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全ての作品に丁寧に真剣に向き合いながらつくっている

田口 堅士|COO兼ディレクター|2010年f4samurai創業
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M|シナリオライターリーダー|2015年f4samurai入社

創業メンバー、そしてCOOでもあり、現役のディレクター、プランナーでもある田口と、f4samuraiのシナリオライターリーダーであるMは、ともにマギアレコードを創り上げた同志である。現在、所属プロジェクトは異なるものの、二人のゲームづくりに懸ける思いは同じ。IPでゲームをつくる面白さや意義について、そしてオリジナルを手がける制作環境について、深い会話が繰り広げられた。

たたんだ風呂敷を再び広げる
続編ならではの生みの苦しみ

――田口さんとMさんはマギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝を一緒につくってきましたね。

田口 「Mさんは約7年前に入社してくれて、最初はBBチーム(ボーダーブレイクmobile -疾風のガンフロント-)、その後オルサガチーム(オルタンシア・サーガ -蒼の騎士団- )に異動して、直近はマギレコチーム(マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝)で開発初期段階から活躍してくれています」

M「はい。マギレコへの関わりはかなり深く、長くなってきました。今は2部を頑張っているわけですがこれもなかなか大変です」

田口「1部完結でキレイにまとまった物語をほどいて、また風呂敷を広げないといけないからね

M「いや、本当にその通りです。2部では、1部以上の生みの苦しみも感じています」

田口「2部って単に続編という見られ方をしちゃうかもしれないけど、いままで培ってきたものを壊すのか、継続するのか。もちろん、いろんな関係者と話し合って決めたわけだけど、ユーザーさんそれぞれが、こう進んでほしいって思いも持っていると思うので、それに応えたい気持ちもあるしね

M「はい。キャラクターの数は1部に比べて膨大に増えました。キャラみんなの心の中を考えながら書かないといけないわけだから、時間も2倍、3倍とかかってしまって、いろんな苦労がありますね。ただ、作品創りに関わる社内外のみなさんにも相談させていただきながら、なんとか創り上げています。これからもっともっと面白くなっていくと思います」

怒涛の勢いで物語世界を構築

田口「マギレコ1部を開発していたのって、もう5年くらい前だよね。あの時に考えた環ういの存在についてみんなの記憶が抜け落ちていて……っていう設定は良かったなって」

M「ありがとうございます。関係者全員で相談しながら時間をかけて検討していきましたよね」

田口「原作があるIP、しかもすごい人気がある作品に関わらせていただくということで、プレッシャーもあったけど、f4だからできることを提供したいと思ってのチャレンジでしたね。その分、難易度も上がったけど…」

M「そうですね。あの頃はひたすら毎週書いてましたねぇ。マギレコ1部だと各章10万文字、2部だと、各章15万文字くらい書いています

田口「毎週読み合わせがあって、帰りの喫茶店で二人で作戦会議して、プロット練り直して。その後、Mさんは書き起こす作業があるから大変だったと思うよ」

M「そうですねぇ。大変でしたけど、楽しかったですよ。すごい勉強にもなって成長できたなって思います。あと、初めてうちでLive2D(https://www.live2d.com/)使ったのがあのときですよ。当時は社内にLive2Dできる人がいなくて、Tさんが研修に行きましたよね。僕がもともとコマ撮りアニメをやってたんで、モーションは一緒に考えてました」

田口「Live2Dでキャラクターがそれぞれの動きを見せるっていうのはいいチャレンジだったよね。他にも、SDキャラの頭身なんかも社内ではかなり話し合ったよね」

M「そうですね。揉めましたねー。どれがかわいいか、かわいくないか。真剣にみんなで話し合って」

田口「そう。いったい何頭身が正解なんだ?って。関係者のみなさんとも話し合って今の形になったけど、SDキャラ一つとっても、関わる全員がこの作品に対して思いが強くて、本当にすごく恵まれたチームで開発できたなって思います。あと、変身アニメを入れられたのが何より印象深いですね。いまじゃスマホゲームに動画が入ってるって普通だけど、当時としてはチャレンジだったので。絶対に変身シーンをいれたいってみんなで話していたよね

