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全国高専プロコン優勝の25歳が挑む、レガシー業界を”地殻変動”させるプロダクト開発

約50兆円と言われる建設業界の市場規模。この巨大市場の中心でDXを押し進めているクラフトバンクのプロダクト責任者に、なぜ建設業界でプロダクト開発に取り組むようになったのか、その醍醐味は何なのか……お話を聞きました。

――まずはエンジニアの視点からクラフトバンクを紹介してください。

クラフトバンクは、全国約2.3万社が登録する工事会社のネットワークを強みに、工事会社と発注企業を直接マッチングさせる“協力会社紹介”というサービスを展開しています。建設業界では、発注企業側は「マッチした信頼できる工事会社に出会えない」、工事会社側は「発注企業に営業をする時間がない」という課題があり、これが多重請負構造を生み、中間コストの増大につながっています。僕たちは2.3万社の“施工力データベース”というDBを活用して、平均3.2日、約90%で発注企業にフィットした工事会社とのマッチングを実現しています。すでに累計500社以上が利用しており、不動産集客におけるSUUMOやHOME‘Sのように新たな市場を形成しています。

これまで自社で内装業を手掛けて工事知見を持ちながら(2021年4月に内装工事会社よりMBO)、対応可能工事や各工事会社の主要取引先、売上、人工単価、工事キャパシティ(職人数)などの独自データをDBに蓄積してきたことが、圧倒的な高精度マッチングの実現に寄与しています。

僕にとってこのDBは宝の山に見えていて、次なる狙いは、この2.3万社の工事会社会員さんに対して、工事会社向けの手配、見積自動化等のプロダクトを導入し、働く人たちの業務負荷を減らして便利にすることです。各工事会社(大工・電気工事・給排水・クロス等様々)で異なるKPI管理やシフト管理、人繰りに係るオペレーションを全てITで置き換え、職人が"メンドクサイ業務"をせずに自らの”ものづくりに打ち込むことができる仕組みをプロダクトとしてつくっています。

エンジニアとして、より“でかい”プロダクトを生み出すために選んだ「建設」という市場

――早速熱量がすごいですね(笑)。ちょっと話が前後しますが、Genseiさん(社内では名前でGenseiと呼ばれている)のプロフィールについてお聞かせください。

三重県にある人口1万人ぐらいのめちゃめちゃ小さな街の出身で、小さいころに「ブラッディマンディ」というドラマを見て、僕もパソコンに鷹飛ばして国救うとかかっこいいことやりたい!と思って、鈴鹿高専の電子情報工学科に入ったのがプログラミングとの出会いでした。でも、実際に入ってみるともちろんパソコンに鷹は飛ばないし、黒い画面に文字打つだけで面白くなさすぎて、全く興味が持てずにバイトとカラオケとボーリングばっかりやってたら2年ぐらい過ぎていました。

高専3年の時に学校でめんどくさいルールがたくさんあって、先生が高専プロコンというプログラミングコンテストに出るなら諸々免除してくるというので、人生で初めて真面目にプログラミングに取り組みました。その時たまたま全国高専プロコンで優勝したのをきっかけに、色んな人と出会いそのままDeNAからスカウトしてもらって20才の時に就職と同時に上京してきました。それまではトヨタ系の会社にインターン行ってて、そこに入社するつもりだったので、気付いたら東京に流れ着いてたみたいな感覚です!笑

DeNAにエンジニアとして入社して、大手ゲーム会社と協業したグローバル向けプラットフォームの開発を担当したのですが、だいたいのプロダクトローンチが終わったので、知人の動画配信のスタートアップに参画しました。取締役CTOとして、プロダクト開発やカスタマーサクセスを3年間ほど行ったのち、クラフトバンクに参画しています。

――え?なんか天才すぎて感じ悪くないです?

――なぜ、ゲームや動画をつくっていたこれまでのキャリアとは一番遠い建設業界でプロダクトをつくろうと思ったんですか?

