってなってしまう会社も多いんですよ。こうなると一向に成果を伸ばすことはできません。官僚的な会社ほどそうですし、3年でジョブローテーションするような会社も「自分が担当者の時は無難にやり過ごしたい」と思う人が一定数います。…そうなってくるともう、人事制度から見直す必要がありますよね。

まこりーぬ:組織の問題が根深いんですね…。自分たちがそういう体制やマインドになっていないか、まずは気づくことが大切かもしれませんね。

西:そうですね。結局データは分析するだけでは意味がありません。そこからコンバージョンを増やす、サービスをよりよく、そして最終的には事業に貢献させるために、データを活用し続けることがなによりも重要です。

まこりーぬ:なるほど、そうした考えで日々プロジェクトに向き合われているといった意味では、西さんは「データ分析のプロフェッショナル」ではなく、「データ分析によってクライアントの事業を成長させるプロフェッショナル」ですね!!!ありとあらゆる質問にも快く回答いただき本当にありがとうございました!

さいごに

「データってどこまでこだわるべき?ぶっちゃけ小規模ならそこまで細かく追わなくてもいいんじゃないの?」…なんて思っていましたが、データはマーケティング施策の投資先を見誤らないための手がかりと捉えると、なんだか一気に気が引き締まりました…!

また、ただデータとにらめっこするのではなく、データを根拠に周囲の人を巻き込み、いかに施策を実行できるか、いかに振り返りをできるかが、マーケターの腕の見せどころだと感じました。

今回の取材を機にもっともっとデータの分析と活用に執着したいと思います!

以上、まこりーぬがお届けしました!

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