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今、コードを書くということ - 超民主主義の時代をハックする

僕たちは今、知的独占による競争から世界的インテリジェンスへの時代の過渡期に生きています。

高度な自動化と分散型共有データベースによって実現されるのは、あのマルクス主義が否定しそして失敗した、紀元前2500年の時代から続くユダヤ・ギリシャの理想、すなわち資本増殖のために生きる人間のあり方への再考となり得ます。

アカデミックな世界では、(派閥を除いては)人類が同じ利益集団に属するという価値観は当たり前でした。

同様に世界的インテリジェンスの時代では同業者は同じ利益集団に属するという考えのもとで社会のアップデートを目指すことが当たり前になります。

Planned Obsolescenceのような消費者の利益を犠牲に利潤を得る手法はついになくなるでしょう。

世の中はメソポタミアの時代に「ギルガメッシュ叙事詩」に書かれた"欲望を歴史の原動力"とするユダヤ的価値観と、同時期に「ウパニシャッド」に書かれた"欲望からの解放"というアジア的価値観の間で葛藤しています。オープンイノベーションの時代にはそこにある帰結点を見出したかのような予感があります。

最適化を得意とする昨今のテクノロジーはあらゆる所得層の人々の欲望をもっとも効率的に満たすようなプログラムを提供するでしょう。人間はしらずしらずのうちに最適解を与えられてそこに気付かない、というのが今起きつつあることだと思います。ソーシャルネットワークがその際たる事例です。

そうなると社会はどれだけ個の自由を獲得しても人間はシステムの一部になることを免れません。シク教総本山の黄金寺院で精巧な動作と連携により食料を供給し供給される無数の人々の群れが高度に組織だった蟻の巣を思い出させるように、文明を享受する我々も状況はあまり変わっていないということになってしまうのです。そこで重要になるのが教養だと思います。教養は知識ではなく、世界をより高次元の空間で見るためのフレームワークです。

雲の画像にパターン認識した物体を重ねる有名な実験は2次元の像に時間軸をさらに1次元追加していると言えます。

消費者、現代アートの文脈でいう鑑賞者は平面に描かれた以上の空間に存在するルールや意味を同時に見ることで、真価を知り自由意思を働かせることができます。そうでなくては市場やテクノロジーによって最適と判断される何かを薬理的につかまされるのが現代なのです。

このような考えのもとで私はGate.という製品群を設計し開発してきました。Gate.はプラットフォームであり、企業と消費者の双方に価値を提供するものです。企業同士は同じ利益集団として自らと消費者の利益を追求し、同時に消費者はルールを知ることで羅列された数字以上の意味を見いだします。

そして、こうした時代の中でコードを書くということは多かれ少なかれ国家的社会システムの一部を作ることと同義だと思います。個人のデータという媒介を通じて細分化された無数のシステムやアプリケーション同士が連携をはじめているからです。

計算機科学の世界で有名な「ゲーデル・エッシャー・バッハ」に、人間と機械の差についての記述があります。人間は自分のしていることを俯瞰的に見てその意味を理解できるが、機械は自分のしていることの意味を理解できないというものです。コードの書き手はシステムの構造をイメージできるという点で、システムが知能を拡張し行動を変化させる超高度情報化社会の中での自分の行動の意味をより精緻に理解できる限られた人種になると思います。システムの一部となりつつある人間の行動を俯瞰的に見て、自分や他人の行動をさらに変容させ、人間をより人間らしくいさせることができるのがプログラマーの仕事ではないかと思います。

2018年6月

LEEWAYS株式会社 CTO 大塚一輝

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