わずか5人の事業部が、全社利益の約半分を生み出した──。
経営会議で先期の数字を見たとき、思わず二度見しました。たった5人で、会社の利益の半分を支えている。最初はとても信じられませんでした。
もうひとつ、驚くべき数字があります。
半年に一度、エンゲージメントサーベイ(社員が仕事や会社に、どれだけ前向きに関われているかを測る調査)を実施しているのですが、この5人のチームは、4回連続で全社トップのスコアなんです。
ふつう、数字がぐんぐん伸びている組織は、どこかピリピリしがちなもの。でも、ここは違う。いちばん結果を出しているチームが、いちばん楽しそうに働いている。⋯⋯一体、どういうことなのか。
こんにちは。KOBIRA(小平株式会社)で副社長兼CHROをしている池田亮平です。今日ご紹介したいのは、国際貿易事業を担う「グローカルビジネス事業部」。「グローカル」は、地元(local)から世界(global)へ、を縮めた造語です。
KOBIRAは、鹿児島では主にエネルギーの会社として知られていますが、実は32年にわたり、貿易を続けてきた「地域商社」でもあります。さつまいも、スイーツなどの日本の食品を、海の向こうへ届ける。逆に、海外の水産物などを日本へ運ぶ輸入も手がけます。その最前線を担うのが、このグローカルビジネス事業部です。
先日、メンバーの二人がアメリカ出張の合間、ロサンゼルスのホテルからインタビューの時間をつくってくれました。現地は夜中。疲れているはずなのに、画面の向こうの二人は妙に楽しそうでした。
現場の彼らは、どんな想いで日々の仕事に向き合っているのか。なぜ、事業を伸ばしながら、こんなにも楽しそうに働けているのか。それを確かめたくて、じっくり話を聞いてきました。
聞き手:池田亮平(小平株式会社 副社長 兼 CHRO)
話し手:花香隆介さん・黒木隼人さん(グローカルビジネス事業部)
年齢は倍以上離れていても、「バディ」であり「兄貴」
池田 今日はお疲れのところありがとうございます。まず、お互いを「一緒に働く仲間」としてどう見ているか、紹介し合ってもらえますか。
黒木さん 花香さんは、僕にとって「バディ」であり、「兄貴」ですね。僕がやりたいことや興味のあることを話すと、花香さんは横でずっと「ふんふん」と聞いてくれる。何でも否定から入らず、まず全部を肯定から受け止めてくれるんです。言うなれば、実在するAIみたいな人(笑)。
花香さん 黒木くんは、「レックレスライフ」。無謀な人生、って意味なんですけど(笑)。とにかくやりたいことがいっぱいある。日々、興味が更新されていく。それを僕は隣で面白がって聞いている感じです。
池田 社内では「二人はパパと息子のような関係」と言われることもありますよね。
黒木さん それ、多分年齢差で言われてると思うんですが(笑)、僕にとっては、父と息子っていうより、兄貴。もっと横に並んでいる感覚なんですよね。
花香さん 確かに年齢だけ見れば、僕と黒木くんは倍以上離れている。それでも近くでやれているのは、たぶん「共通の敵」がいるからです。社内じゃなくて、社外に。
池田 共通の敵、というと。
花香さん 超えるべき壁、ですね。私たちは商社なので、自分たちで物を作るわけじゃない。作ってもらったものを、海外の販売先へ届ける。仕入れ先と販売先、その両方の意見を聞きながら、クリアすべき壁がいくつもある。倒すべきものが同じだと、性格が真逆でも、不思議と肩を並べられるんです。
黒木さん 僕は考えるより先に突っ込んでいくタイプで、花香さんは「いや、それは違うだろう」と冷静に選んでくれる。真逆だからこそ、組むと強い。
アメリカ本国のスーパーからの無茶な要求を、チーム総出で乗り切った日々

