前回は、平日はIBM、夜と土日は早稲田という「草ベンチャー」の2年半について書きました。今回は、その時期にやっていた、いちばん地味な仕事の話です。
▶ 松本の記事:授業の口コミから学生が自ら気づいていない魅力発見サービス
https://www.wantedly.com/companies/coursevalu/post_articles/1069551
授業の好き嫌いから、向いている仕事が見えるはず
当時の僕たちには、ひとつの仮説がありました。
学生が「面白かった」と感じた授業には、その人の興味や強みが表れている。だとすれば、受けてきた授業から逆算して、「この授業とこの授業が好きなら、こういう仕事に向いているかもしれない」と示せるはずだ。本人もまだ気づいていない魅力を、データの側から見つけられるはずだ、と。
ただ、それを確かめるためのデータは、どこにもありませんでした。だから、自分たちで集めることにしました。
成績表を見せてもらう、という頼みごと
やったことはシンプルです。
学生に成績表を出してもらい、「キャリア相談」という形でアンケートとインタビューを重ねる。どの授業が面白くて、どれがつまらなかったのか。なぜそう感じたのか。一人ひとり、とにかく深掘りしていきました。
成績表は、ふつう人に見せるものではありません。それでも、20人ほどの学生が協力してくれました。彼らがいたからこそ、この仕事は成り立ちました。
録音を、手で起こす夜
いまなら、録音を流せば数分で、かなり正確な文字になります。でも当時の文字起こしは、いまほど精度が高くありませんでした。
だから僕は、録音を聞いては止めて、起こした文章と照らし合わせ、また聞き直す。それを何度も繰り返して、一人ひとりの言葉を確かめていきました。起こした文章をChatGPTに読ませて分析させようとしても、当時のChatGPTはいまほど賢くなく、思うようには動いてくれません。
正直に言えば、気の遠くなる作業でした。いまなら、そのほとんどを自動化できるはずです。それでも、あの時間に一人ひとりの声をじっくり聞いたことは、無駄ではなかったと思っています。
宇宙ベンチャーの選考に、組み込まれた
実はこの取り組みで、とある宇宙ベンチャーと一緒にお仕事をする機会がありました。
その会社のインターン募集の中に、僕たちの「成績表をもとに学生の興味や強みを掘り下げるプロセス」を組み込んでいただいたんです。学生が大学で何を学び、何に心を動かされてきたのか。それを選考の中で見ていこうという試みでした。
自分たちが手作業で磨いてきたやり方が、実際の企業の採用の場で使われる。小さな一歩でしたが、「この方向は間違っていない」と思えた出来事でした。
うまくいかなかった、最初の事業
この取り組みは、やがて「インターンを探す学生と企業をつなぐマッチング」へと形を変えました。実際に1〜2名はマッチングまでこぎ着けました。
ただ、採算が合わず、この事業は断念することになります。学生を集めるには魅力的な企業が必要で、企業を集めるには魅力的な学生が必要。その両方を同時に回す力が、当時の僕たちにはまだありませんでした。
それでも、残ったもの
ひとつ、忘れられないことがあります。
数少ないマッチングが成立した学生さんが、のちにCourseVALUでインターンをしてくれることになったんです。事業としてはうまくいかなかったけれど、人とのご縁は確かに残りました。
そしてもうひとつ。何十時間もかけて学生の声を聞き続けたことで、はっきり実感したことがあります。
学生の多くは、大学での学びを社会でどう活かせるのか、まだわかっていない。だからこそ、それを早い段階で知る機会が必要だ、ということです。
データではなく、一人ひとりの言葉から得たこの実感は、いま大学1・2年生向けのキャリア教育プログラムをつくるときの土台になっています。
地味な仕事が、いちばん効いている
スタートアップと聞くと、華やかなピッチや大きな資金調達を思い浮かべるかもしれません。でも、僕たちの最初の数か月は、成績表と録音データに向き合う毎日でした。
いまCourseVALUで働くインターン生にも、アンケートの集計や当日の運営準備など、地味な仕事をお願いすることがあります。そういう仕事の中にこそ、次のアイデアの種が埋まっている。あの文字起こしの夜が、それを教えてくれました。
次回は、この取り組みから生まれた、CourseVALU初めての学生イベントの話です。学生30人を集めるために、僕たちはビラを配りました。
一緒に働く仲間を募集しています
CourseVALUでは、大学生向けのキャリア教育プログラムを一緒につくる仲間を募集しています。まずはカジュアルにお話ししましょう。
■学生(長期インターン)
・COO直下で大企業案件のPMとコンサルを学ぶ長期インターン
■社会人
・プログラムディレクター(研修講師・ファシリテーター経験を活かす)