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ギャンブルではない!?鉱山探査も経験した多彩な経歴のエンジニアがスタートアップを選んだ理由とその魅力とは。

春原広明 / AIエンジニアリング部

京都大院卒業後、シマノで品質管理と6σ活動を行い、東南アジアと中国工場の品管を歴任。
転職してインドネシアの鉱山開発ベンチャーで探鉱事業を統括する。
帰国して、Schindler EVでメンテナンスのDXおよび、M&A後統合やERP導入PJTに従事の後、Winterthur G&Dで製造技術支援や、業務システム開発運用を行う。
その後、キャディで関西拠点長として、物流・品質管理オペレーションのマネジメントを経て、現在スタートアップ2社目。

前職ではどのようなお仕事をされていたのですか?

フツパーの前に、5社を経験しているので、順番に話しますね。

大学院卒業後はシマノというメーカーにいて、統計的な品質管理とか、今でいうところのデータサイエンスのようなことをやっていました。

工場に自動的にデータを集めてデータベースに入れていくシステムを組んでおいて、それを品質管理の人がアクセスして分析する、そういう仕組みをつくるところから分析するところまでをしていました。製造の現場の人も自分で分析できるように、分析方法や統計解析の方法を教える仕事もやっていました。

海外工場のシンガポールと中国に行ってたんですけど、海外の若い人たちはすごい吸収に貪欲で、ちょっとやりかたを教えると目をキラキラ輝かせてやってくれるんで、教える方もすごい楽しかったですね。日本と仕事に対するハングリーさが違うと思いました。フツパーも結構そういう面があると思っていて。日本では、大体スタートアップの方が大企業よりも新しいことに対して貪欲な場合が多いんですけど、それはフツパーも例外ではなく、新しいことに対してすごく貪欲ですね。

品質管理は、工場で実際にものに触りながら現場のものづくりに携わってやるような仕事でした。なので、その時からフツパーのやっているような工場での検品検査の分野には課題を感じていましたね。

どのようなところを課題に感じていたのでしょうか。

いかに品質管理にかかるコストを下げてより精度の高い品質管理をしていくかというのがベースの仕事だったのですが、日本企業ってやりすぎなくらい品質第一というところがあって。

経済合理性がなくても、言われたらとりあえず追加で検査するみたいな風潮があったので、過剰品質になっている場合もかなりあると思っています。

そういうのをもうちょっと合理化できないかなって思っていました。というのも、統計的に経済合理性のあるコストと品質のバランスを取っていかないと、よりコストの安い中国とかに、日本は完全に負けてしまうんですよね。そういうところを課題に感じていました。

次の鉱山開発というのはどういった経緯で?

妻の知り合いで、インドネシアの錫がとれる島の権利を持っていて、鉱山で錫の鉱床をみつけたいという夢を持っている人がいたんです。

そのオーナーは変わった人で、できるだけ自分のアイデアでやりたいということで、鉱山の知識や経験がない中国語と英語ができるエンジニアを探していました。その条件に自分が当てはまるということで妻から紹介してもらって入社しました。

そこではジャングルを探検しながら、サンプルを集めて分析して、どこを掘るのがいいかなっていうレポートを作る仕事をしていました。

完全に統計の世界で、集められたデータからいかに統計的に正しい確率、もっとも確率が高い場所を探し出せるかみたいな世界でした。なので、前職でやっていた品質管理の知識がそれなりに役に立ちましたね。

鉱山開発ってギャンブルみたいなイメージがあると思うけど実は全然そんなことなくて。

日本ではあんまりほんとに現場でっていうのはないですけど、けっこう鉱山ビジネスというのは優秀な人もいっぱいいて、なかなか大きなビジネスです。

統計で掘るべき場所がわかるんですね!

勘で掘ったり、犬に探してもらったりダウジングを使って掘る場所を見つけている訳ではないんですよ(笑)最初は歴史とか地質を見て、地質にこういう変化があったからここにあるはずだみたいなところから始まって、そうなったら実際に掘ってみます。

掘りすぎたらお金もかかるし怒られるので、最初は100m間隔くらいで掘ってみて、ちょっとでも可能性があるなと思ったら掘る間隔を狭めて掘る数を増やしてデータを貯めていって分析して、実際ここに何トンありますみたいなのを計算して出すんですよね。

最終的にはやっている途中で錫価格が6割くらい一気に下がってしまったので、これは無理だとなって会社も倒産してしまいました。

今はまた錫の価格が高騰してきているので、誘われたらまた掘りに行くかもしれないですね(笑)

サソリにさされたことがあるとお聞きしましたが…!

