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続・【昼は秘書兼人事、夜は副業】なぜ私はパラレルワーカーになったのか

みなさんこんにちは、秘書・人事の黒木です。

前回の記事(https://www.wantedly.com/companies/e-akane/post_articles/230954)で、私が4社と雇用契約・業務委託契約を結んでいるパラレルワーカーだということを話しました。

今日は私がなぜ「パラレルワーク」という働き方を選んだのか、そのきっかけになったいくつかの出来事を紹介したいと思います。

会社は簡単になくなるということを知った内定先企業の買収

みなさんはイー・アクセス株式会社という企業をご存じでしょうか。イー・アクセスは私が新卒として就活をしているときに最も就職したいと願った企業でした。

私が就活をしていたのは2012年。リーマンショックと東日本大震災を経験した日本は不景気のドン底で、就活市場は「50社・100社エントリーするところからスタート」、「内定取り消しは当たり前」なんて言葉が飛び交うようなタイミングでした。

しかし、数打てばあたるというような感覚は自分には馴染まないと考え、私は10社程度に絞って就活を行っていました。

志望軸としては、1つが希望職種として「コピーライターになりたい」ということ。そしてもう1つが「将来社会に欠かせない、いずれインフラになるようなサービスを手がける企業で働きたい」という思いがありました。

そして、私はイー・アクセス株式会社と出会ったのです。

イー・アクセスのことを簡単に説明すると、同社は日本で初めて家庭用インターネットの料金を定額制にした会社であり、2004年当時、最速記録となる創業5年で東証一部上場を果たしたITベンチャーでした。

創業者は千本倖生氏。稲盛和夫氏とともに第二電電株式会社(現在のKDDI)を立ち上げた実業家です。

また、同社は「ポケットWiFi」という移動体通信のサービスを日本に広めた会社でもあり、当時からそのサービス名である「イー・モバイル」のほうが広く認知されていました。そして、私自身も大学時代、このサービスを愛用する人間の1人でした。

イー・アクセスは東証一部上場後に携帯電話事業にも参入し、NTT、KDDI、ソフトバンクに並ぶ、第4の携帯キャリアとして躍進すると思われていました。しかし、私が内定をもらった直後の2012年10月、同社はソフトバンクの完全子会社となることを発表します。

ソフトバンクグループのひとつになった後、イー・アクセスはソフトバンクのもとで経営再建を計っていたウィルコムを吸収合併し、社名をワイモバイル株式会社に変更。さらにワイモバイル株式会社はソフトバンクモバイル株式会社への統合を経て、現在はソフトバンク株式会社の中に組み込まれています。

現在、「イー・アクセス」、「イー・モバイル」の名はいずれも残っていません。

新卒入社企業で経験した勤務先企業の倒産

会社がなくなる話をもう1つ。

強く入社を志望したイー・アクセスがソフトバンクに買収されたことで、私はそのままソフトバンクに入社する予定となりました。しかし、入社日が近づくにつれ、その会社は私が一員になりたいと願った企業とは全く別のものであることを認識していったのです。

最終的に私はソフトバンクの内定を辞退し、就活を再開。もう1つの軸で志望していた「コピーライターになる」ということを目指し、大阪の印刷会社で広告を学ぶという道を選びます。

「やりたい仕事につながる可能性のある場所で働く」ことを選んだ私は、入社後に様々な仕事に関わることができました。コピーライティング、ECショップ運営、自社商品企画・提案、制作ディレクション、翻訳などの仕事を経験し、社会人の基礎を学んだのです。

しかし、その会社は入社2年目の夏に倒産しました。

兆しはいくつもありました。私はシンガポール支部が閉鎖となり、入社以来メールと電話でしか話をしたことがなかった駐在社員と初めて会った日に、転職サイトに登録したことを覚えています。国内外10の事業所のうち、3つ目の事業所が閉じたタイミングでした。

そして、転職活動で第1志望だったエン・ジャパン株式会社の最終面接前日に、全社員が会議室に集められ、社長から事業が立ち行かなくなったという話を聞かされました。

その印刷会社は創業60年以上の歴史を持ち、関西圏の大手企業と数多くの取引実績のある企業でした。そのため、倒産後に中小企業基盤整備機構が間に入り、銀行からの借金を肩代わりし、名古屋にあるトヨタ自動車系の印刷会社に買収されるという形をとりました。

結果として「取引先とのつながりを持つ社員は買収先企業が引き取ってくれるという話がついている」と社長は社員に説明していました。周囲の社員が口々に「良かった」つぶやく会議室で私は翌日の最終面接のことを考えていました。

