2022年4月に開催した「新卒歓迎企画NFTアート贈呈式」。前回は、NFTアート制作をメインで担当した2人に秘話を教えてもらいました。
今回は、デザインの全体進行を担当した5年目デザイナー(制作当時4年目)に話を聞きました。
全体進行役を担うのは初めてだったということで、プロジェクトを進めるにあたり意識していたこと、後輩への思いなど熱く語ってもらいました。
■デザイナー紹介
佐藤 光勇(さとう みつお)
UIデザイナー。新卒育成計画をはじめ、mediba+やデザイナー採用LP、名刺やイベントなど社内のデザイン制作を担当する他、au WEBポータルやauスマートパスにも携わる。
コミュニケーションの要? デザイン全体進行役
――プロジェクトに参加したきっかけを教えてください。
佐藤:ちょうどプライベートでNFTアート制作をやってみようとしていたんです。その時にこの話を聞いて、参加してみようかなと思いました。
――ご自身も制作を行いながら、デザインの全体進行を担っていましたよね。どうでしたか?
佐藤:初めてやったのですが、本当に大変でした。終わった後は「もう2度とやりたくない」と思うほど(笑)。自分が作ることと、全体の進捗を管理することを切り替えるのが大変でした。
ただ同時に、全体進行役のような動きをする人はプロジェクトの中に必要だなとも感じました。
――全体進行役がいるとどう違いますか?
佐藤:チーム内のコミュニケーションロスを解消できます。全体進行役がいると、何をすべきなのか、何がデザインの目的なのかっていうのを、デザイナー以外のメンバーともすり合わせやすいです。効率的に、チーム全体で協力し合いながらプロジェクトが進められると思います。
――橋渡し役は大事ですね。
佐藤:そうですね。これはデザイナーに限らずチーム全員に言えることだと思うのですが、「コンセプトはこれだね」「プロジェクトの目的はこれだよね」とMTGで決まっても、それに対する認識がずれていることがある。そのずれてしまった認識を合わせ、逐一確認しつつコンセプトや目的意識を常に頭に入れていてもらうようにするのが大変でした。
デザイナーならでは 状況を「見える化」する方法
――どうやって進めていったのですか?
佐藤:コンセプトや目的含め、MTGで決まったことを、みんなが使う作業スペースに書くことにしました。「informationスペース」です。そうすれば、デザイナーだけではなくチーム全員が確認できる。特に今回は全体進行役だったのもありますが、「迷ったときはここを見て」っていう場所をデザイナーが指定してもいいんじゃないかなと考えました。作業スペースだからといってごちゃごちゃさせているのは良くないなと。打ち合わせ後や制作物に進展があった際には整理をして、認識のずれが出ないように、テキストだけではなくグラフィック等も使って状況を「見える化」しました。
――プロジェクトにデザイナー1人でも、やった方がいいと思いますか?
佐藤:はい、チーム全体の認識ずれを防ぐためには必要なことだと思います。
メンタルケアも 「全体を見る」ということ
――他に大変だったことは?
佐藤:次はスケジューリングですね。コンセプトワークをすることになって、2週間ぐらいデザイン作業がずれ込んだんです。そこからリカバリーするためには、作業する全員のモチベーションを保つ必要があった。スケジュールが迫っているのを自分は背中に感じつつ、1年目のデザイナーが提案してくれたことに対して、デザインの意図や完成形の理想を細かく確認しました。「うん、ここいいですね。ここはこうしてみるのはどうですか?」っていうのをちゃんとコミュニケーションを取りながら、でもやんわり急かすというか(笑)。
――スケジューリングとメンタルケアと。気にしなきゃいけないことが多かったのですね。
佐藤:有志プロジェクトで、やる気があって参加している1年目の後輩に、4年目の自分が「スケジュールきついから急いで。もうこのくらいでいいよ」と言ってしまったら、デザイン自体も楽しくないと思うので。そうはなって欲しくないと思っていました。
コンセプトを一言で 苦労の末の答え
――スケジュールがずれ込んだとの話がありましたが、コンセプトワークは実際やってみてどうでしたか?