おっとってバランス崩して手をついたら「痛い!」ってなって、見てみたらサソリがいたんですよ(笑)家の中で。とりあえず落ち着いてスリッパでサソリつぶして写真を撮って、現地の人に「刺されても大丈夫やつかな」って聞いたら、ほっときゃなおるって言われました(笑)放っておいたのですが、動くけど自分の手じゃないみたいな感じが三日ぐらい続きました(笑)

サソリって結構いるんですよね。部屋の中にも入ってくるし。ニワトリはサソリの毒が平気で、食べてくれるから飼ったらいいって言われたのですが、そのニワトリはすぐ野犬に食べられてしまいました。

サソリやハチに刺されることもあり、ライフラインも通っていませんでしたが、ジャングルの暮らしも楽しくて結構好きでした。

ですが、会社が倒産してしまったので、ビザもないし日本に戻ることにしました。

次のシンドラーエレベーターではどんな業務をされていたんですか?

シンドラーエレベーターは日本では評判が良くないのですが、世界的には信用がある、性能の良いエレベーターの会社です。英語が使える外資系で、ものづくりでエンジニアリングの技術が使える会社を探していたので入社しました。

当初の業務は、毎月あるエレベーターのメンテナンスをするプロセスを安全にかつ効率化して照準化して運用できるようにする、というものです。

バインダーに紙を挟んでチェックしていく方式をiPhoneで簡単に送信できるようにするようなシステムを作っていました。

そこで楽しくやっていたのですが、シンドラーエレベーターが日本から撤退することになりオーチスエレベーターに日本事業を売ってしまったんです。

なのでオーチスに転籍して、シンドラーのあらゆるシステムをオーチスに合わせるためのプロジェクトをずっとやっていました。シンドラーはドイツのシステムで、オーチスはアメリカのシステムなのでなかなか大変でした。

でもやはりアメリカの会社の雰囲気が自分にはいまひとつ合わないなと思っていて、もう少しヨーロッパ的な自由な会社のほうがいいなとなり転職することにしました。

それを期にUターンがてら東京から大阪に帰ってきて、スイスに本社がある船のエンジンの設計会社に入りました。日本も造船業が盛んなので、日本の造船会社に設計を売ったり、売った後の技術サポートをしていました。

ですが、造船業界自体がいまはあまり盛り上がってなかったのでだんだん暇になってきてしまって。もうちょっとエキサイティングなところに行きたいなと思い、スタートアップに転職することにしました。

スタートアップに転職するとき、給与のことはどう考えていましたか?

このくらいの社会人歴からスタートアップに転職するとなると、給与が下がる場合がほとんどですね。でもスタートアップがこれをカバーできる要素として、やりがいとか将来性の面があると思います。

給与は低くても、裁量が大きく、希望する領域や、チャレンジしてみたい新たな領域の経験が爆速で積めるというのはスタートアップの魅力ですね。自分の実力と会社の成長に応じて、給与があがるチャンスが大きいのも特徴の1つだと思います。

自分はよりエキサイティングな環境を求めていたので、その会社のビジョンの大きさとか、事業の新規性から、会社の将来性とか伸びしろを考えて選んでいました。

そこでキャディに入ったんですね。

はい。キャディは本社が東京で、倉庫がいろんな場所にあるのですが、私は関西の倉庫の拠点長をしていました。

業務内容は最初に勤めていたシマノでの品質管理の内容と近くて、倉庫でものを流して、検査して、出荷する、というプロセスのオペレーションを改善する仕事をしていました。

キャディはものづくりの会社ですが半分IT企業みたいな面もあるので、いろんな分析を使いました。

どういう分析を行っていたんですか?

何かを決めるときとか、いろんな場面で使っていました。キャディですごく良かったのが、全てのデータをとりあえずクラウド上のデータベースに入れていて、社員であれば誰でもそのデータベースにアクセスできるようになっていたところですね。

一見どうでもよさそうなデータでも意外と分析に使うことができるんですよ。

自分で仮説を立てて、検証に必要なデータを取ってきて分析して、こういう結果だからこうしようという決め方をするんです。

こうやって正しい分析をして出した結果は意見として強いので、意思決定の際もスムーズでした。いわゆるデータドリブンというやつをみんながやっていました。

データを集めるっていうのは結構大変なので、それにすぐアクセスできるっていうのはすごいですね。

そこからどのような経緯で、フツパ―への転職に至ったのでしょうか。

キャディには1年くらいいましたが、どちらかというとモノづくりそのものというよりも、モノづくり産業のことをどうにかしたいという方向性でした。

というのは実際のモノをつくるというよりも、モノづくり全体の経営とかそういう方向に軸足をおいていて、自分はそれよりもっと現場のモノづくりにフォーカスしたいなという想いがありました。

あとキャディは東京本社だったので少し距離感があって、こういう点でフツパーがいいなと思いました。

転職先はフツパーに絞っていたんですか?

