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「働きやすい環境」ではなく「仕事に集中できる環境」GLが考えるダイバーシティと稼ぐ組織の作り方

GLナビゲーションが大切にしている価値観の一つがダイバーシティの推進です。
「働きやすい環境ではなく、仕事に集中できる環境を作る」
「組織の中心に若手を置き、経験者が支える風土に」
「多様性とは個々人との向き合いから生まれる」
このような発言をする代表取締役の神田の会社経営における考えや、GLナビゲーションにおける”ダイバーシティ”の中身についてお話を聞きました。


――まず、神田さんが会社経営においてダイバーシティを重視している理由を教えてください。

一つ目の理由は、優秀な人材を採用するうえで、競合とのバッティングを避けることができるからです。当社のようなまだまだ小さい会社の場合、多くの企業が求める人材を採用しようとする場合、ブランディングや知名度といった点では叶いません。

二つ目の理由は、様々なタイプのメンバーが揃うことが、一人ひとりの変化・成長につながり、組織の強化にも繋がると考えているからで。
また、多様な人々と一緒に仕事をすることが、私自身にとって純粋に楽しいということもありますね。

――”ダイバーシティ”という言葉は、例えば年齢や性別、価値観が異なっても尊重し合うといった意味合いで使われることが多いですが、GLナビゲーションにおける定義も同じでしょうか?

根底には、相手に対する尊重があります。

しかし、尊重といいながら、距離を取るだけ、触れ合わないだけではいけないと思います。
決して綺麗な表現ではありませんが、私が考える多様性やダイバーシティには、ある種の「ぶつかり合い」のようなニュアンスが含まれます。つまり、自分の考えをしっかりと主張し、お互いに意見をぶつけ合いながら、互いの見解を受け入れ合い、融和していく過程です。

お互いの正しさを争うのではなく、意見がぶつかり合いながらも、相手の考えを自分の中に取り入れていく相互作用です。だから、単に距離を取るのではなく、お互いに衝突を恐れずにコミュニケーションを取り、歩み寄ることが多様性を築くプロセスとして重要だと考えています。

――すごくユニークな表現ですね。過去にどのような衝突がありましたか?

具体例を示すのは難しいですが、創業初期は欧米の方と仕事をすることが多く、彼らは自分の意見をはっきりと主張する傾向がありました。そのため、直接的な意見のぶつけ合いも珍しくありませんでした。この過程を通じて、彼らからの意見が逆に私たちに新たな気づきを与え、私たちも反論することで、双方の理解が深まった経験は非常に新鮮でした。

ダイバーシティを推進する制度:2年間の産休・育休、ベビーシッター費用負担25万円など

――GLナビゲーションにはどのようなダイバーシティを推進するための制度や取り組みがありますか?

まず、外国人の方々が働きやすい環境を整えるために、日本語教育サービスを無料で提供しています。社員のコミュニケーション能力や日本語スキル向上をサポートしています。

次に、女性の働きやすさを支援するために、妊娠期間の時短勤務やリモートワークを推奨しており、実際にこれらの働き方をサポートしています。また、組織風土の側面では、男性が家庭をしっかりとサポートを行い、家事や育児を積極的に行う文化を形成し、促進する制度も設けています。妊娠期間のリモートや時短勤務は男性社員にも適用されます。

加えて、出産後に職場に早く復帰したい方を支援するため、ベビーシッターやハウスキーパーの費用を25万円まで会社が負担する制度も整備しました。当然、男性社員にも適用されており、男性社員の”パートナーのキャリア”もサポートしたいという想いと、家事・育児に対する意識を啓発するために設けている制度です。

当社の従業員の22.6%は、首都圏外に住んでいます。首都圏外に住む本社部門の社員に対しては、月に1回、本社部門以外の社員は年1回、交通費、宿泊費を支給し、本人が希望すれば本社のメンバーと交流できるようにしています。

