「常にマーケットインでサービスを向上させる」営業と開発の連携でシェアNO.1まで成長した、HR領域におけるSaaSの裏側とは?【事業責任者インタビュー】
リリースして約5年、労務管理クラウドでシェアNo.1を獲得した「オフィスステーション」は、バックオフィスに特化したコンサルティングを手掛けるエフアンドエム社と、システム開発に特化したエフアンドエムネット社が共同で創り上げています。
この事業の裏側を尋ねると、両社が関わっているからこそできるサービスの形が見えてきました。
オフィスステーションがどのように誕生したのか、急速な成長の背景には何があるのか、事業責任者の渡辺さんに語っていただきました!
株式会社エフアンドエム
オフィスステーション事業本部本部長 渡辺尚人
会計系コンサルティングに従事した後、社会保険労務士事務所の経営支援を行う。2016年にバックオフィス業務向けクラウド型労務・人事管理システム「オフィスステーション」をリリースし、以来同サービスをけん引。
後発参入から業界シェアNo.1へ!急成長したプロダクトの強みとは?
ー「オフィスステーション」とはどのようなサービスなのでしょうか?
オフィスステーションは、バックオフィス業務の効率化を目的とした『クラウド型人事・労務管理システム』です。こちらのシステムを導入することで、人事部がおこなう様々な人事データの管理や、行政への申請を一括して電子化することができます。
例えば、会社に入社するとき、たくさんの書類を記入して人事部に提出されたと思います。
その書類を元に、人事部が社内のデータベースへ入力、その後年金事務所やハローワークに申請手続きをして、社会保険の申請などを行っています。
オフィスステーションを導入すると、書類での提出ではなく、webアプリ上からの提出となります。
社員から情報の登録があると、そのまま社内のデータベースへ連携できて、なおかつ行政機関への申請も電子化、そのままウェブ上で提出が可能です。
結果として、入社手続きにかかる業務時間が4時間40分から19分に短縮されるなど、バックオフィスの効率化に特化したシステムとなっています。
オフィスステーションは2016年にリリースしたのですが、ここ数年急速に成長をしていて、現在では約15,000社(※)のお客様にご利用いただく業界シェアNo1のシステムへと成長しました!
(※)2021年3月時点の数値
ー業界シェアNo.1ということですが、他サービスと比べたときの強みは何ですか?
お客様から良く挙げていただく主なものとしては3点あります。
- 無駄のない「アラカルト型」
- 「プロ仕様」で対応している帳票の多さ
- 現場を良く知っているからこその使用感
①無駄のないアラカルト型
アラカルト型とは、お客様が必要な機能だけ選んで導入ができるサービススタイルです。
例えば、電子申請が義務化されている書類だけシステムで対応したいというお客様や、人事労務に関連する作業をすべてシステムに切り替えたいお客様など、会社の規模やオペレーションの方法によって、使いたい機能やご要望は異なります。
一般的な人事労務クラウドソフトでは、すでに決められた機能を一括で導入する「パッケージ型」が多く採用されているため、お客様によっては必要のない機能に対して費用が発生するケースも出てきてしまいます。
オフィスステーションの場合は、必要な機能に絞って利用することができるため、タイミングに合わせて、無駄なくサービスを活用いただけることが特徴です。
ー「アラカルト型」が生まれた背景を教えてください!
これはまさに私たちがコンサルティングをしてきたからこそ導き出された答えなんです。
コンサルティングが上手く行く事例というのは、一気にすべてを解決するのではなく、優先順位をつけながら、課題感の大きいところから順に少しずつ、確実にスケジューリングして課題を解決していく。このような方法でないと、コンサルティングは成り立たないんです。
ソフトも同様で、基本的にお客様は通常業務の中に横から入ってきた業務と並行して効率化を進めなくてはいけない。そうなったとき、色んな機能を持ってはいるものの、それらを一気にデジタルに切り替えることをお客様ができるかというと、やっぱり難しいですよね。
それであれば自由に選択ができるようにしてしまって、解決したい課題から順々に導入いただくことで、コストの最適化ができるように、無理なくデジタル化にシフトしていただけるという思想でアラカルト型にしています。
②「プロ仕様」で対応している帳票の多さ
お客様から評価されるポイントは、対応できる幅が非常に広いところです。
例えば、現在日本には、労務手続きや社会保険・労働保険の手続きなど、すべて合わせると120種類ほどの帳票があります。
このうち、オフィスステーションは、116種類の帳票の作成機能を備えています。さらには、その半分以上が電子申請できる仕様になっているため、基本的にデジタル化が可能で、アナログで残るものは殆どありません。
一方、他社システムの場合は電子申請まで対応している帳票が5分の1ほどで、残り5分の4はアナログで残ってしまう。すなわち、ルールが2つになるため、効率化しようとしているのに実は複雑化してるんですよね。
ITを入れて仕組み化したいというお客様から、本当の意味で要望を叶えられるのはオフィスステーションだ、という評価をよくいただきます。
ーどうしてそれほど対応している帳票数が多いのでしょうか?