製造業で現場を大事にしているところを探していましたが、フツパーじゃなければずっと前職に残るつもりでした。いくつかの候補のなかから決め手があってフツパーというよりは、フツパーに入るか入らないかという感じです。

面談したときにどんな印象をもちましたか?

キャディはモノづくりの現場改善よりは経営改善に軸足があって、という話をしていたときに大西さんが「フツパーは現場にしか興味ないです!」と言い切っていて(笑)

そこまで振り切らなくても!とは思いましたが、そこでフツパーの「現場で使えるものを作るんだ」という気持ちを感じました。製造業は経営ももちろん大事なんですけど、その前に現場だというのがすごく伝わったので、それは決め手になったかもしれないです。

入社当初の印象は?

基本スタートアップって仕組みとかが出来上がってなくて、ごちゃごちゃしてるものだと思っていたんですけど、それを再認識しました(笑)

自分のような社会人歴20年くらいの人で、大企業あるいはそれなりの歴史ある企業でやってきた人が初めてスタートアップ挑戦するんだってなったときは、こういうところを楽しめるかっていうのはポイントだと思います。

スタートアップへの転職を考えてる人は、ごちゃごちゃで自分が困った時にどういう風に対応するかは考えておいたほうがいいんじゃないかな。「前の会社ではこういう風にしていたのにここでは出来ていない」みたいなことを言うのではなく、優先順位を考えて一旦置いておけるかどうか。当然いつかは直すべきなんですけどね。今はごちゃごちゃのまま行った方が良くて、それより先に手を付けた方がいいことがあるというのをスッと理解できて、ごちゃごちゃを制することを楽しめる人にはスタートアップはとても合うんじゃないかなと思います。

多彩な経歴をもつ春原さんですが、フツパーで驚いたことはありますか?

かなりリアルな話になってしまいますが、AIが完成するしないに関わらず、試しにデータを集めますというレベルからお金を請求できるビジネスモデルがすごいなと思いました。

例えば最初の手付金30%、中間40%、納品して100%請求する、みたいなやり方はありますけど、初めからサブスクでお金をもらえるっていうのは不思議でした。

もしうまくいかなくてサブスクを切ることになったときに、金返せ!ってならないんだと驚きました。業界の慣習なのかうちの営業がすごいのか(笑)サブスクリプションという考え方が最近は一般的になってるというのもあるかもしれないですね。

入社前とのギャップはありましたか?

フツパーに入社して感じたのは、エンジニアが役割に関係なく研究者肌の人が多いということです。

フツパーのエンジニアはざっくり分けるとプロダクト開発とAIエンジニアに分かれます。プロダクト開発は最新の論文や本を読みながら、社内外のニーズを達成する新たな技術の開発をしたり、既存サービスの改善・メンテナンスを行う仕事です。一方でAIエンジニアは、実際に製造業の現場に行って、そこの製品に合わせて機材を選定しAIを実装するという業務です。

なのでプロダクト開発の人たちが研究者肌なのはわかるのですが、AIエンジニアでオペレーションをしている人たちも研究者的な、アカデミックな方向で考えているというのはいい意味でギャップでした。AIエンジニアだけど、新しいものを作りたいとかAIを作りたいとか、新しい制御を作りたいんだっていう人はそれをどんどんやってほしいと思っています。それってすごくいいことなので。でもそれをやりすぎるとビジネスにならなくなってしまうので、自分はバランスをとりにいくためにもビジネス面を意識してやろうと思っています。

普通の会社でここまでアカデミックな感じだと、そんなのいいからオペレーション回せって言われたりすると思うんですよ。新しいものを考えるよりも同じものをたくさん作って売るっていうのが儲かるうえでの最強のやり方なので。僕はそこまで新しいものをっていう気持ちはないので、そういう気持ちがある人がアカデミックな方に集中できるようにしたいですね。僕とか、同時期に入社した関東支社の廣谷さんはビジネスで考えてちゃんと利益が出せるようにっていうのは意識していると思います。

