※本インタビューは2021年1月に行ったものとなります。
金融業界から、異業種からフィンテックへ
司会:
前回は、商品口座プロジェクトについてお二人にお話をうかがいました。今回はそんなプロジェクトを手がけられたお二人経歴や入社理由などフォーカスを当ててお話を聞きたいと思います。早速ですが、高山さんは元々どんなお仕事をされていたんですか?
高山:
私はFOLIOのエンジニアの中では結構珍しい経歴でして、新卒で大手の日系証券会社に入ってトレーダーの仕事をしていたんですよ。その次の会社も日系の証券会社に転職したんです。
司会:
トレーダーというのは、あの株を売買する……。
高山:
そうです。1年ほど株の売買をする仕事をしていたんです。その後はデリバティブ(先物取引やオプション取引などの金融派生商品のこと)もトレードしていたんです。トレーディングは基本手動でやることが多かったのですが、職場に自動で取引できるシステムを作ってる人もいました。自動取引ができる人はとても限られていて、そのノウハウは「秘伝のタレ」みたいになっていたんです(笑)。
そんな状況下で働いている中で、私も自動で取引できるシステムを作って、自分の付加価値を高めたいと思いまして開発に携わるようになりました。
司会:
開発というのは、別の部署に移動をされたんですか?
高山:
いえ、同じ部署内だったのですが、取引を行なうフロントデスクの横でEUC(エンドユーザーコンピューティング)で、DB(データベース)やメッセージングを使ったアプリケーションを作りはじめたのが、私のエンジニアキャリアのスタートです。
1社目は約5年いたのですが、エクイティ部という部署で自己取引のためのマーケットメイクツールやポジション管理ツールを作ったり、立会外バスケット取引(大口投資家向けに複数の銘柄を一つにまとめて一括で売買する取引。主に市場の昼休みに取引される)の業務ツールを作ったりしていました。
司会:
その後再び大手の日系証券会社に転職されますが、それはエンジニア採用ですか?
高山:
はい、そうなのですが、いわゆるWEBエンジニアがやるようなコードを書いて一般的なWEBアプリケーションを作る仕事ではなくて、アルゴリズムを使って自動で売買のタイミングを判断し取引をする仕組みを作るチームに参画しました。
高山 智史
京都大学情報学研究科卒。日系証券会社2社を経てFOLIOに入社。前職では、トレーディングアルゴリズムと執行管理システム(EMS)のチーフアーキテクト兼開発リーダーを担当。
司会:
なるほど、松林さんの経歴も聞かせてください。松林さんは現在、FOLIOの証券基盤部で働いてらっしゃいますが、前職も金融系ですか?
松林:
いや、全く関係ない職場で(笑)、ドワンゴという会社に新卒で入社して働いていました。ドワンゴが提供しているサービスの裏側にある基盤を開発する部署にいて、ある種の分散ミドルウェアのようなものを触ったり、あるデータをサービスからサービスへ一貫性を持ってうまく連携できるようにする仕組みを作ったりしていました。
司会:
確かに金融とは全然関係ないですね(笑)。それがなぜフィンテックのスタートアップに入られたんですか?
松林:
その頃、趣味でデータベース系の勉強をしていたんですが、ある日スカウトのメールが来まして、「データベースの話などをカジュアルにしませんか?」と言われたので、ホイホイと面談に行ったのがきっかけです(笑)。
またその当時、丁度自分で株式投資や資産運用を始めようと思っていたのですが、社会人になって間もなかったのでまとまったお金もなくて、株式投資をしようとしたら結構な資金が必要だと知ったんです。でもFOLIOのカジュアル面談を受けてる時に、比較的安価に株式投資をはじめられるサービスの話を聞いて、「あ、このサービスは使ってみたいな」と思い、どうせなら作る側に回りたかったので入社しました。
(注:株式は単元株制度といって100株/口からしか原則として購入できない。証券会社によっては1株から買える単元未満株制度を使って比較的安価に株を買える方法もある。)
入社の決め手は裁量の幅の広さ
司会:
フットワーク軽いんですね(笑)。高山さんがFOLIOに入るきっかけは何だったんですか?
高山:
前職には6年弱いたんですが、先ほど話した取引アルゴリズム以外にも、EMS(Execution Management System、取引執行管理システムのこと)という証券会社の基幹システムのプロジェクトにも関わる機会がありました。
どちらにおいても数年規模のリプレイスプロジェクトに関わったんですが、幸運なことに両方で中心的な役割を担うことができ、さらに無事に完遂できたということで、やるべきこと、やりたいことをやり切った感があったんです。
その後次に何しようと考えた時に、別の部署で新しいことを……とも考えたのですが、部署異動の申請からはじまり、新しい部署に異動すると社内政治の面倒なこともあるんだろうな……と悩んでいる中で、転職という選択肢を入れようと考えていた時、FOLIOのホームページを見たんです。そしたら私が今までやってきた経験を活かせるような職種の募集要項があったので、お話を聞きに行った、という流れですね。
司会:
でも、高山さんの経歴を見ると、FOLIOのようなスタートアップではなくて、大手の証券や銀行に転職するという選択肢もありましたよね。なぜスタートアップを選んだのですか?
