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新代表・西岡と創業者・櫻本が語るcotreeの歴史と次なるステージ。「人生の物語に伴走する社会インフラ」を目指して

「やさしさでつながる社会をつくる」という理念を掲げて、櫻本真理が株式会社cotreeを創業、そしてオンラインカウンセリングの「cotree」をリリースしたのは2014年。

それから8年、コロナ禍を経てメンタルヘルスケアへの関心はますます高まり、オンラインカウンセリングの選択肢が多くの人々に受け入れられるようになりました。

そして創業8年目を迎える2022年1月、新たに代表取締役に就任した西岡恵子とともに櫻本・西岡による共同代表制を経て、6月末日に櫻本が退任、今後は西岡がcotreeを牽引する体制へとシフトします。

トップ交代によってcotreeはどう変わっていくのか。8年間の歩みとこれからの展望について、櫻本と西岡が語りました。

創業8年目を迎える今、トップ交代の理由は?

--2022年7月より、創業者である櫻本さんから、新代表の西岡さんへとトップの座が引き継がれます。2代表制を経てのトップ交代の背景についてお聞かせください。

櫻本:

事業環境が大きく変わり、自分自身の私生活にも変化が訪れた2020年の中頃から、「cotreeが組織として一番伸びていける形は何だろう」ということについてずっと考え続けていました。

2021年6月に株式会社JMDCのグループに入ることを決めたときも「この会社と一緒だったらcotreeの可能性をさらに伸ばしていけるはず」と確信がありましたが、今回の決断もそれに近いですね。

私にとって一番の喜びは、cotreeという会社が社会にとって必要なサービスとなっていくこと。そのために何をすべきかを考えた結果、ここから先は西岡さんに代表をお任せするのがベストだろう、と思えたことが代表を引き継いだ一番の理由です。

――そもそも、櫻本さんがcotreeを創業したきっかけは?

以前、証券会社に勤めていた頃に、メンタル不調に悩まされたことがきっかけです。仕事にやりがいを感じる一方で、眠れない日々が続いたのでメンタルクリニックを訪れたのですが、長時間待たされた末に5分足らずの診察で「軽い鬱状態です」と診断され、ただ薬を持たされて帰るしかなかった。

自分がそういう立場になって初めて、「今の医療ではこうした心のつらさに寄り添う仕組みができていないんだ」と気付かされました。

どんなに強い人であっても、心が折れるときは必ずあると思うんです。強い人ほど多くの負荷がかかるから、折れてしまうこともある。だから「折れないためにどうするか」ではなく、心が折れてもそのたびに誰かに助けを求められる、回復のサポートを得やすい社会にしていくためにできることがあるのでは、とその頃から考え始めるようになりました。

ちょうど同じ頃、欧米を中心に海外ではオンラインカウンセリングのサービスが登場し始めていました。日本ではカウンセリングというサービス自体が普及しきれていない状況がずっと続いていましたが、オンラインであればカウンセリングへの物理的・心理的なハードルがかなり下がり、日本の方にも届くサービスになっていくのでは、と感じたんですね。弱っているときに自宅にいながら利用できるメンタルケアサービスとしてオンラインカウンセリングを広めていけたら。それがcotree設立に繋がりました。

理想と現実、cotreeはそのギャップに育てられてきた

――日本でカウンセリングが普及してこなかった背景にはどんな理由があると思われますか。

櫻本:

カウンセリングについてそもそも知る機会がないことや保険適用の問題など、いくつか理由はあると思いますが、環境や他者を大切にする思想の裏返しとして「自分は、自分の人生をコントロールする力を持っている」という考え方をする人が欧米と比べると日本では少ないことも無関係ではないかもしれません。

ただ、今は人生のルートが多様化している時代です。かつての日本のようにいい大学、いい会社に勤めることが必ずしも黄金ルートではなくなってきていますよね。住む場所や働き方、どう生きるかを、個々人が選べるし、選ばなければいけない。自分の心に向き合わざるをえない場面が増えているのではないでしょうか。

自分はどう生きたいのか、現在地はどこで、何が必要で、次にどんなアクションを起こせばいいのか。そういうことを考える場として、自分という存在と向き合うカウンセリングの必要性が高まり続けていると思います。

――実際にcotreeを立ち上げてからは、どのように事業を成長させてきたのでしょう。

櫻本:

