誰の役に立っているか?
おそらく、ウチで働いているほとんどの社員は、自分自身に何らかのスキルや技術を身につけたい、ホントの意味で自立したいと思って、日々一生懸命働いているんじゃないかと思う。
それはそれで、とてもよいことだ。だが、(ぼく自身もそうだったが)どこかの時点で「誰かの役に立つ」という観点を持たなければ、人間やっていられなくなってしまう。その観点がなければ、実際に「自立できた」「スキルや技術が身についた」と思った時点で、モチベーション、仕事への意欲があっという間に低下してしまうからだ。
仕事はできるのにやる気が起きない。一生懸命になれない。それはまぁ、贅沢な悩みっちゃー、贅沢な悩みなのかもしれない。だが実際、これが人間の本質なんだろう。
最初は売上や自分の年収が上がったり、できなかったことができるようになったりするのを楽しく感じる。とくに売上や年収という数字には、最初は「おお!」と感動したりする。
だが、それを何度も繰り返すと、しばらくするうちに、ほとんど意味を感じられなくなってしまう。
それを回避するためには、「内」ではなく「外」に目を向けること。
顧客のことを考え、顧客のことを見て、顧客の人生の変化を感じることは、「人の役に立ちたい」という点から見ても、最高のやりがいになる。
だから、自分のモチベーションが下がってるなぁ……と感じた場合は、顧客に会って、顧客の話を聞くのがベスト。「自分中心」の仕事の見方から、「顧客中心」「他人中心」の仕事の見方になり、それが「自分ごと」と同じように重要に感じられるようになるタイミングは、人によって違いがあると思う(ぼくは遅いほうだと思う)。しかし、必ずどこかで経験しなければいけない。
自分のやっている仕事が誰の役に立っているのか? どう役に立っているのか?
それを知れば知るほど、毎日、充実した日々を送ることができ、あなたが達成できることもより大きくなるだろう。企業のミッションなどは、究極のところ、これらを突き詰めたものだ。
海外企業視察ツアー
実際のところ、「社外に目を向ける」というのは、自分自身を成長させる一番の糧でもある。
いつも会社のなかで同じ人間と喋り、同じ人間と昼メシに行き、同じ人間と同じ仕事をしているというのでは、成長するほうが難しい。籠のなかの鳥は遠くまで飛べない。外に出て、外の世界で何が起きて
いるか、それを自分の目と耳で確かめなければ、会社は温室になってしまう。
そんな観点から、ダイレクト出版では、ときに海外企業の視察ツアーをおこなったりもしている。
2015年には米国のスタンフォード大学と企業数社を見学するツアーを組み、社員を2旅程に分けて連れて行った。
彼らから提出されたレポートを読むと、非常に刺激を受けたことがわかる。新たな気づき、新たな課題、新たな挑戦が見えてきて、それが新たなモチベーションへとつながっている。自分たちとはまったく違う価値基準で仕事をしている人たちの様子を見られるので、大きな発見ができるのだ。
ぼく自身は、セールスフォースという企業の視察が一番大きな収穫になった。あらゆることがシステム上で可視化されており、なかでも各人の目標がCEOのレベルまで、システム上で見られるようになっていた
のが驚きだった。素晴らしいので、いつかウチでも取り入れたいと思っている。
もう1つ、個人的に気になったのがセールスフォースのVisionだ。「2020年までにエンタープライズソフトウェアの世界トップ5企業になる」とある。なぜこれが気になったかというと、「そういえばウチにはこういうVisionがなかったかもしれない」と思ったからだ。
ウチのミッションは「優れた知識をマーケティングして、顧客と自らの成長に貢献する」。しかし、それに対する明確なマイルストーン、すなわちVisionが描けていたかというと、ちょっと心もとない。
意味は自分で考えるもの
じつはウチは毎年、年間の売上目標を決めて、それに向かってダーーっと頑張る……というやり方をしてきたわけではない。売上目標という金額に意味を感じなければ、頑張ることなどできないし、実際、
今までは売上という数字には意味を感じなかったからだ。
しかし、ぼくが最近気づいたのは、「意味は自分で考えるもの」だということ。世の中にあるほとんどのことに、「意味」なぞ最初からついているわけがない。ぼくの人生もあなたの人生も、あと150年もすれば何の意味もなくなる。150年なんて、地球の営みからすれば一瞬の出来事だ。
大きな視点で考えるほど、意味のあることなんてほとんどない。「ある会社が売上目標を達成した」なんてニュースは、ほぼ無価値、無意味だろう。
だからこそ、われわれは自分で意味を考える必要がある。自分で、自分の人生に、自分の仕事に、意味を見出す必要がある。会社も同じで、自分たちで、自分たちの仕事に意味や価値を見出す必要がある。その1つがミッション、会社の存在意義となる。なのでVisionというのも、大切なのはその「意味性」だろう。セールスフォースが世界トップ5に入るというのは、ぼくら外野の人間からすれば何の意味もないことだが、彼らにとっては意味があるのだろう。意味あることで数値化された、よい指標とでも言おうか。
新しい視点を取り入れよう
では、われわれにとって意味ある指標とは何なのか?
ぼくの頭に真っ先に浮かんだのは、例えば「オンライン教育事業で日本一になる」というようなものだ。
オンライン教育事業が普及することは、社会にとってとてもよいことだし、なんてったって「日本一」はいい響きだ(笑)。まだどの会社もナンバーワンの確固たる地位を築いてない状況だから、頑張って、さらに運がよければ、達成が不可能ってこともないだろう(そう願っている)。
ぼくは昔、日本一のセールスライターになろうと思って会社を始めたが、経営者になるためにその夢は諦めた。しかし、これならまた同じような夢を抱けることになる。
日本の教育が変われば、日本人の能力がもっと上がるだろう。そうすれば、経済から政治まで何もかもが変わるはずだ。そしてその変化によって、ぼくらの世代だけじゃなく、次の世代にも大きな影響を残せる
と思う。これだったら「意味」があると言えるんじゃないか。スマホゲームのように、単に貴重な時間を浪費させるような事業とはまったく違う「意義」があると思う。
さて、こんな風に自分の考えを違う視点で捉えられるようになるのも、「社外に目を向ける」ことの効用だ。あなたも機会があれば外に出て、新しい人物と交流し、新しい知識を手に入れ、新しい課題、新しい目標を持つようにしよう。