今回は、現在フルスタックエンジニアとして活躍している加藤倫弘さんのインタビュー記事です。エンジニアとして、様々な企業での経験を経て、現在は医療DX業界で新たな挑戦をしている加藤さん。これまでのキャリアや今について語ってくれました。
加藤 倫弘(かとう ともひろ) プロフィール
情報系大学院を修了後、キヤノングループのソフトウェア開発会社に入社。画像処理、組込みシステム開発や Deep Learning の研究開発に携わる。
その後株式会社ディー・エヌ・エーに入社(後に事業統合により株式会社Mobility Technologiesへ転籍)し、車載器向けのAIシステム開発に従事。2021年3月に株式会社メルカリに入社。出品領域において、AIを利用したPoCやモバイルアプリ、マイクロサービス開発を経験。2023年にファストドクター株式会社へ入社。
ルーツは幼少期からのモノづくりへの興味
ーーーまずは、加藤さんのエンジニアとしての原点についてお聞きしたいと思います。開発の世界に興味を持ったきっかけをお聞かせいただけますか?
加藤:
父や祖父がエンジニアだったこともあり、小さい頃からモノづくりへの興味がありました。
二人ともソフトウェアエンジニアではなく、どちらかというとハードウェア寄りのエンジニアでしたね。また、母が医療従事者だったことから、医療と工学の接点に関心を持つようになりました。その影響で、大学では情報工学と医療福祉を組み合わせた学部を選びました。
ソフトウェア開発を始めたのは大学の講義がきっかけでしたが、研究室に所属してから主体的にソフトウェア開発に取り組む必要が出てきて、そこで「あ、これ面白いな」と。そこからソフトウェアエンジニアになろうと決意しました。
ーーーご家族の影響が大きかったんですね。その後のキャリアについても聞かせてください。
加藤:
新卒ではキヤノングループのソフトウェア開発会社に入社しました。特に組み込み開発に興味があったことが大きかったですね。
大手ならではの丁寧な研修があり、エンジニアとしての基礎を固めることができました。一方で、SNSで見かけるような最新の開発スタイルやそれを取り入れている企業にも憧れがありました。今思えば、その環境でももっとできることはあったと思うのですが、より自己成長ができる環境を求めて転職をしました。
ーーーその後、DeNAに入られたんですね。
加藤:
当時、自動運転関連の求人が多かったのですが、その中でもDeNAのAutomotive系のR&Dに興味を持ちました。実際に入社してからは、一貫してドライブレコーダーとAIを組み合わせたプロジェクトに携わりました。その中でも、リソースが限られたデバイス上で機械学習モデルを動かすエッジAIの領域を担当しました。周囲からは期待も込めて「エッジAIといえばともさん(注:加藤の愛称)」と役割をいただき、見守ってもらったと感じています。特に印象に残っているのは、0→1のプロダクトローンチを経験できたことです。スピード感のある環境で、ローンチに最初から最後まで関われたことは、私にとって大きな財産になりました。
ーーーDeNAでの経験を経て、メルカリへ移られたとのことですが、その背景にはどのような思いがあったのでしょうか。
加藤:
DeNAでの経験は非常に貴重でしたが、次第にエッジAI以外の分野にも挑戦したいという思いが強くなってきました。特にWeb開発やアプリ開発、バックエンドなど、より幅広いスキルを身につけたいと考えていました。また、DeNAの働き方やカルチャーにも非常に満足していたので、同じ事業会社で、現在のスキルを生かしつつも、フルスタックエンジニアとして成長できる環境を求めてメルカリを選びました。
ビジネス価値を見据えたエンジニアリング
ーーーメルカリではどのような経験をされましたか。
加藤:
期待通り、本当に多岐にわたる経験ができ、フルスタックエンジニアとしての自信を持つことができました。エッジAI技術を利用したWebアプリケーションの開発、メルカリのiOS/Androidアプリの出品領域の開発、出品領域のマイクロサービス開発、さらには生成AIのプロダクト開発まで。メルカリは、各技術領域の基盤を作っているエンジニアやアーキテクトたちが非常に優秀でした。機能を開発するチームのメンバーは経験が浅くてもその基盤の上で生産性高く機能開発ができることに感動を覚えています。強い組織だと今でも思います。
特に印象深いのは、出品体験の改善を責務とするチームに配属されたときの経験です。プロダクトマネージャー(以下、PdM)、デザイナー、アナリストと一緒に仮説を立て、それを如何に早く検証していくかを考えMVPを設計して短期的に開発する。成果に繋がった時の喜びは今でも忘れられません。これまではエンジニア中心の開発組織内での開発経験が多かったのですが、異なる専門性を持つメンバーと協力してお互いの強みを発揮することで「こんなに面白いことができるのか」と感動しました。
ーーーこの経験を経て、今の加藤さんの強みになっていることはなんですか?
