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【DX×エンジニア対談】ファストドクターカルチャーが生み出す「コミュニケーション」と「コラボレーション」とは

ファストドクターでは、救急往診を必要とする患者さんの自宅により早く到着するための施策の1つとして経路最適化に取り組んできました。今回、本プロジェクトを担当したDXグループの杉田さんとエンジニアグループの大畠さんをお招きし、いかにして成果を生んだか、その裏側にある「現場」との関わりをお話しいただきました。ファストドクターだからこそ経験できる面白さや達成感を感じとれる内容ですので、ぜひご覧ください。

Fast DOCTOR Technologies
右:DX部 Patientグループ 杉田 和駿(すぎた かずとし)
2021年4月新卒で日本IBMに入社し、週次の予実報告や経費予算計画などのファイナンス業務を担当。ファイナンス組織の効率化プロジェクトリーダーを経て、2022年7月よりファストドクターに入社。DX部にて、業務プロセス自動化や効率化プロジェクトに取り組んでいる。

左:エンジニアリング部 オペレーション開発グループ 大畠 健(おおはた けん)
大学在学中に友人と起業し、ソフトウェアエンジニアとしてのキャリアをスタート。N高等学校にてプログラミング講師を経て、2022年7月にファストドクターに入社。ソフトウェアエンジニアとしてファストドクターの基幹システムの開発に関わりつつ、数理最適化のテクニックを活用して社内リソースの効率化に取り組んでいる。

ファストドクターのサービス体験を向上させる「経路最適化プロジェクト」

ーーまず初めに、経路最適化プロジェクトとは、どのようなものなのでしょうか。

大畠:
簡単に説明すると、”救急往診を必要とする患者さんに、より早く到着するルートを提案する”ためのプロジェクトです。私たちはこれまでも多くの患者さんに医療提供支援を行ってきましたが、コロナの感染拡大が爆発した際には医療を必要とする方が多く存在するにも関わらず、一時的に受付をお断りせざるを得ない状況にもなりました。また、私が現場理解の一環でオペレーター業務を体験した際に、非常に具合が悪そうに声を絞り出して話している患者さんに遭遇しました。そうした経験を経て、「必要な患者さんにいち早く医療を提供する仕組みを作らなければいけない」という気持ちが更に強くなりました。こうした経験を、医療をDXで加速させるための一役として”テクノロジーで解決できることは何か”という視点で動き出したのが、本プロジェクトで、救急往診時の移動経路を最適化し、医師がいち早く患者さんのもとに到着できるようなシステム開発を行うということに至りました。

杉田:
そうですね、このプロジェクトにおける課題は2点ありました。1つ目は、これまでは患者さん※1に対して、医師の現在地と患者さんのご自宅、医師が所有する医療資材など全てを考慮してスケジュールを配置しなければならず、その時に最適だと判断してスケジューリングをしても次の患者さんに移動する頃にはすでに非効率的なルートになっていること。極端に言えば、西側中心で救急往診に当たっていたのにいきなり東に行って、また西に戻るといったような、行き来が発生してしており、患者さんに対しても医師に対しても負担でしかなかったんです。2つ目は次々と入ってくる相談に対して、救急往診の差配を担当するメンバーに大きな負担がかかっていたことが課題でした。移動時間が余計にかかっているということは、本来は救急往診が必要だった患者さんに医療を届けることができなくなってしまう一因になりえます。一刻も早く医師が患者さんのところに行くためにも、本プロジェクトは重要視されていました。実装後の現場の評価として、医師やドライバーから「以前よりもスムーズな移動になった」「効率的な移動で燃費が良くなった」とコメントをいただいています。一方で、たまたま移動効率の良いところから依頼があったのか、他の施策が功を奏したのか…効果検証をしづらい点は難点です。
※1 通院困難性と症状の緊急性の観点で医師から救急往診が必要であると認められた患者

ファストドクターだからこそ実現できる「現場」との関わりとは

ーー本プロジェクトは、お二人が実際に”現場”で働くメンバーと上手く連携していたと聞いています。

杉田:
はい、まず先に現場理解って大切だなと思ったエピソードからお話しします。実は以前、医師のスケジュール配置を行うメンバーの負担軽減の具体的な施策のひとつとして「救急往診ルートの可視化」に関するシステム改修を行いました。開発当初はテスト環境で実証効果を確認したうえで現場に導入したものの、実際にはうまく活用してもらうことができませんでした。なぜならば、実際はそんなマップを見ている余裕がないからです。このことを現場研修に行った際に痛感し、そこで初めて現場に寄り添いきれていない改善施策であったと猛省しました。そして、現場メンバーから些細な要望や課題を共有してもらい、何度もバージョンアップを重ねた結果、ようやくうまく活用してもらうまでに至りました。この経験を通じて、ファストドクターVALUEのひとつである「Go, GEMBA」の大切さを感じ、現場に足を運んだことがいい連携を生んだのではないかと思っています。
DX部の役割としては、現場の声をいかにしてエンジニアに伝えるかが鍵になってくるので、調整役としてうまく機能したことは私としても自信に繋がりました。