「キャラとシナリオが主役。ゲームは裏方」という、逆転の発想

M「最近、田口さんの手がけているプロジェクトはどんな感じですか?」

田口「いまのタイトルは何が魅力かというと、キャラクターとシナリオなんだけど、f4samuraiがゲームとしてどんな価値を提供できるのか、僕らの介在価値ってなんだろうかっていうことを考えさせられたプロジェクトですね。これまでf4samuraiが得意としてやってきたのはGvG(guild versus guild)だけど、今回のゲームはバトルがしたいわけじゃない。このゲームのユーザーさんはキャラを見たい、シナリオを読みたい、推しをもっと好きになりたいっていう感情を持っているはずで、その思いに応えつつ、ゲームとして良いものをつくるっていう、新しいチャレンジだったと思う。

M「これまで、田口さんはプランナーとして『ゲームとしての面白さ』を追求してきたけれど、力を注ぎ込む方向性を変えたわけですね

田口「そう。ゲームの中にシナリオがあるんじゃなくて、シナリオの一部としてバトルがあり、面白くなってきたところにアクセントとしてインゲームが入ってくる。そして、そのインゲームもただ難易度や単体の面白さを追求すれば良い訳じゃなく、シナリオとインゲームのコンビネーションというかコントラストを意識して調整しましたね

シナリオとキャラの魅力を最大限引き出すゲーム作り

M「うちの会社って、ゲームが好きな人が集まってるじゃないですか。だから『シナリオに対する演出としてのゲーム』っていう感覚の切り替えは難しいと思うんですよね。やっぱりゲーム部分をもっと面白くしたくなるから

田口「本当にそうだと思う。当然、僕も悩んでいたので、バトルもインゲームもまずは、いろんなタイプをつくってみたんだよね。難しいものや、両手両指をたくさん使うものとか。その上で『やっぱり違うよね』『ユーザーさんが求めているのはこういうものじゃないんだろうね』っていう感覚をチームのみんなと共有しましたね。そして、同時にシナリオも徐々に全容が見えるようになってきて、『やっぱりシナリオ面白いよね!キャラ良いよね!』ってなり『シナリオを引き立てるゲームにしよう!』って、僕も含めて腹落ちできたのかなって。結果的には、リリースしてみて『シナリオが面白い』『キャラが魅力的だ』ってユーザーさんからご評価いただいているから、この枠組みでつくって良かったなって思いますね」

M「普通のゲーム制作とは逆の発想でつくってるわけですよね。根本的にはこれはゲームという遊びで、それを引き立てるためにこそキャラやシナリオがあるのに、その反対をやっているという

田口「ゲーム好きでこのタイトルをやってみた人にしたら、バトルがあって、ゲームがあって、ガチャがあって『なんだこれ普通じゃん』って思われるんだろうけどね。でもプランナーとしては、これまでにないチャレンジをした作品だって思いますね」

IPは「世界観とキャラをお借りして修行させてもらう場」と考える

M「このゲームでは、SDのキャラクターのビジュアルがやや特殊で、単色カラーで塗られていたりもしますよね。ああいったデザインは先方からのアプローチに沿ってやっているんですか?」