自分の人生を他人に委ねないということ

エン・ジャパンの最終面接に合格し、転職意向を相談する私に、上司である制作部の責任者は次のようにいいました。

「次の会社にそのままの役割でスライドできるのは営業メンバーだけだが、制作部のメンバーも役割を変えて受け入れてもらえることになっている。もともと幅広い仕事をしていたし、おまえならできるはずだ。それにもし、ディレクターやデザイナーとして腕を磨きたいなら、私と一緒に知り合いの会社に行くという方法もある。次の会社で体制を整備してからのタイミングにはなるが」

この言葉に対して非常にありがたいと思う反面、私はこの期に及んで自分の人生を他人任せにしてはいけないと思いました。そして、退職願を出し、エン・ジャパンで求人広告のコピーライターになることを選んだのです。

思い返せば、内定先企業の買収・新卒入社企業の倒産を経て、ようやくやりたい仕事に就くことができたのでした。

もともと思い描いていた「コピーライター」はもう少し華やかな広告を手がけるイメージでしたが、就職でいろいろな経験をした自分には普通の広告ではなく、求人広告を作る仕事は向いていたと思います。

しかし、その手前で、今でも忘れられない出来事が起こったのです。それは印刷会社に退職願を出した日のこと。突然デスクの内線が鳴り、出るやいなや「おう黒木、社長室こいや」といわれたのでした。

社長室に呼び出されて

社長室に入ると、中には社長と人事担当者がいて、社長のデスクには見覚えのある封筒が1つ置かれていました。「はずせ」という社長の言葉で、社長室で出ていく人事担当者。社長は私の退職願を手に取って、立ち上がります。

「おまえ、会社が傾いとるなか、だれにもいわずに転職活動しとったらしいのう」

ちなみに社長は40代手前で、いつも髪をオールバックにし、経営者のそれとはまた違う威圧感のある話し方をする人でした。そんな人を相手に隠し事ができるはずもなく、私は「はい、していました」と正直に答えました。

すると社長は、怒られるのを覚悟していた私に次のような話をしてくれました。

「そうか。おまえすげえな。こういうとき、自分の未来のために考えて行動するのはそう簡単なことやない。不安でだれもなんもできんようになっとるときに、ようやったわ。今日はこんなときにこんなもん出してきやがったおまえに一言いいたくて呼んだんや」

「怒ってねえからそんな顔すんなや」といいつつ言葉を続ける社長。私はすっかり拍子抜けして、「はあ」と気のない返事をしてしまいました。

「その行動力があればおまえはこの先ずっと大丈夫や。今回のことで自分からこの会社を出ていくのはおれ1人やと思っとったけど、まさかもう1人おるとはな」

社長は笑っていました。入社してからほとんど見たことのなかった社長の笑顔でした。迷いながら行動したことを肯定され、意表を突かれた私は思わず目頭が熱くなりました。さらに社長は不敵な笑みを浮かべて続けます。

「おまえだからいうが、おれは無職になってこの会社を出ていく。次の会社に用意できたのは従業員の席だけだったからな。ただ、これで終わりじゃねえから。また事業をやる。もっとちゃんと成長していける会社を作り直す。だからおまえもせいぜいがんばれや」

私の行動を認めてくれてエールをくれたこと、従業員全員を守ってくれたこと、最後まで格好つけてくれたこと、なにもかもに感謝の気持ちがあったものの、当時はうまく言葉にできませんでした。

しかし、会社が倒産するという事件に際して、自分で考えてアクションを起こしたこと。上司に自分の人生を委ねなかったこと。そして、そのことを賞賛してもらえたことは、自分の中のとても大事な経験になっています。

会社に依存せず、自分で自分の仕事を作っていきたいという意識は、過去のかけがえのない経験によって培われた価値観だと思います。この価値観が私をパラレルワーカーにさせたのです。

私は「ここでしか働けない人材」ではなく、どこでも働くことができるスキルを持ったうえで、働く場所を選べる人材でありたいのです。とはいえ、そのような私の考えとワークスタイルが、どの会社でも通用するものだとは思っていません。

あかねというこの会社だったから、「自分はパラレルワーカーです」と胸を張っていえることもわかっています。就職・転職はまさに運命の出会いの連続です。

これまでも、そしてこれからも、私はいつも「仕事」を通じた出会いを楽しみにしています。

※私に言葉を教えてくれた本たちが並ぶ本棚。その後ろが私のワークスペース。

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