展示会の会場は、独特の空気がある。
大きなホールに、さまざまな会社がブースを並べている。来場者はそれぞれ何かを探して歩いている。「これが使えるかもしれない」「こういう解決策があったのか」——期待と好奇心が混ざった顔で。
ディレクターにとって、展示会は最高の仕事場のひとつだ。
飛び込み営業とは根本的に違う
展示会の出会いは、飛び込み営業とはまったく違う。
飛び込み営業は「こちらから押しかける」。相手は構えるし、話を聞く気になっていないことも多い。売る側と買う側という対立構造が最初からある。
展示会はそうじゃない。来場者は「何かを求めて来ている」。何かに困っていて、解決策を探している。だからブースで話を聞いてもらえたとき、最初から「どうすれば役に立てるか」という会話ができる。
そこには売り込みではなく、対話がある。
「これで解決できるかもしれない」という瞬間
ブースで話していると、ときどき相手の目が変わる瞬間がある。
「実はうちはこういう課題があって……」と話してくれたとき、こちらの技術やサービスがその課題にぴったり当てはまる——その瞬間、相手の表情が「ん?」から「それ、詳しく聞かせてほしい」に変わる。
その変化を見たとき、ディレクターは「プロジェクトが始まるかもしれない」という予感を感じる。
それは売上の計算ではなく、純粋に「この人の課題を解決できるかもしれない」というワクワクに近い。
一枚の名刺がプロジェクトになるまで
展示会でもらった名刺は、そのままにしておくと「名刺」で終わる。
でも翌週連絡して、詳しく話を聞いて、課題を整理して、提案を作って、また話し合って——という積み重ねの中で、「名刺」は「プロジェクト」に育っていく。
その過程がディレクターの本領だ。「何を作るか」をゼロから一緒に考え、「どうやって実現するか」を形にしていく。そのプロセス全体をデザインするのがディレクターの仕事で、それが展示会の偶然の出会いから始まることがある。
「最初は展示会で話しかけてきた人だったのに、今や3年続いているクライアントになった」——そういう関係が、この仕事の豊かさだと思っている。