アジャイルなマインドセットとは②
豆蔵の中の人ナカサトのヒトづくり・モノづくり・コトづくりへ一言 第12回 忘れられないうちに、 前回の続きです。 「アジャイルなマインドセットとは」その2です。 スクラムには、スプリントの終わりに実施するイベントが2つあります。 ひとつがスプリントレビュー、もうひとつがスプリントレトロスペクティブです。 ...
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「アジャイルなマインドセットとは」2回目です。
スクラムには、スプリントの終わりに実施するイベントが2つあります。
ひとつがスプリントレビュー、もうひとつがスプリントレトロスペクティブです。
スプリントレビューはその時点のインクリメント(作成途中のプロダクト)のレビュー、それに対してレトロスペクティブはチームの開発のやり方やチーム内のお約束に対する振り返りです。
と、ここまでは基本的なスクラムの説明ですが、この 「レトロスペクティブ」 が、実は結構画期的であるということに、みなさんお気づきでしょうか。
アジャイル以外にも、「スパイラル型」「反復型」「インクリメンタル型」と言われる開発プロセスは存在します。しかし、チーム内の開発のやり方や手順(どんなツールをどのように使うのか、誰がどんな役割を持つのか、どういう順番で開発を進めるのか)は、最初に決め、それをプロジェクトの最後まで維持するのが通常です(※)。
一般的には、プロジェクトの計画段階で、プロジェクトマネージャーなどが決めることが多いでしょう。場合によっては、プロセスコンサルタント/プロセスエンジニアという役割の人がいることもあります。
いずれにしても、特定プロジェクト用の開発プロセスは、何もないところから作るわけではなく、何かしら基になるテンプレートがあります。システム開発を行う会社や組織には、組織標準の開発プロセスがあり、それがもとになることが多いでしょう。ただ、すべてのプロジェクトに最適なプロセスがあるわけではないので、通常標準として決まっている開発プロセスを、今回のプロジェクト用にカスタマイズします(テーラリングと呼ばれます)。
アジャイル開発についても、基になる手法があり、それを今回のプロジェクト用にカスタマイズしていくという考え方は同じです。しかし、誰がそのカスタマイズを行うのかというと、「チーム自身」です。プロダクトオーナーの優先的な関心事はプロセスではなくプロダクトですから、プロダクトオーナーが主体となって決めるわけではありません(他のメンバーと一緒になって考えたり、意見を求められることはあるでしょう)。スクラムマスターもチームがプロセスを変更する際に、自らのスクラムの知識をもってサポートすることはあるかもしれませんが、スクラムマスター自身がプロセスを決めるわけではありません。
※ ただし、現在では、アジャイル以外のプロセスでも、アジャイルのプラクティスを取り入れて、「振り返り」を行う手法はあります。
アジャイル/スクラムでは当然のように語られる以上のようなことですが、これは開発者の考え方を大きく変えなればならない点です。従来は、開発者にとって開発プロセスとは「誰かが先に決めてこの通りにしろと言われるもの」「何やら面倒なレビュー手順や作れと言われているドキュメントがあり、従わねばならないもの」でした。逆に言うと、「誰かが決めてくれるので、自分で考えなくていいもの」でした。
しかし、アジャイルは、開発プロセスそのものをチーム自身で決め、かつ、それを途中で変更することも、チーム自らが判断します。もちろん、会社や組織の制約はあるので、チームが完全に自由にできるわけではないですが、そういう制約も折り込み、そもそもの基となっているプロセス(例えばスクラム)の意味を理解してそれを変えていくのも、チーム自身です。
今までプロセスエンジニアが担当していたことを、開発者自らが行う必要があります。また、その変更したプロセスの適用先は自分たち自身なのです。アジャイル開発者は、「多能工」であることが求められますが、そこに含まれている「能」は、プロダクトを作るために直接必要なスキルだけではなく、従来のプロセスエンジニアのスキルも含まれます。開発者は従来の仕事の範囲を超えて、ここまで求められる/やらなければならない/任せられるということを、開発者も管理者も理解しておく必要があります。
「多能工」という考え方は、かなり浸透してきた感はありますが、そこに、このような考え方が含まれている点は、意外と明確に語られていないように思います。しかし、「アジャイルマインド」を考える時、結構重要な点ではないでしょうか。
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