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外コン・外銀出身者による座談会、全7回シリーズの6回目です。
◆前川 知也(まえかわ・ともや)
京都大学法学部卒業。在学中にC2CのWebサービス事業を起業しCEOを務める。 事業譲渡の後、2014年4月ボストン・コンサルティング・グループに入社。BCG時代は、金融機関やメーカー等のDX・新規事業開発を担当。多様な企業の戦略立案に携わる中で、AIを始めとする技術の可能性と重要性を感じ、2018年5月エクサウィザーズに入社。2018年10月より部長、2021年4月に執行役員に就任。人口が激減する日本に豊かな社会を受け継いで行きたいという思いから、人と組織の生産性向上を目指し、入社後は一貫してDX/HR領域の事業責任を担う。
◆羽間 康至(はざま・こうじ)
京都大学工学部物理工学科卒、情報学研究科修了。教授・助教との研究室の立ち上げから参加。第一三共・新日鉄住金・SONY等の企業との共同研究を通じて、多変量解析・機械学習手法を用いた製造プロセスにおける品質予測・異常検知モデルの研究開発に従事。2015年にA.T.カーニー株式会社へ新卒入社し、製薬・医療機器・自動車・重工業・電子電機・消費財・総合商社などの業種にて、国内外の事業戦略立案と事業開発の協業、オペレーション改革、企業再生等に従事。その後、エクサウィザーズに入社し、医療ヘルスケア領域の事業責任者を担う。
なぜBCGに入ったんですか?なぜ辞めたんですか?
前川:
私は就活では色々な企業を受けていて、博報堂、電通、日本銀行、BCGの内定をいただきました。在学中にWebのベンチャーをやっていてまったくうまくいかなかったというのもあり、実力をつけたいという気持ちが最後の決め手で、BCGに入社しました。入社後はもともとビジネスをやりたいという思いが強かったので、新規事業を作るプロジェクトや、クライアントと一緒にベンチャーを作るデジタルベンチャーズなど、デジタル×新規事業というところに関わっていました。2~3年目あたりから、やはりコンサルティングビジネスと事業をやることは別物だなと感じていて、4年経ったタイミングでエクサウィザーズに入ったという感じですね。ちょうどマネージャーへの昇進が決まっていて、ただコンサルタントになりたいわけではなくて事業をやりたかったので、BCGを出たという感じですね。
羽間:
A.T.カーニーもそうですね。VCに行く人がちょこちょこいるかなという感じで、スタートアップ界隈がとても増えてきていますね。
新卒カードをベンチャー企業に切ることはもったいないという人もいます。これに関してどう思いますか?
前川:
個人的には新卒・中途関係なく、半分イエスで半分ノーかなと思います。ベンチャーは本当に色々あるので、選びきれるかというのが新卒でも中途でも非常に重要かなと思います。実際、DeNAやメルカリなどのメガベンチャーが大きくなる前に新卒で入った人はやはりとても能力が高く、各領域で名を上げている人がたくさんいます。なので、そういった企業をしっかり選べればとてもいいキャリアになると思いますね。今のエクサウィザーズにもそういったチャンスがあると思っています。
羽間:
ベンチャーといっても多種多様ですが、エクサウィザーズに関しては、実は皆には気づかれていない良い扉が開いているという感じがします。エクサウィザーズからなら、プロフェッショナルファームに転職もできると思いますし、事業会社×デジタルのそれなりのポジションで実績を上げてからファームへという転職もしやすいと思います。時代的にも、企業間の行き来が増えてきていて、かつ新卒カードの選択肢もスタートアップや起業が横並びになってきていると思います。そういった意味ではベンチャーか既存の企業かという軸よりも、いかに自分にしか気づけていない狭い門を見つけられるかが大事という感じがしますね。エクサウィザーズの場合は、私たちのような若い元ファーム出身者や投資銀行出身者、またメルカリやビズリーチなどのベンチャーでプロダクトを作っていた人もいて、さらに機械学習エンジニアやソフトウェアエンジニアもいるという環境です。そのような環境で事業を作るというのはあまりできない経験だと思いますし、新卒の人たちは最初からそれを経験できるので、経験の幅はかなり広く、密度は濃いと思いますね。
自分で事業をする能力が欲しかったからBCGを卒業したとのことですが、現在はその能力がついたと思いますか?そのために必要だと思った経験は何ですか?
