ディレクターの仕事で一番難しいのは、技術でも段取りでもなく、コミュニケーションだ。
エンジニアとクライアントでは、言葉が違う。大事にしているものが違う。物事の見え方が違う。その間に立って、両者が同じ方向を向いている状態を保つ——それがディレクターの核心だ。
エンジニアとの話し方
エンジニアとうまく働くために一番大事なことは、「曖昧な指示を出さないこと」だ。
「いい感じにしてください」「ユーザーが使いやすいように」「早めに」——これらはエンジニアを困らせる言葉だ。何をすればいいかが明確でなければ、手が動かない。
エンジニアに伝えるときは、「何を」「どういう状態にするか」「いつまでに」を具体的にする。「ログイン画面のエラーメッセージを、入力フィールドの直下に赤字で表示する。今週金曜日のレビューまでに確認できる状態にしてほしい」——このくらい具体的だと、動きやすい。
また、「なぜそれが必要か」も伝えると、エンジニアは自分で判断できるようになる。理由を知っているエンジニアは、仕様に書かれていない細部も適切に判断できる。
クライアントとの話し方
クライアントとの関係で大事なのは、「期待値を管理すること」だ。
「できます」と安請け合いしない。「難しいです」とだけ言って終わりにしない。「今フェーズではこの範囲で進めて、これは次に回しましょう」という形で、代替案とセットで話す。
クライアントが怒るのは、「できなかったとき」ではなく「聞いていなかったとき」がほとんどだ。事前に「これはリスクがあります」と伝えてあれば、実際にそれが起きたとき一緒に対処できる。サプライズをなくすことが、信頼関係を作る。
「伝えた」と「伝わった」は違う
メールを送った、議事録を共有した、Slackに投稿した——それは「伝えた」かもしれないが、「伝わった」とは限らない。
大事な情報ほど、「相手が理解しているかどうか」を確認する。「ご確認いただけましたか?」「この方向でよろしいでしょうか?」という一言が、後のすれ違いを防ぐ。
特に重要な決定事項は、口頭で話した後に文章でも残す。「言った言わない」を防ぐのではなく、「理解のすれ違い」を防ぐためだ。
「悪い知らせ」を早く届ける
プロジェクトで問題が起きたとき、報告を遅らせたくなる気持ちはよくわかる。「もう少し状況が整理できてから」「解決策が見つかってから」という気持ちだ。
でも、悪い知らせは早く届けるほどいい。
早く知れば、クライアントも一緒に対処を考えられる。遅く知れば、選択肢が減っている。ディレクターが「悪いことを隠した」という不信感が、その後の関係に影を落とす。
「まだ解決策はないですが、こういう問題が起きています。一緒に対処を考えさせてください」——この一言が言えるかどうかが、プロとしての誠実さを示す。
コミュニケーションは「技術」
コミュニケーションが得意か苦手かは、才能ではなく習慣だ。
どう伝えれば相手に届くか、どう聞けば本音が出てくるか——それは経験を積みながら少しずつうまくなっていく。最初からうまくやる必要はない。「うまく伝わらなかった」と気づいたとき、次にどうするかを考え続けることが、コミュニケーションの技術を磨く唯一の方法だ。