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カンボジアに住む 30代 ITエンジニアの「自分達の国について思うこと」

硲(司会進行役、以下 Hazama)
さて、今回はシニアエンジニアの皆さんにカンボジアの現在と未来について話をしてもらいましょう。ネットやニュースなどからカンボジアについての情報は得ることができるけれど、実際にカンボジアの人が自分達の国についてどう思っているのかを知る機会はなかなか無いので、記事を見ている人にそれが伝わればいいと思います。

カンボジアで生活していて感じることは?
(Naseath)
カンボジアは急速に成長しているわけではないけれど、シアヌークビルからプノンペンに新しく高速道路が作られたり、その他にも次々とインフラが整えられていて、確実に成長していると思います。またIT分野もとても成長していて、ITを学ぶ若い世代も増えています。特にロボット工学やAIの分野が人気で、カンボジアでは20代〜30代が中心となってIT企業で働いています。つまり、決して早いとは言えませんが、カンボジアには今後成長するポテンシャルは大いにあると思います。
(Hazama)
カンボジアでは高校や大学を出た後は、みなプノンペンに働きに来るのですか?
(Leanghy)
全員ではありませんが、ほとんどそうだと思います。やはりプノンペンが一番大きい都市なので、多くの雇用機会があります。みんなLinkedInなどのウェブサイトや、リクルート会社を使って仕事を探しています。
(Phanith)
最近では地方でも海外からの投資が増えてきていて、多くはありませんが地方で働く人も増えています。シアヌークビルでは中国からの投資が盛んで、カンボジアに投資している中国企業に就職する人もいます。
(Naseath)
地方によっても大きな差があります。バッタンバンのような地方都市は大きな市場がありますが、一部の地方ではそこまで大きな市場はありません。
しかし、10年前には一部の地方の州では大学がなかったけれど、今はほぼ全ての州に大学がつくられて、以前よりも高いレベルの教育を受けられるようになりました。高額な費用をかけて留学をしたり都市へ出なくても、自分の地元で教育を受けることができるようになりました。
(Hazama)
ところで、みんなはどれくらいプノンペンに住んでいるのですか?
(Leanghy)
僕はプノンペン出身です。
(Phanith)
僕はプノンペンの隣のカンダル州出身です。ここから20kmくらいのところです。
(Naseath)
僕はコンポンチャム州出身で、最初にプノンペンに来たのは2005年だから18年前ですね。
(Ponlork)
僕もプノンペン生まれのプノンペン育ちです。


10年前と現在のカンボジアについて
(Hazama)
みんな長くプノンペンにいるのですね。プノンペンの10年前と今ではどう変わりましたか?また、何の分野でテクノロジーが活用されていくと思いますか?
(Ponlork)
技術の進化が一番大きいと思います。特にIoT技術が急速に進んでいて、新世代ビジネスもスタートアップにより増えているので、これからもっとそういったビジネスは活発になっていくと思います。
(Phanith)
特に交通の面で進歩を感じます。10年前の移動手段は、公共機関以外にはありませんでしたが、今ではPass App やGrabで簡単に車を手配することもできますし、最近ではレンタカー事業者や物流会社などがこのような配車アプリを活用してサービスを提供しています。
あとは銀行ですね。昔は入金や出金には銀行に行かなければいけませんでした。しかし、少し前からカンボジアでもATMは増えてきて、今ではアプリで簡単にお金を引き出せます。私はしばらく銀行のカードを持った記憶がないくらいです。それにモバイルアプリがあれば、現金を持たなくてもレストランでも市場でもQRコードで決済ができます。友人同士でお金を送金し合う時もとても簡単です。
(Hazama)
そうですね。今ではその辺の屋台でもアプリでお会計できますものね。配車アプリができる前はみんなどうしてましたか?通りに出てタクシーが来るのを待っていたとか?
(Phanith)
そうですね。だから田舎では大変だったんですよ。今はアプリのおかげでどこにいても車を呼ぶことができますからね。
(Leanghy)
これは私達にとって、とても大きな変化だと思います。人の生活、社会全体を大きく変えました。僕も生活のほとんど、例えば何か買い物をする時も、食べ物を注文する時もテクノロジーの恩恵を感じます。けど、僕の場合は昔から買い物はオンラインショッピングを使っていたから、買い物に関しては大きな変化ではないかな。eBayやアマゾンなど、他の国のサービスだけれど大きなEコマースプラットフォームはカンボジアでも利用できますからね。だからとくに便利になったと感じるのは、僕の場合は銀行システムかな。僕はKHQRというモバイルバンクプラットフォームを使っているんだけれど、本当に便利で、細かな買い物をする時以外は、もう現金は使わないですね。アプリとQRコードがあれば何でもできますからね。
(Hazama)
カンボジアのEコマースサイトも増えてきてますか?僕は大きなところだとKhmer24しか知らないんですが。
(Leanghy)
L192なんかはカンボジのショッピングサイトで、あとはカンボジア資本かはわからないけれど、カンボジアで利用できるEコマースプラットフォームはいっぱいあって、商品は国内からだけじゃなくて、中国やタイから送られてくるんですよ。
(Hazama)
街の景観もここ10年でだいぶ変わったんじゃないですか?僕が初めてカンボジアに来たのは10年以上前だけど、高いビルはこんなになかった気がしますね。
(Naseath)
そうですね。高いビルもそうだし、大きな道路を渡るための歩道橋ができたり、さきほど言ったように他の都市へ高速道路が伸びたり、少しずつ街がより便利に大きくなっていると思います。
カンボジアは成長速度はまだそこまで早いとは言えません。しかし、カンボジアの社会は若い人が中心になって構築されています。教育に意欲的な新しい世代のおかげで、より多くの可能性があると信じています。
テクノロジーによるサービスに関して言えば、先進国とそこまで大きな差はなと思います。最近ではAIによるチャットボットを利用する企業だって増えてきていますよ。ただ先進国はその規模が大きいので、そこには差があるかもしれません。

