日本は世界有数の長寿国であり、その美食文化は世界遺産にも登録されています。この長い歴史と豊かな文化を支え続けてきた重要な柱となるのは、古来から続く発酵伝統食、すなわち醤油、味噌、お酢、味醂、そして伝統飲料の日本酒や甘酒ではないでしょうか。全国各地の生産者たちによって継承されている製法は、地域や企業ごとにそれぞれ独自の特色があって大変興味深いものですが、その核となる原則はそれぞれ一貫しており、全てにおいて共通点があります。
酒造りにおいては「一麹、二酛(もと)、三造り」、醤油造りにおいては「一麹、二櫂(かい)、三火入り」、味噌造りにおいては「一麹、二炊き、三仕込み」というそれぞれの合言葉が今もなお受け継がれており、いずれの製法においても、初めに必要で、且つ最も重要な工程としての、「麹」づくりを謳われています。
実際に多くの蔵を訪問し、麹を味見させていただくと、完成品が美味しいところは、麹が美味しいということが、本当にそうだなと都度感じます。
そんな重要な麹ではありますが、具体的にイメージをしたり、触ったこと、食べた事は皆様あるでしょうか?麹自体は、完成された味噌、醤油、日本酒などの豊かな風味と存在感、個性的な魅力に隠れ、地味で見過ごされがちな存在です。食材作りのスターターとして機能してた後は、その姿形を変えてしまったり、有用成分のみ搾り取られていたりするので、その食材に麹自体が入っているとご存知ない方もいらっしゃりますし、それが故に、これまで大きな注目を集めることが、少なかったように思います。姿形を特定しやすいものとして、私たちが扱う、米麹の甘酒、そして塩を加えて発酵進めた塩麹などが、最もそのままの形に近いものだと思われます。
麹を作る主役でもある、麹菌は100種類以上の酵素を生み出します。その酵素が食材に含まれる様々な成分を小さく分解して消化しやすいようにします。例えば、代表的な酵素では炭水化物を優しい甘みのあるブドウ糖まで分解するアミラーゼ酵素、またタンパク質は旨味を感じるアミノ酸まで分解するプロテアーゼ酵素、他、多数の酵素を持っています。お肉や野菜など、麹菌の酵素によって、小さく分解されると同時に、多くの場合魔法をかけた様に美味しさへと変化させてくれます。現在世界のレストランなどのシェフが麹を、KOJIとそのまま呼び、地元で採れる食材にKOJIを利用されるのは、こういった魔法のような働きをしてくれるからです。そこにしかない食材がどのように魔法で生まれ変わるのか、大変ワクワクしますし、味わってみたいと思うものです。さらには、日々更新される腸内細菌叢の科学解明によって、麹が食材を代謝する成分が特定の腸内細菌を元気にさせてくれたり、それによって健康状態が改善されたりと、健康促進にも寄与することが多数分かってきています。
一に麹と言われ伝承され続けたには、色んな意味で理由があるだろうと、麹が持つ美食と健康への潜在力を追求し、美味しく幸せを感じる、麹商品で食卓を豊かにしていきたいと思っています。