海外の展示会に出展したKOBIRAブース。
干し芋バーや、ビーガン向けたい焼きなどを世界に売り込みます。
池田 「少数精鋭で全社利益の半分」と聞くと華やかですが、その裏はきっと相当泥くさいことがたくさんあるんじゃないかなと想像しています。「大変だったけど、みんなで乗り越えた」みたいな山場はありますか。
花香さん アメリカの大切な取引先で、大きなビジネスが決まりかけたときですね。先方の商品担当の副社長が、自社の理事会でうちの商品をプレゼンしてくれることになった。その資料に間に合わせるため、最新の商品情報を国内の工場へ何度も何度も依頼して、なんとかギリギリで送り届けた。高いハードルでしたが、「アメリカでは、これが普通だよ」と言われる高い要求が、次々飛んでくるんです。
黒木さん あのときは本当にチーム総出でしたね。当時、花香さんがUniposでこんな投稿を社内に残してくれていて。(注:KOBIRAには「Unipos」という、理念を体現したエピソードを送り合う仕組みがあります)
少し照れますが、そのまま紹介させてください。
アメリカの大切な御取引先様の大きなビジネスが今週決まりました。先方の商品担当副社長が、社内の理事会で私たちの商品プレゼンする機会があり、そのギリギリに最新商品情報を国内工場に何度も何度も依頼して送ることができました。厳しい(副社長にはアメリカでは普通だと言われてますけど,,,)要求は続きますが、引き続きチームワークで乗り切りたいと思います。今週は、抹茶、乾麺、パン、たいやきなど国内工場の新規開拓と視察も沢山しました、皆さまお疲れさまでした。日々の輸出の船の予約も支払いの漏れもないようにサポートしていただき、乗り切れた一週間でした!
池田 これは、読んでいて胸が熱くなりました⋯⋯。「日々の船の予約も支払いの漏れもないように」という一文に、派手さの裏の「凡事徹底」も滲んでいますね。
花香さん 相手は、日系のスーパーじゃなくてアメリカ本国の大手なんです。よく言うんですが、『プラダを着た悪魔』のメリル・ストリープみたいな担当者に、バッサバッサやられる(笑)。外資のスピード感は本当に速いし、結果を求められる。私たちはそれに食らいついていくんだけど、さらに後ろにいる工場やベンダーさんは、もっとついていくのが大変で。
黒木さん だから役割を分けています。僕が日本国内の仕入れ先を調整して、先方が求めるものを揃える。それを花香さんにバトンタッチして、花香さんがどんな順番で、どう出すかを精査する。部長やチームのメンバーと僕とで、悶々と悩みながらメールの一文を練ることもしょっちゅうです。誰かが表で交渉している間、必ず誰かが裏の手配を漏らさず回している。だから前に出られるんです。
海外と日本の「常識の違い」を、まるごと飲み込む

常識が違う中でも、根気強くコミュニケーションしていきます。池田 花香さんは長く世界を相手にされてきていますが、それでも海外は難しいですか。
花香さん 難しいですよ、毎回(笑)。時間の感覚も、契約の常識も、国によってまるで違う。決まりかけた話がひっくり返ることも、ザラにあります。長くやってきた僕でも、毎回、前提から握り直すしかない。でも、その握り直しこそが、この仕事のいちばん面白いところなんです。
池田 その「違いを飲み込む力」は、チーム全体に根づいている気がしますね。
黒木さん 海外のやり方は、「拒まず、驚きすぎず、まず自分の中に入れてしまう」しかないんです。税務も、インボイスも、日本の常識が通じない場面だらけ。でも、まるごと飲み込んで、したたかに前へ進む。その胆力がないと、越境する仕事は続きません。
池田 海外出張も多いですよね。正直、体力的にしんどいこともあるのではないですか?