地道な過程の連続でしたね。世界がこんな風に変わったら素敵だな、cotreeの作ったサービスができるだけたくさんの人に届くといいな、という大きなビジョンを持って立ち上げましたが、じゃあそのために何をすべきかと言うと、本当に一つひとつの小さな課題、少しずつカウンセラーを増やしていくとか使いやすいシステムを設計するとか、そういう地道なことを解決していくしかないんですね。

月に数件しか使っていただけないところから、少しずつ成長していく過程では、キャッシュが尽きてサービスを続けられるかどうか悩む時期もありました。必要な人に届けられるよう、まずは「生き延びる」ことを意識して経営してきたように思います。

目指す理想の状態と、今いる場所。両者の間には常に大きなギャップがあって、でもそのギャップにこそ育てられてきた。絶えずあらゆる方向からフィードバックを受けてきた8年間を振り返ると、そんな風に感じられます。

――コロナ禍による影響もありましたか。

櫻本:

社会の多くのコミュニケーションがオンラインに切り替わったことは、cotreeにとって大きなインパクトでした。やはりコロナ禍以降は、オンラインで対話をするハードルが一気に下がった感触がありましたよね。

コロナ以前であれば、ちょっとしたストレスであれば友人とおしゃべりをしたり、飲み会に行って発散したり、といった選択肢がありましたよね。でも行動や関係性が制約される状況下で、専門家やオンラインカウンセリングに頼るという選択肢が初めて浮上してきた方も多かったのではないでしょうか。

西岡さんを中心に新生cotreeが始動

--代表取締役という立場から離れて、これからどんなことを願っていますか?

櫻本:

今のcotreeはスタートアップとしてなんとか生き延びるフェーズから、社会にとって必要なインフラ的存在へと変化していく重要な時期に差し掛かっています。ここからの成長を一番加速できる体制を作ることが、cotreeにとっての最優先事項です。西岡さんはそのことを十分に理解した上で、事業とメンバーのどちらにもすでに深くコミットし、経営者として求心力をもって事業を進めてくれています。

自分の後を引き継いでくれる人材をずっと探していく中で、西岡さんに出会えたことは本当に幸運でした。「cotreeにこんな変化が起きてほしい」と願っていたことが、今まさに目の前で起きているからです。

創業者として今後もcotreeをサポートしていく気持ちは変わりませんが、私が共同代表として残ることで西岡さんの意思決定を歪めてしまうのは本意ではありません。この形がcotreeにとってベストな選択だと確信していますし、私自身も今後はcotreeをルーツに持ち、思想を同じくする株式会社コーチェットの経営に集中していくつもりです。

いつかはメンタルヘルスケア領域へとの思いがあった

--続いて、櫻本さんからバトンを受け取った新代表・西岡さんにお話を伺っていきます。西岡さんは森永製菓、サイバーエージェント、コネヒト、フリーランスの経験も経てcotree参画と多様なキャリアをお持ちですが、櫻本さんとの出会いは?

西岡:

共通の知人を介して櫻本さんと初めてお会いしたのは2021年の春頃でした。その前から櫻本さんのnoteの文章はよく読んでいたんですよ。心を表す言葉選びも素敵で、一つ一つ真意をつかれており心を惹かれていました。

思考や感情を言語化して自分と向き合うきっかけを提供できるカウンセリングやそれを含むメンタルヘルスの領域全般には以前から関心がありましたし、いつかは挑戦したいとも密かに思っていました。

――カウンセリングの領域に関心を持つようになったきっかけは?

西岡:

私自身の原体験ですね。ここから少し個人的な話になってしまいますが、私は幼少期の記憶があまりありません。母が父に暴言や暴力を受けていた場面や、私に手をあげようとする父を母が止めるシーンなどの断片的な映像は記憶にあるのですが、それ以外の記憶はまるっと抜け落ちていて。

両親が離婚して母子家庭となり、母は必死に働いて愛情を注いでくれましたが、誰かに甘えたり、感情を誰かに素直にぶつけることはできず、胸の奥底に自分の言葉をしまいこんでいました。

