「撮像×AIで人を超える」光学設計のスペシャリストがAIの精度を左右する撮像について語る【社員インタビュー Vol.8】 | AI Engineer
山本泰弘/エンジニア学生時代は情報工学を専攻。動体解析やスポーツ動画像処理、医用画像処理等の研究を行い自身の小腸動画に画像処理をかける日々を過ごす。卒業後は製造業向けの画像検査装置をスクラッチ開...
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山本:学生の頃から画像処理の研究をしていて、画像検査装置を製造販売する会社に入社し、画像処理エンジニアのキャリアは大学含めると大体15年ほどになります。顧客ヒアリングを元に画像検査装置を作り、中小企業から大手まで幅広い企業様に導入させて頂いています。
山本の社員インタビュー記事はこちら↓
出原:僕は、経済学部を卒業後、フツパーでエンジニアインターンとして働いていて、21年8月に正社員として入社しました。最初は光学設計についてあまり知らなかったんですけど、今は山本さんから学びながらどんどん成長しているところです。よろしくお願いします。
出原の社員インタビュー記事はこちら↓
山本:デジタル画像に対して処理をかけることを「デジタル画像処理」と言うんですけど、従来は、カメラで撮影した画像に対してどのような処理を組み合わせて不良を検出するかのルールやどこまでのラインを不良とするかどうかの判定の基準値を人が決めていました。それに対して、画像認識AIは自動で特徴を抽出して、その画像自体がどんなものかや、更に画像内のどこにどんな不良があるか等を認識してくれます。
山本:そもそも画像処理分野が進展したものの1つが「画像認識」です。もともと数学や統計手法、信号処理等の手法に画像処理は助けられてきたのですが、今のような高い精度が出ない機械学習を使ったりもしていました。劇的に認識精度が上がったのは今から約10年前にディープラーニングが出始めた頃なんです。アルゴリズムだけでなくハードウェアの進歩にも助けられ進歩してきています。
山本:出原くん、説明いける? (笑)
出原:はい!光学設計とは「見たいものを見れるようにすること」だと思っています。見たいものを見れるようにするためにカメラや照明、レンズ等を選ぶんです。
現場の環境によっても設計が変わってくるので、例えば、現場が蛍光灯で明るく照らされていたりとか、現場に機材を設置できるスペースが全然ないとか、周りの環境も考慮しながら光学設計をしています。
山本:ちょっと補足すると、実は光学設計って一般用語ではないんですよ。一般的には「レンズ設計」が光学設計だと認識されていたりします。でも画像検査の業界では「カメラのインターフェースや通信規格なども含め、カメラやレンズ、照明の組み合わせを決めること」を「光学設計」と呼ぶと通じます。要は、人間の目に代わる部分を作ることだと理解していただければ。
山本:光学設計は画像処理の一部だと私は考えています。撮像が終わった段階で処理の6〜7割が終わっているような感じです。
実は、AIにおいて高い精度が実現できるかどうかは、撮像にかかっています。AIのアルゴリズムが進化してAIはどんどん賢くなっています。でもAIがもっと賢くなるための教材として使用する画像に、そもそも不良が写っていなかったら、AI自体がどれだけ賢くても不良を検出することはできないんです。それに加えて、AIは学習を重ねて精度を高めていくことができますが、カメラや照明はAIのように学習して進化していくことができません。だから最初にカメラや照明を設置した段階で「不良がハッキリと画像に写っている」状態を作ることが、AIの精度を高めるうえで最も根幹となるところです。
光学設計では、はっきりと不良が写るように、不良とそれ以外の場所の明暗さ(コントラスト)がつくようなライティングをしていきます。場合によっては前処理で画像処理を色々実施し判定前までもっていくところを、画像を撮るだけで8〜9割処理が終わっている段階まで飛べるのが光学設計の面白いところですね。画像撮影しただけなので処理時間もかかりません。1秒間に6~7個検査を求められる場合もあり、撮影だけで不良を強調させておくと画像処理やAI処理をかける時間が確保できるので、そういった面でも光学設計は大事です。