加藤:
PdMやデザイナーに「技術側を何でも任せられる」と思ってもらえるエンジニアリング力と柔軟性、でしょうか。
教科書通りに全て考えるのではなく、そのときの要求、環境に応じて最適なアプローチを考え、スピード感を持って実現できるようになりました。
例えば、PdMが「まずは仮説が正しいか確かめるために短期間でリリースしたい」と考えている時に、1週間程度でMVPを実装できるように機能やデザインの代替案も含めて提案し議論していくようなイメージです。常にPdMの”肌感覚”を理解することを大切にし、「このプロダクトにとってどこが最重要か?逆にどこが手を抜いてもいいか?」を問いかけています。
このような考え方ができるようになったのは、「どんなに使っている技術が凄くても、利用者にとって価値がなければ意味がない」という失敗を経験した事があるからです。また実際にメルカリで、技術的には1日で出来るような改善で大きな成果につながった施策を目にしたこともありました。
そのため、施策を考えるPdMやデザイナーを信頼し、彼らの意図をいかに理解し実現するかが、エンジニアである私の責務だと考えています。
より「社会的意義のある」仕事に取り組みたい
ーーーそうした経験を積まれて、ファストドクターに入社を決めた経緯を教えてください。
加藤:
技術的なスキルがある程度身についた今、より社会的意義の大きいと感じられる仕事に挑戦したいという思いがありました。また、成熟しきっていないエンジニア組織をリードするような挑戦もしたいとも考えていました。そんな中でスタートアップ専門のエージェントさんからの紹介でファストドクターを知りました。
初回のカジュアル面談で「このタイミングを逃したら駄目だ。人生で二度とないチャンスかもしれない」と直感的に感じました。
ーーー「二度とないチャンス」。どんな会話をされたか、詳しく伺いたいです。
加藤:
AIによって医療ドメインを劇的に進化させる可能性や、将来の医療課題から「私たちが私たちの子供たち世代のために何ができるか」という話をしたんです。エンジニア人生で想像もしてなかったことに携われるなと。面談、面接の他にもテックブログを読んで、特に事業とエンジニアリングのバランスに関する考え方にも強く共感していました。
それから、ファストドクターの選考を進める中で感じたのは、自分のために仕事をしているというよりは、将来や周りのために仕事をしている人が多いという事でした。シンプルにかっこいいと思ったんです。
また当初R&Dに所属する想定で採用が進んでいたのですが、PdMやデザイナーとプロダクトをつくって検証していく仕事をより強く希望していました。その思いを代表 水野との面接で率直にぶつけました。その面接を通じて、「自己満足的にソフトウェア開発するのではなく、事業に向き合った開発をしているんだな」と納得できたことも決め手の一つになりました。
当時の面接後、エージェントさんに以下のようなフィードバックを送っていました。
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水野CEO、気さくな方で非常に話しやすかったです。
話した中で、より自分にフィットしそうなことがわかったので良かったです。
例えば技術選定の話をしたのですが、ベストアプローチを知った上で、そこで勝負するか否かをちゃんと考えて、闇雲に自社開発しない。最初は人手での運用でも十分。といった価値観は自分にもフィットすると感じました。
懸念は特になし。多少入社前後でギャップはあるとは思いますが、入社する価値があるなとあらためて思ってます。多少プレッシャー感じるところはあると思いますが、頑張りたい。
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人手での運用でも十分、というのは最初からシステムを作り込みすぎずに、検証するのに必要十分なものを作ることを意味しています。
この水野の考えは、私がこれまでに得た気づきと共通する価値観でした。またファストドクターは医療現場のオペレーションに強みがあるので、テクノロジーを活用しながら、直接的に現場オペレーションを改善し続けることができます。そこがファストドクターの競合優位性であり、私の価値観にフィットすると思いました。
ーーーその後実際に入社してみていかがでしたか?
加藤:
正直、今までの会社とは全く違う環境でカルチャーショックを受けました(笑)。IT企業にはいないような医療従事者がたくさんいて、社内のドキュメントやSlackも医療用語であふれています。そのため、担当領域の書籍を読むところから始めましたね。あとは仕事しながら、十分キャッチアップできたと思います。日々事業サイドと会話が出来てドメイン知識は吸収できます。自分の強みはエンジニアリングなので、そこで価値を出すことにフォーカスできています。
現在、私はオンライン診療事業のメンタル領域の開発を担当しています。
開発体制としては、業務委託も含めてエンジニアが5名、PdM1名、デザイナー1名、よく話をする事業部のメンバーが5人程度の小規模な組織です。事業部と開発組織が横断的にアジャイルで開発しています。
ーーー開発の進め方について、詳しく教えていただけますか?