花香さん ありますね。たとえば、ほかの商社と一緒に出張すると、毎晩どこかの部屋で酒盛りが始まる。ああいうカルチャーは、正直僕はあまり得意じゃなくて。だから場合によっては、宿を分けたりしています。酒盛りの体力勝負ではなく自分のネットワークで動いたほうが、いま何が売れているか、生の情報が入ってくるので。
黒木さん しんどいこともありますが、行くたびに得るものは大きいです。仕事の成果だけじゃなく、自分自身のこれからのビジョンの解像度が、ぐっと上がる。海外で揉まれると、自分が何をやりたいのかが見えてくるんですよね。
花香さん 体力面以外だと、出張が多いと家族の時間が取りにくい、というのは正直つらいところです。だからこそ、家庭の事情がある人は出張を交代でカバーし合う。そういう配慮は、チームで当たり前にやっています。
上下でも縦割りでもなく、フラットに支え合う「同志」のチーム
池田 KOBIRAはいま、トップダウンからカンパニー(事業部)単位で自律した組織へと、カルチャーそのものを変えようとしています。グローカルビジネス事業部のチームは、それがかなり進んでいる現場だと感じます。
黒木さん 僕、以前メーカーとの意思疎通で苦戦したことがあって。そのとき渡辺部長が、頭ごなしじゃなく「伝え方」の課題を、やさしく、でも正確に指摘してくれた。それで自分のやり方ごと更新しにいけたんです。そのお礼に、自分からUniposでこんな投稿をしました。
単なる状況改善の策だけでなく、「伝え方」における課題を優しく、かつ正確に指摘していただけたことで、自分のスキルをアップデートしようという前向きな気持ちになれました。部長に伴走していただいたおかげで、独りよがりにならないための本来の動き方が見えてきた気がします。教えていただいた伝え方のポイントを即実践し、円滑な連携を実現させます!!!!!!
池田 教わったことを即試す。その素直な速さは、KOBIRAが掲げている流儀(バリュー)のひとつ、「柔軟に、進化し続ける」そのものですね。
あと、黒木くんの『架け橋』としての仕事ぶりは、以前の担当者も、Uniposでこう讃えていましたね。
複雑な原料調整の案件の整理&提案を引き受けてくれてありがとうございます!提出先は、大手メーカーの品管や商品開発部門で食品のプロの方たちですが、アメリカや、アメリカの小売り店が求めている調整の架け橋は、私たちにしかできない部分だと思っていますし、そこが極めるポイントだと思っています🔥
黒木さん 実は僕、営業なのに、いちばん好きなのはバックオフィスの仕事なんです。メールのやり取り、提案資料づくり、段取り。「なんで営業やってるの」ってよく言われます(笑)。でも、これまで誰かが何となく作ってきた資料を、それより早く、クオリティの高いものに仕上げて採用されたときの優越感と達成感が、たまらない。自分で仕事を見つけて、理にかなっていれば止められない。この自由度が、この会社のいいところです。
池田 失敗があっても、皆さん前向きに進んでいく雰囲気だと聞きました。
黒木さん 商品がキャンセルされることなんて、しょっちゅうです。でも、落ち込んでいる時間さえもったいないと思わせてくれる環境なんですよ。ダメならダメで、次。この商品がまた採用される道はあるのか、ないのか。あるなら、こうしてこうして──と、3手も4手も5手も先を読む。これは一人じゃできない。ロジカルに先を読みながら進めるとき、チームっていいな、と心から思います。
池田 黒木くんは25歳。KOBIRAでは若手ですよね。
黒木さん はい。この会社、平均年齢は高いんです。20代なんて、10人いないくらい。でも「若いから」でくくられない。親世代の人がたくさん働いている会社なのに、若い人の意見をちゃんと求めてくれる。僕はどちらかというと大人しいタイプなんですが、周りを見ていると、若手がどんどん発言して、それを「いいね」と受け入れる。こんなローカルの会社なのに珍しい、と思う。その称賛文化と懐の広さが、僕がここで働き続ける理由です。
事業部を越えて、鹿児島の宝を世界へ