「働きやすい環境」ではなく、「仕事に集中できる環境」

――ワークライフバランスをサポートするというよりは、仕事をしたい人は応援するよっていう、そういうメッセージも感じました。

その通りですね。私たちの目指しているのは単に「働きやすい環境」を作ることではなく、「仕事に集中できる環境」・「仕事に対する向き合い方を本人が選べる環境」を提供することです。もちろん、人生は仕事だけで成り立っているわけではありません。家庭も非常に重要ですし、仕事だけの人生を推進したいわけではありません。しかし、働きたいと思ってもなかなかできなかったり、仕事に集中できなかったりする状況を防ぐために、会社として必要なサポートを行っています。これが私たちの考え方の根本になっています。

――その一方、ダイバーシティの推進は時間が経過すると形骸化するケースもあります。会社全体でダイバーシティを受け入れていく文化は、どのように作ってきたのでしょうか?

多様な人材を採用し続けるという姿勢を一貫して取り続けています。ダイバーシティの究極の目的は、個々人の尊重にあると考えています。個々の働き方や人生を尊重し、企業としてそれを支えていくことが重要です。これが形式的な取り組みにならないように継続して努力し続けています。

多様性が形骸化する最大の理由は、しばしばその目的や背景が「働きやすい会社」というイメージを持たせることに終始してしまうからです。私たちの目的は、あくまで各人がビジネスに集中できるよう支援することにあります。

多様な人材を活用してビジネスを展開することが、会社にとって最も利益を生むと考えています。各個人が仕事に集中し、それによって利益を生むためには、企業としてそのサポートを提供します。一方で皆が同じコミットメントで仕事をすることを求めてはいません。個々人がどのように仕事に向き合うかは自分自身で決めるべきですし、必要なときに集中できるようにするための支援を行います。

ビジネスとして意義ある活動を行っているということを明確に伝え続けることが、形骸化を防ぐ上で重要だと考えています。

ダイバーシティは多様な人々に活躍してもらう”環境づくり”から生まれる

――ダイバーシティを成功させるカギはありますか?

多様な人々に活躍してもらう環境を作ることを、事業戦略に組み入れることだと思います。

私たちがコンサル業界で成長できたのは、外国人留学生や多様な背景を持つ人材を積極的に活用してきたからです。

その戦略の背景には、コンサルティングサービスを始める前までの10年の間に、外国人の人材紹介サービスで目の当たりにした、戦略的に外国人材を採用して成長している顧客の成功体験があります。

あるIT企業を例に上げて言うと、なかなか採用が難しいと言われるエンジニア人材ですが、自分たちが作るシステム環境をすべて英語環境で準備し英語圏の人材でも活躍できる土壌を整え、積極的に外国人材の採用を実施することで、世界中、中でもアジア地域から優秀なエンジニアをどんどん採用することに成功していました。

それ以外にも、飲食業界は一般的に人手不足で、正社員の勤務時間が長く長時間労働になりがちですが、ある焼き鳥屋のチェーン店を運営する会社では、言語コミュニケーションが不要な「串打ち」という焼き鳥の串を打つ作業のみを日本語が不慣れな外国人のアルバイトに任せることで、アルバイト全体の人数を確保し、社員の勤務時間や残業時間の減少に繋がり、定着率を上げることに成功している会社もありました。

これにより、社員の数をどんどん増やすことができ、一気に多店舗展開にも成功していました。

このような形で、外国人の活用を事業戦略に組み入れて成功している例を見たので、私達のようなまだまだ採用ブランドが低いベンチャーが、採用で良い人材を獲得し会社が成長するためには、 一般的なメインストリームの人材だけではなく、マイノリティを含めた多様な人材を採用し、活用することを事業戦略に組み入れることが、すごく重要なポイントだと考えていました。

当社がコンサル業を始めたのは5年前で、その当時はまだブランドもなく、何もない状態からのスタートでした。

そこで注目したのは、外国人採用に加えて、一般的に転職が難しいとされるマチュアな50代以降の方々を積極的に採用し、特定のマーケットで彼らが活躍できるポジションを切り開くことをしてきました。

