国内トップの規模でモビリティビジネスのプラットフォームを展開するMellow。事業の背景には、スペースオーナーやフードトラック事業者、エンドユーザーなど、さまざまなステークホルダーが存在します。Mellowのテック部門では、こうしたステークホルダーをつなぐシステムやアプリを開発し、事業を支えています。エンジニアリングで価値を創出し、事業を加速させるためのビジョンと役割について、テック部門の森岡翔大に聞きました。
知らなかった「フードトラック」の世界。事業や文化を広げていきたいと思った
——森岡さんがMellowに入社するまでの経緯を聞かせてください。
私が岡山大学の3年生だった当時、iPhoneが日本初上陸をしました。iPhoneのアプリは個人でも作ることができると聞いて、もともとものづくりが好きだった私は自分でもアプリを作ってみたんです。それがきっかけで、スタートアップに興味を持つようになりました。
大学時代はほかにも、サークルの先輩に誘われて地元の小規模なIT企業で自動化ツールを開発するアルバイトをしたり、進学した大学院を一時休学してWebアプリの開発をしたりしていました。その後上京し、現在弊社代表の森口拓也が起業したスタートアップに就職したんです。
匿名のチャットアプリを開発するスタートアップでしたが、数年後、株式会社イグニスに買収されます。そのアプリを一定の規模まで成長させることができ次のフェーズに移るか、別のアプリを作るかというタイミングで、当時Mellowの事業に参画していた森口から誘われて移籍しました。
——森口さんからの誘いがMellow入社の決め手になったのでしょうか。
それもひとつです。もうひとつ、Mellowのメンバーから事業の説明を聞いて、単純に「おもしろそうだ」と思いました。
Mellowに誘われるまで、私はフードトラックについて何も知りませんでした。「自分が知らないということは、ほかにも知らない人がたくさんいるのではないか」。そう考えたとき、フードトラックの事業や文化はこれから広がっていくのではないかとイメージできました。
——これからフードトラック事業を広げていく中で、エンジニアとしてどんなことを実現したいと思っていましたか?
Mellowでは私が2016年に関わり始めた頃から、事前決済アプリを開発していました。当時はそもそも事前決済は一般的ではなく、それをフードトラックで使えるようにするという試みがおもしろいと感じていたんです。
ジョインした当初は事業者向けアプリの開発を手伝うところからスタートしましたが、どうやったらフードトラックで事前決済が実現できるのか、夢中になって考えていましたね。
事業に携わる一員として、技術を活かして事業の価値を高める役割を担う
——現在の事業において、テック部門はどのような役割を担っているのでしょうか。
フードトラックのプラットフォーム事業を主体としているMellowですが、今後は鮮魚や生花、ネイルサロン、マッサージといった食品以外の物販やサービスのモビリティも続々登場し、ローカルエリアへの展開など、コンテンツもエリアも拡大していく予定です。その中で、テック部門の役割は多岐にわたります。
その役割とは、事業拡大そのものへの寄与と事業拡大を支えるための基盤作りをすること。いわゆる、「攻め」と「守り」の両方です。
いま、拠点数の増加やエリアの拡大によって、フードトラックのお客さんになっていただける対象が増えてきています。今後はより一層C向けの体験価値の向上や、そのベースとなるフードトラック事業者の魅力の向上が重要となるでしょう。
「攻め」の開発では、事業のステークホルダーごとに、弊社だからこそ提供できる価値は何なのかを考え、その中でもテクノロジーによって最もレバレッジの効かせられることを実行していきたいと考えています。
また、現在はフードトラックのプラットフォームを事業の主体としていますが、今後は鮮魚や生花、ネイルサロン、マッサージといった食品以外の物販やサービスのモビリティも続々登場します。ローカルエリアへの展開など、コンテンツもエリアも拡大提供をしていく予定です。
そのため、これまではフードトラック事業者のみでの出店スケジュールを考えればよかったものが、さまざまな業種や時間帯を考慮してスケジュールを決める必要が出てきます。フードトラックに最適化された業務オペレーションを拡張していく必要があり、「守り」の開発でその基盤を整える役割も担っていきます。
——そうした役割を担いながら、今後テック部門としてはどう会社に貢献していきたいと考えていますか?