佐藤:絶対必要だと思いましたね。やらないと、作っている途中で「なんかだめに見えてきたな」とか迷いが出てしまったり、チームメンバーやクライアントに提案するときに、「こういうコンセプトで、こういうストーリーで考えて作っています」とうまく説明できなかったり。デザインに納得してもらうのに余計な時間がかかってしまうと思う。
――今回はコンセプトワークも主導してくれましたね。
佐藤:これも初めてでしたが、付箋ワークだったのでそこまで大変ではなかったです。決まったコンセプトを言葉にまとめる方が大変でした。
――どういう風にまとめていったのですか?
佐藤:プレゼントをもらった新卒社員の気持ちの流れのストーリーを作りました。その中で、自分たちの力ではどこにタッチできるかなと考えて。それで、タッチできそうなところを見つけて、「自分たちが目指すところはここだ、先輩とのコミュニケーションのきっかけになることだ」という風にまとめていきました。
スムーズな制作進行 大切なのは「見える化」
――スケジュールのきつさもあったという話でしたが、進行管理では何を意識していましたか?
佐藤:議論が停滞することを一番避けたかったです。なので、提案内容をイメージできるようなものをMTGには作っていきました。スケジュールも口頭で言うだけじゃなくてカレンダーを作ったり、デザインイメージを話し合いたい時は、完成形に近いものを作っていったり。準備に時間はかかりましたけど、MTGでは話がスムーズに進んだり、更にいいアイディアが出たりしていたので、結果的によかったかなと思います。
――コンセプトワークの後の、ビジュアルコンセプト決めはどうやって進めましたか?
佐藤:ここはデザイナーは慣れている作業なのでスムーズでしたね。22新卒は7人だったので、まずは7人一体で作りやすいものをデザイナー陣で集めて。虹とかいろいろ集まったのですが、最終的に惑星になりましたね。
カッコいいとかかわいいとかに偏らず、猫派・犬派とか好みが分かれるものもやめるといった判断基準だけ明確にして、「コンセプトに沿うもの」を多数決で決めました。惑星は満場一致でしたね。
――だから、前回のインタビューで、「コンセプトワークは後々生きてきた」っていう話があったんですね。
佐藤:そうですね。投票のときはコンセプトを何回も確認し合って、デザインの方向性とずれないようにしました。これがあったから話がまとめられたと思います。
決まった経緯もわかっているので、コンセプトをめぐって制作が足踏みすることはなかった。
そういう意味でも、やっぱりみんなでワークするっていうのはよかったです。
デザインを楽しく 後輩に伝えたいこと
――今回のプロジェクトを通しての感想は。
佐藤:モチベーション高くものづくりができたなと思います。そういう方向に自分が導いて達成できたっていうことが、大きな喜びにつながりました。
同時に、全体進行役になってみて、先導して責任を取る立場になるってすごく怖いことだなとも思いました。テレワーク下でのコミュニケーションは難しい面もあるし、特に今回は、制作チームにデザイナー職種じゃないメンバーもいたので。自分が迷ったら後輩も一緒に迷う、っていうプレッシャーはずっとありました。
――全体進行を経験してみて、後輩に伝えたいことはありますか?
佐藤:1回やっただけで教えられるという域でもないので、僕にできることとしては、やってよかったっていう経験を伝えることでしょうか。
デザインのフローがあったとしても、後輩には、「このやり方でいいのか」自分の頭で考えてみてほしいですね。それで提案したいことがあれば、資料を用意して話してみるとか。そういう行動力と、あとは、視野を広く持って、作ることだけに集中せずチーム全体を見てほしい。
僕もそういうデザイナーになりたいと思っています。
行動力といっても提案することだけじゃなくて、新しい技術を触ってみるとかでもいいんです。何でもいいので一歩踏み出すのがいい。そうするとたぶんもっとデザインが楽しくなると思います。
新卒入社に合わせたプロジェクトでスケジュール変更ができない中、デザイン進行の責任を持つことはかなりプレッシャーのかかる仕事だったと思います。ただ今回の経験で、ものづくりカンパニーを目指すmedibaの中核を担う人材がまた1人誕生したのではないでしょうか。