キリングループでは、主体的に挑戦する社員一人ひとりを支援する様々な制度やプログラムがあります。その中で、「新たな価値創造」を目指して取り組んでいる「キリンビジネスチャレンジ」では、誰もが新規事業アイディアを形にし、事業化を目指して挑戦することができます。
そこで今回、キリンビバレッジにて営業職や営業企画を務めつつ、ビジネスチャレンジに2度挑戦した榊原さん(写真左)、またビジネスチャレンジを通じて事業化を行い、現在はビジネスチャレンジの事務局も務める田中さん(写真右)に、挑戦者としてどのようにビジネスチャレンジに挑んだのか、またキリンがビジネスチャレンジを行う理由や価値などについてお話いただきました。
業務の傍ら1年で約90名にヒアリングを実施。ビジネスチャレンジへの挑戦を、上司含めてまわりが応援してくれた
写真_榊原
―― 榊原さんがビジネスチャレンジにエントリーしようと思ったキッカケを教えて下さい。
榊原:田中さんを含め、キリングループのメンバーが有志で立ち上げた『キリンアカデミア』が中心となって企画した、新規事業創出ワークショップ『未来ゼミナール』に参加したことがキッカケでした。
キリンアカデミアでは、社外の方を招いたイベントなども開催していたため、そうしたイベントに参加したりする中で、いろいろと発見があり、新しい知識が身についていくことが刺激的で楽しかったんですね。
そして、もともと新規事業立ち上げに興味があったというわけではなかったのですが、「今回も新たな刺激が得られるだろう」と期待して新規事業創出ワークショップに参加しました。
そのワークショップではチームを組み、3ヶ月間かけて自分たちで設定した課題解決に向けて取り組んでいくのですが、そのときは顧客課題の発見までたどり着けたものの、解決に向けたアプローチができず、消化不良に終わってしまいました。
そこで「このまま終わりにしたくない」と思ったことが、キリンのビジネスチャレンジにエントリーすることを決めた理由です。
そしてこれまでに2回ビジネスチャレンジにエントリーしていまして、1回目は一般論的な小綺麗なアウトプットしか出せず、もやもやした形で終わってしまいました。
そこで2回目のビジネスチャレンジでは、自分たちが考えている仮説が実際に正しいのかどうか、顧客となる方々にヒアリングを重ね、仮説検証を繰り返していき、事業設計を見直していくというプロセスを大切にして進めていきました。
田中:キリンアカデミアは、事業会社や部署、勤務場所なども関係なく、また年齢、世代も関係なく誰もがみな等しく学べる社内大学として、2019年に有志のメンバーでつくられました。
そして、毎月イベントを開催していく中で、新規事業立ち上げの練習ができるようなものをやろうということで、他社も巻き込んで会社横断型の新規事業創出ワークショップを企画したんですね。もちろん業務外でやる形なので、予算がつくわけでもなく、自己啓発的な取り組みでした。
ただ、そのワークショップでは何もない状態から一歩目を踏み出すということに重きを置いていまして、ワークショップで出たアイデアをブラッシュアップしてビジネスチャレンジに出してもいいですし、キリングループ関係ない他の会社の有志参加者もいるので、それぞれの会社のコンテストにも自由に出していいよ、という形にしていて。
参加者の方々が、新規事業開発の一歩目を踏み出せるようなワークショップを目指して、運営をしています。
写真_田中
―― 榊原さんのチームでは今回、顧客へのヒアリングを重視し進めていったとのことですが、具体的にどういったことを意識して進めていったのでしょうか?
榊原:具体的なソリューションを検討する前に、できるだけ多くの人数にヒアリングを行うということに注力して進めてきました。今回のプランの顧客像として想定していたのが、味覚障害を患うがん患者の方々だったのですが、チームメンバーのご家族や社内の方々、また実際の患者含め、1年でおよそ90名ほどの方々にヒアリングをさせていただきました。
実はヒアリング前は、味覚障害を患っているがん患者の方は身近にいないと思っていたんですね。しかし対象となる方を探していく中で、友人のご家族やパートナーの中にがん治療による味覚障害を経験している、経験したことある方々がいて、事業プランをお話すると「事業化することを心から願ってます」と言ってくださったんですね。
自分のまわりの身近にいる方々からそう言ってもらえたのはとても嬉しかったですし、ヒアリングを重ねていくにつれて、ビジネスコンテストに参加しているからやるというのではなく、身近な人の課題を解決したいという使命感に変わっていきました。
―― ヒアリング活動含め、業務の傍らでそうしたビジネスチャレンジの準備を進めていくことは大変だったと思いますが、まわりからの反応はいかがでしたか?