優れたバックグラウンドを持つ人材が入社してくれたことで、会社としてのブランディングに大きく寄与していますし、彼らが持っていた既存のパイプラインを活用することで、顧客や他の有能な人材を紹介してもらえ、会社の成長に繋がりました。また、これらの人々は社内ルールの策定にも大きく貢献しており、多くの異なる業界の規定やルールを提供してくれるため、規定作りや仕事の進め方に役立つアドバイスを受けています。

多様性の推進は、企業がどのようにしてそれらの人材を活かせるポジションを創出するかが極めて重要です。そのプロセスがうまくいけば、リスクではなくリターンが増えていきます。

――企業としてポジションを用意するのは大事ですね。ただ、社内で一緒に働く社員たちにも受け入れる風土が元々あったんでしょうか?

私は常日頃から「すべての人が成長できる会社を目指しましょう」と呼びかけています。そのため、多様な人材と仕事をすることを望むメンバーが多い傾向にはありました。

ただ、実際に入社してからは、時には激しい衝突が生じることもあります。例えば、大企業から来た経験豊富な世代の人々が、時に公然と会社を批判するようなこともありました。ベンチャー企業とこれらの経験者は相性が悪いとよく言われます。

彼らが以前の職場でのやり方を振りかざし、会社を公然と批判したり、愚痴を言ったりする姿を見て、若手のメンバーが辟易としてしまうこともありました。しかし、こうした状況にも正面から向き合い、話し合いを重ねることで、これまでの経験を活かし、社内を改善してもらえるような取り組みにもつながっています。結果的に、組織に対するロイヤリティ向上にも繋がっているように感じます。

――ダイバーシティの推進に取り組むことで得られた成果はありますか?

採用活動に非常にプラスにつながっています。私たちは2023年の1年間で、約50人の中途採用に成功しています。さらに、新卒採用では外国籍のメンバーが採用した人数の半分近くを占めており、本当に優秀な人材に選ばれています。また、リモート勤務のバックオフィスでも「なぜこんなに素晴らしい経験を持つ人が?」と思うような人材を採用できています。

現在はIPOに向けての準備フェーズに入っており、特に大手外資系企業やコンサルティングファーム、SIerのマネージャーや取締役レベルの人材が集まっています。

また、1人当たりの採用コストにもいい影響が表れています。コンサルティング業界では人材エージェント経由による転職が多く、手数料で年収の30〜35%、1人採用するのに数百万かかるのが当然でした。ところが弊社はリファラル・スカウト経由からの採用率が高く、1人当たりの採用単価は100万円を下回っています。

これは、リファラル・スカウト経由で知ってもらった採用候補者たちに対して、ダイバーシティに取り組むGLナビゲーションが他企業と差別化されて、魅力的に映るためだと思います。

組織の中心に「新しい世代」「若手メンバー」を置く理由

――日本の企業だと、女性の管理職の割合を3割にする目標が掲げられることもありますね。GLナビゲーションはいかがでしょうか?

私は単に数字を追求する方針には賛同していません。私たちの目標は機会の平等であり、その結果として自然に女性と男性が半分ずつの比率になっていくことを目指しています。女性や外国人を特別に優遇するわけではなく、公平なチャンスを提供していくという考えです。

少し話が逸れますが、私たちは多様な人材を統合し、企業の求心力を高めるためには、成長意欲の高い若い人々が多様性の中心にいるべきだと考えています。したがって、性別よりも、若いメンバーにどれだけ裁量を与えるかを重視しています。当社では管理職の70%が20代・30代のメンバーとなっております。特に20代は全従業員における比率は17%であるにも関わらず、管理職の40%を占めており積極的に管理職に登用しています。

多様な人材を集めると、中心が偏ってしまったり、利害対立が生じることもあります。「私たちの会社は女性を選ぶのか、それとも外国籍の人を選ぶのか」というような対立を避けるために、新しい世代、特に若いメンバーを中心に置き、多様な人材が彼らを支え、引き上げることに注力しています。これは、組織作りにおいて非常に大切にしていることです。

――若手中心の組織をつくる一方、マチュアの人数も多いように感じます。この点についてはいかがでしょうか?