加藤:
良くも悪くも、とにかく自分がオーナーシップを発揮して仕事を進める必要がある環境です。コミュニケーションに関しては、PdMにハブになってもらいつつ、私自身もデザイナーや事業部と直接会話して、何をどう作るかを決めたり、課題感を深掘りする中で、「その課題だったらこういう機能の方が妥当じゃないですか?」と提案したりしています。開発に専念したいときはPdMにお任せすることもありますが、基本的に人と話すのが好きなので、Slackで気になる話題を見かけたら直接話しに行くこともあります。
また、担当事業だけでなく、ファストドクターテクノロジーズ(開発組織)全体のソフトウェアアーキテクチャに関する意思決定の支援や他のプロジェクトの技術的な相談に乗る活動も行っています。
ーーー日々の業務の中で、特にやりがいを感じる瞬間についてお聞きしたいと思います。
加藤:
自分たちが開発したものが毎日医療の現場で実際に使われ、それが患者さんや医師、事務局に貢献していることを実感できるのは、大きなやりがいですね。一方で、開発組織が小さいため、できることが限定的という悩みもあります。やりたいことは山ほどあるんです。
例えば、「このUIをこう変えたら、医師が医薬品を選びやすくなるのに」と思っても、すぐには着手できないことがあります。開発リソースが限られているので、より効果が高いと見込まれる施策に優先度を絞らざるを得ないんです。前職ではちょっとした手触り感の改善でも使い勝手の向上やプロダクトのファンを増やすことに貢献できていたので、そこに力をいれられないことはもどかしいです。しかし、これは会社や事業のフェーズにもよるので今やるべきことに集中しています。
ーーー加藤さんの今後の展望について教えていただけますか?
加藤:
優秀なエンジニアやエンジニアリングマネージャーが「入社したい」と思えるような開発組織やプロダクトを作っていきたいです。
私個人としては、多少私生活のリスクを取ってでもチャレンジしたいと思えるくらい面白い領域だったので、ファストドクターを選びました。実際、リスクを取った価値はあったなと思うくらい良い経験を積めています。
私と同じような感性で入社してくれる方はいると思います。
ただ正直に言えば、ファストドクターとしては創業8年が経っていますが、ファストドクターテクノロジーズは編成されてまだ2年で、今の組織やプロダクトは成長途中であり、個人の一定のハードワークが必要です。特に医療ドメインは、業界経験のないWeb系のエンジニアにとっては未知の領域で、新たに学ぶ必要があることが多いのではと思います。
今私ができることは、IT企業で技術スキルを磨いたエンジニアが活躍できるような組織やプロダクトを作ることです。
そのため、医療の領域でも毎日サービスのデプロイができるようにリスクマネジメントや安全リリースを支える仕組みづくりをしたり、いかにスピード感を持って仮説検証から機能リリースをしていくかを事業側を巻き込んで文化作りをしたりしています。
やりたいことはたくさんあります。ただ、現状ではROIの観点から、より堅実な施策を優先することが多いです。「人が増えたらもっと面白いことができるな」と想像しながら、日々を過ごしています。
ーーー最後に、これから応募を考えている方へメッセージをお願いします。
加藤:ファストドクターは組織が成長途中であり、個人の裁量は大きいです。そして組織としても、プロダクトやシステムとしても解くべき課題が山積みです。
特にその課題解決を技術面からリードする役割としてテックリード、フルスタックエンジニアの役割は重要です。事業サイドと直接会話をして何を作るかを、技術的難易度やロードマップも含めて議論し、設計から実装まで一貫して関わることができます。技術的負債のマネジメントなども含めて、幅広い経験を積むことができます。
エンジニアとして技術に向き合うだけでなくプロダクトに向き合いたい方、課題解決が好きな方にとっては、非常に好環境だと思います。
ソフトウェアエンジニアとして「自分の子供達の世代に何を残せるか」。
将来の医療に貢献できることは、私にとって大きなモチベーションです。
ーー
加藤さんありがとうございました。
ファストドクターが掲げるミッションは「生活者の不安と医療者の負担をなくす」です。
私たちは、未来の日本の医療のために患者さんの医療アクセスの改善と医療者の支援を通じて、持続可能な医療体制を構築することに取り組んできました。
一方、我々の世代に限らず、私達の親の世代、子供たちの世代にとっても医療の課題は山積みです。
そこに向き合うのは決して簡単な仕事ではないですが、だからこそ、それを乗り越えた個々人の成長にもなると思います。
小さい事でも良いので、医療に課題を感じたことがある方。
身の回りの経験から「医療がこうあったらいいな」と感じている方。
仕事には折角人生の貴重な時間を使うのだから、有意義なテーマに時間を使いたいと思っている方。
ぜひファストドクターの門を叩いてみてください。
お待ちしております。