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【労務責任者インタビュー】医療系資格がなくても、医師と患者さんの“これから”に寄り添える仕事

今回は、ファストドクターに関わる数千人規模の労務管理を取りまとめている経営管理部労務グループのシニアマネージャー田中 祐さんへのインタビュー記事です。医療大手企業からスタートアップへ転職した経緯と、医療DXだけではなくファストドクターが目指すコーポレート部門のDXなど、さまざまな側面からお話を伺いました。

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田中 祐プロフィール

新潟県出身。日本大学生物資源科学部応用生物化学科終了後、大和フーヅ株式会社に入社。店舗マネジメントに従事。日本ハイウエイサービス株式会社、経理事務に従事し、その後労務業務に出会う。富士ソフトサービスビューロ株式会社にて労務リーダーとして入社し、3年後業務管理部 副部長として業務管理マネジメントに従事。事業設立・廃止や行政調査など困難を乗り越え、これまで培ってきた労務経験をファストドクター事業に役立てたいと思い2021年に入社。

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人に必要とされる会社で働きたい

ーーファストドクターへ入社される前のご経歴を教えてください。

前職は、大手企業で人事労務に携わっていました。従業員6,000人を約20名で管理する体制の中で副部長を務めていたことから、その時に積み上げた知見は今も存分に役立っています。

こう聞くと、専門職としてずっとやってきたのかなと思われるかもしれませんが、実は大きなキャリアチェンジを経験しています。私はもともと飲食店の店長をしていたのですが、店舗責任者である以上、利益を追求することは責務ですので徹底的に「ムダ・ムラ・ムリ」をなくすことのみを考えて毎日過ごしていました。利益を追求した結果、最優秀店舗として表彰される事になりましたが、共に働く従業員が疲弊していた姿を見て「これは本当に正しい数値結果だろうか?継続的に成績を出し続けることは出来るのだろうか?」と本気で悩み数値管理・人事管理を学び直したいと思い転職を決意しました。

前々職では経理からスタートして、その後労務の仕事にも関わるようになりました。私の労務としてのキャリアはここからとなります。中小企業で労務を学んだあと、上場企業で労務を追求したいと思い前職に入社するのですが、内部統制がかなりしっかりしていた会社だったので、その中で人事労務システムのリプレイスや行政調査対応などを20名ほどのチームをマネジメントしながら対応しておりました。

労務や業務管理の経験を積んで行く中で「労務の仕組みを1から作ってみたい」という思いが大きくなり、チャレンジする気持ちでファストドクターへの転職を決めました。

ーー大手企業の次になぜスタートアップであるファストドクターを選んだのですか?

転職エージェントからファストドクターを紹介された時、新潟の片田舎に住む母親が以前「この地域にもファストドクターみたいな事業があれば、自力で医療機関に行けなくなっても安心なのにね」と話していたことをふと思い出したんです。自分は医療系の資格を持っていないどころか医療業界との接点もありませんでしたが、こうやって人から必要とされる会社で人事労務として貢献できたら、労働者である医療従事者の負担だけではなく、それを支えるプラットフォーム運営側の負担、さらには母のような生活者の不安のそれぞれを軽減できるんじゃないかと思ったのがきっかけです。

ただ、医療業界は法律などの制約が厳しいため、知見のない自分がどこまで役に立てるのかは未知な部分も多くありました。それでも、医師を取り巻く労働環境に課題があることは2024年に始まる医師の働き方改革からも明らかですし、労務の視点からそれらの解決策を模索することに面白みとやりがいを感じたので、入社を決めました。

ファストドクターはまさに駆け出しのスタートアップ企業で、私が入った当初は正社員も30人程度しかいなかったので、その分これからやりたいことを実現していける環境だと前向きに捉えました。新型コロナ第7波で救急医療のひっ迫や医療崩壊が叫ばれる最中、ファストドクターがたくさんの人の命を救う場面を目の当たりにして、社会に対する貢献度も大きく実感しましたし、日本の医療業界が抱える課題に対する1つの“答え”としてファストドクターのミッションを共に実現していくチャンスだと思いました

DXを活用して数人で“1万人”の管理体制を目指す

ーーファストドクターの労務として取り組んでいる内容を教えてください。

労務としての業務内容は、社員や契約社員だけではなく、提携する医療機関スタッフの勤怠管理・給与計算・雇用手続きなどの代行業務も含めて多岐に渡り、今は総勢1,000名弱(業務委託を含めると1,800名程度)の労務管理を私と労務グループリーダー2人と派遣社員5名の7名体制で担っています。私の目指す未来像として、ゆくゆくは1万人規模の従業員を数人で管理できる体制にしたいと考えているので、それを実現させるために試行錯誤しているところです。

これまでに私が取り組んできた労務の事例としては、「変形労働時間制」と「フレキシブル休暇制度」の導入などがあります。もともとはフレックスタイム制を導入しようと考えていたのですが、そうすると本社で働くコーポレート部門と現場で24時間対応を求められるメディカル事業部門との間で不公平が生じてしまうという課題があったので、変形労働時間制にフレキシブル休暇制度を組み合わせ、ファストドクター独自の制度を作りました。