榊原:1次審査、2次審査と準備を進めていく中で、「頑張ってるね」と声をかけてもらう機会が多くあったりと、まわりのメンバーは私のチャレンジを応援してくれていました。
そのため、本業以外のことをやっているからと肩身が狭い思いをすることはありませんでしたし、関係各所に対して事務局からもフォローをしてもらったりと、終始前向きな気持ちで取り組むことができたなと思っています。
田中:本業の仕事はちゃんとやっているという前提があるからこそ、参加者の上長もみな理解をしてくれていましたし、むしろビジネスチャレンジでの経験を業務にも還元してくれるだろうと期待してくださっていました。
ビジネスチャレンジを通じて価値創造にチャレンジした人財が増えること自体が、キリングループ全体の価値向上に繋がっていく
―― これまで2回参加されてきた中で、榊原さんはビジネスチャレンジに参加することの価値をどのように捉えていますか?
榊原:3つありまして、一番の変化は顧客視点が培われたことです。イノベーションを生み出すためには顧客視点を持つことが重要ですが、はじめの頃はついつい「飲料の売上に繋げられないか」といった事業側の視点で考えてしまったり、ソリューションありきでアイデアを出してしまいがちでした。
しかし、当然ながら顧客の痛みを伴う課題を解決するためには、飲料が必ずしもソリューションではないでしょうし、キリンとしても飲料にこだわった事業だけを推進しているわけではありません。
ビジネスチャレンジに参加したことで、そうしたことにあらためて気付かされ、回数を重ねるごとに「これは本当に顧客が求めていることなのか」と考えられるようになり、プロトタイプを顧客となりうる方へ見せて、顧客理解の解像度を高めていくというアプローチを取るようになっていきました。
また2つ目が、通常の業務では持てなかった広い視野を持てるようになったことです。これまでは自身の視野がどうしても目の前の業務の範囲内、特に清涼飲料ビジネスに収まってしまっていましたが、キリングループとしてどう考えるべきかと、広い視野で物事を見て考えられるようになったと感じています。
そして3つ目が、キリングループ内での多様な繋がりを持てたことです。キリングループでは飲料だけでなく、医療やヘルスサイエンス領域の事業も展開しています。
そしてビジネスチャレンジではそうした他のグループ会社のメンバーとチームを組んで進めていったのですが、事業領域が違えばマーケティングの手法も異なるため、自分では思いつかないようなアイデアが生まれるなどし、とても刺激的でした。
たとえばキリンビバレッジではマスマーケティングが主流ですが、医療用医薬品の研究開発などを展開する協和キリンでは、どこの病院のどの医師にアプローチするかといった発想で進めていきます。
そうしたビジネスモデル含め、様々な違いのある他のグループ会社のメンバーとの出会いは、自身の新たなアイデア創出に繋がっていくと感じています。
また、社会が大きく変化しているいま、これまで通りのやり方を継続するだけでは成長できないからこそ、そうした多様性ある環境で新しいビジネスモデルを生み出していくということの重要性を自分ゴト化して考えられるようになったと感じています。
―― 運営側として、田中さんはキリンがビジネスチャレンジを行う意味や価値について、どのようにお考えでしょうか?
田中:この10年で誰もがスマホを持つようになったり、コロナ禍でリモート環境が当たり前になったりと、いまは変化が激しく、ずっと同じことをしているだけでは難しい時代だからこそ、キリンでは経営のひとつの基本方針として「新たな価値創造」を掲げており、キリンが一丸となってイノベーションを起こしていくことを重視しています。
新規事業開発の部門ももちろんありますが、会社として強くなっていくためには、一部の人たちだけで進めるのではなく、会社全体で新しいことにチャレンジしていく風土をつくっていくことが重要です。
そのため、キリンのビジネスチャレンジはキリングループ内からアイデアを募り、実際に事業化をしていくための、新規事業開発のプラットフォームのような位置づけだと捉えています。
また、事業化できなくても、ビジネスチャレンジに参加して新たな価値を生み出そうとチャレンジする人たちが増えていくことが、キリングループ全体の価値向上に繋がっていくと考えています。
実際、ビジネスチャレンジを経験した方々はフットワークが軽く、顧客の課題解決のために情報が足りないと思えば、すぐにお客様に聞きに行くというのを当たり前のようにやっています。しかし、そうしたことは当たり前のようでも、なかなか全員が同じようにできるわけでもありません。
ビジネスチャレンジを通じて新規事業開発の経験者が増えれば増えるほど、どの部署でも、どんな業務でも変革を生み出していく人財が増えていき、キリングループが強い会社になっていくことに繋がりますし、大きな価値であると感じています。
「やりたい」という想いを誰も否定しない。挑戦者を応援し、サポートする文化があることがキリンの魅力
―― ビジネスチャレンジ以外にも、キリンには誰もが挑戦する風土・環境があると感じたエピソードがあれば教えて下さい。
田中:私含め同期メンバーでキリンアカデミアをつくったときも、まわりが「そういうのをやりたかった」と応援してくれたり、手伝ってくれたのですが、役員陣も応援してくださったんですね。
