カメラマン、税理士といったローカルビジネス領域において、急成長を続ける見積もりプラットフォーム「ミツモア」を運営する株式会社ミツモア。急成長の大きな要因には、超少数精鋭、圧倒的な開発速度を誇るエンジニアチームの存在があります。
東大→ヤフー→ミツモア起業。大胆な意思決定で人生を切り開き、ミツモアの成長をけん引する柄澤CTOは何を考えながら働いているのか。ミツモアエンジニアチームを率いるCTOの思考に迫ります。
スティーブ・ジョブズに影響を受け、ITの世界に身を投じる
――この記事を読む方の中には、キャリアを模索されている方も多いと思うのですが、柄澤さんはどういったことに影響を受けて現在のキャリアを選択したのでしょうか?
影響を受けたということでいうとスティーブ・ジョブズでしょうか。ジョブズのことは尊敬しています。今思い返してみたら、自分がIT系に進んだのもジョブズの影響が大きかったかもしれません。
2007年のiPhone発表を深夜にリアルタイムで見ていて、強い衝撃を受けました。ジョブズの「自分がいいと思ったものを信じて作る姿勢」を感じまして。たとえば、これを作っても使われないんじゃないかとか、iPhoneを作る時には反対意見がたくさんあったと思うのですが、信じて作り切ったのはやはりすごいと思います。
――iPhoneは何が衝撃的だったのでしょう?
「指で液晶画面をなめらかに操作してウェブブラウジングする」と言葉にすると普通のことなのですが、当時はそんなものありませんでした。あっても全然「なめらか」じゃなかった。タッチペンを使っているところが多かったですし、タッチできるスクリーンも使っていてストレスが溜まるような代物で使いやすくなかったわけです。でもそれは技術的な問題で、指を1本しか認識できないとか、認識や反応速度がすごく遅かったりとか。
切符売り場のタッチスクリーンのような精度が悪い技術を前提にして考えが進んでいると、そんなの使わないとなってしまうので。既存の技術レベルや慣習に囚われずに自分がいいと思ったものを信じて作り切っているのが本当にすごいなと。
当時大学2年生ですごい衝撃を受けて、すぐにiPhoneを買いたい!と思ったのですが、日本ではiPhoneが発売されないから仕方なくiPod touchを買って(笑)
――ヤフーに入社された当時からスティーブ・ジョブズをある種ロールモデルとして働いていたのでしょうか?
そういうわけでもないです。ヤフー入社当時は、「世の中の人が広く使うプロダクトを作ること」と「技術力の向上」といったところを目指していました。
この20年くらいで規模の大きなIT企業が増えてきていて、しかも市場が広がっているというのは、ITによってできることが増え続けていることのが要因としては大きいだろうと思っています。
Amazon Goが提供している無人店舗も、テクノロジーの進化を体験に落とし込んでいる良い例ですね。IT企業はプロダクトの差別化と体験の良さにフォーカスすべきだと思っています。できなかったことができるようになる、大変だったことがかんたんになる、といったプロダクトを提供していることが、成長するIT企業の本質的な部分なのだと考えています。
技術によってどういった体験が実現できるのかといったところは、やはり技術を知っていないとわからないですし、知識がソリッドなほどその解像度は上がっていくと思うので、技術に関してはずっと勉強を続けたいです。自由な発想をできるために知識をつけておくというか。何かしたいことがあった時に、こういう技術を使えば実現できるよねというのがスッと出てくるような状態でいたいです。
死に物狂いで頭を働かせて、良いユーザー体験を作っていく
――「体験の良さ」というお話が出ましたが、UXにずっと興味があったのでしょうか?
過去にも機能が良いプロダクトでもUXが良くないことで敗れていったものがたくさんあると思うんです。いくら機能が良くてもそれでは全然ダメだと思っていて、コミュニケーションと一緒で、それは一方的に話し続けているだけで、単なる押しつけだなと。だからUXはめちゃくちゃ大事だと思います。
――一方でiPhoneはユーザーインタビューからは生まれづらいプロダクトで、見方によっては押しつけの産物かなと思うのですが
核となる部分をユーザーインタビューで決めてはいけないなと思っていて、プロトタイプを作ってからユーザーインタビューをやらないとあまり意味がなくて、たとえばiPhoneにしても概念だけ聞かされてどうですか?とインタビューされても、素晴らしいと言う人はあまりいなかったんじゃないかなと。
ユーザーインタビューは改善フェーズにおいては効果的な手法なのですが、最初に作りだす部分は頭を死に物狂いで働かせて考えなければいけないと思います。
――プロダクトをゼロから作りだすクリエイティブな工程に対して、どういったアプローチで取り組んで、差別化、オリジナリティを出しているのでしょう?
クリエイティブでオリジナリティがあるプロダクトと言っても、完全にオリジナルなものはほとんどないと思っています。多くは既存のものを参考にしつつブラッシュアップしたり、組み合わせたりして、新たな価値を生み出すということなのかなと。
インプットとアウトプットの量を増やすといった技術的な投資を恒常的にしておくことが、新たな価値を生み出すうえで重要だと思います。
無駄をそぎ落とし、圧倒的な速度で開発されるミツモアのプロダクト
――ミツモアのプロダクトにおいて、ほかでは真似できないような価値を生み出しているポイントはどこになるのでしょうか?
いくつかあるのですが、あえてここでひとつ挙げるとするなら「質問ダイアログ」(ミツモア上で依頼を出す際に回答していくシステム)です。
あまり細かいことは言えないのですが、依頼者のファジーな心理的状況を考慮して、無限に近いようなパターンから最適化された質問を提示していくというような、かなり複雑なことをしていて、それがある程度シンプルな処理で作れているのはプロダクトとして価値のあるところかなと。
プロダクトはビジネスの要請などによって肥大化していくものなのですが、それを続けていくとどんどん鈍化していってしまうので、無駄を削ぎ落として作るように意識しています。シンプルなものを作り続けるのが大切だと100%信じているので。
――細かいことを聞きたい方はぜひオフィスに、というところですね(笑)最後に、ミツモアのエンジニアチームとして大切にしていることをお聞かせいただければと
ミツモアは開発速度を重視している会社です。もちろん質が悪いプロダクトでも速く作ればいいという話ではないので、速度を重視しつつ、どこまで質を高めていけるかというところに挑戦しています。開発速度は競合優位性につながると思っているので、今後も速度は下げず、その中で質を高められる仕組み作りを進めているところです。
ミツモアはGDP向上を共に目指す仲間を募集しています