2015年に創業したカウンティア株式会社は、フィンテックの研究開発を行う、いま注目のベンチャー企業。今回は最高研究責任者として、ブロックチェーンなどの最先端技術の研究開発とアルゴリズム開発を担う井上裕貴さんにお話を伺いました。
井上 裕貴(いのうえ・ゆうき):東京大学大学院 情報理工学系研究科 修士課程修了。10~14歳をアメリカで過ごす。大学院修了後、株式会社ワークスアプリケーションズへ入社し、エンジニアとして活躍。継続的インテグレーションの基幹部分や全文検索エンジンなどのシステム開発を担当。2017年にカウンティア株式会社へ入社。最先端技術の研究開発とアルゴリズム開発を担う。
最新技術を突き詰めることにやりがいを感じる
――はじめに、カウンティアに入社した経緯を教えてください。
大学院修了後、大手企業向けソフトウェアメーカーのワークスアプリケーションズに就職しました。エンジニアとして勤め2年ほど経った頃に姥貝と知り合い、その後、休日を中心に会計関連のアプリケーション開発などを手伝うようになりました。
そして2017年の秋頃に、姥貝から「ブロックチェーンを使った新サービスを考えたのだけど、実現可能だろうか?」と相談されました。面白そうだと思って研究開発を担うことを決意しました。それでカウンティアに入社し、ブロックチェーンの構造の研究、セキュリティの研究、ウォレットの研究などを進め、プロトタイプとして出来たのが「ビットコインを使ったレンディングサービス」でした。
2017年冬に株式会社VOYAGE GROUP(東証1部)と合弁会社を作り、サービスリリースに向けた共同事業が始まります。
以来、そのサービスの技術リサーチやシステム開発に取り組み続けています。
2018年秋にようやく『CoinOn』という名で本リリースできる目処が付いてきました。
『CoinOn』は、「1日単位で貸出可能」「1日単位でリターンが付与される」など、ユーザーのメリットが大きい画期的なレンディングサービスです。最先端の分散管理システムを導入しており、安全性も高い。本リリース後はきっと話題になるはずです。ビットコインを持っている方は、ぜひ利用してみてください。
――最高研究責任者の役割についてお聞かせください。
最新技術の研究開発が主な業務です。現在は『CoinOn』に欠かすことのできない技術である、ブロックチェーン技術の研究開発や、付随する先端技術を活用したモジュール開発に集中しています。
たとえば、ビットコインに関連する会計モジュールを完成させるには、大量のトランザクションを整理し、裏付けとなるデータをブロックチェーンから吸い出すということが必要になります。しかし、それはブロックチェーンの構造や仕組を理解した上で、何をトリガーにトランザクションとして定義するのか、どの時点をトリガーとするのか、データの完全性をどのように担保するのか、など様々な課題があり簡単な技術ではありません。その他、当サービス『CoinOn』は万全のセキュリティ対策を進めており、完成前の最後の障壁ともいえる課題で、目下これらの技術の確立をめざしています。
私は研究者肌のエンジニアで、最新技術を突き詰め、完全に理解して使いこなせるようになることにやりがいを感じます。いまはその対象がブロックチェーンで、かなりのことがわかってきました。機会があれば、書籍やウェブ媒体などでブロックチェーンに関するノウハウを公開していきたいと思っています。
ビットコインが基軸通貨になる可能性は大いにある
▲カウンティアの姥貝代表(左)から「研究開発の天才」といわれる井上さん
――では、ブロックチェーンの可能性について教えてください。
ブロックチェーンは「ビットコインとイーサリアムによって、すでに完成された技術」といえます。現在、多くの研究者のあいだで課題となっているのはトランザクションの処理スピードの高速化です。送金スピードをどこまで早くできるかということに焦点があてられており、そうした利便性の問題が解決されれば、将来的にビットコインが円やドルと並んで世界の基軸通貨の仲間入りする可能性も大いにあり得ると思います。
また、ブロックチェーンは画期的な技術であることは間違いないのですが、仮想通貨以外に、どの分野のどこに応用すれば有効利用できるのか、まだ誰もはっきりとはわかっていないというのが実状だと思います。アイデアはさまざま生まれていますが、開発環境の整備が追いついていないため、今後どこまで普及するのかまったく見通しがつきません。ただ、システム開発に必要なツールが増えてくれば、ブロックチェーンを応用したアプリケーションの開発も徐々に加速していくのではないでしょうか。
――ブロックチェーンを使った技術が普及すれば、さまざまな取引がもっと便利になりますね。
そうですね。たとえば、ビットコインに次いで時価総額の高い仮想通貨のイーサリアムには、ビットコインに用いられているものよりもさらに発展させたブロックチェーンの暗号技術が使われています。
イーサリアムの代表的な特徴として「スマートコントラクト」があります。これは、取引契約を自動的に実行・保存する技術です。たとえば、誰にいつ送金するといった契約内容をオフラインでプログラミングしておけば、ネットワークに繋いだ際に自動的に同期して、その取引が実行されるというものです。
こうした技術がもっと普及すれば、利用するためのインフラ整備が自然と進み、地球の裏側にあっという間に送金できるようになると思います。
ブロックチェーンの次は、AIの技術開発を。最先端技術を研究し続けたい
――開発をしていて、どんなときにやりがいを感じますか?
きれいなシステムをつくれたときが嬉しいですね。たとえばサーバーをチューニングして、CPUとディスクを効率的に設定できたときに喜びを感じます。
一緒に働くエンジニアも、効率的なことに喜びを感じる人がいいです。具体的には、きれいなコードをかける人ですかね(笑)。
――休みの日には何をしていますか?
趣味で技術の研究をしていることが多いのですが、最近は総合格闘技も始めました。たまたま総合格闘技をやっている方と顔見知りになり、誘われたのがきっかけです。週に一度ジムに行って、シャドーボクシングをしたり、筋トレをしたり、スパーリングをしたり。息抜きになりますね。
漫画も好きで、いま特にハマっているのは、ビックコミックスピリッツ(小学館)に連載されている『アオアシ』というサッカー漫画です。本当に面白いので、ぜひ一度読んでみてくさい。
――最後に今後の目標について教えてください。
これからも、仕様がわからない最先端技術の研究を続けていきたいですね。
ブロックチェーンの次は、AI関連の技術を研究して、フィンテックへの応用に挑戦してみたいと思います。たとえば、どのくらい資産があって、過去にどのような金融取引をしてきたかなどの顧客データを集めれば、AIによる信用格付けシステムを構築することも可能なはずです。それは、与信取引などに利用することができます。
技術の進歩は加速する一方ですが、ひとつずつ自分の興味のある技術を研究・解明して、さらに新しい技術を生み出していきたいと思います。そして、そうした技術を、世の中に貢献できるサービスに利用できたらうれしいですね。
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