未来なんて、わからない。
準備なんてできない。
そう思っているのは、案外みんな同じかもしれません。
それでも後輩の未来を応援したいと思う大人は少なくないのだろうと、今回の『高専キャラバン』に参加した今、感じています。
『高専キャラバン』は、かつての高専生と現役の高専生がキャリアについて考えるイベント。この記事では『高専キャラバン2023』の第1回目、長岡高専にて開催された様子をレポートします。
目次
- 高専キャラバンとは
- 今回のテーマは「やってこい、未来。」
- 今回の第1回目は長岡高専で
- リアルな体験談を伝える講演会
- 高専出身者と直接話せる座談会
- MTGを疑似体験。グループワークをやってみよう
- まだまだ高専キャラバンは始まったばかり
高専キャラバンとは
高専キャラバンの始まりは2007年。高専機構とMicrosoft社の主催で、各高専に直接訪問しながら現役高専生の技術に関する好奇心・探究心を高めて、技術者教育に貢献するという趣旨で始まりました。フラーはその第2回目である2012年から携わっています。
フラーは高専出身のメンバーが創業した会社で、社内にも多くの高専出身者がいる高専と縁が深い企業です。そのため、高専への恩返しが何かできないかと考えるメンバーも多くいます。
また、ITに携わる企業としてIT業界全体の専門性を備えた人材の不足という課題にも真摯に向き合いたいと考えています。
これらの思いから、フラーは産学連携や教育貢献にこれからも積極的に取り組むべく『高専キャラバン』を展開していく運びになりました。
これまでも高専キャラバンは各校に直接足を運んでいましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年からはオンラインに場を移していました。そして2023年、今回から再び各校へ直接伺うオフライン形式での高専キャラバンを再開します。
今回のテーマは「やってこい、未来。」
『高専キャラバン2023』は「やってこい、未来。」をテーマに、等身大の高専生に向けたコンテンツを準備しました。
毎日を一所懸命に生きているものの将来に対してはまだあまりピンと来ない、しかし進路選択の時期が迫っていて少し焦る......そんなごくごく普通の高専生に対して何かヒントになるような、これからの将来に向かう勇気を預けられたらと考えて企画を始めました。
今回の高専キャラバンで軸に置いたのは、卒業生たちが「どのように人生を選択してきたのか」をリアルな体験談としてお伝えすること。大きな夢や野望を掲げて成功するような刺激的な話よりも、もっと等身大で親近感のある話ができたらと準備を進めてきました。
今回の第1回目は長岡高専で
『高専キャラバン2023』は2月20日、長岡高専からスタートしました。
参加学生の中心は電子制御工学科4年生。この日がテスト終わりだという高専生からは少々疲れた顔も見られましたが、50名ほどが会場に集まりました。
リアルな体験談を伝える講演会
最初のプログラムは、高専出身者によるキャリア講演会です。
まずは長岡高専の卒業生であるフラーの畠山(電子制御工学科卒業)による、プログラミングが苦手だった自分がソフトウェアエンジニアになるまでの話からスタートしました。
高専生のころの畠山は先輩に協力してもらわなければ課題の提出ができないほど、プログラミングが苦手だと感じていたのだそう。しかし、卒業後に編入した大学の研究室でプログラミングが必要になったときに、目的とモチベーション(と研究の進捗を出さねばならないという適度なストレス)があったため、一生懸命勉強したことで徐々にプログラミングに夢中になっていったと話します。
苦手だと思っていたことがひょんなことから夢中になってしまった話の中で、畠山は学生の間に好きなことを好きなだけ真剣に学ぶ大事さを伝えた上で「楽しいと感じることを突き詰めていくと今は想像もつかない未来につながるかもしれない」とエールを送りました。
続いては株式会社divxの矢田さん(鳥羽商船高専 生産システム工学専攻卒業)と久米さん(豊田高専 情報工学科卒業)によるトークセッション。