大畠:
そんなこともありましたね。またVALUEの話になってしまいますが、「Try Fast, Learn Fast」つまり「チャレンジしたうえで検証を重ね、改善していくことが大事」というカルチャーがあります。失敗を糧に次に進むことができる土壌があるのは、とても働きやすい環境だと思います。

そして、「Go, GEMBA」の影響は大きいと私自身も感じています。私が行った救急往診現場では、医師は移動中の短い時間でカルテ記載を行っているために移動時間を短くしすぎても医師に負担をかけてしまうことを知りました。
エンジニアとしては「使える」と思って開発していたものが「現場では使えない」という状況はよくあることだと思います。その点、カルチャーを活かしてちゃんと現場に入り、「なぜこれが必要なんだっけ」をちゃんと理解しながら開発を進めることができたのは、カルチャーが後押ししてくれた賜物ではないかと思いました。現場から持ち帰った学びは本当にたくさんありますね。

「Go,GEMBA」によって生まれるコミュニケーションとコラボレーション

ーーエンジニアにとって「Go,GEMBA」のような経験は珍しいものなのでしょうか。

大畠 :
そうですね、一般的には少ないと思います。私の業務はファストドクターのプラットフォームを支えるシステムの開発・改善で、基本的にはソースコードやデータベースに触れていることがメインなんですよね。なので、実際の業務ではなく、システムが想定している業務をイメージしてしまいがちです。例えば、どうしてこの患者さんの診察時間が長いのか、あるいは短いのか、といったことは、データ上だけでは読み取れない部分があるので、実際に救急往診に同行してご家庭の様子や医師の手際の良さを目の当たりにするわけです。そこからエンジニアとして取り組める課題を見つけることができ、現場に寄り添えることは素晴らしい経験だと思っています。

ーーこれは、エンジニアとして他職種と関わることにも影響しているのでしょうか。

大畠:
もしかしたら、エンジニアに聞きたいことがあっても、恐る恐る質問する…という方も多いのではないでしょうか。ファストドクターでは”現場が大事”という価値観が共有されているので、私たちが現場に行ってもコミュニケーションが取りやすい環境となっています。他職種とのコラボレーションのしやすさはエンジニアとしての成果にも繋がっていると感じます。

ーー杉田さんは「Go,GEMBA」でどのような経験をされましたか。

杉田:
ドライバー・医師・オペレーター間で連絡を取るために用いていたアプリがあるのですが、以前から「使いづらい」という声を耳にしていました。それでも、実際にどう使いづらいのかが捉えきれずにいて、それほど自分ごと化ができずにいました。しかし、実際にドライバーとして勤務してみると、アプリ自体がうまく起動しなかったり、業務に必要なチャットルームに入れなかったりしました。現在は改善済みですが、現場に行かないとわからない課題があると改めて気付かされました。こういった経験によって、実際の要件定義に反映させることは多々あり、ファストドクターだからこそ課題をスムーズに解決できていると感じています。

ーー「Go,GEMBA」はファストドクターにとって重要なカルチャーとなっていますね。

杉田:
これは私の個人的な意見かもしれませんが、非医療者が医療業界で働く際に自分は馴染まないのではないかという不安を抱くように感じます。しかし、「Go,GEMBA」があることでそれを乗り越えることができ、コミュニケーションやコラボレーションのきっかけに繋がっていきます。「Go,GEMBA」中の何気ない会話からはじまって今では全社的に使うようになった施策もあったり、何か困ったことがあるメンバーと壁打ちして施策化させたり、大きな影響力を持つカルチャーのひとつだと感じています。

経路最適化プロジェクトが医療業界に与えるインパクトとは

ーー本プロジェクトはファストドクターだけに止まらず、日本の医療DX推進にも寄与しうる事例だと思っていますが、お二人としてはどう捉えていらっしゃいますか。

大畠 :
私は2024年問題などで取り上げられる労働力不足に関する課題は、医療の生産性を上げるという解しかないように感じています。今回は主として救急往診ルート改善による最適化を図りましたが、医療業界にあるひとつひとつの課題を同様に最適化させることが具体的な解決策になると考えています。例えば、病院でも医療資材を仕入れるに当たって、使用頻度、患者数、保管倉庫の空き状況、使用期限などさまざまな条件を鑑みて発注していくと思いますが、全部を網羅するのは大変な作業です。 しかし、これを医療DXによって最適化できれば負担軽減につながります。もちろん業界としてDX化が進みつつありますが、こうした取り組みを企業が率先して行うことで、展開できる規模が大きくなることは強みだと思っています。その中で、ひとつの実績を作れたことは大きな意味をもつものだと考えています。

大畠 :
私も同じことを考えています。たとえ些細な取り組みであったとしても業務効率化に繋がることを伝えていきたいですね。今の日本においては「医療DX推進」といったが潮流があり、かっこよく大枠で着手しなければならない気になってしまいがちです。もちろん、大枠を変える必要性が高いことは理解していますが、まずは「紙文化を少しでも減らすために何かできないか?」といったような小さなチャレンジでも積み重ねていくことが大事ではないかと思っています。

ーーファストドクターの取り組みが医療業界に波及していけると感じられることも、ファストドクターの魅力かもしれません。今回は、ありがとうございました!!


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