CTOを務めた前職で担当していたプロダクトでは、順調に売り上げは上がって、ベンチャーキャピタルからシリーズAの出資を受け、グロースフェーズにまで成長しました。嬉しいことに、今も順調に事業成長しています。そして、そのタイミングで、より大きな産業で大きなインパクトを生み出すプロダクトをつくりたい、という熱量が抑えきれず、それならば日本トップクラスに大きな市場で勝負したいと思ったのがきっかけです。

建設業界は、圧倒的な大きな金額が動いている割に、まだまだデジタル化が進んでおらず、FAXや電話を中心としたやり取りが多い旧態依然とした市場です。この業界でより良いプロダクトをつくることができれば、その社会インパクトは大きくなると思ったんです。簡単に言うと、せっかくやるなら「でかいこと」をしたかったんです。

そして、いくつかレガシー産業を攻めているスタートアップとも話したのですが、どうも市場の捉え方や戦略の解像度が粗くて、将来“ツール”だけが乱立するな、と思い、もっと本質的で業界の構造に差し込むような切り口がないか?と模索していました。

そんな時、代表の韓と出会い、2018年に既にインサイダーとして内装会社の経営をしながら、業界のデジタル化をしている、ということを知りました。韓は、大学まで建築出身ながらリクルートのグローバル経営を経験した後、創業18年の内装工事会社(ユニオンテック)に逆張りで乗り込んで、内装会社の社長として工事事業のデジタル化を推し進めていました。

自分にとってはこれがしっくり来ていて、リアルに工事に関われることで芯を喰ったプロダクトがつくれ、中長期的にも自分の成長にキャップをせず思いっきりプロダクト開発に携われる、とユニオンテック(当時)に飛び込むことを決めました。

日本の建設業界に残るレガシーとは?

――具体的に建設業界には、どんなレガシーや課題が残っているのでしょう?

ひとつは、多重請負構造が慣例化してしまって、大工さんや電気屋さんなどの職人が正当に評価されないことがあります。実は日本の職人技術って、世界トップレベルなんですよ。ただ、賃金で見ると日本の職人の平均賃金は1.5~2万円、ヨーロッパだと4~6万円。ヨーロッパだと、「職人として働いている」というとリスペクトの対象になります。日本では職人という職業のステータスが低いのが現状。世界トップクラスの技術を持っているにも関わらず、賃金は圧倒的に低い……その背景を作り出している要因として多重請負構造が挙げられます。

――どうして多重請負構造のようなレガシーが解消されないのでしょうか?

ひとつは、職人の技術や能力が可視化されていないことがあると思っています。

「技術が確かな職人を探すのが難しいから、信頼できる会社に仲介してもらおう」「この職人は、どれだけの技術があるのかわからないから、とりあえず安い金額でお願いしよう」といった背景で職人への発注金額が抑えられているんです。いわば、信頼に対して多額のコストを払っている業界と言えるかもしれません。実際は、実績に関する情報が表に出ていない一人親方でも、レベルの高い工事を行う職人も多くいるんですけどね。

だからこそ、クラフトバンクでは、職人さんの技術や能力を可視化して、発注側の建設会社と正当な条件で直接仕事のマッチングできるプロダクトを開発しています。「どんな施工実績を持っているか」「どんな会社とお付き合いしているか」といった職人の情報を定量データとして可視化することで、職人がもっと正当に評価される世界になると思っています。

目指すのは、寝てても受発注が完了する世界

――そのような業界構造の中で、クラフトバンクが市場に価値を提供できる理由はどこにあるのでしょうか?

建設業界は、「どの会社が、どんなことをしている」という評価や情報が人伝てに広がっていく小さなコミュニティ形成をしていることが多いという側面があって。業界に触れたことがないIT企業がいきなりビジネスを始めようとすると、参入障壁が物凄く高いんですよね。でも、クラフトバンクの場合、元は内装施工会社のR&D事業として3年掛けて実績を積んでスピンオフした会社。しかもその内装会社も20年以上の歴史と30億円以上の売り上げ実績があったので、すでに建設業界のコミュニティの一員として一定のポジションに立っている状態からスタートすることができています。

――プロダクトを開発していく上で感じている難しさや面白さについて教えてください。

ありがたいことに、市場からの期待も大きくて、発注側の建設会社も、工事を請け負う側の職人や工事会社も、登録社数はどんどん増えています。ただ、その後の『マッチングを実現させること』にはまだまだ課題も残っているのも事実。そこを解決するためには、圧倒的に優れたUI/UXを実現しなくてはいけません。というのも、建築業界で使われているメインのコミュニケーションツールは電話かFAX。業界で働く人たちって、アプリを開いて画面を操作するということ自体に慣れていないので、少しでもつまずくポイントがあればもうそれだけで使われないんです。例えば「タブによってページを遷移できる」ということが理解されず、そこで離脱してしまうといったケースもありました。

その点、クラフトバンクは元々内装工事会社のいち事業だったので実際に多くの職人や工事会社さんに施工を発注してきた実績があります。売上100 億円超えている会社から、年間数千万円の一人親方の会社まで、幅広くリレーションを持っているので、気軽にユーザーヒアリングをしたり、テストを実施したりして、UI/UXを磨きやすい環境が非常に整っていると思います。