山本:そうですね。ノウハウは1番必要ですし、ひらめきが必要な場合もあります。ただ光を当ててカメラで撮るだけじゃなくて、対象不良の方向や大きさ、深さなどを元に照明の角度や高さを決めたり、ソフトで撮影した画像を合成したりと、ソフトとの組合せも含めて考える必要があるケースもあります。他には既存の照明では写らない不良に対して照明メーカと協創でこの世にない新しい照明を作ったこともあり、今までにない製品を生み出す機会もあります。
出原:ひらめきを吸収することは今はまだ無くて。というのも、今は光学設計の基礎を山本さんから学んでいる最中なんです。光学設計の基礎を知ってからじゃないと、ひらめくことも無いと思うので。
山本:確かに学び方としては、まず基礎を知ってもらうところからですね。フツパー内に光学設計に関しての研修資料やライティングの基本までは学ぶ環境が整っていますので、それを元に基礎を学んでもらう。そのあと実際の案件を通して、答え合わせしながら新しい気付きを感じて吸収していってもらう流れですね。
山本:そうですね。光学設計のノウハウは、案件をこなせばこなすほど身につくんですよ。フツパーのビジネスサイドは優秀な方が多くて、たくさん引き合いを取ってきてくれるので、色んなサンプルでライティングを試せるんです。だから、フツパーは光学設計を学んでいる出原くんのような人にとっては非常に恵まれた環境だと思います。
山本:お客様からサンプルを頂いて先輩に聞きながら撮影して身につけたり、光学設計に関する本を読んだりですかね。あとは材質によって反射率が異なったりもするので、そういった情報や人間の目に見えない紫外線や赤外線などの光の領域などの光学設計に関わることについてインターネットで調べたりもしています。
山本:カメラとかレンズに関しては、ある程度計算で決められるんですけど…。照明の光の当て方に関しては、実際に当ててみないと分からないことも多いですね。対象のワーク(お客様からもらったサンプル)の材質等にも影響を受けますし、どんな不良がどの角度でどう付いているかも関わってくるので。「どんな大きさで撮影しなきゃいけないか」とか「視野はどれくらい必要か」等は計算で出せるんですけど、照明の当て方については、照明を複数組み合わせたり、場合によっては可視光(人間の目で見える光) 以外も使ったりするので、そういったところは計算で出せない部分ですし、ある程度ノウハウが必要な部分でもあります。
山本:ありますね。例えばお客様からどうやっても肉眼で見つけにくい不良があり、これを何とか外観検査装置で自動化して検出したいと熱い要望を受けたので、お客様のお困りごとを解決しよう!!と意気込んで照明を選定して光を当てましたが全く見えず。
山本:ザ・トライアンドエラーって感じでしたね。その時は今までの先入観や既存の知識を一旦忘れて、ピントをわざとぼかしたほうが物体が大きく写るんじゃないかとかいうノリみたいな勢いでライティングをやりなおしました。
ピントをぼかすと確かに照明を当てた時に目視で見える場合も出てきましたが、まだまだ安定して見えなかったんです。そうなったら光の当て方を工夫しようとアルミの板に穴をたくさん開けて後ろから照明あてるパターン光みたいなのを試して、それもワークとの高さや穴の径で結果が変わるので様々な穴あきのアルミ板を作って高さを変えて、、、更にピントの合う位置を変えて、、、という感じでトライアンドエラーを重ねていくうちに、とある特定の組み合わせの時に不良がハッキリ見えることに気づきました。
某照明メーカさんに山本パンチングドーム照明のL・Rの見積もりくださいって言ったら通じますよ(笑)
山本さんのお名前の付いた照明もあるんですか!山本さんのお話を聞いてると、たしかに光学設計にはノウハウだけではなくひらめきも重要なんだなと感じますね。
山本:3次元で見れるようになる場合はありますね。「3次元」と「波長」そして「AI」。この3つが、近年の画像処理の分野でのトレンドと言われています。やはり1台のカメラで撮影すると2次元データになり高さ情報が失われますので、3次元だと簡単に検査できる場合も多いんです。そういった3次元で高速に撮影出来るカラーカメラや、ほかにもハイパースペクトルカメラというカメラもあります。こちらが波長の話になりますが、「波長」とは、電磁波の一つ分の波の長さのことで、この長さの違いを私たちは色の違いとして認識しています。通常のカラーカメラだとRGB(赤青緑)の3つの情報を混ぜて色を表現しますが、ハイパースペクトルカメラでは何百という膨大な波長情報を捉えることができるため、従来は困難だった見えない違いを計測・可視化することができます。このようなハードの出現で物体の品質検査や材質検査も容易に行えるようになりました。