高山:
FOLIOを選んだ一番の理由は、裁量の幅が大きいことです。大企業の場合縦割りで部署ごとに裁量の範囲が決まっている会社が多く、そこで苦労されている方が多いという話はよく聞きますし、実感もありました。
司会:
確かに、大きな会社は仕事の範囲も決まってて、縦割りで仕事を進める企業が多いですよね。その点FOLIOはスタッフの裁量の幅が広くて、結構自由に働いているメンバーが多いですよね。でも、裁量の幅が具体的にどのぐらいあるのかって、入社前だとわからなくないですか?
高山:
確かに確信までは持てなかったですね。ただ面接で話した感じだと、合理的な提案をしていけば受け入れてくれる雰囲気は感じました。FOLIOはまだまだ金融出身の方が少ないという話でしたし、金融出身の知見を活かして改善を進める余地はありそうだなという目論見もありました。
あとは、自分としてもリテール向け、つまり企業様向けのビジネスでなくて個人ユーザー向けの証券サービスというのは初めてだったので、バックオフィス業務など金融人として未経験な領域に触れられそうなことも後押しになりました。
レベルの高いメンバーの中で働くということ
司会:
FOLIOに入る前と入った後のギャップはありましたか?
高山:
大きなギャップはありませんでした。エンジニアが強いという話は聞いていて、入ってみたらやっぱり優秀な人が多いですし。入る前から証券会社のシステムや基盤を作ることの大変さは知っていたので、業務の面でもさほどギャップはありませんでした。
ただ、応募の時の仕事の内容と実際に取り組んだ仕事はちょっと違いがありましたね。応募の時は株の売買のところでFIXエンジンなどを使ったトレーディングシステムを作るお仕事に応募したんですが、入社後はディーリングのチームではなくて、FOLIOが提供しているロボアドバイザーサービスの「おまかせ投資」に関する開発をしました。
当時はロボアドバイザーのシステムにFIXエンジンがなくて自動化ができておらず、NYの朝、日本の夜に手動で執行を行なっていて、それをなんとかしよう、というプロジェクトに関わりました。
松林:
私が関わっていたのですが、執行の自動化というのは海外株の自動発注システムのようなものです。
司会:
なるほど、ということは、高山さんが入社してすぐは松林さんと一緒にお仕事されたんですか。
松林:
はい、チームは同じでしたが、経歴的に高山さんの方が圧倒的に上手く作れる感じがしたので、ほぼ丸投げでお願いしていました(笑)。
高山:
弊社のロボアドバイザーは米国上場のETF(Exchange Trade Fund 株式市場に上場していて、株のように市場で売買できる投資信託のこと)で運用しているのですが、会員権がないので直接取引所で取引することが出来ません。
そこで会員権を持つ別の証券会社さんに注文を委託するのですが、そのやり取りにFIXプロトコルという業界標準のプロトコルでのやり取りが必要になります。
私は前職のEMSプロジェクトで、FIXプロトコルをベースとしたインターナルなプロトコルの策定にも携わっていましたので、その知見を活かして同じ証券基盤部の海津さんとか石川さんなどと一緒に3ヶ月ぐらいかけて簡単なEMS + FIXエンジンを作りました。これでようやく委託先の証券会社さんと、システム的につながることが可能となりました。
松林 祐
2017年より、FOLIOでバックエンドエンジニアとして証券システムの開発に携わる。
2015~2017年、ドワンゴにてメッセージングシステムの共通基盤開発に従事。ScalaTextや新卒Scala研修などにも携わる。
司会:
EMSって、普通3人ぐらいで作るものなのですか?
高山:
組織によって色々違うと思いますが、機能が充実したものだと10人や20人のチームが年単位のプロジェクトでがっつり作るイメージですね。FOLIOのEMSは機能が少ないので単純な比較は出来ませんが、結果として一年以上も障害なく稼働するものがインフラも含めてこの短期間で作れたというのは驚きです。
司会:
その話を聞いただけでも、FOLIOには技術力が高い人がいることがうかがえますね。松林さんは入社された当初はどのような業務を?
松林:
入社してしばらくは口座開設システムを作ったり、当時はScalaを業務でやってきたメンバーがあまりいなくて、Scalaの文脈で見るとこなれてない点がややあったので、リファクタリングをしたりしていました。
司会:
FOLIOに入社を決めたのは、先程お聞きした自分が求めているサービスを開発しているということの他に、「技術的な面でこんなことができるから」みたいなものはあったのでしょうか?
松林:
当時、社内でScalaやマイクロサービスに関する技術的な課題がいくつかあって、私のスキルとかバリューが発揮できるかもしれないと思ったからです。あとFOLIOのメンバーに最近読んだ論文の話をしたら一緒に盛り上がることができて、目線やレベルの高いメンバーが揃っているなという感覚を抱いたので、入ってみようかなと思ったんです。
司会:
FOLIOのメンバーの技術力の高さは、以前インタビューした別のメンバーも似たような感想を話していました。そういうメンバーが多いことや、自分のスキルが発揮できる職場というのは、転職先候補として魅力ですよね。
さて、今回はお二人の過去についてお話をうかがいました。最終回の次回は、前編でお話を聞いた商品口座プロジェクトの「これから」についてお二人に聞きたいと思います。
(後編「もっと多くの人に資産運用を」につづく)