究極は「寝てても工事の受発注を完了できる」までUI/UXを磨き上げること。愚直にユーザーの声を聞いて、改善し続けていくことは、難しさでもあり、面白さでもあると思いますね。

クラフトバンクが見据える、建築業界のDX

――組織の特徴について教えてください。

開発メンバーは、2021年6月現在で6名。少数精鋭のチームです。会社としては、年功序列や上下関係はまったくなくて、フラットな組織だと思います。社長の韓もそうですが、半袖短パンサンダルで出社してくるメンバーも多々いますから(笑)。

僕たちの組織づくりの基準は、「日本が世界に誇る建設職人が活躍するために、必要な事業体は何なのか、そして必要な組織体は何なのか」というもの。会社のフェーズとメンバーそれぞれの強みや弱みを把握して、「今”このタイミング”で、”どの人を”トップに据えたら事業スピードが加速するか」といった意識を持って、最適な人員配置が考えられています。いまは、すごく優秀なメンバーが揃っているにも関わらず、入社1年足らずの25歳の僕に、現在開発中のプロダクトの裁量を全て預けてもらっています。

クラフトバンクのメンバー構成は、①mixi・ビズリーチ・Yahoo!を経験したCTO経験者が数名いるTechチーム、②職人や一級建築士・一級施工管理技士の実業を経験してきた建設業のプロフェッショナルたち、そして③議員秘書・アナウンサー・コンサル・PEファンドといった多彩なビジネスチーム。バックグラウンドはそれぞれ異なるので一見カオスですが、当事者意識が高くて、それぞれが裁量権を持って自分で考えて行動している”自律型組織”って感じですね。各チームが一丸となって現場の声を拾い、自分の仮説を持ってガンガン改善を回しているので、本当に頼もしいです。「誰々がこう言っているから…」みたいな、人の立場で判断するような会話は一切なく、全て市場に向き合う、“コト”に向き合う組織となっていて、ある意味すべてが合理的です。

――どんな人だったら、クラフトバンクで活躍できると思いますか?

いきなり建設業界に興味を持つ人はなかなか少ないとは思います。ただ、巨大な市場なのにデジタル化が進んでいないフロンティアの中で挑戦していくことに魅力を感じられる人だったら楽しめる環境だと思いますね。ちなみに、ほとんどの人は、一度現場を見たらその職人さんの技とかっこよさにはまり、この人たちの働く環境をなんとかして便利にしたい!と思ってしまうと思います。業界で働く人たちの仕事内容は本当に高度で、繊細で、複雑なんです。
そんな中で、ITリテラシーが低いというギャップを埋めるためには、丁寧にユーザーの声を聞いて改善を回すことができる”おせっかいな”デザイナー・エンジニアの存在が欠かせません。一筋縄ではいかないことも多くありますが、その難しさも楽しみつつ、ダイナミズムを実感できる場がクラフトバンクにはあると思います!

――クラフトバンクが見据えている、今後の展望について教えてください。

今は発注側の建設会社と受注側の職人や工事会社の受発注に関わるマッチング(紹介)サービスを展開していますが、見積もりの作成や職人の手配など、まだまだ建設業界には改善できる余地が山ほどあります。それらの領域もカバーし業界全体のDXを押し進めるようなプロダクトをつくっていき、少しでも、本来の「職人技術を活かす仕事」にコミットしてもらえるような環境になっていけたらいいなと思いますね。

建設業界には、スーパーゼネコンでさえ市場シェア1-2%で、他の産業のように市場の数十%を抑えているような絶対的企業がいません。その結果、各社独自にやりやすい方法で仕事を進めてきたことが、デファクトスタンダードの不在につながっています。だから僕たちは、建設業界のスタンダードをつくるポジションに行きたいと考えています。そして、国内で実績と知見を溜めて、日本が世界に誇る職人技術と一緒に近い将来、グローバルの市場でも勝負したいですね。

――最後に読者に向けてメッセージをお願いします!

僕たちは、良いものをつくったら売れるという自信を持っています。すでに市場でコミュニティの一員として認められていて、ユーザーの声をすぐに聞くことができて、登録者数も増えている。あとは、プロダクトの質を高めることだけなんです。これだけ、成功イメージが見えていて、条件が整っている環境はなかなかないと思います。「市場を動かすようなスケール感と大きな伸び代を持ったプロダクトに携わりたい」「エンジニアとして価値提供する総量を最大化したい」と考える方は、一度話を聞いてもらっても損はないと思います。

ぜひフランクにお話しましょう!短パンサンダルでお待ちしております!

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