元々は社労士の先生方向けに開発したサービスだったんです。
エフアンドエムは、本業が『バックオフィス特化型のコンサルティング事業』で、税理士や社会保険労務士など、士業の先生方と一緒に新しい事業に取り組む機会も多くありました。
その中で、先生方の業務を効率化する目的で開発を始めたシステムが、オフィスステーションの前身です。すごくピンポイントに作ったシステムだったんですが、一般企業からも多くの問合せをいただくこととなり、「それであれば一般企業向けもリリースしよう!」と現在のサービスに至りました。
このように元々は帳票作成のプロフェッショナルである先生方に向けたサービスだったため、対応できる帳票も網羅されているんです。
③現場を良く知っているからこその使用感
私たちは1990年から累計約31,000社のバックオフィスをコンサルティングしてきました。そのエッセンスが、オフィスステーションにも随所に取り入れられています。
例えば、システム内で書類の記載間違いなどが発生した場合、行政側から「ここが間違っているからやり直してください」というエラーが戻ってきます。
リストのように項目が羅列されているため、他サービスの場合はどこにエラー表記があるのか中身を全部見なくていけないのですが、オフィスステーションは一目で分かるよう項目に色付けがされています。
このように、実際に業務を行う際に発生する小さな手間を見逃さないことが、効率化に貢献しています。
これは一例ですが、現場を良く知っているからこそ気づくことができる小さな工夫が、お客様に好評をいただいています。
ーお客様の声はどのように吸い上げているのですか?
営業メンバーが商談時に直接伺うことはもちろん、サポートデスクへのお問合せやユーザー向け使い方セミナーでのアンケート、大企業様の場合は担当制でフォローしているので、その中での定期的なやり取り など、様々なシーンでお客様の声を吸い上げる仕組みを作っています。
また、内部的な話で言うと結構これは自慢なんですが、開発のメンバーと営業やフォローチームがすごく仲が良いんです!
お客様の声をダイレクトに届けられるよう、コミュニケーションは常に取り合っています。2週間ごとにオフィスステーションに関わるメンバー全員で情報を共有する機会を必ず作っていますし、最近はコロナ禍でなかなか実現できていませんが、以前は良く飲みに行ったりして、そういう話をしていましたね。
私としてはすごく有難く、大切なことだと思っています。
常にマーケットインでサービスが良くなっていかないと、現場とのずれが出てしまい、その結果、自己満足のソフトになってしまって、なかなかマーケットフィットしないんですよね。この内部連携のスムーズさもお客様からの評価に繋がっているのではないかと感じています。
▲開発のディビジョンマネージャーである向井さんとのひとコマ。
(開発体制や営業メンバーとの連携について語ったインタビューはこちら)
HR領域における「プラットフォーマー」を目指して
ーオフィスステーションのリリースから約5年、サービスがここまで急速に成長することとなったきっかけは何でしょう?
1つは2020年4月からの法改正です。
資本金1億円を超える企業は社会保険の申請を電子化することが義務付けされました。
それまではバックオフィスの専任部署がないような中小企業のお客様にご利用いただくことが多かったのですが、この改正を受けて大手企業のお客様からもご利用いただくことが一気に増えました。
そして2つ目は、新型コロナウイルスの蔓延による働き方そのものの変化ですね。
日本のIT化に対する課題が多く浮き彫りになる中で、今まであまりフォーカスされてこなかったバックオフィス業務のIT化に各企業の目が向けられるようになりました。
これら2つの要因が重なり、大きくマーケットが開かれた感覚がありますね。
ー近年、お客様のニーズは変化していますか?
そうですね、テレワークやIT化が当たり前になり、以前にも増してインフラの見直しにはポジティブになっている印象があります。
特にバックオフィス分野は、システムや人的な投資に対して後ろ向きなイメージでしたが、世の中の動きと相まって、限られたリソースの中で仕組みに対して投資をしていこうという動きが出てきていると思います。
ー最後に、今後のビジョンについてお聞かせください!
色々ありますが、少なくともHR領域についてはトップでいたいという想いがあります。
今は、労務管理システムのシェアNo.1と公言できますが、今後も機能開発に力を入れ、市場に向かって様々なサービスを展開していきたいですね。
そしてその先は、プラットフォーマーの位置に足を踏み入れていきたいと考えています。
日本に限らず世界で、色んなアイデア持ってる人達が、そのプラットフォームを使いながら様々なアイデアを形づくっていってもらう。私たちのインフラやデータベース、ネットワークも含めて活用いただくことで、我々を基盤としたHR領域を広めていくようことを今後はしていきたいと考えています。
ー業界シェアNo1になっても、その先の成長があるんですね!今日はありがとうございました。