会社員やYouTube動画編集、バーテンダーなど多岐にわたる職業を経験した矢田さんからは、自分が何が好きなのかじっくり考えるタイミングがあったのだそう。「何のために仕事をするのか、軸を考えておくと働き方を考えるときにも役に立つ」とアドバイスをしました。
一方で久米さんはプログラミングを好きになれずに人と関わる仕事を志したと話します。
「でも、僕の場合は人と関わることが好き=人と話すことが好き、じゃなかったんです。高専のときのみんなで同じ方向を見て実験をするとか、そういうことが好きだったと気づきました」と高専での経験から感じたことを軸に仕事を見つけ、好きではないけれど自分がやりたいことと結びつくプログラミングが今、役に立っているのだと教えてくれました。
最後は株式会社プロッセルの片山さん(和歌山高専 物質工学科卒業)が、自分の小さな違和感や気持ちの変化を大事にしながら進路を選択してきた話をしました。
「得意を活かした仕事をしたくて研究者になりたいと思っていたけれど、研究は得意なことではなく、ただ長くやってきたから得意と思っていたのかも?」とふと思ったという話は、進路を考える上で学生も気になるポイントだったのではないでしょうか。
高専出身者と直接話せる座談会
講演会の後は、場所を移して登壇したメンバーを中心とした高専出身者と座談会を開催しました。
講演での話をさらに深ぼって「自分の適性ってどう見つけるの?」や「良い企業ってどんな企業?」と気になるところを聞いていた様子。
「業界を問わず、高専出身者が活躍できる場面はたくさんあるはず。例えば今はデータを用いた仕事は業種限らずあるから、実験で積み重ねた経験が意外なところで役立つこともあるんだよね」と実体験に基づく話もあり、現役高専生も真剣に対話を重ねていました。
同席した長岡高専の酒井先生は「学校としてはできればひとつの企業に長く勤めてほしい気持ちもあるので、普段の進路指導では転職を前提にした話はどうしても少なくなります。だけどこうして卒業生がいろんな道で活躍していると伝えられることで、学生も新しい発見があるようです」と、学生が高専卒業生と交流する中で見えた発見を教えてくれました。
MTGを疑似体験。グループワークをやってみよう
最後は株式会社プロッセル主催で将来に向けて挑戦したい、社会人力を鍛えたい方を対象にグループワークをワークショップ形式で開催。理想の学校生活をお題としたワークにチャレンジしました。
ふせんを用いたKJ法という方法で全員の考えをまとめて、最終発表をする流れです。
ワークを進める中で今回解決に向けて話すテーマを「冷暖房設備の改善」に絞っていったのですが、途中「AI技術で解決方法を考える」という新しいお題が追加され、「AIでできることとは」とさらに話し合いを重ねる参加者の面々。
まとめた内容を元に、日々仕事でグループワークに実際に取り組む社会人である卒業生たちにプレゼンをしました。
普段の授業の発表とは違うプレゼンなので少し緊張した様子も見られましたが、プレゼンのフィードバックを受けるといつもとは違った観点の指摘も多かったようで新鮮な視点を学ぶことができていたようです。
以上のプログラムをもって、今回の長岡高専での『高専キャラバン2023』は幕を閉じました。
まだまだ高専キャラバンは始まったばかり
『高専キャラバン2023』は雪の降る2月の長岡を皮切りに、新緑が眩しい5月まで各校へ足を運びながら取り組みを続けていきます。
現役高専生のみなさんへ。
先生や親ではない、いつもと違う大人の話を聞いてみませんか。
正解は導き出せないかもしれませんが、無条件で全力で応援しながら現役高専生の相談に答えたい卒業生たちが学校にお邪魔します。
登壇者や講演内容は各校それぞれ異なりますので、一期一会のイベントをぜひお楽しみください。
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なお、この記事は、フラー公式note「フラーのデジタルノート」に掲載中の記事を転載したものです。