現在、米国のメディア・エンターテインメント業界では、大手プレイヤーたちが大きな動きを見せています。ディズニーが21世紀フォックスを買収し、アマゾンがMGMを買収し、AT&Tの傘下にあったワーナーメディアがメディア企業のディスカバリーと統合、そしてバイアコムがCBSと合併(現:パラマウント・グローバル)しました。こうした動きが長期的にメディア業界の景色にどのような変化をもたらすのかは、だれも正確に予測できません。しかし、業界の在り方をめぐる変化がこれからも起こることが容易に予想されるため、ビジネスの適応力こそが求められていることは確かだといえるでしょう。
メディア企業は、クラウドを活用したビジネスの先駆けとして、コンテンツの制作やサプライチェーンの最適化、消費者向けのストリーミングサービスなど、新しい取り組みを進めてきました。しかしその裏では、管理業務のプロセスに柔軟性があるとはまだ言い切れないのが現状です。
メディアコンテンツは常に新しいものが作られており、その内容に関するデータ、たとえば、配分金の計算に必要なデータを既存のシステムに入力やその詳細を管理することに課題があります。新たなコンテンツができあがった場合、そのコンテンツのシリーズ、配信時期、エピソード、配信エリア、配信プラットフォームなど、これらすべての情報が配分金に関わる上に、そこで使用されている楽曲やクリップ映像などのコンテンツのほんの一部でも使う場合には、それらのデータも管理する必要があります。
配分金に関する情報は、支払いにも請求にも関わってきます。企業には、ロイヤリティを支払う義務を負うだけではなく、自社のコンテンツを外部のプラットフォームに販売またはライセンス供与してロイヤリティを回収しているところもあります。こうした契約形態の複雑さを管理するのに、専用のシステムではなく、スプレッドシートを使うのは充分とはいえません。むしろこのような方法で管理し続けてしまうと、ロイヤリティの計算式に誤りが生じ、一つのミスによって、業務フロー全体が停滞してしまう恐れがあります。
著作権とロイヤリティにおける管理は非常に煩雑であり、誤った計算や情報の漏れはビジネスに大きな影響を及ぼします。そして、適切なシステムを導入せずにこれらをトラッキング、分析することはリスクを伴います。こうしたリスクを防ぐために、企業は契約の詳細を正確に管理し、双方向のロイヤリティの業務フローを効果的に管理する施策を検討する必要があります。
将来の成長にも適応できる拡張性とは
お客様の要望やビジネスモデルは瞬時に変わることがあります。競争の激化や新たな市場機会の変化に応じて、柔軟に対応する必要があります。そして、クラウドソリューションは、この柔軟性を実現できるため、注目が高まっています。
クラウドソリューションは、業務プロセスを自動化し、効率化できる強力なツールです。見積りから納品、収益認識、請求書作成、請求書の配付までの業務プロセス全体をスムーズに管理できるだけでなく、契約内容に基づいて請求書の発行や支払い業務もシンプルな操作で済ませることが可能です。
負荷をかけずに著作権管理
メディアにおける著作権とロイヤリティの管理には特有の複雑性があり、より効率的で迅速な業務プロセスが求められています。ここ最近では、著作権とロイヤリティを管理する業務は、一事業部のみが行う業務ではなく、企業全体に関わってくる重要な業務になっています。業界では、合併や買収が相次いでいる背景もあり、これらの業務の多くは単体のソリューション(スポットソリューションとも呼ばれる)や自社開発のシステムを使ってデータが管理されています。
著作権とロイヤリティに関係するデータの収集には、膨大な労力が必要になります。これまでデータ収集は表計算ソフトを駆使して行われてきましたが、現代のメディア企業は、よりスマートで素早く、自動化された方法を求めるようになっています。このデジタル時代において、リアルタイムな情報がビジネスにとって非常に重要だからです。
クラウドを使うことで、手作業で時間をかけている著作権情報のデータベース検索を自動化することができます。これにより、コンテンツを配信する際に著作権の侵害や違反がないかを確認する手間を省けるようになります。その結果、人為的なミスは必然的に減少し、ユーザーはより難しいプロジェクトに時間を充てることができます。
クラウドを活用すれば、コンテンツの保管場所に関係なく、すべての所有コンテンツに関する著作権とロイヤリティを、効率的に管理できます。標準的な業務プロセスをクラウドに移行することで、従来のやり方では実現できなかった方法を、新たな選択肢として活用できるようになります。
“生き残り”だけでなく、“成長と繁栄”をもとめて
クラウドを使えば、どこからでも、さまざまなデバイスを使って全ての情報にアクセスできます。これにより、迅速な意思決定が可能になり、ビジネスチャンスに遭遇したときに即座に行動に移すことができます。今、メディア業界は大きな変革の時期にあります。この変化とダイナミズムに対応するには、単に生き残ることに集中するのではなく、さらなるビジネスの発展を目指して俊敏性も求められるようになります。
米国のメディア・エンターテインメント業界において、標準化されたビジネスシステムを基本とした財務管理システムは、シームレスにクラウド上で動作する形で統合されていることが求められています。この環境では、俊敏性と拡張性が非常に重要になります。
クラウド環境さえ整備できれば、著作権とロイヤリティの機能を既存のシステムに追加や削除など、必要に応じて自由自在にカスタマイズが可能です。まるで既存の仕組みにLEGOブロックを組み込むように、各取引の重要な条件や詳細を取り入れることができます。
データの一元化
クラウドを使う意義は、著作権とロイヤリティに関するデータをリアルタイムで可視化できる、一元化されたシステムの実現にあるといえるでしょう。システムには市場、地域、プラットフォームなど、あらゆる基準でパラメーターがいくつか設けられています。これは、コンテンツの利用許諾が可能なものなのかどうか、識別する材料となります。企業が所有しているコンテンツはシステム内にライブラリとして保管されており、そのコンテンツごとの利用ルールや財務的義務を、まとめて確認することができます。
クラウドで提供されている機械学習とデータ分析の機能を活用すれば、他社との競争が激化する状況下であっても、業界内における新しいトレンドをすぐに把握し、普段は見逃してしまうようなビジネスチャンスを掴むこともできるようになるでしょう。
今後の展望
クラウドシステムを活用することで、コンテンツの制作から配信、そして顧客体験までを一元的に管理するスマートなサプライチェーンを築くことができます。その結果、業界の重要なトレンドを把握してビジネスチャンスを掴むことができるようになるでしょう。さらには、業務効率が向上し、より創造的なコンテンツを生み出すことに時間をかけながら、市場投入までの時間を短縮することができるでしょう。
クラウドへ移行することで、現代のデジタル世界で立ちはだかるさまざまなビジネス課題に効果的に対処できます。クラウドを活用することで、業務の迅速化、大規模な拡張、コスト削減、コンテンツ検索の精度向上、新規プロジェクトの迅速な導入、そしてよりすぐれたコンテンツ提案が可能になります。どのようなビジネスモデルでも、クラウドへの移行が業績アップに貢献できるでしょう。
このようにメディア・エンターテインメント業界内の競争がますます激化する今こそ、クラウドを積極的に取り入れる絶好の機会と言えるでしょう。そして、これは日本も無関係ではありません。競合よりも早く、実際に消費者がコンテンツをどのように楽しんでいるのか、追及し続けることが重要です。
もしも今、この記事を読んでいるあなたの会社が、業界に先駆けて賢明な意思決定を身につけたい、ビジネスをもっと成長させたい、さらには収益を上げて、パフォーマンス向上に貢献していきたいといった意向があるのであれば、ぜひクラウドシステムへの移行を検討してみませんか。