前川:
能力がついたかに関して、自信をもってイエスですね。ビジネスやサービスを行うことについて、ものやサービスを作るところとそれを売るところ、そしてそれをデリバリーするところができれば、基本的に1人でできていると言えるかなと思います。エクサウィザーズに入って丸3年経ちましたが、プロダクトを3~4つくらい作っていますし、それを自分で売って歩くといったことをやって数億円を作っているという状況です。デリバリーだけではなく、上流の「作る・売る」がかなりできるようになったなと思います。
必要だった経験について、ビジネスのすべての領域でしっかり結果を出すこと、またその過程でそれぞれのエキスパートからしっかりフィードバックをもらうことは、非常に重要だったなと思います。
羽間:
後半の質問について、やはり小さい単位でもいいので若くしてPL責任を負うというのはかなり重要だと思います。大きい企業ではそういった経験ができるまで時間がかかると思いますし、コンサルだとPL責任を負うのはパートナーなので、最終段階までいかないといけないですよね。規模は大きくなくていいですが、自分で数字を負う責任と事業の責任、また一緒にやっている組織の責任を若いうちから負えるかというのがかなり肝かなと思っていて、その経験を20代のうちに積めたというのは大きいと思います。これからもっと大きなことをやっていくうえでまだ能力は足りないですが、アドバイザリーだった頃の自分と比べるとかなり能力がついたと思います。
前川:
よくヒト・モノ・カネと言われますが、それが全部できるというのは面白いですね。面接を自分でやって、自分がいいと思った人と実際に一緒に働くという喜びを感じますし、モノは先程言ったことと同じですが、カネのところも自分で予算を立てて広告を打ったり何百万の決済をしたりするというのは、最初はかなり新鮮で面白かったですね。
羽間:
そうですね。コンサルはスタート地点がクライアントの課題ですが、私たちの場合は自分たちが何をしたいのかから始まるので、スタート地点は大きく異なりますね。それを掲げてコミットしてやりきるということの全体をできることが楽しいですし、経験や能力がつくというところに繋がっていると思いますね。エクサウィザーズとしてのカルチャーはもちろんありますが、チーム毎にもカルチャーがあってそれを形成するのもリーダーの立ち振る舞いなので、そういうのも含めて面白いなと思います。
コンサルからプロダクト事業の責任者になる中で、一番感じたギャップや楽しさは何ですか?
前川:
1つ大きく違うのは、エンジニアとどういうプロダクトを作るかということが一週間のうちの少なくない割合を占めるので、コミュニケーションプロトコルの振れ幅があるという点ですね。またプロダクトの数を打って売上を伸ばしていく部分について、しっかりモデルを作っていけるかということはポイントです。例えばインサイドセールス部隊を作って広告を打ってリードをとるといったことは、日々刺激的であり面白いですね。
エクサウィザーズに入ったきっかけは何ですか?