池田 学び合いが、チームの外にも広がっているのが面白いですよね。花香さんのお茶の仕事は、事業部を越えていますよね。
花香さん ええ。いま、世界的にお茶のブームが来ているんです。ただ、鹿児島のお茶農家さんの中には、英語も苦手で「輸出はしない」というところも多いです。それが最近、あるお茶農家さんが「KOBIRAさんとは付き合いも長いし、KOBIRAさんからの話なら考えてもいい」と言ってくださった。面白いのは、これがグローカルビジネス事業部単独の力じゃない、ということなんです。
その農家さんとの関係は、僕らが一から作ったものじゃありません。LPガス事業の長年のお客さまでもあったんです。KOBIRAグループが114年の歴史の中で長く育ててきた信頼があるからこそ、「輸出はしない」と言っていた方が、初めて首を縦に振ってくれることもあるんです。
池田 お茶の輸出が決まれば、加工にガスのエネルギーも使ってもらえる。お茶農家さん、ガス事業部、グローカルビジネス事業部、三者が同時に得をする未来を、事業部の枠を越えて描いている。まさに「チームで成果にたどり着く」だと思います。
花香さん これからは、もっと地元のものに力を入れたいですね。鹿児島や九州には、いいものを持っているのに、疲弊してしまっている作り手がたくさんいる。そこをお手伝いしたい、というのが、いまのいちばんのモチベーションです。

海外のパートナーとタッグを組んで
日本と鹿児島の宝を世界に届けていきます
未来の仲間へ
池田 特に花香さんは、いままでたくさんの会社を見てきたと思いますが、改めて、KOBIRAで働いて感じていることを教えてもらってよいですか。
花香さん 僕はもともと外資系企業で、アメリカのものを日本で売る仕事をしていました。前職を退職し、子どもの受験を手伝う形で、次の仕事が決まっていないまま鹿児島に移ってきた。入社のきっかけは、たまたま中学の同窓会で、KOBIRAの勘太社長を知る友人に「相談してみたら」と言われたのが縁です。前から、今までとは逆に「日本のものを海外でどう売るか」に興味があった。そこにこの話が来たんです。
いま思うのは、「食」に関われるのはいいな、ということ。AIがどれだけ進んでも、「このお茶、美味しいね」という体験は、なくならない。しかも円安のいま、海外から見た日本の食品は大きなチャンスです。その挑戦を、鹿児島のもので、自由にやらせてもらえる。これほど面白いことはありません。
池田 お二人は、これからどんな人と一緒に働きたいですか。
花香さん まず、英語は必須です。抽象的に話せるだけじゃなく、ビジネスをちゃんとクローズできる人。そして、フットワークが軽くて、海外のカルチャーの違いを面白がれる人。自分のネットワークを広げるのが好きだと、なお強い。肩書きより、隣で汗をかける人。世界と、地元と、両方を好きになれる人ですね。
黒木さん 想定外を面白がれる人。そして、一人で抱え込まずに、ちゃんと仲間に投げられる人です。やりたいことと、自分の芯を持っている人なら、この船はきっと面白いはずです。
池田 ── ありがとうございました。
「いちばん結果を出しているチームが、なぜ、いちばん楽しそうなのか。」
その答えはたぶん、余裕があるからではありません。一人で戦っていないからです。社外に超えるべき壁があって、誰かが前で交渉している間、必ず誰かが後ろで手配を回している。楽しさの正体は、たぶんこれです。
グローカルビジネス事業部の仕事は、決して楽ではありません。想定外が日常なので、整いきったマニュアルも作れない。それでも ── 地方から世界に挑む手触りを、これほど味わえる場所は、そう多くないはずです。
もし、この空気に少しでも心が動いたなら。
現在、KOBIRAでは紹介したグローカルビジネス事業部のチームで一緒に働く仲間を募集しています。気になった方は、まずは気軽にお話ししましょう。
── 最後にひとつだけ。二人の話を聞き終えて、「このチームで働いてみたい!」と思ってしまったのは、聞き手だったはずの私自身でした。この記事を読んでくれた人と、いつか続きの物語を書けたら。そう願いながら、ここに置いておきます。