具体的には、1ヵ月の所定労働日数と労働時間に応じた変則的な事前シフトに加えて特別休暇(フレキシブル休暇)を与えるというものです。限りなくフレックスタイム制に近くありながら、個々の業務内容に応じた勤務時間の調整が可能となりました。従業員の残業を極力減らして働きやすい環境を整え、会社にとってもWin-Winな制度を作りたかったんです。

現在の私たちは、会社全体の制度を1から創り上げているフェーズです。ファストドクターの掲げるバリュー感とは少しズレてしまうかもしれませんが、なるべく社内にいて、トラブルが発生したらすぐに駆けつけられる体制にしています。労務として会社の事業に責任を持ち、必要な時はもちろん現場に出向きますし、問い合わせ対応も全力でフォローします。

現場対応をしているメンバーからは「おんぶに抱っこのようで申し訳ない」などと言われることもありますが、それって最高の褒め言葉だと思うんですよね。これからも社内コミュニケーションは大事にしていきたいです。

ーーファストドクターは医療DXを推進するべく邁進している会社ですが、コーポレート部門でもDX化を進めていますよね。実際に業務効率化できた事例はどのようなものがありますか?

最近だと、最大800人分の給与計算を1人当たり3クリックで終了する仕組みを作りました。残業抑制プロジェクトにも新しく取り組んでいるところです。現在、エンジニアチームをアサインしてシステム構築をしており、課題が洗い出されるたびにスピード感を持って解決する流れができつつあるので、これもファストドクターにおける労務の魅力的な部分だと思います。

前職でもさまざまなツールを導入してきましたが、一番難しいところは既存システムへのマージで、新しいシステムを導入しても中身はツギハギという「労務人事あるある」ですが、結局数ヵ月経つといろんなひずみが出てきてしまうんですよね。だったら自社システムを開発し、より業務効率化できる基盤を整えようと考え、自社の情報を独自システムとAPI連携させたりGASプログラムを組むことで、給与や税金などを自動集計できるようにしました。さすがにシステムを組む部分は外部委託することも多いですが、これからも自社システムを活用したDX化による解決事例をどんどん積み上げていきたいと思ってます。

“労務”の枠にとらわれ過ぎない

ーー現在の課題と求める人物像を教えてください。

会社規模がとてつもないスピードで拡大する中で規則や運用方法の整備が追いついておらず、勤怠・賃金管理、従業員のストレスチェックなど課題は山積みですが、基本的なことも新しいこともしっかりやっていかなければなりません。労務は新しい仕組みや制度1つで会社を変化させることができるので、今後の上場(IPO)を目指すにあたり、会社の課題と真正面から向き合い、1つ1つ解決していきたいです。

先ほどお話ししたとおり、将来的には数人で1万人規模の従業員管理を担えるような労務を作りたいと考えており、組織としては労務チームと業務管理チームの2つに分ける構想もしています。労務に対して堅苦しいイメージを持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、ファストドクターの労務はどちらかというと新しい仕組みや制度を作っていくクリエイティブな方向性なんですよね。なので、発展途上の煩雑な状況の中でも物事を前向きに捉え、最後まであきらめずに完遂できる力を持っている方と一緒に働きたいですね。

ーー最後に田中さんの今後の展望についてお聞かせください。

医師の働き方改革が始まる2024年以降、医師の労働上限時間が決まります。本業で8時間、他クリニックで4時間働いた場合、異なる医療機関でも超過した4時間分がすべて残業扱いとなります。この制度のスタート後は勤怠管理・給与計算がより複雑化することは目に見えていますが、現状まだその制度に対応したサービスはありません。

個人的な展望としては、自社向けに開発した人事労務システムをゆくゆくは他社でも活用されていくことも可能なのではないかと思っており、ファストドクターにはそれらを実現できるレベルの技術者が揃っていると考えています。労務としては、ただ淡々と業務をこなすのではなく、我々を起点として業務効率をどんどん改善していき、自社だけでなく医療業界全体の健全化まで波及するほどのインパクトを目指していきたいです。

ここまで大きなことをお伝えしましたが、実際の足元はまだガタガタで発展途上の組織です。それでも、数年後には「ファストドクターの労務ってすごいのでは?」「ファストドクターの労務にいるなら優秀に違いない」と箔が付くような労務組織にしていきたいと思います。私のこういった少しぶっ飛んだ考え方にも共感して、大変な状況でも一緒に楽しみながら乗り越えていけるクリエイティブな方は、ぜひファストドクター(の労務)に興味を持っていただきたいです!

文:堀間 莉穂

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◆300名の医師・200名の看護師をネットワークし、「通院が困難な夜間や休日の救急相談・救急オンライン診療・救急往診」を全国10都府県で展開する、日本最大級の時間外救急プラットフォーム「ファストドクター」を運営しています。 テレビや新聞では医療風景とともに報じられることが多いため医療法人と捉えられがちですが、ITの力で医療を支援するヘルステック企業です。 「生活者の不安と医療者の負担をなくす」という企業理念のもと、① 生活者 ②医療機関 ③政府・自治体 ④企業 に向けたプラットフォーム型事業を展開しています。
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