「一回立ち止まって、みんなの方を見て言いませんか?」
10月最初の朝礼では、コウダプロのNo.2として組織を支える原口水月さんから、そんな提案がありました。
これまで歩きながら行っていた出社時と退勤時の挨拶を、一度立ち止まり、みんなの方を向いて伝える形に変えること。そして、業務中の私用スマートフォンの扱いを見直すこと。人が増える前に、今のうちから組織の空気を整えておきたい、という内容です。
この提案をきっかけに、幸田八州雄社長が指摘したのは、現場の困りごとが経営側に届いていないという問題でした。
後半には、幸田さんがある経営者の著書で出会い、共感したという「円」で組織を捉える考え方が紹介され、話は自分がどこにいて、どう貢献したいかという問いへと広がっていきました。
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こんにちは、プレスラボ(@presslabo)の池田園子です。月1回「コウダプロ朝礼レポート」を担当させていただいています。
約20人の今のうちから「シャッとした空気」をつくっておく
原口さんの提案のきっかけは、幸田さんたちと訪れた某企業での体験でした。2階の執務室に上がると、社員の皆さんが立ち上がって出迎えてくれたそうです。
なかでも原口さんの心に残ったのは、退勤時の挨拶でした。帰っていく社員の方が、ドアの前で一度立ち止まり、執務室にいる皆さんの方を向いて「お疲れ様でした。失礼します」と伝えてから出ていったのです。
「ゆるっとした空気は、ゆるっとしたまま伝播するし、シャッとした空気はシャッと伝わるんじゃないかと思っています」
原口さんはそう話し、約20人の今のうちから「シャッと」しておきたいと提案しました。コウダプロでは、これまでもメンバー一人ひとりが、出社時や退勤時に自然に挨拶をしていました。
今回見直すのは、その伝え方です。歩きながらの挨拶から、一度立ち止まり、みんなの方を向いて挨拶する形へ変えることになりました。退勤時の言葉は「お疲れ様でした」を基本に、席の位置などで不自然にならないよう、それぞれが無理のない形で取り入れていくそうです。
朝礼の後半には、幸田さんが以前、ある組織を訪ねたときの話もありました。職員の皆さんが立って迎えてくれるなか、課長だけが座ったままだったそうです。そのとき幸田さんは、立場が上の人ほど、やらないことのほうが目立ってしまうと感じたといいます。来客から見えない席にいると、つい立たずに済ませたくなることもあるけれど、そのたびにこの光景を思い出すのだと話していました。
幸田さんは別の場面で、物事は放っておくとたいてい緩い方向に向かうものだ、とも話しています。だからこそ、誰かが意識して締めていく必要があるのでしょう。立ち止まって挨拶をするという小さな振る舞いは、立場に関係なく一人ひとりがより良い空気をつくっていくための、わかりやすい入り口なのだと思います。
現場の困りごとが経営側に届いていない。それがいちばんの問題
原口さんのもう一つの提案である私用スマートフォンの扱いも、同じ思いから出たものです。
原口さんは、今のメンバーの使い方を特に問題視しているわけではないとしながらも、今のうちから扱い方を整えておくことで、これから入社してくる人にとっての当たり前をつくっておきたいと話しました。必要な連絡を待っているなどの事情がある人は、それを共有したうえで手元に置く、という扱いも確認されています。
この提案から、話は思いがけず、仕事の道具そのものへと広がりました。オンラインチームを中心に、社用端末が古くて動きが遅い、動画を見るには通信量が足りないなど、仕事の道具として使いづらい状況にあることが共有されたのです。
幸田さんは、仕事がしやすい道具を用意するのは会社として当たり前のことだと話します。使い勝手の悪いところで出費を惜しむのは、惜しむ場所を取り違えているのだといいます。話し合いの結果、社用端末は業務に必要な性能を満たすものへ見直していく方向になりました。
そのうえで幸田さんは、もう一つの点を強調しました。
「その使いづらさを仕事の道具で抱えている話が、僕の耳に届いていないというのが最大の問題です」
経営側には「なんで言ってくれないの?」という思いがあり、現場には「なんでこんなやり方を続けているのか」という思いがある。こうしたすれ違いは、どの会社でも起きているそうです。
たとえ「今は買い替えられない」という答えになっても、状況と理由が伝わっていれば、自分が同じ立場でもそう判断するだろうと受け止められる。不満が生まれるのは、相手の判断の理由が見えないときなのだと幸田さんは説明しました。
この話を受けて、あるマネージャーは「入社したときからずっとあった話だったけれど、当たり前だと思ってそのまま進めていた。業務としてどれだけ成り立っているかという視点で考えられていなかった」と振り返っていました。
困りごとは、慣れてしまうと困りごととして見えにくくなります。現場が状況を伝え、経営側が判断の理由を伝える。その両方がそろって初めて、同じものを見ながら次の手を考えられるのだと感じました。
「真ん中に行く」組織で、どこで貢献するかは自分で決める
後半、幸田さんは、オンデーズ会長・田中修治さんの著書で出会った、組織を円で捉える考え方を紹介しました。自社の組織観にも、とてもフィットすると感じたそうです。コウダプロに当てはめると、中心にCEO、その周りにBグレード、シニアマネージャー、マネージャー、チームメンバーが位置します。役割が変わっていくことを、「上に行く」より「真ん中に行く」と表現します。
組織では、役割によって判断する範囲が異なります。たとえば、M&Aをするかどうかは、入社したばかりの人が決めることではありません。幸田さんが違和感を持っていたのは、そうした役割の違いをピラミッドで表すと、人としての優劣まであるように見えてしまうことでした。
「それは果たしている役割の違いであって、優劣じゃないんです。役割、つまり機能が違うんです」
全ての人が等しく貢献していて、自分がどのあたりで貢献したいかは自分で決めていい。経営を担いたい人もいれば、専門性を突き詰めたい人もいます。コウダプロには、マネジメントではなく、自分の得意分野で力を発揮したい人のための「職人星制度」もあります。
※職人星
職人星とは、マネジメントの道ではなく、自らの専門領域を深く掘り下げ、その道のプロフェッショナルとして価値を発揮していくキャリアの選択を意味します。ひとつの分野を徹底的に極め、技能や知見で組織を支える存在になるという、もう一つの成長ルートです。
メンバーからは、円で描かれているとフラットなイメージになり、CEOをはじめとする管理職の人たちにも話しかけやすい印象を持てるのではないか、という声が出ました。
この日は、人の成長の見え方についても話がありました。原口さんは、あるメンバーの変化を振り返り、人が役割を担えるようになるのは、気づいたらそうなっているものなのだと教わったと話します。幸田さんも「ふと気がついたら、その役割にいる」と応じ、成長にはタイプがあると続けました。
マイナスにマイナスがかかって急にプラスに転じる人もいれば、水槽にインクを一滴ずつ垂らし、いつの間にか水が青く染まっているように変わっていく人もいます。だからこそ、目立つ人だけでなく、コツコツと成長している人の変化にも気づける組織でありたいのだといいます。
中心に向かうことも、今いる場所で専門性を磨くことも、会社や仲間への貢献につながります。組織が大きくなっていくなかで、自分はどこで、どんな役割を果たしたいのか。そんなことを考えるきっかけになった朝礼でした。
(編集後記)
前半と後半の話はどちらも、コウダプロがこれから規模を大きくしていくときの話につながっていると感じました。なかでも、自分がどこにいて、どう貢献したいかは自分で決めていいという言葉が、私自身にも深く響きました。
Text/池田園子