自分の中では「テック部門として」といった分け方はあまりしたくないと考えています。エンジニアとしてただシステムの開発をするだけでなく、「なにをやればより事業を伸ばすことができるのか」「どうしたらビジョンを達成できるのか」、事業に携わる一員としてエンジニアならではの視点を加えて考えていきたいですね。
現在Mellowは社員数30〜40人ほどの規模になりましたが、雰囲気は組織規模がひと桁台のベンチャー企業そのものです。エンジニアとして「コードだけ書いています」というのではなく、事業のことも考えられる。これから入社される方にはそういう動きを期待しています。
——将来的に、開発組織としてどんなカルチャーを作っていきたいですか?
将来的に組織の規模が拡大し、エンジニアが30人、50人と増えていけば、技術に特化した人が出てくるのかもしれません。ですが、直近1〜3年は開発だけでなく、開発側・ビジネス側、どちらもベースにした動きができるメンバーで、それぞれがプロジェクトを動かして、手も動かして開発までやってしまう、そんな組織を作りたいと思っています。
技術を活かして事業の価値を高めていく。そういったことを考えられる人を増やしていきたいですね。
各領域の責任者と「エンジニアリングの使いどころ」を考え、プロジェクトを動かしていく
——現在テック部門ではどういった開発業務をしているか、具体的に教えてください。
開発業務は多岐にわたります。
まずは、BtoC向けの開発。
従来のエンドユーザー向けの移動販売アプリでは、どの場所にどんなお店が出店しているかがわからないという課題がありましたが、Mellowではこの課題を解決しました。これからさらに、フードトラックで商品を購入するエンドユーザーの体験価値の向上に注力していきます。
その1つとして、新しくフードトラック専用のモバイルオーダーやデリバリーのアプリを開発しているところです。今後は現行のアプリにも、レビュー機能やお店のこだわりやストーリーを伝えるための機能を充実させていこうとしています。
次に、BtoB向けの開発。フードトラック事業者向けの開発です。現在、弊社の基盤システム上に、フードトラック事業者の売上やスケジュールが管理できる管理機能を整えています。ここに先ほどのモバイルオーダーやデリバリー、その他の販促機能などを追加して、事業者さんが使いたい機能を選んで使えるようなプロダクトを作っていきたいと思っています。
また、現在ある出店現場全体での売上と自社の売上を比較するグラフに加え、事業者さんが自社について分析し、改善につなげられるような機能やコンテンツを拡充していこうとしています。
また、システムやアプリの開発だけでなく、ほかの企業さんとのデータ連携もテック部門の業務のひとつです。
1,000店を超える、ショップ・モビリティ事業者と連携し、500箇所以上のスペースを運営しているのは弊社のみで、国内トップの規模となっています。ショップ・モビリティの購買データやビル内での人流、街の人流など、弊社独自の情報と他社さんのデータを連携することで、街の利便性を高めていきたいと考えています。
最後に、事業を支えるための基盤のシステムの開発やIT周りの整理です。ただ、これに関しては全社で仕組み作りを行っていて、AirtableやZapierなど、最近流行りの言葉で言うとノーコードツールなどもどんどん取り入れていく文化になっているため、開発の比率としては小さくなってきています。
——こうした業務の具体的なプロセスはどのようになっていますか?
全社的な戦略イシューとして、まず「どこに取り組むべきか」という課題を挙げます。そのうえで、スペースオーナーに対する責任者、フードトラック事業者に対する責任者、バックオフィスや広報など、各領域の責任者からフィードバックをいただいて、どの課題に優先的に着手していくかを決定します。
エンジニアリングの使いどころは事業サイドだけでなく、コーポーレートサイドにもあります。限られたエンジニアリングソースをどういう優先順位で使っていくか、視点に漏れはないかを担保するために、各領域の責任者に確認をしてもらっています。
エンジニアリングで解決すべき課題が決まったらプロジェクトを立ち上げます。プロジェクトの中身に漏れがないかといったところも、同じメンバーからフィードバックをもらいます。
その後、エンジニアが主体となってプロジェクトに関わるメンバーと要件を詰め、問題がなければ設計をし、開発タスクに落とし込んでいきます。
開発はスクラムの運用をしているので、タスクに落とし込んだあとは2週間ごとにスプリントを行い、複数のプロジェクトが走っている場合は優先度を決めて、その都度どの開発タスクから取り組むべきかを判断しています。
——業務における意思決定はどんなプロセスが採られているのでしょうか。
はじめに、起案者が論点を整理します。それに対して各領域の責任者からフィードバックがあり、フィードバックに従って起案をアップデートする。そうしたらまたフィードバックをもらって……ということを何回か繰り返します。
こうした、社内の各ステークホルダーからゴーサインが出たら動き始めるというのは、開発においてだけでなく、全社的な意思決定プロセスですね。細かな開発のタスクでもそのカルチャーは変わりません。
こうした意思決定プロセスがよく表れているのが、現在開発中の「PJP(パートナー・ジャーニー・プログラム)」です。
PJPとは、弊社で「よりよい移動販売の世界をつくるための行動規範」を設定し、それを実践してくれた事業者さんにポイントを付与する仕組みです。ポイントに応じてステージが決定され、ステージに基づいて「どの場所にどの事業者さんに出店いただくか」を自動化していきます。
PJPはエンジニアが起案して論点整理をし、現場の運営や広報を始めとしたさまざまな人を巻き込んでプロジェクトを動かしたひとつの例です。
——Mellowではどんな技術スタックを採用していますか?
