九州の学生が集まるハッカソン「ガバイソン」。第9回となる2026年夏は、9月3日から4日の1泊2日、佐賀県佐賀市富士町のSAGA FURUYU CAMPで開催しました。主催はガバイテック、運営は木村情報技術株式会社とカラビナテクノロジーです。集まってくれたのは43名、12チーム。参加費は無料、宿泊とごはんはこちらで用意しました。
この記事は、当日のレポートであり、同時に、これから働く場所を選ぶエンジニア志望のみなさんへの手紙のようなものでもあります。少し長いですが、よかったら最後までお付き合いください。
今回のテーマは「新規事業とマネタイズ」
動くものを作るだけでなく、誰からどうやってお金をもらうのかまで考えてもらう。今回はそんなテーマにしました。プログラミング言語は自由。この機会に新しい言語を触ってみてもいいですよ、とだけ伝えています。
なぜビジネスの話まで入れたのか。AIを使えば、プロトタイプはある程度かたちになる時代になりました。速さだけを競っても、そこで差はつきにくい。それなら「何を作るか」に向き合ってもらったほうが、きっと持ち帰るものが多いはずだと考えたからです。
ふたを開けてみると、みなさん口を揃えて「技術よりビジネスのほうが難しかった」と言っていました。アイデアは出る。でも、競合をどう見るか、誰に届けるか、いくらなら払ってもらえるのか。手が止まるのは実装ではなく、その手前でした。
ある学生さんは、こう書いてくれました。真面目に新規事業を作ろうとすると、難所はアイデアではなく競合とマネタイズだった、と。別の方は、AIが使えても、それを扱う企画力や設計力、出てきたものを正しく判断する力がなければ前に進めないと実感した、と振り返っていました。
実はこれ、私たちが普段の仕事でぶつかっている壁とまったく同じなんです。何を作るべきかがはっきりしないところから決めていく。難しいけれど、一番おもしろいところでもあります。
1泊2日で、ここまでやるのかと驚きました
2日目の発表会では、12チームがそれぞれの答えを持ってきてくれました。ゲーム内課金の実装まで作り込んだチーム。多言語対応に踏み込んだチーム。AWS上で問題生成のパイプラインを動かしたチーム。手元のWindows環境でローカルLLMを動かしてみせたチーム。正直、驚きました。
しかも、鋭い指摘もありました。AIのおかげで全体のレベルは上がっているけれど、似たようなUIが増えていて、これからはデザインへのこだわりで差がつくのでは、と。作り手としてそこまで見ている学生さんがいることが、なんだかうれしかったです。
温泉と、夜食と、シャッフルディナー
会場のSAGA FURUYU CAMPは、古湯温泉のなかにあります。詰まったら温泉に入れる、という贅沢な環境。それもあってか、深夜まで手を動かすチームが続出しました。「初めてのハッカソンで、まさか徹夜するとは思いませんでした」という感想が、いくつも届いています。
私たちが力を入れたのは、実は開発以外の時間でした。初日の夕食は席をシャッフルして、パーソナルマップで自己紹介から。開発中はメンターが各テーブルを回る「健康診断」の時間をつくり、進み具合と困りごとを一緒に確認しました。夜食の差し入れは、切らさないように補充し続けました。
参加者は九州じゅうから集まります。大学院、大学、高専、専門学校と所属もばらばら。初対面同士の混合チームもあります。だからこそ、最初の30分でどれだけ話せる空気をつくれるかが大事だと思っています。
アンケートでは、シャッフルディナーと差し入れの評価がとりわけ高く、「初対面なのにたくさん話せた」「質問しやすい雰囲気だった」という声が並びました。「メンターの方から声をかけてくれたので、緊張がほぐれました」という一文には、こちらが救われた気持ちになりました。
もちろん、うまくいかなかったこともあります。開発が忙しくてチーム外と交流する時間が足りなかった、メンターと話す回数がチームによって偏っていた。そんな指摘もいただきました。交流のための場なのに、開発の熱がその時間を押しのけてしまう。ここは次回への宿題として、しっかり持ち帰ります。
一番、胸に残った言葉
たくさんの感想をいただいたなかで、運営として一番刺さったのは、この振り返りでした。
周りがあたりまえのようにAIを使いこなしていて、自分の技術不足も、コミュニケーションの弱さも、考えの甘さも痛いほど感じた。実力をつけて、またここに戻ってきます。
ほかにも、初めてのチーム開発で連携の難しさと大切さを知ったという方、仕様書をみんなで書いてから実装に入ったら認識のずれが減って進めやすかった、という具体的な学びを持ち帰った方もいました。
悔しさをちゃんと言葉にして、次につなげようとしている。そういう言葉が生まれる場をつくれたことが、私たちにとって一番の収穫でした。ハッカソンは、勝った人だけが得をするイベントではないと思っています。
これからエンジニアを目指すみなさんへ
カラビナテクノロジーは福岡に本社を置き、北九州、東京、大阪、宮崎、奈良、仙台に拠点がある開発・DXコンサルティングの会社です。ガバイソンのほかにも、下関、長崎、奈良、川越など、各地でハッカソンやテックカンファレンスの運営に関わっています。
どうして会社がここまで手間をかけるのか。地方にも、おもしろい開発の機会はちゃんとあるんだと、実際に見てほしいからです。私自身、北九州にUターンして働いています。地元で腰を据えて技術を仕事にしていく道はある。それを、言葉ではなく場で伝えたいと思っています。
採用の話をすると、私たちが一緒に働きたいのは、今回みなさんの手が止まったあの場所に向き合える人です。何を作るかを自分で決められる人。わからないことを、わからないと言える人。そして、悔しさを次の一歩に変えられる人。技術は、あとからいくらでもついてきます。
メンターの社員が現場でしていたのも、答えを渡すことではなく、どこで詰まっているかを一緒に探すことでした。これは普段の仕事の進め方とほとんど同じです。会社の雰囲気を知りたいなら、説明会よりも、こういう場での社員の様子を見てもらうのが早いかもしれません。
インターンシップ、会社見学、カジュアル面談は、いつでも受け付けています。「まずは話を聞いてみたい」くらいの気持ちで大丈夫です。次のガバイソンに参加者として来てもらえたら、それもとてもうれしいです。
最後に、本音を少しだけ。ハッカソンの2日間で人が変わるなんてことは、たぶんありません。でも、自分より少し先を行く人を目の前で見て、悔しいと思う経験は、ひとりで勉強していてもなかなか手に入らないものです。その一回が、その後の数年を静かに変えていくことがある。毎年この場をつくり続けているのは、そんな瞬間に立ち会えるからです。