出原:不可視光はやっぱり面白いなと思いますね。人間の目じゃ絶対に見えないのに、モノクロカメラで撮って赤外線や紫外線を当てたら「あれ、こんなに見えるんや!」ってびっくりするくらい不良が見えて、面白いです。
山本さんが先ほど仰ったように、日々色んなワークを撮影して数をこなしていく中で、「あれ?このワーク、前使った方法がそのまま使えるんちゃう?」と思ってやってみて、写真がめっちゃ綺麗に撮れた時は「おぉ~!」ってなります。今までやってきたことが自分のノウハウになっているのが感じられて、嬉しいです。
山本:光学設計だけじゃなくて、そのあと実際にAIを作るところまでやって、ちゃんと不良をAIが認識出来た時が面白いです。あと以前、照明をめちゃくちゃ工夫して、新しく照明を作ったことがあるんですけど、その時は今までの普通の照明では見えなかった不良が見えてお客さんと一緒に興奮しました。
山本:カメラや照明ってコストが高いので、なるべく最少のハードウェア構成でお客様の現場に導入することが、フツパーの「はやい・やすい・巧い」の実現にも繋がりますし、お客様のためにもなります。でもカメラ1台・照明1台といった最少の構成でAIを導入した場合って、人間が片目で、かつ瞬きせずに検査しているようなものなので、結構苦しい状況での戦いを強いられているんです。だから場合によっては3Dとか、カメラを2台以上使ったりした方が不良がよく見えることもあります。3次元で、カメラ2台以上の構成にしたり、光を反射して捉えるデジタルカメラではなくレーザーのような光を当てて物体の高さを捉えるようなカメラなどいろんな種類のカメラを使ったりとか。
お客様が検出したい不良をしっかりと検出できる精度を実現しつつ、かつ、なるべく最少の構成になるように光学設計を工夫するスキルを身につけることができれば、よりコストを抑えてAIをお客様の現場にご提供できるようになります。その他にも光学設計の知識は幅広い場面で使えますし、製造業の現場から検査工程がなくならない限り、光学設計に対するニーズは無くならないと思いますよ。
山本:よくお声がけいただきますよ。光学設計でカメラ100台以上設計したことある人はそんなにいないと思うので、面接とかで言ったら驚かれます。外観検査システムに携わる画像処理エンジニアって光学設計出来ない人も多いので、それができるだけで一気通貫でシステム導入までできるため、過去私が転職活動してきた感じだと全部出来る人は重宝されてるように感じました。1人採用したら画像検査装置を自社内で作れますからね。
生産管理も知ってる画像処理エンジニアということも関係あるかもですが、30歳くらいの時に1000万円のオファーをいただいたり、外資系コンサルティングの会社から「画像処理のところ分かる人少ないんだよね~」と内定を頂いたこともありましたね。結局全部断って、フツパーから2回勧誘メールいただいたのに飛びついてしまいましたが(笑)
出原:僕からも山本さんにお聞きしたいんですけど、光学設計を学ぶことにプラスして、他の知識も身につけるとしたら、どんな知識を身につけると市場価値の高い人材になれると思いますか?
山本:AIを作ったり画像処理をかけたりすること前提で光学設計を行うとすれば、AI構築や画像処理など、光学設計の次の工程について理解しているか否かでライティングの仕方はかなり違ってくると思いますね。コントラストの出方とか、大きくしっかり写ってるかとか、不良の写り方によって「この画像だったらこういう画像処理をかければいけるだろう」という判断がつくので。画像検査装置の分野では画像処理やAIの知識に加えて、光学設計の知識を持っているか持っていないかで、人材としての市場価値は違ってくるんじゃないかと思います。
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