自分の家族が「普通」じゃないかもしれないと気づいたのは小学生になってからです。でもそのことを友達に知られるのがイヤで、ずっとひた隠しにしていましたね。「かわいそう」「ああいう家庭環境の子だから」と思われないように学校の勉強だけはとにかく頑張って、必死に理想の自分を掲げ平気な顔で振る舞っているような子どもでした。他人にこうした過去を打ち明けられるようになったのは、大学生になってからです。

自分には安全基地がない、誰にも自分のありのままの感情を共有できない。そういった幼少期の原体験から、「自分自身がありのままでいられる瞬間や場所を提供したい」という思いはずっと自分の中にありました。ただ、20代の頃はまだ記憶が強烈すぎて、メンタルヘルスケアの領域にすぐ飛び込む勇気が持てなくて。

「じゃあ、私が自分らしくいられた瞬間っていつだったんだろう?」と振り返ったときに、幼少期の暗い記憶の中にも、家族で食卓を囲んでいる時がありのままの感情を出せていた時だったと思ったんです。食品であれば多数の世帯に届くツールであり、どんな人へも幸せが増幅する時間を届けられるという思いから、大学卒業後は食品メーカーに就職しました。

そこで5年間、いろんな経験を積ませてもらった後、まったく社風の異なるIT企業に飛び込みました。2社目では「自分らしく働ける環境ってこういうことか!」という発見がありましたね。その後、ママ向けアプリの事業責任者やフリーランスとしても仕事の幅を広げ、toCの事業グロースを中心にたくさんチャレンジができましたし、異なる組織の中での多くの人との出会いがありました。

そのような『人と社会』にいろいろな角度から向き合う経験を経て、cotreeの新代表としてのオファーをいただいた、というのが現在に至るまでの経緯です。

原体験をパワーに変えられる予感がある

――オファーを受けたときの心境は?

オファーを受けたときの気持ちは「使命感」を感じたという言葉が一番近いかもしれません。当時の自分がcotreeの価値観に出会っていたら、もしも自分の大切な人がそこにアクセスができていたら……?もっとしなやかに軽やかに自分らしいそれぞれの人生を歩めていたのではないかと想像しました。ずっとひた隠しにし、暗いトンネルにいた自分の原体験やその時々で感じた感情がすごく大きなパワーになるかもしれないという予感がありました。

だからこそ、cotreeにジョインしてすぐに今お話した自分の過去をすべてメンバーに打ち明けました。このような環境で育ち経験を経て今がある私が、何に課題感を持ち、そして経営者として今後どのようにその課題を解決していきたいと思っているかをオープンにすることが、これからのcotreeの未来をチームで創り上げていく起爆剤になるのでは、と思いました。

それに長く働き続けていく中では、メンタル不調に陥る時期が誰しも必ずありますよね。私自身、大企業からベンチャーまでいろんな労働環境や組織の形態を見てきた経験が、ここに来てすごく活きると感じました。多様な組織文化や働き方がある中で、それらを下支えできるようなサービスを目指していくこと。それも今後のcotreeが考えるべき課題と繋がっています。

目まぐるしく変化する時代の心の社会インフラを目指して

--ではcotreeが「これから」向かう先のビジョンについて教えてください。

西岡:

現在のcotreeはオンラインカウンセリング領域のリーディングカンパニーであり、日本最大級のプラットフォームです。ここからはさらにその先、メンタルヘルスケア領域の社会インフラを私たちが創造していくというゴールに掲げ、多様なチャレンジをしていきたいと思っています。

オンラインカウンセリングは、治療とウェルネスをつなぎ、かつ個人・組織双方の成長や変容へ導くものだと思っています。この人々の暮らしのメンタルヘルスケアにおける中核ポジションをこれからもしっかりと担いつつ、あらゆる人生へと伴走し、心の豊かさを増幅できる仕組みを整えていきたい。医療との連携からもっとライトなカウンセリングの入り口を作るところまで、網羅的・包括的な座組みをcotreeがハブとなって創っていけたらと考えています。

心理療法の分野はまだまだ必要としている人からのアクセスや連携が悪い領域だと思います。だからこそ、cotreeがそこを変えていきます。

過去のキャリアで培ってきた知見と、私にとっての大きなパワーである原体験。両者を活かしながら、さまざまな人々の「人生の物語に伴走する社会インフラ」を創り出せるよう導いていきたい。櫻本さんが0→10へと築き上げられてきた基盤を、10→100へと変えていくことが私の担うべき役割だと思っています。

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