日本の伝統的な企業では、若いメンバーが経験者の「手足」となり、経験者を支える風土が見られますが、私たちは若い人たちを皆で支える組織を目指しています。

初期には混乱の声がありましたが、私はこの方針を貫いてきました。若いメンバーを皆で支え、育てていく必要があると確信しています。一般的に日本では年長者への配慮が無意識に行われがちですが、私たちはその逆のアプローチを取ることで、無意識の配慮が発生しないように注意を払っています。

ダイバーシティの文化形成は”目の前の個人と向き合うこと”から始まる

――GLナビゲーションが他の企業さんにもしアドバイスをするとしたら、どんなアドバイスを贈りますか?

会社の規模に関わらず、一人ひとりとしっかり向き合うことの重要性をお伝えしたいです。

各メンバーが置かれている状況を理解し、働きやすい環境や集中できる環境を整えることで、多様性の尊重が自然と育っていくと考えます。

多様性とは、ただ外国籍の人を増やしたり、女性や経験者を増やすことだけではなく、個々人との向き合い方から生まれるものです。そのため、まずは個々人と向き合うことの重要性を強調します。

また、特に組織内で声を出しづらい若いメンバーの声に耳を傾けることも重要です。多様性を築くためには、さまざまな背景を持つ人々を一斉に採用するのではなく、まずは目の前の個人に焦点を当てて、そのニーズに応じてサポートを提供することから始めるべきだと考えています。

ダイバーシティは、高い利益率を実現するビジネスにつながっている

――続いて、ダイバーシティが事業成長に貢献してきた点について教えてください。

様々な働き方に対するニーズや多様なバックグラウンドを持つ人々のニーズ、想い、能力を考慮に入れ、それぞれをマーケットでどのように活かせるかを考え、その視点から市場を見ることで、会社の成長を実現しています。

例えば、経験豊かなマチュア世代を積極的に採用する戦略を取り入れました。また、在日外国人向けキャリアサポートサービスの「JapanWing」では、マチュア世代だけでなく、結婚後に退職された主夫の方々や副業として働く人たちも講師として迎えています。これらの多様な人材と働き方をベースにビジネスを展開することで、高い利益率を実現できていると思います。

競争力の観点から見ると、差別化を図ることが非常に効果的だと感じています。また、優秀な人材を採用しやすくなっている点も大きな利点です。「なぜこんな経歴の人が私たちの会社にいるのですか?」というような驚きの声をよく聞きますが、これは多様性を推進してさまざまなバックグラウンドを持つ人々が活躍できるようになった結果です。私たちのアプローチにより、多様な才能が会社に集まり、それが競争力の向上に繋がっています。

――外部企業と協力してダイバーシティを進めていく計画はありますか?

現在私たちは様々な企業からの出向者を受け入れており、その形で私たちの会社を経験してもらっています。同時にこれら企業の出向者から得た知見を社内に浸透させるよう努めています。こうした企業間の出向契約を始めており、双方に利益をもたらしています。

それだけでなく、柔軟な制度設計も進めています。多様な状況に合わせた制度を増やしていくつもりです。また、国際展開にも力を入れており、ベトナムの会社のM&Aも行いました。海外にも拠点を設け、グローバルに事業を展開していく計画です。これらの取り組みによって、多様な人材と知見を得ることができ、組織全体の競争力を高めています。

――最後の質問です。ダイバーシティの重要性を神田さんは会社の代表としてどのように伝えますか?

私たちの会社はデジタルと多様な人材の活用に力を入れていますが、これを行う最大のメリットは、自身の変革にあると考えています。デジタルトランスフォーメーションとダイバーシティトランスフォーメーションを推進することで、新しいテクノロジーや異なる価値観に触れることにより、自分自身が変わっていく過程を体験できます。

よく「会社は経営者の器以上には大きくならない」と言われますが、様々な人々の考えや意見に触れることで、個人の成長や変革が促され、それが結果的に会社の成長に繋がると信じています。ですから、多様性の推進や多様な人材の活用は、自己変革を促すためにも非常に重要だと思っています。

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