ネットワークを生かして、地域を超えた産業同士をマッチングできるのが強み ――菊地凌輔(地方事業部長兼マネージャー)
こんなにさまざまな業界でチャレンジできる仕事はほかにない ――松岡宏治(地方事業部マネージャー)
マクアケは、本社の東京以外にも大阪と名古屋、福岡に拠点がある。それらの地方事業部を立ち上げたのは2014年、大阪にある関西支社が最初だった。初期のメンバーは、当時入社したばかりの菊地凌輔。その1年半後にジョインしたのが松岡宏治で、現在は2人とも大阪オフィスに勤務し、15人ほどの地方事業部を束ねるマネージャーとして汗を流している。
地方事業部を代表する2人に、マクアケが地方事業に取り組む意義や、地方の事業者にMakuakeのサービスが必要な理由、地方事業のやりがいや実情などを聞いた。
地方にお蔵入りしている「いいもの」を発掘する
――地方事業に力を入れている理由や、目指していることを教えてください。
菊地:現在は大阪と名古屋、福岡に拠点を持っていて、今後はその他エリアへと広げていく予定です。地域事業部ではこれまで、特にものづくりの事業にコミットしてきました。その理由を改めて考えると、マクアケのミッション「世界をつなぎ、アタラシイを創る」に立ち返ると思っています。
松岡:既存のビジネス構造は、地方の工場でものづくりをして、都市部や海外で売るというサプライチェーンで成り立っています。問屋や小売店は都市部の販売チャネルとつながっていますが、生産者の方たちはそうではないんです。
菊地:そのため、いいコンテンツやサービス、優れた技術がお蔵入りしています。いくらインターネットが発展しても、東京から遠隔で支援していくのは限界があるから、僕たちが自分たちの足で赴く必要があるんです。
松岡:ものづくり産業はフィジカルなものだからこそ、オンライン化が難しいといった側面もありますね。
菊地:それから、Makuakeはグローバル展開も視野に入れています。日本の地域産業と太くつながった状態が作れれば、日本製の良いものやブランドを届けられる応援購入プラットフォームのMakuakeとして世界にも通用する武器になります。
松岡:1点1点手作りするようなこだわりも、海外から注目を浴び始めていますからね。アメリカのGAFAなどに代表されるITサービスと戦っていこうとしたときに、同じ戦い方じゃなくて、日本なりの戦い方を模索すべきだと思う。大量生産大量消費とは真逆を行く丁寧なものづくりは、SDGsといった流れともマッチして、世界的にも重要ではないでしょうか。
他の地域とのつながりを作れるのがマクアケの強み
――地域の方から見たMakuakeのよさ、役割はどのようなことですか?
菊地:Makuakeが多くのプロジェクトを通して、広い地域とつながっているのは強みのひとつです。元気な産地は、「産地内」だけでなく、「産地外」の人を顧客にしている。産地以外のお金を僕たちは「外貨」と呼んでおり、その獲得が大切になります。そのために、全国のチャレンジャーとつながっているMakuakeのネットワークをフルに活用しています。
松岡:さらに、地元の金融機関との連携も進めており、信金や地銀といった全国100社以上の金融機関とネットワークがある。地元を元気にしたい金融機関の紹介から、数千万円単位の応援購入を集められた事例も出てきているんです。
菊地:実は、Makuakeの役割は場所によってまちまち。地域ごとにその場所が持っている空気感が異なり、僕たちはそれを肌で感じながら役割を見つけています。例えば、行政がお金も意見も出してくれる場所もあれば、地元の大きな企業が力を持っている地域もある。その微妙なパワーバランスは、その場所に行かないとわかりません。地元の空気や環境を感じながら、その人たちのストーリーに合わせて最適な形でサポートするよう心がけています。
「祇園祭」や「もちはだ」など、毎年の成功事例が出ている
――地方事業の代表的な事例をいくつか教えてください。
菊地:5年前から協力させていただいているのが京都の祇園祭です。1150年を超える歴史あるお祭りですが、当初は財政的にかなり厳しかった。大きなお祭なので、警備やごみ処理だけでも1500万円レベル。町内会や既存の寄付だけでは集めきれないし、30~40代といった若い人とのつながりがないのも課題でした。
成功の秘訣は、既存の枠組みでつながれないファンの人たちを獲得したこと。5年間続けていると、Makuake内の祇園祭ファンだけも数千人いるわけです。そういう人たちに粽などを応援購入していただき、祇園祭を守っています。
松岡:僕からは「もちはだ」を紹介しますね。兵庫県加古川市のワシオ株式会社さんという町工場です。編み機を使って生地を編み、縫製して肌着などを作っています。独特なのは、編み機自体を職人が加工しており、オリジナルの起毛技術があること。もともと、オートバイに乗るような人たちにはマニア的人気を博していました。
ただ、顧客の高年齢化や、大手アパレルが扱いにくい価格設定など、課題がありました。そこで、2017年から若い人に響くような見せ方で展開して、1枚1万円もするニットTシャツが人気を博しています。4年で5案件、合計で3000万円ほど集めました。
菊地:ほかに、Makuakeのネットワークを活かしたコラボレーションもあります。京都の壬生寺(みぶでら)で火事があり、本堂や仏像が燃えてしまったため、復元のための費用を集めたい、という相談がありました。「仏像を直すための費用」という建付けではなかなか集まらないことが予想できたので、別のコラボレーションを提案したんです。
松岡:壬生寺は、新撰組のお墓がある場所。コラボレーションしたのは、僕が担当していた、日本刀の形をしたペーパーナイフを作っている岐阜県関市のメーカーです。新撰組モデルの日本刀ペーパーナイフを作ってもらい、売り上げの一部を仏像の復元に充てました。
菊地:祇園祭は寄付型の応援購入と言う形で、ものづくりではありませんが、文化の保護や地域の活性化につながっています。もちはだは、技術を大事にしている町工場が、買いたたかれることなく消費者ニーズに沿ったものを作れる。新選組の日本刀ペーパーナイフは、離れた場所でのコラボレーションを実現し、仏像の復元と、関市の技術継承という文化的意味合いもあります。プロジェクトひとつひとつに、ストーリーがあるんです。
泥臭いものの、経営トップの人たちと施策を練れるのがやりがい
――地方事業の苦労や、やりがいについて教えていただけますか?