キリンアカデミアでは社外の人も招いたイベントを開催しているのですが、そうした社内からの応援のおかげで、イベントは毎回100名近い参加者が集まるようになり、規模が拡大するにつれ、巻き込み範囲も拡大していきました。今では社内外の有識者・プロフェッショナルな方が無償で参加してくれたりと、非常に良い流れをつくっていくことができました。
こういった何か新しいことをやるというときに、有志の活動であっても役員陣含めてみんなが「どんどんやっていこう」と応援してくれるというのは、本当にキリンの良さだと感じています。むしろ「やるな」と言われたことが、今まで一度もないんですよ。それくらい、やろうと思えば何でもできる環境がキリンにはあります。
榊原:やりたいと思ったことを否定から入らずに聞いてくれますよね。キリンビバレッジでも、ペットボトルのキャップを集めてキャップアートとして展開するという今まで誰もやったことがない企画を実施したことがあったのですが、本社企画の施策とかではなく、いち営業メンバーが考え、統括本部長に相談して「いいね」と言ってもらえたことから実現しました。
このように、「やりたい」という強い想いがあれば、誰も否定しませんし、時にはどう実現するかを一緒に考えてくれたりと、社員のチャレンジを応援してくれる環境があります。
また、副業や社外活動にも寛容です。私も自身が社外に通用する人財なのか、自身の成長実感について悩んでいたときがあり、お世話になっていた先輩に相談したところ、「副業してみたら」と助言をもらったんですね。
そこで現在、あるNPO法人のプロジェクトに参加しています。そのプロジェクトでは、ビジネスチャレンジで培った経験と同様に、課題解決のために顧客ニーズを理解し、構造を明確にした上で、どのようなアプローチをすべきかを多様なメンバーで検討しているのですが、こういった経験は現在従事している業務にも役に立っています。
そのことを上長に伝えたら、いいねと喜んでいただけて、とても嬉しかったのを覚えています。そういった様々なチャレンジを、上長も応援してくれるというのはキリンの良さだと感じています。
―― その他、どういったところにキリンの魅力を感じていますか?
田中:ビジネスチャレンジなどもそうですが、様々な人財育成プログラムがあったりと、学ぼうと思えば学べる機会がたくさんあるということです。そうした学びは自分の部署でも活かせますし、次のキャリアに繋げていく学びも多くあると感じています。
また、社内にはいろいろなスキルを持ったプロフェッショナルが集まっています。たとえばAIを使って何かやりたいと思えばAIに詳しい人がいたり、法律面で解決したいことがあれば法務の方が調べてくれたりするんですね。
そのため、何か新しいことにチャレンジするというときに、ひとりだったら一歩目を踏み出すのが大変なことでも、各方面のプロフェッショナルたちが嫌な顔せずに時間を割いてサポートしてくれるからこそ、チャレンジしたいことを前に進めていけるなと感じています。
榊原:あとは飲料メーカーとしての長年の信頼があるからこそ、ヒアリング等をお願いした際に快くお受けいただけることが多いです。これがもし無名の会社であれば、お話を聞かせてくださいと連絡しても、なかなかアポイントメントに繋がらないことも多くあると思います。
キリンという会社の信頼があることで、聞く耳を持ってもらえますし、顧客ヒアリング含め、いろいろと外部の方との接点を持てるというのは、とても大きな価値であり、魅力だなと感じています。
―― 最後に、おふたりの今後の展望を教えて下さい。
榊原:現在は新しい部署に異動したばかりのため、まずは地に足をつけ、会社に貢献できる人財になりたいと思っています。
そして外部環境がものすごく変化するいま、既存のビジネスモデルを継続するだけでなく、新たな価値創造が重要であるということを日々実感しています。そのため、顧客ニーズを正しく理解し、持続可能なビジネスを生み出せるようなことに携わりたいと考えています。
また、外からの刺激は私にとって大きなモチベーションになっているため、これからもキリンの他グループ会社の人たちと一緒にプロジェクトを進めていったり、社外活動を通じて自らの知見を広げ、外から得られたことを自社にも取り入れていきたいと考えています。
田中:私は事務局としてだけでなく、自分自身も2019年にビジネスチャレンジに挑戦し、2022年4月に事業化しています。そのため、お客様に価値提供できるよう、まずは事業をしっかりと軌道に乗せていきたいと考えています。
また長期的には、みんなの可能性を取りこぼさない、前向きに働ける社会をつくっていきたいと考えています。実際にビジネスチャレンジの事務局を担当していて、多くの人たちが新規事業開発を通じて可能性を広げていっているのを見ていて、とても面白いなと思っているんですね。
そのため、まずは自分自身が事業化でつまずいたことなどをしっかりと知見として残し、他の誰かが挑戦するときの役に立つことができればと思いますし、そうした知見を社内だけでなく社外にも発信していき、日本全体で新規事業をうまく進めていける社会を自分の人生をかけてつくっていければと思っています。