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あの経営者から学んだ、長く愛されるためのブランディング #1

株式会社ウェルカムさま

ご縁あって理念開発からはじまり、採用支援、インナーブランディングなど、かれこれ10年ほどのお付き合いをさせていただいている企業様がある。株式会社ウェルカムさん。

DEAN&DELUCAやTODAY’S SPECIAL、GEORGE’S、CIBONE・・・といった、食とデザインを中心にライフスタイルショップを展開されている。ご存知の方も多いだろう。一つひとつのブランドに個性と魅力があって、つい何度も足を運びたくなってしまうお店たち。

どうやったら、こんなブランドを次々とカタチにしていけるのだろう。そう思い、ふと代表の横川さんに「強いブランドのつくり方のコツってなんですか?」と聞いてみたことがある。

ちなみに強いブランド、とは言うけれど、それぞれに解釈があるとも思う。たとえば、彗星のように現れて一気にムーブメントをつくり、そのへんを歩く人もみんな知っているようなブランドをつくる。それも真似のできない素晴らしいことだとは思うが、上昇の速度は下降の速度とイコールになる。大きなお金を一気に生み出すが、消費されるブランドになるのだ。僕たちが志向するブランドは、100年続いていくような幹のしっかりとした育つブランド。横川さんからは、まさに、その考え方に近しい話が聞けた。

原体験がミッションやブランドにつながっている。

お話を聞いた横川さん、実はすかいらーく創業者の長男として生まれた方。幼い頃から、さまざまな食には触れる機会が多かったという。すかいらーくと言えば、ファミレス文化を築いた多くの方が知っている企業。洋食がまだ今のように食べられなかった頃に、家族で週末に気軽にハンバーグを食べに行く。そんな食文化の底上げを担ったお店。

一方で反骨心のようなものもあったそうだ。いつでもどこでも、低価格で満足できるレストラン。逆を返せば、北海道から沖縄までロードサイドには飲食チェーン店が並ぶようになった。土地ごとに、美味しいものや素敵な料理があるにもかかわらず。そんな原体験は、今運営するブランドやお店づくりにも色濃く反映されている。たとえばDEAN&DELUCAには、チーズや生ハム、ワインなどの海外食材も並ぶが、出汁や佃煮といった日本でも知る人ぞ知るこだわりの一品が並ぶ。自分たち自身が足を運び、生産者と話し、これなら友人や家族にも食べさせたい。そう思える食材があつまる食のセレクトショップになっている。

ブランドをつくるときに説得力になるのは、原体験からはじまるストーリー。

流行っているから、時代に合っているから。それだけでは長く続かないのだ。見た目、考え方、行動。一つひとつに、理由がある。必然性がある。そんなブランドは必ずファンができる。強烈な引力を生む。これは社外だけでなく、社内に対しても同じ事だと思っている。

※ちなみに、DEAN&DELUCAの発祥はアメリカ。先日本国のDEAN&DELUCAが経営破綻したというニュースが流れたが、日本における営業権はウェルカム社が事実上100%保有するので、運営に影響はない。

ルーツを大切にする。

今でこそ日本でもブランドとして育ってきたDEAN&DELUCAだが、実は日本で店舗を出したはじめの頃はさんざんな状況だったという。ニューヨークのSOHOにあるお店の活気、空気、味に惚れ込んで、日本にそのままお店を持ち込んだけれど、そのスタイルが単純に日本にマッチしなかった。裸で生鮮品が並んだり、メニューに至っては英語だったり。至って真剣に、疑いなくやってはいたけれど、これではいけないと創業者であるデルーカ氏に相談しにいったのだという。すると、デルーカ氏の口からはこんな言葉が返ってきた。

「日本のお店には、なぜ蕎麦がないんだ?」

イタリアにルーツがあった創業者のディーン氏とデルーカ氏。地中海気候のおいしい食をニューヨークでもお届けするためにはじまったお店。自分たちの故郷にはこんなに美味しいものがたくさんあるんだと伝えたくて始まったブランド。DEAN&DELUCAの目的は食べる喜びをとどけることであり、日本にしかない美味しいものや食文化がたくさんあるのだから、日本人ならまずそこに目を向けるべきだと。

そもそものブランドの想いやルーツを知ったことで、お店のあり方、商品の選定、サービスに至るまですべてを見直し再出発。そして現在、100億を超える事業にまで成長した。

ルーツはブランドの存在意義やミッションにそのまま直結する。そして、すべての表現、コミュニケーション、サービスの判断軸となる。ブランドのコアを考えるときには、このルーツに目を向けることが欠かせないのだ。

(長くなるので、#2へ続く…)

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