今後のカンボジアの発展について
(Ponlork)
これからの発展を見越して、カンボジア、特にプノンペンには毎日のように不動産投資が行われていますよ。財政収入がよりカンボジア経済を大きくしてくれることを願っています。
(Hazama)
テクノロジーが進歩していって、カンボジアが発展していってほしいというのはみんな一緒ってことですね。
(Naseath)
そうですね。でも僕は課題は一つの分野だけではなく、あらゆる分野に改善が必要だと思っています。もちろんテクノロジーの分野はこのまま発展し続けてほしいと思っていますが、他の分野ももっと開発されるべきだと思っています。
例えば、特に農業や畜産業ではまだまだ改善が必要だと思いますし、それに対する教育も不足しています。農業はまだシステムが整っていないので、天候に左右されている状況です。若い世代を訓練し、熟練労働者になるために育成しなければなりません。ですから、カンボジア全体について話すとき、私たちはテクノロジーだけにフォーカスしているわけではありません。 私たちはあらゆる種類のカンボジアの成長に焦点を当てなければなりません。最も重要なことは、おそらく考え方(mindset)についてだと思います。
カンボジアは少し前の内戦で、人と人が分断させられてしまいました。あれから40年以上経っています。だからもう一度、古い世代、若い世代共に団結すれば今よりもっと経済が成長するのは可能なことだし、とても素晴らしいことだと思います。今もみんな団結していると思いますが、もっと一つになってほしいと思っています。例えば学生は学校で勉強した後に課外勉強をして、さらにインストラクターの先生からも学んでいます。わからないところはお互いに教え合っています。そうすれば自分で学ぶ以上のことを学べるし、もっと団結できると思います。
例えば私の出身の村では学生団体みたいなものがあって、年に2、3回、お互いに集まって意見交換をしたり話し合いをしています。そして困っている人のために寄付を募ったり、手助けが必要な人のためにみなで助け合ったりしています。古い世代は経験があるので、それを若い世代に教えてお互いが支え合う仕組みを作っています。
(Phanith)
政府もカンボジアのインフラ全体を成長させようと努めています。インターネットを使って政府が大学全体の情報ネットワークを構築しようとしていると聞きました。 そして政府は、2022年から2025年の間に電子政府の構築を計画しているそうです。専門家やエンジニアを集めてカンボジア社会のたくさんの分野を改善し、インフラを構築し成長させようとしています。そのために多くの業界で才能のある若い人を積極的に採用しています。

カンボジアの教育について
(Hazama)
カンボジアの教育レベルについてはどう思いますか?
(Phanith)
まだ十分に高いとは言えません。なのでもっと高いレベルで学びたい人は海外へ留学に行きます。しかし、今はインターネットから情報や知識を得たりオンラインで学べるので、以前より簡単になりました。10年前にはインターネットもなかったけど。
(Naseath)
もっと前、15年くらい前じゃないですか?
以前NGO関連の学校で働いていたことがあるけれど、その頃は全部手作業でインターネットを接続してましたよ。それが15年くらい前ですね。
(Hazama)
今のカンボジアに足りないもの、もっとあったらいなと思うことは何ですか?
(Leanghy)
私はもっとカンボジアの若い世代がテクノロジーに興味を持ってほしいと願っています。今IT分野で最も注目されているChatGPTも若い世代にとっては身近なものになっていくと思いますし、将来AIがどのように活用されていくかを理解する必要があると思います。5年後、10年後のことはわかりませんが、おそらく多くの仕事がAIに取って代わるでしょう。若い世代がAIや最新の技術を理解して使いこなしていけば、もっとレベルの高い、給料の高い仕事に就くことができると思います。
(Naseath)
そうですね。私も若い人のためにもっと教育に力を注いでほしいと思っています。レベルの高い教育を受けることができれば、思考力や想像力を養うことができるようになるし、変化に迅速に対応できる能力がつくと思います。
今ではカンボジアにも多くの高校や大学がありますが、全体的なレベルはまだ高くありません。教育者のレベルも上げていかなければならないと思います。一部の人たちだけではなく、全体のレベルを上げていけば国全体が良くなっていくと思います。また、カンボジアは強いリーダーシップを必要としています。強いリーダーシップを持つ人が現れれば将来のビジョンを示すこともできるできると思います。
これから、テクノロジーの分野はAIが中心になってくるのは間違いないと思いますし、それを使いこなす能力を身につければ将来を予想することは難しいことではないと思います。アメリカはまさに今その変化の真っ只中にいると思います。しかし、カンボジアはまだそこまでではありません。もう少し時間がかかると思っています。だからこそ、変化に対する準備はできると思うし、日本人もカンボジアに興味を持って来てくれれば、活躍できる機会はたくさんあると思います。