廣谷の記事はこちら
20年働いた会社を離れ、創業3期目のAIベンチャーへ!ベテランエンジニアの新たなキャリアとは? | AI Engineer
廣谷 貴志/関東支社 AIエンジニアリング部 部長群馬県出身。群馬大学工学部情報工学科を卒業後、パシフィックシステムにて画像処理検査システムの開発に従事。上流工程から、実装、現場導入、保守まで多...
https://www.wantedly.com/companies/hutzper/post_articles/462532

僕はちゃんとビジネスとして成り立つ共通の基盤をつくっていきたいです。どんどん新しいものも作ってもらいつつ、同じものをあちこちに同じ品質で安く納入できるように、そういうビジネス面の基盤を作るというようなイメージです。それはそれですごく楽しいですしね。

ビジネス的にするためには、例えばどのようなことをするのでしょうか。

いろいろな案件を同じ機材、同じシステムで行えるようにするという感じですね。

そうなると一気に部品が買えるようになりますよね。一度にたくさん買うだけで材料費がかなり安くなりますし、一個一個買うとき選ぶのにかかっていた時間を削ることができます。これが出来れば、フツパーのコスト力や競争力はぐんと上がると思います。

今フツパーでは具体的にどういうお仕事をされているんですか?

とはいえまだ入社して2ヶ月半くらいなので、OJT的に仕事を教えてもらいながら案件をもらったり、先輩社員の案件をパケットサイズにしてもらって仕事をこなしています。

分からないことはいろんな人に聞きながら、標準化面で自分がリードをとれるものはどんどんリードをとったり、簡単にコピペできるような共通システムを作りましょうっていうのを提案したりしています。周りと相談しながらそういう基盤を作っていっていますね。

これまでの仕事内容とは結構ちがうんですか?

そうですね、何らかのデータを集めて解析して結果を出すというところは一緒なんですけど、フツパーがやっているようなAIっていうのは自分が昔やってた統計解析とはだいぶ違うなと思います。

前職でデータを分析していた時は画像データではなく数字のデータだったので、そういう分析は手法がほぼ確立していて、わりと簡単なんですよ。一方で今フツパ―の仕事はデータ集めのために写真を撮るのも大変、分析する手法も複雑で、ポチポチボタンを押すだけではすまないし。いちいち勉強していかなきゃいけないんです。

ずっと新しい領域に挑戦されているんですね。

仕事って自分で選べないことがあるので、しゃーなしでやってる部分もありますけどね(笑)

ずっと同じことをしているとつまらなく感じてしまうので、そういう意味では新しいことをするのは好きかもしれないです。でもシマノから鉱山に行ったり、社会人歴が長くなってからベンチャーにいったり、大胆な挑戦に見えるものに関しては、実はかなり論理的に分析してから決断しています。メリットデメリットを考えてから総合的に判断してきました。

でも、もし選んだ後に間違えたなと思っても、自分次第で何とか出来るとも思っています。

1日のスケジュールを教えてください!

趣味がサイクリングなので、晴れていれば自転車出社です。フツパーのオフィスには、駐輪場はもちろん、お風呂まであるので、がちツーキニストにもうれしい環境です。1日のうちの2時間ほどですが、情報インプットを遮断して、自転車に乗る時間は貴重で仕事にもプラスだと感じます。アイデアがひらめくこともありますし。

9時過ぎ 天気がいいと自転車50分こいで出社。

午前中  新規案件向けの制御システムを Pythonでつくる。

12時  愛妻弁当を食べる。

13時  システム標準化に向けて、構想したり、社内調整したり。

15時  システム構築のために使うサービスを調査したり。

17時  新規案件向けハードウェアの実験をしてみたり。

19時半  無心で自転車こいで退社。

20時半  子供が宿題をしているので、晩ごはんを食べながら見る。

必要な時は現場作業に出ることもあります。けっこうメカ系のキャリアを歩んできているので、現場作業も実はスキです。その際は、さすがに自転車ではなく車移動です。

今後の目標を教えてください!

ビジネス周りに興味があるので生々しくなってしまうのですが、しっかり利益を出して、フツパーのサービスをスケールさせることができるような仕組みを作るっていうところです。

ビジネスとアカデミックの基盤を整えて、世界中に一気に出せるような仕組みを作りたいですね。

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