菊地:苦労は……めちゃくちゃ泥臭いことです。サイトを見ると、素敵なメーカーさんと取り組みができて華やかに見えるかもしれませんが、Makuakeを使っていただく接点を見つけるのは簡単ではない。地元の銀行に紹介いただいて足を運んだり、セミナーをして広報活動するなど、とても地道な活動です。
松岡:それに、責任も重いですよね。自分が担当することで、プロジェクトの成否が左右されてしまう。うまくいかなかったときに、自分のせいにする理由はいくらでも出てきます。「こうすればよかった」「ああすればよかった」と後悔しながら、次の打席に立つんです。一瞬落ち込んでも、絶対に次に生かすというメンタルが必要かもしれません。
僕たちは次に生かせるけど、お客様は一度きり。だから毎回自分ごと化して、取り組んでいく必要があります。
菊地:一方で、やりがいもたくさんあります。お客様と打ち合わせをすると、相手はたいてい社長さんや役員クラスの方。僕自身も勉強しながら、経営者の方々を前に、できることを探していきます。その中で、短期間で成長していかなくてはならないんです。
また、繊維関係、お酒、金物と、あらゆる業界でさまざまな規模のサポートができるのも、大変なのと同時にやりがいになっています。
松岡:こんなにさまざまな業界でチャレンジができる仕事はほかにないんじゃないかと思います。「地方」を言い換えると、「東京以外」とも言えるから、東京以外は全部、僕たちがチャレンジできる場所になり得ますよね。
他に……たくさんの地域に知り合いができるのも単純にうれしいですよ。関わったエリアは、故郷のように感じます。
菊地:それはあるね。地域における役割は、仕事人としても個人としてもあります。地域に自分の役割があると、よりいっそうその場所に還元したいと思うようになる。頼られるとすごくうれしいですしね。
これまでのスキルを地方事業に生かしてくれる人と一緒に
――最後に、これからの展望と、一緒に働きたい人のイメージを教えてください。
菊地:今後の展開としては、まず拠点を増やしていくことですね。Makuakeを知らなかったり、うまく活用できなかったりするエリアの人とつながるために、日本全国をカバーしていきます。エリアを超えたマッチングや活性化を生み出して、ゆくゆくはグローバルを含めた新しい動きができていくのだと思います。
松岡:他の観点で言うと、地域の産業を活性化させることで、高齢化問題をなんとかしたい。どこに行っても60~70歳代の方が担っているので、文化や技術を残すには、この10年がラストチャンス。そんな使命感を持っています。
菊地:一緒に働きたいのは、地方が好きで、社会課題をクリエイティブに解決したいとアンテナを立てている人。また、地方拠点の立ち上げにワクワクするとか、さまざまなフィールドでトライアンドエラーを繰り返したい人も向いていると思います。
また、マクアケのビジョンやミッション(※下記)と、その人が働くベクトルが一致していると、単なる労働ではなく使命感に駆られて仕事ができると思います。
ビジョン
生まれるべきものが生まれ
広がるべきものが広がり
残るべきものが残る世界の実現
ミッション
世界をつなぎ、
アタラシイを創る
松岡:加えて、これまでの仕事である程度やり切った、という方が、次のチャレンジとして考えてもらえるといいですね。これまで培ったものを広いフィールドで試してみたい人が合うんじゃないでしょうか。なにかひとつかふたつ、自信を持っているものがあると、それを手掛かりに打席に立てると思います。
取材・執筆:栃尾江美 Website:emitochio.net