バックエンドは現在、Ruby on Railsのみで開発を行っています。スタートアップということもあり、事業の状態が常に変化しうるので、変化に対応しやすいという理由からRuby on Railsを採用しています。
また、モバイルアプリは、iOS、AndroidともにSwift、Kotlinでのネイティブ開発を採用しています。これは私を含め、ネイティブアプリ開発をバックグラウンドとするメンバーが創業当初から在籍しており、Flutterやその他のクロスプラットフォームフレームワークを利用して開発効率を上げるメリットよりも、ネイティブ開発での体験の良さの方が大きいと言う判断によるものです。
ただし、より厳格な運用を求められる売上や精算管理の部分は、静的型付け言語に変える、アプリの開発効率を上げるためにKMM (Kotlin Multiplatform Mobile)を導入するなど、機能要件や事業、組織環境に応じて利用する言語や技術は都度検討していきます。
エンジニアリングで事業を加速するために必要なのは、「どう価値を創出するか」を考えられる人
——今Mellowにエンジニアとして入社した場合、どんなキャリア機会が得られますか?
弊社の事業には多くのステークホルダーが関わっています。フードトラックやモビリティ事業者、不動産デベロッパーや行政などのスペースオーナー、お店を利用するエンドユーザー、そして社内。ですので、キャリア機会はその人次第でいくらでも得られます。
具体的には「技術を使ってどう価値を生み出していくか」をベースとして、事業に貢献していける点です。技術力があって、かつビジネス側にも関わっていきたいというキャリア志向を持った人には合っているのではないでしょうか。
入社後は開発で手を動かしていただきながらオンボーディングを進めていく中で、その人にはどういった動き方が合っているかを一緒に考えていきたいですね。
Mellowでは「これが正義だ」というものがカッチリと決められているわけではなく、むしろ、お互いの強みを見つけて活かしていこうという雰囲気があります。
現在、業務委託も含めて50人ほどの組織規模になってきていますが、経営者と直にコミュニケーションを取りながら実行に落としていくという意味では、人数の割にはエンジニアにとってキャリアチャンスがある環境だといえます。
「なぜやるか」を考えながら、上流から下流まですべてに携わりたい人、早い段階からサービスを作って事業に貢献していきたいという人にとっては、裁量もあってよいのではないかと思います。
——今後、どんな人と一緒に働きたいと思いますか?
繰り返しになりますが、技術力をどう価値に変換できるか考えられる人です。
たとえば、フードトラック事業ひとつとっても、自分が働いているビルの下や近くの公園にお店がやってくるという世界観はこれから作っていく新しいビジネスです。
固定の店舗には飲食店口コミサイトなどすでに確立されたサービスがありますが、フードトラック事業はお客様がお店をどう探すかも含めて、ゼロから考えていく必要があります。
同じように、「お店が動く」というビジネスモデルもこれまで一般的でなかったために、既存のパッケージやSaaSをそのまま使うことができませんでした。そこで、こうした仕組みについても自社開発してきた経緯があります。
事業を加速させるには、エンジニアリングの力が必要です。誰かに言われた通りにサービスを作るというよりは、事業戦略レベルから考えられる人のほうが、仕事を楽しめるのではないでしょうか。
エンジニアリングで価値をどうアウトプットしていくか、一緒に理想の未来を考えていきたいですね。