前川:
当時は、自分でビジネスをやっていもいいしどこかベンチャーに入ってもいいなという感じでした。ベンチャー選びにおいては、同じようなことができるベンチャーであれば別に自分でやればいいかなと思っていましたが、エクサウィザーズの話を聞いた時に、自分が立ち上げたのでは辿り着けないようなでかい船を作ろうとしていると感じました。それは春田、石山ら経営陣のビジョンが大きい点もそうですし、集まってきていたエンジニアやビジネスメンバーの優秀さから、「船に乗るに値する」といったことを僭越ながら考えていました。またもう少し実利的な部分としては、BCGにいた時に「テクノロジーをどれだけ理解して使えるかということが、ビジネスパーソンとして今後とても大事になる」と感じていました。今はコンサルも半分から8割くらいがデジタル系の案件で、デジタルを理解した上でデリバリーすれば大きな差が出ると感じたので、このタイミングでテクノロジーの企業に行って自分の強みにしたいと思いました。
羽間:
そうですね。特にテクノロジーをビジネスにするとか、ビジネスに使える状態に持っていくのは、エンジニアとはまた違う観点でケイパビリティが必要ですよね。自分は理系出身だったので研究やアカデミアの視点から見ていましたが、どれだけ技術としていいものを持っていても、それをビジネスにできなかったり企業で使える状態にできなかったりすると腐るだけだと感じていました。なので、最初は戦略コンサルでビジネスを学んだり、意思決定に関する視点をもってテック企業を強くしていったりしようと思っていましたが、やはり自分でやるということについて課題を感じていましたね。
前川:
あと、これまではBtoCの企業がフロントランナーでしたが、徐々にBtoBに流れが来始めていて、エクサウィザーズはそこのフロントランナーになり得る企業だと感じていましたね。
羽間:
自分たちの時はWeb系のベンチャーやメディア系のベンチャーがほとんどだったので、「もう少し大きい産業に貢献したい」という枠組みだとあまり選択肢がなかったという事情はありますね。新卒でそういった選択肢を持てるチャンスはなかなかないと思うので、観点として新しいですね。
社会課題を解決するビジネスをする中で、儲かる / 儲からないという判断があるかと思います。
前川:
コンサルのプロジェクトは3~4ヵ月で終わるものが多いですが、ビジネスを立ち上げると上手くいけば数年続いていきますよね。なので、儲かる / 儲からないはもちろん重要ですが、それと同じくらい「自分がそれにコミットできるか」という点も重要かなと思います。
羽間:
最初から意思決定するということはあまりなくて、儲かるかもなと思った瞬間にとにかく顧客にあてにいくという感じで、行動して不確実性を下げていくというのがベンチャーの在り方かなと思います。私たちは、ワンプロダクトというよりそれぞれの思いがある人がプロダクトやサービスの案を立ち上げて、やってダメだったら次に行くという感じのスタイルが多いですね。
エクサウィザーズの共通の価値観は何でしょうか?どのような考えを持った学生が向いていますか?
前川:
「社会課題をAIで解決していく」ということが中心にあります。なので、産業課題や企業の根深い課題を解決していきたいと思っている人が多いと思います。そのようなタイプの学生さんには向いていると思いますね。
羽間:
企業として定めているものとして、ミッション・バリュー・クレドの3層構造があります。ミッションは「AIを用いた社会課題解決を通じて、幸せな社会を実現する」ということで、まずそこに共感しているのが1つですね。バリューの概念はEmpathy、Evolve、Executeの3つありますが、社会課題や他人に対する共感があるか、自分やチームの強みを進化させる意志や行動があるか、自分で掲げたことをやりきれるかというのが大事な価値観です。これらの価値観がマインドセットや行動に出ているかという点を見ていますね。ホームページを見てもらうと分かると思いますが、その一段下に5つの行動指針を定めたクレドがあり、それらに則っているかということが、いわゆるカルチャーフィットというところだと思います。
日本がアメリカのような企業構造になるためへのロードマップのようなものは見えていますか?
前川:
難しいですね。ミクロに企業単位で変えていって何とかなる部分と、マクロに制度を変えていかないといけない部分があると思うので、一概には言えないですね。僕がやっているエンタープライズ向けのDXプロダクトの観点で言えば、ポテンシャルを持った日本企業は多いと思いますが、デジタルの波に置いていかれてしまうと廃れてしまい、逆にトランスフォームできるとさらに強い日本になれると感じています。伝統的な大企業にデジタルのケイパビリティを実装できる人が社内に増えていくと、必ず日本企業は変わるだろうなと思います。
羽間:
これは難しいですね。構造転換するには世代交代しかないと思います。私たちは政策の話なども省庁や政党の方たちと話したり聞いたりするので、マクロなことも企業としてやっています。ただビジネスではやはり業界横断的なソリューションやプロダクトを作れるか、目の前の顧客を変えられるかという目線で関わっていて、その中でもっとデジタル人材や技術の内製化をしていけるようになるということは大事だなと思います。日本の場合、デジタル投資やデジタル人材はとても少ないので、その内製化を一気に支援していくということが私たちの1つの関わり方ですね。またビジネスモデルを変える意味でのDXでは、例えば大企業と一緒にジョイントベンチャーを作ってデジタルドリブンの新しいビジネスモデルを作ることもやっているので、アプローチの幅はかなり広いと思います。
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