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月に一度、会社のメンバーが仕事の手を止めてオフィスでお酒を酌み交わす「アフター7」という社内イベント。
5月の開催では、設立間もない頃から現在まで、エンジェル出資や社外役員・経営のアドバイザーとしてFISMを支えてくれている松崎さんをご招待!
まだ楽天がベンチャーフェーズだった2000年当時にジョインし、M&A案件を数多く手がけるなど、豊富な経験を持つ松崎さんがFISMとどうやって出会ったのか?代表の銭本とのセッショントークから懇親会に突入し、ざっくばらんにお話しさせていただきました。
▼登壇者
きびだんご株式会社 代表取締役 兼 FISM株式会社 社外監査役
松崎 良太さん
FISM株式会社 代表取締役
銭本 紀洋
楽天が100人→1万人になるまでの11年間
司会者:
今回参加しているメンバーの多くは松崎さんと初対面だと思うので、まずは自己紹介からお願いできますか?
松崎:
大学を卒業して、最初に勤めたのは銀行です。何十年も前の話ですが(笑)
メガバンクなどと比べると小さい銀行でしたが、企業のM&Aをお手伝いする部署に配属になり、隣の席にいた先輩社員が、現・楽天グループ代表の三木谷さんでした。
さらに、三木谷さんと同じチームで担当したお客様が、ソフトバンクグループ代表の孫さんでした。当時は孫さんも30台後半くらいで、アメリカの会社を数社M&Aをされたときにお手伝いしました。
その後MBA取得のためアメリカへ留学し、その後は銀行のニューヨーク支店で勤務していたんですが、先に銀行を退職していた三木谷さんから、「インターネットの会社を立ち上げるから手伝って欲しい」と連絡が何度か来ていました。
当時の楽天はまだ社員が100人にも満たない、まさしく”スタートアップ企業”です。一度親に話したら反対されましたね。「そんな見たことも聞いたこともない会社に、わざわざ入ることはない」と。
勤めていた銀行はそのとき、他の2つの銀行と合併して新たに「みずほ銀行」になろうとしているところでした。ただ、僕自身は銀行で働くことにワクワクしなくなってきていたんです。そして2000年、三木谷さんの誘いを受け入れる形で楽天に入社しました。社員番号は93番でした。
きびだんご株式会社 代表取締役 兼 FISM株式会社 社外監査役
松崎 良太さん
銭本:
楽天ではどんな仕事をされていたんですか?
松崎:
仕事自体は、銀行にいたときと同様にM&Aを担当していました。色々な会社を買収したり、投資したり、提携を結んだり。私が入社した後も毎月のようにどんどん社員が増えていき、僕が11年後に退職したときには1万人を超える規模になっていました。三木谷さんが数人で会社をスタートした頃からずっと経緯を見守っていたこともあって、やっぱり新しい価値を世の中に生み出すことってすごいな、と実感しましたね。それを実現したときの喜びを身をもって感じられました。
その後は独立し、しばらくはコンサルティング事業をやっていました。組織から飛び出して事業をスタートしたものの、「1人でできることは限られているな」と実感し始めていた頃、Kickstarterという、当時アメリカで最も成功していたクラウドファンディングのサービスに出会いました。ユーザーとして使ってみて非常に面白かったので、創業者に直接会いに行ったんです。
ご存知の方も多いと思いますが、クラウドファウンディングとは、クラウド(crowd=群衆)とファンディング(funding=資金調達)を組み合わせた言葉です。新しいビジネスや取り組みのアイデアを持つ人が、その内容をインターネットに公開して、不特定多数の個人から資金を募ります。お金を出してくれた人にはあらかじめ約束をしておき、アイデアが実現したら真っ先に支援をしてくれた人に約束したものを届けるという仕組みになっています。
その創業者に会って、「日本でもぜひこのビジネスを展開して欲しい」と話しました。返事はNOでしたが、代わりに「自分でやればいいじゃないか」と言われたんです。アドバイスを実践する形で、2013年に自分でクラウドファンディングサービスのKibidango(きびだんご)を創業しました。名前の由来は、お察しの通り『桃太郎』の物語です。犬・猿・きじと一緒になって鬼退治に行くストーリーが、クラウドファウンディングと似ているなと思ったんです。あと1回聞いたら忘れない、覚えやすい名前だということも大事でした。
そういえば、FISMという社名の由来は何なんですか?
銭本:
それぞれ頭文字に意味があって。
F = FUNDAMENTAL
「社会が抱える課題の根本的な解決に貢献する」
I = INNOVATION
「社会的意義のある大きな価値を創造し革新を起こす」
S = SUSTAINABILITY
「社会の永続的な発展においてなくてはならない存在となる」
この「FIS」の3文字に最後に「M」をつけて「イズム=主義」というニュアンスで完結するようにしました。
FISM株式会社
代表取締役 銭本 紀洋
ローンチパーティーで40分間熱く語られた初対面
司会者:
松崎さんと銭本さんとの出会いは、どんなきっかけだったんでしょうか?