田口「絵は先方の要望に合わせてですね。f4samuraiは、オルサガのようなオリジナル作品も、マギレコやこの新作のようなIP作品の両方をつくっているじゃない。IP作品っていうのは、原作をお借りしてゲームをつくることができて、それでいて自分たちにとっての成長の場にもなっていると思うんだよね。すでにある偉大なクリエイティブをお借りして、その世界を広げていく喜びもあるし、一方でIPだからこそのつらさや難しさもある。オリジナル作品だけじゃなくて、原作と既存のファンが存在するIP作品を手がけるというのは、その分だけ経験値を積めると思います。あと、他の会社の優秀な人たちに意見をもらいながら勉強させられていく、自分たちが知らないことを知れる、気づかせてもらえるっていう意味で、成長の場になっているよね。身の程をわきまえるじゃないけど、『こんなことできて俺らすごいでしょ!』じゃなくて『世界観を、キャラを、お借りしています』っていう姿勢でつくっていけば着実に成長できる。職人として技術力を上げながらね。IP作品をつくっていくことは、個人もチームもスキルを磨いていけるし、『ステークホルダーのことを考えながらやる』『全体の中での自分たちの立ち位置を客観視する』という意味で、ビジネスマンとしても鍛えらているんじゃないかな

オリジナル作品を広げていく

M「鍛えられたというと、f4オリジナル作品のオルサガではf4企画でアニメを放送しましたよね」

田口「うん。オルサガはリリースして6年以上経つタイトルなんだけど、1部完結したころから、ユーザーさんからもアニメ化の要望も多かったのもあり、ずっとアニメ化したいって思ってて…。それが念願叶ってという感じなんだけど、IP作品にも携わって色んな勉強し成長できたからやれたことで、本当にいろんな方のお力を借りて実現できたなって思いますね。オルタンシア・サーガRもそうなんだけど、いろんな関係者さんと繋がり、オリジナルの作品が広がっていくのって、本当に嬉しいなって

M「そうですよね。オルサガのアニメ放送は本当に感動しましたね」

田口「うん。だから、これからもIP作品とオリジナル作品の両方をちゃんと作れる会社でいたいなって思うよね」

自問を繰り返し深く潜っていく

M「田口さんがゲームの企画で大切にしていることってなんですか?」

田口「それは、設計のときにどれだけ深いところまで潜っていけるのか…みたいな…

M「自分を客観視してるっていうか、田口さんは自問自答がうまいですよね。つくっていて調子がよくっても、かならず『本当にこれで面白いのか』って自問してるじゃないですか。そういうのも『潜る』っていうことなんですかね

田口「うん、そうかもしれない。設計しているあいだに『これ、何かが違うかもしれない』っていう違和感とか、他のメンバーに言われた意見みたいなのは、ずっと頭に残して答えを探してるかな。そのタイミングでは分からなくても、その違和感が何なのかに気づく瞬間が必ずあるから、それを大事にしていますね。前に進まなきゃいけないときもあるけど、そういう時はチームメンバーと話したり、力も借りながら粘って、『あっ!そういうことか!』ってなるのを待ってます。そのためには潜るというか、ひたすら考える時間が必要で。ははは、もう俺、話してることが完全に精神論になってきてるね(笑)」

M「ははは。でも本当に、そういう感じですよね。その感覚、わかります」

それぞれの長所を活かしてチームをつくる

これからどんな人に会社に加わってほしいか、イメージはありますか?

田口「なるべくポジティブな人。明るいっていってもただネアカっていうんじゃなくて、核心をついてくる、自然と哲学してる人がいいよね

M「そうですね。常に考えている人、自分の頭で考えている人がいいですね

田口「メンバーとの面談でも、悩んでるときもポジティブでいよう、恥をかくことを恥ずかしがるな、みたいなことを話すことが多くて(笑)。チームとして、恥ずかしさや失敗を笑って支え合える関係がいいと思います。あと、つまずいたときに話し合いができる人がいいかな。苦手なこともそれぞれで違うけど、得意なこともみんな違うから。

センスのいい人、
ゼロからイチをつくり出せる人、
勘所がいい人、
整った設計のできる人、
デバッグの得意な人、
マスタデータに齟齬のない人、
文章がきれいな人、
交渉力のある人――。

f4には、いろんなタイプの人がいてほしいなって思っています。一人で全部できなくてもいいから、何かひとつ強さを持っていて、それでいてポジティブでいてくれたらね。

M「本当にそうですね。僕もポジティブでいるようにします(笑)」

田口「そうね、お互いね。それはもう、そうしよう(笑)」

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