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プロダクトマネージャー✕法務 プロダクト開発における法務の役割

網谷 龍太朗 / Ryutaro Amiya (写真左)

2017年 サイバーエージェント新卒入社。AI事業本部配属後、広告配信やAI関連の事業立ち上げを複数経験。2020年よりアプリ運用センターに所属し、現在はクライアントに向き合うプロジェクトマネージャーとして開発チーム全体を牽引。

贄田 智 / Tomo Nieda (写真右)

2018年 サイバーエージェント中途入社。元商社法務部出身。電子契約等バックオフィス業務のDXを推進しつつ、現在は法務コンプライアンス部 AI事業部門マネージャーとして法務チームを牽引。

---事業概要を教えてください

網谷:サイバーエージェント AI事業本部の中にある組織で、140兆円とも言われる市場規模である小売業界のDXを狙うチームです。

アプリユーザー様にアプリ上(オンライン)でお店のことを知っていただき、それをきっかけに来店していただき(オフライン)、またアプリ(オンライン)に戻ってきて次の購買意欲を生んでいただく、このような購買体験サイクルを生み出すアプリを納品・運用をさせていただき、クライアント企業様の売上向上に貢献していくビジネスです。

今までグループで培ってきたアプリのUI・UXの強みや運用力を武器に、アプリの納品・運用をまかせていただくビジネスです。

https://www.cyberagent.co.jp/careers/special/retaildxrecruit2021/people/people01.html

---法務の役割はどんなものでしょうか

網谷:法務チームの皆さんには 攻め/守り の両面でとても重要な役割を担ってもらっています。

バックオフィスチームに位置づけられてはいますが、チームのイチメンバーだと感じています。事業への高いコミットメントでダイレクトに事業価値向上に貢献していただいているチームだと思っています。

贄田:ユーザーに納品したアプリを使っていただく未来を想像しながら、初期段階でリーガル面でのケア事項をプロジェクトチームに伝えることで、契約業務だけでなくプロジェクトの進行を総合的に支援する役割があると考えています。

特に、アプリ開発を受注するこのビジネスは納品を完遂するまでのタイムラインが長く、リーガル面の検討をプロジェクトの初期段階で工程に組み込むことが、UI/UXの最適化、粗利向上・資金繰りの適切化など、様々な面で事業の 攻め/守り に直結すると考えています。

---法務からUI/UXへ貢献

網谷:法務観点からUI/UXに貢献するというのはイメージが湧きにくいかもしれませんが、ユーザーからの個人情報等の取得に関する場面を例にするとイメージしやすいかもしれません。

我々がクライアントへアプリを納品した後は、ユーザーにアプリを使っていただく段階に入ります。クライアントがユーザーから個人情報等を預かることになるため、利用規約や個人情報の取扱内容について同意をいただく必要があります。

この同意の取得方法はUI/UXにバリエーションがあり、どういった同意ボタン/画面遷移にするかでユーザーの使い勝手や同意いただく内容の分かりやすさに大きく影響します。

たとえば、銀行のオンラインバンクアプリなどによく見られるような、利用約款がポップアップ表示されて画面スクロールして規約を読了して初めてチェックボックスが現れるような重厚な同意の取得方法も考えられますし、一般的なアプリに多く見られるような、利用規約の重要部分を表示して詳細はリンク先で確認できる画面遷移も考えられます。

このように、同意の取得方法1つでもアプリのUI/UXに表現の幅を持たせることができ、適切な同意の取り方を確保しながら、ユーザー体験の最大化させることができます。

この点は、取得する情報の重みや利用用途に応じてどの程度の丁寧さをもってユーザーに表示するべきかクライアントの方針にも関わる重要な場面であり、一方でユーザー離脱の起きやすい箇所でもあるため調整が重要で、法務観点での意見は欠かせないポイントです。

---粗利への貢献

贄田:リーガル目線をプロジェクトに組み込むタイミングもとても重要だと感じます。

アプリの開発には、当然ですが納品スケジュールや予算が存在しますから、網谷さんたちプロジェクトマネージャーの皆さんはUI・UXのクオリティのみならず、開発メンバーの稼働確保、外注先等へのコストコントロールもしなければなりません。

ユーザー離脱最小化を優先しすぎたUI・UXで、ユーザーにご認識いただくべき利用規約の内容やリスク事項などが十分に伝わらない同意導線となっていては、クライアントから了承いただけず、時間やコストをかけてでも修正すべき事態になることもあります。

納期間近になってはじめてこの問題に気づくと、画面上は些細な変更に見えても追加開発が必要で外注コストがかかって粗利を圧迫してしまうといった事態を引き起こしかねません。受注の初期段階から、どういった種類のユーザー情報を受け取るアプリなのかを考慮した上でデザイナーと一緒になってデザインを検討するといった動きが重要だと思っています。


---契約業務からキャッシュフロー管理へ貢献

網谷:契約もとても大事ですね。「契約書=法務」 みたいな間違った印象もありがちな話だと思いますが、契約書/受注書は取引先との合意内容を正しく書き起こしてトラブルを防止するためのものなので、取引をしている本人がまずは契約書を読む癖をつけるようにチーム内でも徹底しています。

贄田:契約書は日本語が固くて読みにくいし心理的に敬遠しがちな面はたしかに分かりますが、取引内容を合意形成するのは事業部の方なので、事業を守る上で契約に対する意識は大事だと思います。

網谷:過去に痛い目を見たというのもありますが、シンプルに「契約書は取引先との合意内容を正しく書き起こすもの」という原点に立ち戻るようにしています。

たとえば、受注書や契約書でクライアントに納品すべき成果物の定義/仕様が甘く、納品するたびに追加のオーダーを受けてなかなか仕事の完成(納品)に至れず、事業計画よりも売上金額をいただくのがかなり遅くなってしまったことがありました。

予定していた入金が見込めず資金繰りに影響がでましたし、ここでもやりなおしや追加開発が必要になり粗利を悪くしてしまいました。

クライアントから発注いただいた金額は、我々が役務提供を完了してはじめて売上として計上できるものなので、役務提供の内容とその完了方法をクライアントと丁寧に合意形成し、合意した内容を契約文言に正確に反映できているか法務と連携するという、シンプルな原点が大事ですね。

贄田:新規事業など特に資金繰りやメンバーに潤沢なリソースがまだないフェーズだとダメージはより大きいと思います。事業の攻めに集中していただけるよう、法務が貢献できるポイントは今日の例以外にもまだまだたくさんあると思いますので、みなさんと一緒になって事業の成長を支援していける組織になっていきたいと思います。

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