日本の方へのメッセージ
(Hazama)
この記事を見ている日本の、特に若い世代の人に何かカンボジアで働くおすすめのポイントを教えてください。
(Ponlork)
カンボジアの経済に焦点を当てると、本当に毎日経済に関するニュースを見ます。世界的に見るとまだまだかもしれませんが、将来的にはカンボジアの経済は拡大をするでしょうし、外国人の企業がカンボジアに参入しやすいように法律も少しずつ変わってきています。以前より容易にビジネスを始められるようになりましたし、日本人も世代に関わらず多くのビジネスチャンスがあると思います。高いビジョンを持った人が多くカンボジアに来てくれて利益をあげ、国を成長させてくれるよう願っています。
(Phanith)
ご存知のようにカンボジア社会は今まさに成長の真っ只中にいて、それにより改善するべきこともたくさんあります。だからこそビジネスチャンスはたくさんあると思います。例えば、製造業の会社が郊外に工場を設立すれば、地方に雇用の機会も生まれますし、地方が活性化するいい機会になると思います。会社を設立する費用も土地もまだそこまで高くありません。近隣の国に比べて税金も安いです。もっと多くの企業がカンボジアに来てほしいと願っています。
(Naseath)
カンボジアは自由な雰囲気のある社会だと思います。何かこれから新しいことに挑戦したい時にも、その機会はたくさんあると思うし、時間も多く作ることができるでしょう。
また、カンボジアの人は親切な人が多いです。皆、仲間を大切にし仕事以外の時間も大切にしているので、あたたかく迎え入れてくれると思いますよ。それにカンボジアで働くことで、社会全体の成長を実感できるはずです。私たちは国を成長させるエンジンのようにとても重要です。社会の成長に貢献できるし、自分自身も大いに成長できるはずです。
(Leanghy)
日本は働く、働くというイメージが強いので(笑)、カンボジアに来ればリラックスしながら働くことができると思います。もしクメール語を学べば、現地の人とコミュニケーションが取れるし、基本的にほとんどのオフィスではみんな英語が通じるので英語力の向上にもなりますよ。実際、ここにいるみんなは英語でやりとりしています。

自分達の未来について思うこと
(Hazama)
最後に5年後、10年後へ何か夢や目標などはありますか?
(Ponlork)
10年後はもっと経済が発展していて今より全体的にみんなの暮らしが良くなるように願っています。みんな利益を上げていまより生活が良くなるよう頑張っているので、カンボジア全体が豊かになればいいと思います。私自身も今よりももっと自分のスキルが上がるように頑張っています。
(Naseath)
私は、自分の子供にもっといい教育を受けられるように頑張りたいと思います。やはり教育というのはとても大事なことです。自分の子供たちには、他人任せではなく、自分で考える能力を身につけてほしいと願っています。そのためには私はなんでもしてあげたいと思っています。
私自身も今エンジニアとして働いていて、多くの経験をしてきました。なのでその経験や知識を、共に働く仲間や自分の故郷の人々、自分の子供たちに共有できたらいいと思います。先生から教わるだけではなく、リアルな体験として皆に教えてあげることができると思います。
5年後というよりは、今ある課題をしっかり解決していきたいと思っています。自分自身ももっとスキルを身につけ、いずれその経験が周囲の人の役に立つのならこんなに嬉しいことはありません。私も今までいろんな人に助けられてきました。なので私自身も何かに貢献できるような人になっていきたいです。でもまだ、それは実現できていません。心の中で思っているだけです。それをいずれ現実にしていきたいです。
(Leanghy)
私も自分自身のスキルをもっと高めていきたいです。そしていずれは国に貢献できるような人間になっていくことが夢です。そのためにはもっともっと努力が必要だと感じています。将来的には小さくてもいいので何かビジネスにも挑戦したいですね。私も家族がいるので家族が安定して暮らせるようにしていきたいですね。
(Phanith)
私ももっと自分のスキル磨きをしていきたいです。私は今インフラチームで働いていて、それは色々な人が参加している大きなプロジェクトです。そのぶん学ぶことも多いです。なのでとてもいい環境に入れているなと実感しています。
将来的なことで言えば私も子供がいるので、子供にもっといい教育を与えてあげたいですね。そのためにはやはり私自身が頑張らなくてはいけないですね。国の成長と共に自分の成長、子供の将来も良くなるように願っています。

(2023年4月 座談会)
進行、翻訳:硲(Dynamo Project manager)
撮影:山口(Dynamo PR担当)

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