銭本:
創業してまだ間もない頃、とあるクラウドファンディングの比較サイトのローンチパーティーに呼ばれて、参加したんですよね。そこに偶然松崎さんがいらっしゃいました。
パーティーの参加者の中でも松崎さんは大人気で、話したい人が行列を作っていました。そんな中、僕が捕まえて40分くらいお話ししたんですよね(笑)それがきっかけです。
松崎:
自分の会社の事業のことをすごく熱心に語ってくれました。当時の僕はインフルエンサーによるマーケティングというと、いわゆる”ステマ”のような、一部の人からは広告効果が疑わしいと考えられているものだという曖昧な認識をしていました。銭本さんは、その可能性を肌で感じ、心底信じている人なんだと思いましたね。とても情熱を持っているのが伝わってきて「こんな人もいるんだ」と驚きました。それだけ熱く語るからには、それだけのものがあるんだろう、と。
キャラクターが異なる2人が共同代表を務めるアイデア
司会者:
それ以来のお付き合いなんですね。銭本さんが、松崎さんからのアドバイスによって経営や事業運営の方向性を変えた事例はけっこう多いんでしょうか?
銭本:
まず一番大きかったのは、共同代表の決断です。僕1人だけが代表取締役では、僕の器だけで会社が終わってしまうと危惧していました。松崎さんからGoogleをはじめとした海外の事例をいろいろ教えてもらい、CEOの僕とCOOの白枝が2人で代表取締役を務めるという形をとることにしました。
松崎:
会社って、1社1社が全部違っていて、同じということはありません。経営者もそれぞれキャラクターが異なります。「孫さんや三木谷さんみたいになりたい」という話はよく聞きますが、ただ真似をするだけではしょうがない。銭本さんと白枝さんは、2人が全く異なるキャラクターであることが面白いと思いましたね。2人が共同で代表を務めることで、組織の可能性が広がると感じました。
銭本:
このセッションの前にもミーティングをさせていただいていました。松崎さんとお話しさせていただくと、僕らの中でふんわりしていたアイデアが、輪郭を持ってハッキリしてくるんですよね。
松崎:
銭本さんや白枝さんたちと、「会社をどうしていこうか?」と真剣な話をしていて楽しいのは、ワクワクする未来が見えるときです。今日のミーティングでもそういう瞬間がありましたね(非公開の内容なので詳細は後日…)。
FISMがいる業界が秘めている可能性とは
司会者:
松崎さんは、数々のベンチャー企業を見ていると思います。その中でも特にFISMが魅力的だと思う点は何でしょうか?
松崎:
まず、FISMが参入している業界に、すごく大きな可能性があると考えています。先ほどもお話しした通り、インフルエンサーマーケティングをネガティブに捉える人もいますが、それは事業の可能性が大きいことの裏返しだと思います。
ネガティブに捉えられる意識を持ちながら、正しいことを強烈に意識して事業運営することで、事業が爆発的に跳ねる可能性が大きくなるのです。
FISMのインフルエンサーのビジネスは、クラウドファンディングにも似ているところがあると思っています。人類の文明の歴史を振り返ると、世界を動かしているのは国と国かのように思われますが、実際にはその中の社会で生きる1人1人なんです。
インフルエンサーも、クラウドファンディングも、そうした個人の力をインターネットの技術によって最大限に活用している点が共通していると思います。
自分がワクワクするかどうかが投資の決め手
銭本:
僕からも質問していいですか?
松崎さんは、まだ僕らと2回くらいしか会ったことがないのに、かなり高額な出資をしてくださいましたよね。それはどうしてだったんでしょうか。
松崎:
たしかに、ああいう大きな金額で出資することは珍しいです。若い2人に賭けてもいいんじゃないかと思ったんですよね。そこはポテンシャルです(笑)
まだ銭本さんも白枝さんも28歳という若さで、それは大きなチャレンジだと単純に思いました。2人が試行錯誤しながら事業をやっていくのを、自分なりにいろいろとケアしながらサポートしていきたいと思いました。
銭本:
最初にエンジェル投資を始めたのは、どういう理由からだったんですか?
松崎:
それもちょっとした出会いがきっかけでした。
アメリカの500Startupsというアクセラレーターの創業者と話をしていたときのことです。
アクセラレーターとは一般的に、シードラウンドのスタートアップに投資と教育を行う団体のことです。投資額はVCに比べて少ない代わりに、厳しい審査を通った何十社だけが門下生になって修行を積んでもらい、VCの投資を受けられるレベルにまで育成するというものです。
しかし、僕が話をしたその創業者は全く違う思想を持っていました。審査を厳しくするのではなく、少しでもいいと思った会社にどんどん片っ端から投資をしていき、年間で500社くらいに投資をすれば、1年後にはその中からすごいスタートアップが生まれるんじゃないかという話でした。
そこで僕がいくつかアドバイスを伝えると、「アドバイスも嬉しいけど、できれば具体的に一枚噛んで欲しい」と言われたんです。「お金を出してくれたら、あなたのアドバイスが本物だと分かる。少額でもいいから投資してくれ」と。「なるほど」と思いましたね。自分がすごいと思った会社に対して、口であれこれ言うだけでなくお金を出してコミットするというのは、非常に説得力があると思いました。
この出来事をきっかけに、自分が「すごい」「面白そう」と感じたスタートアップには、アドバイスを伝えるだけではなくお金を出してコミットするようになりました。
司会者:
松崎さんが「応援したい」と思う企業に共通することは何でしょうか?
松崎:
シンプルに、自分がワクワクするかどうかが決め手です。お金を稼ぐためとか、仕事のためというだけではつまらないじゃないですか。単にビジネス上の取引先というのとは違う尺度で、フラットな人間関係を築ける状態で話をしていて、心底お手伝いしたいと思えるかどうか。その気持ちを大事にしています。